修正
あれっ!? 試練が変わってる!
ええ、全て魔星将が悪かったんです。けど、他の偉い人は何してたんだろう……
デザートまでついた豪華な食事の後、俺は給仕をしてくれた人に聞いていた話と違う点について聞いてみた。すると……
「実はつい先日までこの地を訪れる勇者の応対について間違った触れが出ていまして……」
「間違った触れ?」
話によると、どうも聖王国に勇者が来訪することを嫌ったのか、意図的としか思えないくらい勇者に辛く当たるような試練や儀式へと変えられていたのだという。
(聖王国に勇者が来てほしくない理由ってなんだ?)
ふとそんな疑問が頭をかすめるが、それは誰も分からないらしい。
「私が集めた情報にはそんな話はなかったけちど……一体何があったのかな」
俺が聞いた話をすると、リィナもそう言って考え込んだ。
(それにしても、食事に芋虫を混ぜたり、ひたすらハリセンで叩いたりとかやりすぎだろ……)
勇者が来てほしくないにしてもやり過ぎだ。ちなみに、さっきの試練の本当の意味は”当時勇者に出来なかった感謝の宴を再現する“というものらしい。つまり、俺達は初代勇者の代わりに豪華な食事を頂いた、ということだ。
(いくら何でも変わりすぎだろ……)
経典の解釈が間違っていたと説明されたが、解釈だけでこれほど違いが出るものなのだろうか。
「別に良いんじゃない? ヴェルリナとか言う人に聞けば全部分かるわよ」
悩む俺達にレイアはあっけらかんとそう言ってのける。まあ、そうかもしれないが……
「それより次の試練よ。次は何だっけ?」
試練と聞いてやたらとウキウキしているレイアを見ていると、今のやり方が正しいのかどうか疑問も出てくるな……まあ、芋虫を食べなくてすんで良かったとは思ってはいるが。
「次は確か……礼の試練。正しい姿勢を身につけるまで指導を受けるとか。具体的には……」
「え、嘘でしょ? 叩かれるの?」
リィナの説明を聞いていたレイアがげんなりとした顔をする。が、次も聞いていた話とは違うかも知れないしなぁ……
*
次の日は朝、軽くウォーキングをした──これも試練らしい──後、礼の儀式とやらを受けることになった。
「皆さん、気持ちを楽にして下さい」
この試練専用の衣類に着替えた俺達の前に現れたのはもの静かそうな女性だった。
「この礼の試練では、体の自然な姿勢について学んで頂きます」
自然な姿勢……最初に“楽にして下さい”と言われたのはそう言うことか。
「叩かれたりはしないの?」
「滅相もない! そんなことをしたら自然な姿勢が崩れてしまいます!」
首を振る女性を見てレイアはホッとした顔をする。どうやらこの試練も聞いていたものとは変わってるみたいだな……
そんなこんなで試練を終えた後、俺達は懐かしい人と顔を合わせることになった。
「お久しぶりです。勇者フェイ様。私のことを覚えていて下さり、ありがとうございます」
「シオンこそ覚えていてくれたのか」
試練を終えた俺達の前に現れたのは、かつてタイクーン山脈で出会ったシオンだ。彼女は凄腕の弓使い。別れ際に神聖オズワルド共和国、つまりここ聖王国へ来るように誘ってくれた人でもある。
(まぁ、あの時は儀式が面倒くさそうだったから断ったけど……)
それが今は自分から来てるんだから人生分からないものだな。
「久しぶりね、シオン。あれ? そう言えばもう一人いなかったかしら」
もう一人……確かドレイクとか言う奴だったか。ていうか名前覚えてないのかよ、レイア!
「ドレイクはあの後不正がバレて追放になって……」
あ、そーいやパラメーターを誤魔化して報告してたんだったけ? 俺のせいでバレたみたいなもんだし、悪いことしたかな。
”そんなことはありません! 不正をした者が悪いのであって、マスターが悪いはずはありません!“
“そうじゃぞ、マスター。いんがおうほう、じゃ。真面目過ぎるのがマスターの悪いところじゃ”
ありがとう二人共……ってネアはあの時いなかったんじゃないか?
「じゃ、もういないの?」
「それが実は帰って来ていて……」
え?
「功績は上げたのですが、その……表沙汰には出来ない事情があって……」
一体どういうことだ?
「ま、いいわ。元気にしてるってことね」
「え、ええ! 元気は元気です。鬱陶しいくらいに!」
レイアの言葉に救われたようにシオンが顔を上げる。良くわからないけど、何か聞いちゃ駄目な話題っぽいな……
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