寝技の聖女
転移の力を持つロザリアと一体どう戦う、アバロン!?
「痛たたたッ!」
ロザリアが悲鳴を上げて倒れ込む。あれはイリーナの関節技!
「〔転移〕、危険な力だが、触られなければどうということはない!」
恐らくこいつの〔転移〕は触れたものを移動させる力。そして、今までの戦いからどうやら手で触れなければ力を発揮出来ないと見て良い。
「調子に乗──痛タタタッ!」
「タップ(降参)以外に手は使わせないわよ。ほら!」
「痛タタタタタタ──!」
イリーナはロザリアを押し倒し、完全な締め上げ体制に入った。あれは抜けられないぞ……
(寝技の聖女の面目躍如だな……)
そういやイリーナはこの二つ名にドヤ顔をしていたな。って、そんな場合じゃない!
「ノーマン、ドレイク!」
俺は豹炎悪魔のオーラを使ってクッションを作り、落ちてきた二人を受け止めた。
「死んでない……組長の力か」
「た、助かった……」
「立てるか?」
九死に一生を得た二人に俺は活を入れる。気持ちは分からないでもないが、まだ戦いは終わってないんだ!
「イーサンに加勢しないと! 奴も限界のはずだ!」
「ですね……今行きます!」
ドレイクが駆け出そうとしたその瞬間……
ドカッ!
飛ばされてきたイーサンとドレイクが正面衝突する。くそ、遅かったか!
「雑魚の癖に俺に盾突きあがって……身の程を知れよ!」
怒気を露わにしたイベルに立ち上がったイーサンが向き合う。が、イベルに触れられたのか、その腕は黒ずんでいる。
「ドレイク、回復──」
が、ドレイクは衝突のせいで目を回している。くそ、こんな時に!
「いらん。それよりアレ、出来るか?」
アレ……ああ、訓練中にやったやつか?
「お前が奴の動きを止めて、俺が止めを指す」
「……分かった」
ここに来ても目立ちたがるイーサンには呆れを通り越して尊敬さえ覚えるな。だが、まあ、今回ばかりは怪我に免じて許してやるよ!
「行くぞ、イベル! “開放”ッ!」
その瞬間、イベルに向かってエクステリアから今まで吸い込んだ岩石や木材が吐き出された!
「くそっ! これはロゼリアが出した奴か!」
イベルは両手でそれらを捌いていく。触れただけで岩石を砕くその力は脅威の一言。だが……
「まだまだあるぞ、コラァ!」
触れただけで砕けても、触れなければどうにも出来ない。そして、拳は二つだけ。この物量を捌けるもんならやってみろや!
「ち……調子に乗るなァァァ!」
何だ!? これは魔力か?
(こんな馬鹿げた魔力を持つ奴がいるのか?)
イベルは信じられないレベルの魔力を全身から発し、飛んでくる岩石や材木を破壊……いや、飲み込んでいく。
(エクステリアと同じ……いや、奴の方が遥かに強い!)
なんて野郎だ!
「ガハハハ! 俺が本気を出せばこんなもの、何でもないわ!」
俺が出した岩石や木材は綺麗さっぱりなくなった。
(本気でこいつ、何者だ? めちゃくちゃ強いじゃねーか)
多分この戦いはこいつらにとってただの遊びだろう。まともに戦えば万に一つも勝ち目がないらい力に差があるな。
が……
(勝敗は別だぞ)
ブンッ! ザク!
勝ち誇るイベルの背中をイーサンが斬りつける。そう、俺は囮だったのだ!
「馬鹿が! 背中がガラ空きだぜッ!」
イーサンの渾身の一撃! 良し、これで──
ガシ……
斬られたダメージでうずくまるはずのイベルがイーサンの肩を掴む。やばいッ!
「背中が空こうが関係ないんだよ……まだ分かんねーのか? 俺との力の差が!」
ドッカーン!
まるで大砲のような音と共にイーサンの体が飛び、壁に激突する。が、イーサンはそれでも止まらず、そのまま壁を壊して尚も飛んでいく!
「羽虫が! 調子に乗──」
ガシッ
今度は俺がイベルを掴む。だが、掴むのは肩じゃなく……
「痛タタタッ!」
イリーナ直伝の関節技……しかも俺は豹炎悪魔のオーラを使って本来同時には極められない場所も極められる!
「くそっ! この野郎!」
堪らず倒れ込んだイベルに俺は寝技をかける。これもイリーナ直伝。我が身で学んだ技のキレ……たっぷり味わわせてやるぜ!
「痛タタタ……おい、ロザリア!」
関節を極められて禄に体が動かないイベルが仲間の女を呼ぶが……無駄だ。あっちはイリーナが極めてるんだからな!
「痛タタタッ! イヤ、もうイヤッ!」
ロザリアの耳にはイベルの声は入ってない。というよりもう半泣きだ。まあ、無理はない。イリーナの関節技は大の男でも泣かされるからな……まあ、俺のことだが。
「おい、ロザリア! 落とせ、俺ごとな!」
フッ……
急速に視界が切り替わる。おい、まさか……
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します! ただ、テンションが高まったら早まるかも! その時はご容赦頂きたいm(_ _)m
何? ブクマ登録しているから大丈夫ですと?
ありがとうございます!
※大切なお願い
皆様のブクマやポイントが執筆の原動力です。「あ、忘れてた」という方がおられたら、是非御一考下さいませ( ´◡‿ゝ◡`)




