勇者
怪しい二人組の正体は……
「お前が勇者アハロンか」
怪しい仮面をつけた二人組がそう聞いてくる。どうも男女のペアらしい。
(聞いてきたのは女の方……か?)
が……どうしたものか。
(違うが……訂正するのも面倒くさいな)
実は最初に書き間違えたせいで俺の名前は聖王国ではアハロンになってしまっている。何故か何度訂正しても直らないのでもう半ば諦めているのだ。
「勇者の力、如何ほどのものが試してやろう!」
俺の沈黙をどう解釈したのかは分からないが、仮面の女が手を上げる。すると、頭上から無数の岩石が降ってきた!
(くそっ! 何だ、この力は!)
俺はエクステリアに宿る悪魔の力で岩石を吸い込む。その隙にイーサンが仮面の女に斬りかかる!
ガキンッ
が、その攻撃は仮面の男に阻まれる。
「いい気になるなよ! まだ全力じゃないんだからな!」
必殺のタイミングの攻撃を防がれたからか、それとも自分に対する注目が足りないと思ったからなのかは分からないが、イーサンが威嚇するように叫ぶ。が……
「だが、お前の出番はもう終わりだ」
男の言葉と共にイーサンの剣が黒ずんでいく! それは急速に広がって……
バッ!
イーサンは剣を手放して後退。が、それを阻むように仮面の女はイーサンの頭上から瓦礫を降らせた!
「イーサン!」
俺は再びエクステリアで瓦礫を吸い込む。ふぅ……ぎりぎり間に合ったか。
「イーサン、怪我は?」
「問題ない。代わりの武器をくれ」
ドレイクから短刀を受け取ったイーサンは感触を確かめるように二、三度振る。様にはなっているが、それがただのカッコつけであることは付き合いの長い俺達には分かっていた。
「おい、せめて名乗りくらいしたらどうだ! お前らが攻め入ってるのは聖王国! 神の威光の元にある国だぞ!」
ドレイク……敵の名前なんてどうでも……
(……待てよ)
俺は豹炎悪魔のオーラを皆の元に糸のように伸ばす。よし、これで……
「ふん……冥土の土産に教えてやろう。俺はイベル」
「私はロザリア。これで良いかしら? 勇者の腰巾着さん?」
からかうようにロザリアと名乗った女が言うと、ドレイクは高らかに笑った。
「では求めに応じて名乗ろう! 我が名はドレイク! 勇者アバロンを導く者だ!」
求められてねーし、導かれてもいねーよ!
という突っ込みをする間もなく、ドレイクは突進する。どうやら目標はロザリアとか言う女の方らしい。
“じゃあ、作戦通りに頼むぞ!”
俺は皆にそう言うと、ドレイクの後に続く。まずはこの女からだ!
「くらぇ!」
女が木材の雨をドレイクへ降らせる。それを見たドレイクは一瞬動きを止めるが……
「そのまま行けッ!」
俺は叫ぶど同時にエクステリアの力でロザリアの出した木材を吸い込んだ。
「チッ! ザコの癖に……」
イベルが舌打ちをしながらフォローに入ろうとする。が……
「おっと。逃げるのか、臆病者!」
イーサンが挑発しながらイベルの前に立つ。良いぞ、イーサン!
ガキンッ!
ドレイクの剣を防ぐロザリアの゙杖(?)が甲高い音を立てる。しかし、その瞬間……
カッ!
ノーマンが俺とドレイクの背後から閃光弾を放つ。よし、決まった!
(後は視覚を失ったロザリアを俺とイーサンで仕留めれば……)
隙だらけのロザリアの背中にドレイクが剣を振るう。よし、俺も急いで……
フッ!
何の前触れもなくロザリアの姿が消える。ドレイクの剣は宙を切り、俺は足を止める。一体何が起こったんだ?
「そんな馬鹿みたいな攻撃、食らうわけないでしょ」
いつの間にかロザリアはノーマンの首根っこを掴み、宙吊りにしている。
(一瞬で移動しただと!? いや……)
音も光もない移動……これは転移か!
(俺達を攻撃する時に出した岩や木材は別の場所から転移させてたのか!)
しまった。もっと早く気づいていれば……
「私、こそこそストーキングする男は嫌いなの。だから……」
ノーマンの姿が消えた!
「上空へと飛ばして上げたわ。すぐに落ちてくるはずよ。それまでにあんた達が生きていればだけどね」
くっ……こいつッ!
(ノーマンが地面に激突する前に受け止めれば……)
フッ……ボカッ!
ロザリアの姿が消え、ドレイクが悲鳴をあげながら吹き飛ぶ。そして……
フッ……
ドレイクの姿が消える。くそっ……また……
「あっはっは……他愛もない!」
ロザリアが優越感に浸りながら高らかに笑う。が……
ゴキ……
何かが外れる音がした。
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します! ただ、テンションが高まったら早まるかも! その時はご容赦頂きたいm(_ _)m
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