拝謁
強力な魔物を何とか退けたアバロン一行でしたが……
戦いが終わった後、俺達には数日の休息が与えられた。今までとは打って変わった歓迎ぶりにイーサンやドレイクは大喜びだ。
「フン! ようやく俺の実力が分かったようだな」
「お前じゃない。アバロン大──いや、勇者アバロンの力だ」
「あん? 俺の力に決まったるだろ!」
「勇者アバロンの力に決まってる! 止めを指したのはアバロン大兄だろうが!」
「止めは俺のバフのお陰だ! 大体最初に隙をつくったのも俺のスキルだろ!」
「何ぃ!?」「何だと!」
いがみ合う二人に俺はため息を……つけなかった。二人の話に興味がないとか、そもそも手柄を立てたくて戦った訳じゃないとかそうそう言うことじゃなく、単に体がしんどいのだ。
(くそ……まさか毒を持っていたとはな)
噛まれたのが小蜘蛛だったおかげで命に別状はないそうだ。が、とにかく頭が痛いし、吐き気が酷い。とにかく今は休みたいのだが、イーサンとドレイクが言い争っていたらそれも出来ない。
(大体何で俺の部屋に集まってるんだ、こいつらは!)
イリーナは看病をすると言って傍にいるし、ノーマンは部屋の隅で何やら薬のようなものを作ってる。つまり、一部屋に全員集合しているのだ。
「……それにしても何で組長の毒は魔法で治療してもらえないんだ……? ここなら解毒魔法の使い手なら幾らでもいるだろうに」
「解毒魔法を使える神官が出払ってるって言ってたじゃないか」
ノーマンの呟きに答えたのはドレイクだ。まあ、確かに魔法には期待していたが、いないんじゃ仕方ないよな。
「解毒魔法を使える神官が何人いるかは分からないが、そんなことあるのか? 何があるかわからないんだから数人は備えとして手元に置いておくのが普通じゃないか?」
なるほど……確かにな。体調の悪さでそこまで考えが及ばなかったが。
「そんな馬──ふぐッ」
大声で反論しようとしたドレイクの口を塞ぎ、イーサンはドレイクの方を向いた。
「じゃあ、何か? アバロンをあえて治療してないってのか? 何のために?」
「例えばだが……時間稼ぎとかな」
「時間稼ぎ? 何故だ?」
イリーナがそう言うのも無理はない。聖王国の連中が一体何で時間稼ぎをする必要があるんだよ。
「仮にあの魔物との戦いの目的が試練じゃなく、俺達の抹殺だったとする」
「そんな訳──@#◆◀&!」
またもやノーマンの言葉を塞ごうとするドレイクの口をイーサンが塞ぐ。だが、その表情は今までとは違い、真剣そのものだ。
(訪れた勇者をコロシアムで抹殺する……普通ならそんな馬鹿なと言うところだが……)
だが、あの魔物を見た今となってはノーマンの言葉を否定する気にはなれない。実際、死んでもおかしくない戦いだったからな。
「だとすると、俺達が生き残ったのは予想外。何らかの対応を考えなきゃ行けなくなる。そのための時間稼ぎだ」
「……」
突拍子もない話だが、ノーマンの言うことにも一理ある。この国に来てから観じていた違和感……こいつの言う通りなら全て説明がつくな。
「もし、それが真実なら奴ら、次こそ私達を確実に始末しに来るはずだな」
「始末……逃げ──ばべッ!」
また騒ごうとしたドレイクをイリーナが黙らせた。
「……逃げようとしても無駄だろう。監視がついているはずだし、ここは所謂相手の腹の中。裏をかけるとは思えないな」
「勝利を祝う歓迎と見せかけて監視しやすい場所に寝泊まりさせたって訳か。相手は中々の策士だな」
そう言うとイリーナとノーマンは腕組みをした。何だかきな臭い話になってきたな。
「胸糞悪い話だな……何か手はないのかよ!」
イーサンがイライラしながらそう言うと、ノーマンはためらいながら口を開いた。
「なくはないが……」
「どんな手だ?」
イリーナが興味津々といった様子で詰め寄ると、ノーマンは観念した様子で話し始めた。
「鍵はアバロン組長だ。あの魔物を倒したのも組長だし、敵の注意も間違いなく組長に向いてるはず。だから奴らの思惑より早く組長を回復させれば、チャンスがあるかも……」
「なるほど……だが解毒となると、私は勿論ドレイクも無理だと言っていたな。どうしたら……」
「今、故郷に伝わる解毒薬を作っている。これを飲めば効くかも知れない」
「「「おおっ!」」」
俺以外の三人が歓声を上げる。や、やめろ。大声を出されると頭に響く……
「だが、クソまずい上に──」
「アバロン大兄、早く飲んで下さい!」
ドレイクがノーマンの手から薬を奪い取り、俺の元へ持ってくる。こら、話を勝手に進めるな!
(てか、ノーマンは何か言いかけてなかったか?)
クソまずい上に……何だってんだ?
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