お楽しみ
最古の聖剣を圧倒するイベル。その力の正体は……
「ぐっ……これは私の」
ヴェルリナを押さえつけているのは奴自身のギフト。くくく……良い様だな。
(ダンジョンコアを〔変異〕させたアイテム、名付けて黒石の力……やはりこいつにも有効だったな)
黒石は所有者が受けた力を支配し、自分のものにするというもの。時間制限はあるが、かつて天界から降臨しようとした聖剣さえ捕らえた力なのだ。
(……まあ、あの時は大量の黒石に加えて他のやつの力も借りたがな)
まあ、何にせよ。こいつはこれで終わり。残り僅かな黒石を全部持ってきて良かったぜ。
「自分の力で拘束される気分はどうだ? あ?」
俺はヴェルリナの顔を踏みつける。さらにぐりぐりと地面に押さえつけてやりたいところだが、ヴェルリナの周囲には大気の圧力があるから精々顔を踏むくらいしか出来ないな。
「くっ……貴様ッ」
美術品のように整ったヴェルリナの顔が屈辱に歪む。いいねぇ。
(だが、まだまだお楽しみはこれからだぜ)
普段はレイナに痛めつけられてるからな。この機会に憂さ晴らしをさせて貰うぜ……
*
(アバロン視点)
(くっそ……タフな野郎だぜ)
あれから俺達はあの手この手で攻めたてた。それなりに手応えはある。が、同時に俺達も疲労していた。
(くっ……このままじゃやばいな)
皆の士気は高い。けどまだまだ余裕がある相手とは違い、俺達は限界が近いのだ。
「くらぇ!」
ドレイクが作った隙にイーサンが剣を振るって魔物の脚を傷つける。
ブンッ!
カウンターを狙うように脚を振るうが、それはこちらも予想している。
「〔カバーガード〕」
ドレイクがスキルを発動してカバーに入る。それを見たイリーナはヒールを発動するマネをする。実際にヒールを発動するのはドレイクだ。
ブンッ!
動きが止まった奴の背後から攻撃する。傷を負わせるためというより注意をひき、回復の時間を稼ぐためだ。ドレイクのスキルじゃこいつの攻撃をノーダメージには出来ないからな。
(くそ……ドレイクの奴、Mpが尽きたか)
ドレイクの〔ヒール〕が発動しなかったため、二人はポーションを飲んで回復する。
「行くぞ、化け物ッ!」
イーサンが叫び声を上げながら魔物に斬りかかる。
(……よし、ブルストライクの準──)
ブシュッ!
背後から斬りかかったイーサンに魔物の尻から出た何かが絡みつく。くそっ……読まれたか!
「がっ! 糸か……卑怯な真似を!」
ネバつく糸に絡まれたイーサンは完全に動きを封じられている。やばい、フォローを……
「イーサン! ごベッ!」
イーサンを庇うため駆け寄ったドレイクが何故か転倒……おい、こんな時に何やってるんだ!
ピィンッ!
だが、駆け出そうとした俺の体も何かに引っ張られる……
(これは糸!? まさか、こいつ……)
俺はエクステリアを振るって糸を切ろうとするが、腕はゆっくりとしか動かない。いや……
(糸がどんどん絡まっていくのか!? 動けば動くほど身動きが封じられていく……)
恐らく奴は戦いながら糸を張り巡らせていたのだろう。俺達がギリギリで攻撃を回避しつづけられたのも、奴の狙いがこっちにあったからか……
(逃げ場のない闘技場に糸を張り巡らせて身動きを封じる。そうすれば後は食うだけ……)
本能か知恵なのかは知らんが……やばい、とにかくやばい!
「うわっ……く、来るな!」
魔物はイーサンに向かってゆっくりと進んで行く。最初の閃光を発するスキルを警戒したのか? いや、理由なんてどうでもいい!
(どうする……? このままじゃイーサンが)
だが、俺もほとんど動けない。しかも多分次に体を一箇所でも動かせば、イーサンと同じように全身の動きを封じられてしまうだろう。
(やばいやばいやばい……)
俺がパニックになりかけたその時。頭に声が鳴り響いた。
”何を焦っているのだ、人間よ……“
何だ?
“お前は普段口には出さなかったが、あいつらのことを邪魔だの何だのと思っていたじゃないか”
こいつ、俺の心を? いや、今はそれよりも……
(悪魔の声……エクステリアに宿った悪魔の力か)
理屈は分からんが、俺が豹炎悪魔のオーラを持ってることと関係したりしてるのか?
”手を汚さずに邪魔者がいなくなるんだ。良かったじゃないか“
(ふざけんな! 魔物に仲間を食われて喜ぶ奴がいるか!)
“仲間……あの男はお前の仲間なのか?”
え……
(イーサンは俺の仲間……か?)
今更何をと言われるかも知れないが、俺は別にイーサンに良い感情を持ってる訳じゃない。考えてみてくれ、俺はあいつのせいで散々な目にあってるんだ。
”なら、あのドレイクとかいう奴はどうなんだ? イリーナとか言う女は? 皆お前の仲間なのか?“
……
“お前は仲間が我が身よりも大切だとか言う口の人間か? だから、あの人間を心配するのか?”
そうなのか……
俺は奴らのことが自分のことより大切なのか……
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