相談と出発
次の目的地は神聖オズワルド共和国!? あれ、確かここには誰かが向かっていたような……
二〜三分で行けるとは言っても、みんなの意見を聞かなきゃいけないし、準備もいる。俺はリィナとレイアに話を聞きに行くことにした。
(リィナは確か魔都の偉い人に呼ばれてるんだっけ?)
いつの間にかリィナは魔都の偉い人達とあれこれと相談するような関係になっているのだ。ちなみに、あれこれの具体的な内容は俺には理解出来ていない。
「フェイ兄! 待たせてごめん!」
「大丈夫、来たとこだから」
リィナがよばれた建物に訪ねて通された応接室にいると、程なくリィナがやってきた。
「フェイ、こんなとこまでどうしたの?」
あ、レイアもいたのか。なら、話が早いな。
「二人に相談したいことがあって。レイアは?」
「亡念の魔冠とのコンタクトについて話をしてくれって頼まれたから」
なるほど……確かにあれは魔都にとっては大事件だろうからな。
(魔都は今どうなってるんだろう?)
リィナ達に任せきりだったけど、ある程度は理解しとかなきゃな。
「今はどうなってるんだ? 物資の心配はもうないって訳じゃないよな」
「うん。また、フェイ兄に運搬を頼まなきゃいけないかも。でも、それだけじゃなくて……」
物資以外の問題……何だろう?
「実は今魔都は魔王イベルを支持する人とそうでない人で意見が別れていて……」
「あんなんでも魔王は魔王。魔王は魔都では憧れたがら支持する人はいるのよ」
なるほど……イベル本人というより魔王だから支持するという人がいてもおかしくはないか。
「でも、それってレイアがビシッと言ってやったら解決するんじゃないか? レイアは歴代魔王から認められたんだから」
我ながらナイスなアイデアだ! けど、それを聞いたレイアの顔はみるみる曇っていく……
「フェイまでそんなこと言うの……」
「実は今、魔都の偉い人からも同じことを頼まれたばかりなの」
げんなりした顔をするレイアの横でリィナが
そう説明してくれた。あらら。それは悪かったな
「で、フェイ兄はどうしたの?」
「実は……」
俺は聖剣ヴェルリナから話を聞きに神聖オズワルド共和国へ行きたいと話した。すると……
「それいい考えかも! それにそろそろ魔都を出て物資の算段をつけなきゃいけなかったし!」
リィナは凄いな……そんなことまで考えてるのか……
「ナイスよ、フェイ! 魔都を出ればこの話から逃げられる!」
逃げられるってレイア、そんな理由で良いのか?
(まあ、とにかく二人共賛成ってことだな)
二人が言っていた理由以外にも、俺はクロードさんやルーカスさん達、それにジーナさんに何の報告も出来ていないことも気にかかっていた。
(とりあえずレイアの件だけは落ち着いたことを伝えなきゃな)
魔都には今まで冒険者ギルドで使わせて貰っていたような通信設備は勿論、外と連絡を取るような手段がほとんどないのだ。
「二人共忙しそうだし、準備は俺がやっておくよ」
リィナは色んなことをやりすぎてるから魔都を出るとなったらもうバタバタだろうし、レイアはレイアで今は忙しいだろう。
「ごめんね。ありがとう、フェイ兄」
「悪いわね、フェイ」
二人にそれぞれ礼を言われながら俺は部屋を出た。
(まあ、準備って言っても出来ることはあまりないけどな……)
タダでさえ物資が不足気味な魔都なのにイベルが色んなものを徴発したせいで極度のモノ不足に陥っているのだ。
(とりあえず、挨拶がてら見て回るか)
何が足りないのかを見ておくだけでも、ルーカスさん達に援助を頼む時に役立つからな。
*
それから二〜三日して俺達の準備は整い、魔都出る日がやって来た。
「やり残したことはないかの?」
「ないわ」
勢い良くそう言ったのはレイアだ。彼女の場合、やり残したことより逃れたいことの方が気になってるみたいだが。
「こっちのことは任せて」
そう言ってくれたレイナさんは見送りに来てくれた唯一の人だ。といってもこうなったのはレイアのせいなのだが……
(師匠の家族とか異形像の時に出会った人とかには一応あいさつはしたけどな)
捕まると厄介だからという理由で誰にも告げずに朝早く出ることに。レイアの気持ちも分からない訳じゃないが。
あ、そう言えば異形像と戦った時に出会った人達からはお礼として素材から作ったポーションを貰った。大変な時に貰って良いのかどうか迷ったけど……気持ちを無駄にするわけにもいかないしな。
「じゃ、行ってくるわ。何かヒントを見つけてくるから」
「期待してるわ、レイア」
そんなやり取りをしている二人は何処にでもいる仲の良い姉妹に見える。まあ、実際にはまだ割り切れないものもあるかも知れないが、少なくとも二人は前を向いて元通りになろうとしている。
(俺も前に進まないとな)
イベルを何とかしなきゃ。聞けば、奴は豹炎悪魔の件だけでなく、オルタシュで起こった騒ぎも起こしていたりと何かと因縁があったらしい。
(だけど、相手は仮にも魔王。一筋縄じゃ行かないだろうな)
でも、俺は一人じゃない。みんなの力を合わせればきっと何とかなる!
(よし、やるぞ)
俺は神聖オズワルド共和国へ繋がる扉へと一歩踏み出した。
読んで頂きありがとうございました! ここで四章は終わり……ではなく、次話からはあの男の話になります。さて、誰のことでしょう?
そんな次話は来週月曜日の朝7時に投稿します! 是非!
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