意思
かつての魔王の述懐にレイアはどう答える……?
「そんなことないわ。私だって小さな頃は皆を救う魔王に憧れた。弧光の魔王フィアや絶影の魔王ニヒト、それにそれに……」
存在の魔王ザイン、龍の魔王レゾン……そう。確かに魔王は皆の憧れだった。オズの目論見通り、確かに魔王は皆の希望だったのだ。
(魔都では誰もが皆を救う魔王になりたいと願って生きていた)
今から思えば、それが魔都の仲間意識に繋がっていたのかも知れない。だから、オズの作った魔都や魔王が失敗だったとは思えない。
「ありがとう。そう言って貰えると少し救われる。が、今の魔王は流石に何とかしないとな」
“本っ当に史上最低の魔王だな、あいつは”
”そう言うな。奴とて役目を終えればここに来るかもしれんのだ。今から嫌っていてどうする“
“あいつがここへ!? 冗談だろ!”
”冗談なものか。ここはそう言う場所だ“
「ザイン、ニヒト。楽しいのは分かるが、話を前に進ませてくれ」
魔王達の楽しげな笑い声が辺りに響く。オズも文句を言った割には楽しそうね。
「済まないな、レイア。私達が君を呼んだのは意思を聞きたかったからだ」
「意思……?」
「そう、意思だ。君は今、どうしたいと思ってる?」
私は……
「君は姉と共に育ち、裏切られ、そしてそれが全て自分を守るためだったと知らされた。しかも、それらは仲間だと思っていた魔族の中で起こったこと。嫌にならないか?」
嫌になる……か。
“振り回されるが世の常……とは言え限度がある。このまま魔都で平和に暮らしたいと思っても誰も責めぬ”
”あいつらに魔王の力を渡さなかっただけでも随分な働きだ。これで仕事納めにしてもいいと思うね、俺は“
ザインとニヒトが声を合わせる。
(あいつらって言うのはレイナの仲間だった魔星将かな)
良くわからない内に消えていったけど、確か私を魔王にして力を奪うとか何とか言ってたわね。
(確かに嫌になる。あんな奴らの計画に巻き込まれたせいで……)
正直何で私だけ……って気持ちは無いとは言えない。これから一体何を信じたら良いかも分からない。だって、今から信じているものでさえ突然変わってしまうかも知れないんだから。
「だから、君の意思を聞きたいのだ。仲間であるはずの魔族に翻弄され、魔都の内と外を知った君が今、何を思うのか」
私の思い、私の意思。それを考えた時に出てくるのは言葉じゃなくてイメージだ。例えば、血に濡れた刃を携えて去るレイナ姉さん。
(そして、ボロボロになりながらも決着をつけるために私と向き合うレイナ姉さん……)
そして、私を魔王にさせないためにフェイ達と共に魔星将と対峙するレイナ姉さん。
(……言葉にしなきゃ)
聞かれているからじゃない。私自身のためにも言葉にしなきゃ。答えを出さなきゃ前には進めないんだから。
「……私は子どもだったわ」
「ほう……?」
私は目を閉じた。瞼の内に広がるイメージを見るために。そして、そこから答えを見つけるために。
「みんな仲間で、みんな分かり合っていて、望んで誰かを傷つけるなんてことはあり得ないと思っていた」
だから理解出来なかった。義兄となるはずだった人を殺したレイナ姉さんの気持ちが。だから、見抜けなかった。血の涙を流しながら私を嘲る辛さを。
「だけど、現実は違う。敵もいれば、目的もなくただただ他者を傷つける人もいる」
「そうだ……その通りだ、レイア」
オズが深く頷くのが分かる。多分、他の魔王もだ。
「けど、それだけじゃない。敵もいれば味方もいる。良い人もいれば悪い人もいる。ただそれだけのこと」
私とレイナ姉さんの運命を捻じ曲げようとした魔星将がいたように、そんな奴らから私を守ってくれたフェイやリィナがいる。二人だけじゃない。力をくれたアドンやクロード……数え切れないほどの味方の力を借りて私は今、ここにいる。
「だから私はなりたい。レイナ姉さんのように真っ直ぐ前に進める人に!」
私は目を開け、オズを、偉大なる先輩である魔王達に向き合った。そう、これが私の意思!
「眼の前の現実は常に変わる。突然裏切られることもある。でも、それでもブレずに前へ進めばきっと未来が切り開ける。レイナ姉さんはそれを私に教えてくれた。だから、私もそれを信じたい」
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