魔王
格上との戦い……一体どうする、フェイ!?
フツフツとした怒りは収まらないが、何とか気持ちを落ち着けて前を向く。魔星将は相変わらずフザけたニヤニヤ笑いをしているが、体は既に臨戦態勢だ。
「じゃあ、いくぞ。精々足掻いて俺を楽しませろよ」
バカでかい鎌を背負い、魔星将が地面を蹴る。次の瞬間に俺達が反応できない攻撃が……
「──ガッ!」
と思ったら、何故か魔星将がバランスを崩し、後ろ向けに倒れていく。何だ? 何か落ちて来たのか?
「えっ、あっ!?」
「つったた……何処だよ、ここは」
落ちて来たのは一人の男。そして男は周りを見回した拍子にそれは起こった。
トン………!
押された勢いは決して強くなかった。だから、発せられた音はごく僅か。だが、不意に押された魔星将はその力に抗えず、姿勢を崩し……
ズン……
魔星将の体が黒い渦巻きに吸い込まれる。その予想外の展開に皆が固まっていたその一瞬の間にそれは起こった。
ドサッ!
またまた上から何かが落ちて来たのだ。今度は無口な魔星将の頭上に。
ドン……
普段ならなんの影響も受けないであろうその衝撃。だが、あまりに予想外な展開が起こると無防備になってしまうのは魔星将も同じ。バランスを崩した無口な魔星将はさっきのリプレイのようにバランスを崩し……
ズン……
再び魔星将の体が黒い渦巻きに吸い込まれた。
「くっそ……割り込まれたせいで座標が狂ったか。ここは何処だ?」
今度は全く見覚えのない男だ。なんだ? 一体何が起こってる?
「あっ、お前もか! ここは何処だよ!」
「知るか、馬鹿! お前らのせいで転移の座標がずれたんだ。分かるわけないだろ!」
言い争ってる……仲間じゃないのか?
「あれ、おい。何だ、その頭にあるのは」
最初に落ちて来た男──位置取りの関係で顔は見えないが、声は聞き覚えがある気がする──がそう言うと、次に落ちてきた男が頭に手をやる。そこには……
「何か頭に……落ちてきた拍子に頭に載ったのか?」
そこにあったのは今は黒い渦巻きの中に消えた魔星将が出した冠。確かレイアに被せて彼女を魔王にするとか言っていたような……
バババ……
冠から光が奔る。ま、まさか……
バリバリバリ!
圧倒的な力の奔流が冠に集まる。そして、それは……
「あが! あががががががっ!」
冠を被った男が白目を剥きながら悲鳴を上げる。
「あべべべべ!」
悲鳴を上げてのた打ち回る男の動きは滑稽そのもの。しかし、その体からは徐々に強大な魔力が吹き出し始めている。
(ま、まさか……)
本当に魔王が復活してしまう!?
”こ、この魔力は……!?“
”こ、こんな馬鹿げた量の魔力……有り得ないのじゃ!“
吹き出した魔力は男の体には収まりきらず、体の周りで漂い始める。そして、それはどんどん量が増え、そのせいで圧縮され……
(不味い……あの男、魔力を全く制御しきれてない!)
制御されていない魔力は行き場をなくし、フラストレーションを貯める。しかし、それもすぐに限界が……
(ヤバい、破裂する!)
““マスター!””
その瞬間、俺達の意識は飛んだ。
※
(ここは……)
その瞬間、俺は全てを思い出した。
(くそっ、やっぱり防げなかった!)
実はレイナさんとの戦いの前、オズさんから魔王復活の未来が確定しつつあると言われていたのだ。何とか変えなけれればと思っていたのだが……
”予想外ではあるが、かなりマシな未来ではあるよ。いや、本当に……まさかあいつが魔王になるとは思っても見なかったが“
オズさんが心底驚いた顔をしている。今までオズさんは何事にも動揺しない超然とした様子がほとんどだったからちょっと意外だな。
“あの男……まさか未来に干渉する力があるというのか? いや、そんな馬鹿な”
あの男……?
(そう言えば、最初に落ちてきた男は誰だったんだろう?)
何処かであったような気がするんだが、気のせいかな。
”! 済まない。あまりに予想外なことが起こったものでな。つまり、私が言いたいのは落ち込む必要はないということだ“
……そうなのか
”まあ、あの渦の中に消えた魔星将に魔王の力が渡るよりはましじゃろうな“
確かに。
“しかし魔王はバランスを歪める存在。倒さねば”
”あの男、魔王の力を制御出来ておらんかったの。あまり苦労せず倒せたりはせんかの?“
確かに力なんて使いこなしてナンボではある。普通なら力を制御出来ていない敵なんて恐れるに足りないが……
読んで頂きありがとうございました! まさかこのタイミングであの男とは……奴には僕の構想を全壊されました(マジで)
彼の後日談はまた後で。勿論、読み飛ばして頂いても支障はありませんが、僕は書きながら爆笑しました(笑)
次話は来週月曜日の朝7時に投稿します!
また場合によっては緊急でストックを投下することがあるのでまだの方は是非ブクマ登録をお願い致します(๑•̀ㅂ•́)و✧
※大切なお願い
皆様のブクマやポイントが執筆の原動力です。「あ、忘れてた」という方がおられたら、是非御一考下さいませ( ´◡‿ゝ◡`)




