元凶
ついに全ての悲劇を生んだ元凶が……打ち砕けッ、主人公フェイ!
「さて、最後の準備でもするか。“〔糧の門〕よ、いでよ!”」
どうやらそれは何かのための詠唱だったらしい。二人の魔星将の間に黒い渦巻きのようなものが現れた。
「愛しの魔王様復活にはまだ想念が足りない。が、流石にお前ら全員をこの中に入れれば十分だ。後はお嬢ちゃんにこれを被って貰えばいい」
お喋りな魔星将は黒い渦巻きの前に浮いている冠を指さした。
「させる訳ないでしょ」
レイナさんが一歩前に出る。すると、お喋りな魔星将は驚きもせず、肩を竦めた。
「おいおい、一体何のつもりだ。俺達二人に勝てるとでも思っているのか? しかも、そんなコンディションで」
確かにレイナさんは回復したとはいえ、万全とは言い難い。
「お前以外の人間が束になっても瞬殺だ。で、お前と今の俺じゃ勝負にならない。分かってるんだろ?」
くっ……しかし
「確かにそうかも。でも、私はもう一人で背負いこむのは止めたの」
レイナさんは一瞬レイアの方を振り向くとフッと笑った。
「だって、ここには私より強い妹がいるんだもの。あんた達なんてコテンパンにしてやるわ」
「レイナ姉さん……」
「くくく……いいね! いいね! その夢見る感じ!」
まるで笑いが堪えきれなくなったかのようにお喋りな魔星将は体を折った。
「いやー、最高だ。今のお前が泣いて許しを請う姿を想像したたけで笑いが止まんないよ。どうしてやろう……どうしてやろう」
お喋りな魔星将は下卑た笑みを浮かべながら”裸に剥いてから磔に……“、”どこの穴から責めてやろうか”とか何とか言っている。こいつ……マジで酷いな。
”この外道……!“
ミアの怒りが伝わってくる。俺も同感だ、ミア!
「姉妹仲良く俺の玩具にして可愛がってやるよ」
妄想からやっと現実に返って来た魔星将が鎌を構える。下卑た笑みが口元に貼り付いたままだが、そのプレッシャーは相変わらず凄まじい。
「この下郎!」
レイナさんの神速の突進! だが、魔星将は笑みを崩すことなくそれを片手で受け止めた!
「自分から飛び込んでくるとは……俺の責めに期待してるのか?」
残った右手がレイナさんに伸びる。が……
ズバン!
オスクリタが無防備な魔星将の背中を斬り裂く!
(よし、まずは一撃!)
深くはないが、魔星将に傷を負わせた! 俺達も続いて──
「あん? ひっこんでろや!」
ドッカーン!
何をされた訳でもないのにレイアが爆音と共に吹き飛んだ!
「レイア!」
「殺しやしねぇよ。それよりお前は自分の心配をしな!」
魔星将の鎌がレイナさんに迫る! 不味い、カバーを!
「……お前らの相手、俺」
今まで一言も喋らなかった魔星将が俺とリィナの前に立ちはだかる。くっ……
「前鬼、後鬼!」
リィナの〔龍幻術〕によるガーディアンと防壁による攻撃。だが、その前にリィナは思わせぶりに俺に視線を送って──
(そうか!)
分かったぞ、流石リィナだ!
「〔サランストリーム〕!」
眼の前の魔星将は俺が放った聖なる水の奔流に躱すそぶりさえ見せない。そりゃそうだ。確かに狙いはお前じゃない。
バンッ!!!
リィナの前鬼、後鬼が吹き飛ばされたのと俺の〔サランストリーム〕が目標に炸裂したのはほぼ同時だった!
「くっそー、危ねぇ、危ねぇ。何てこと思いつくんだよ、お前らは」
俺の〔サランストリーム〕が狙ったのは奴らが〔糧の門〕と呼んでいた黒い渦巻きと冠だ。
「まあ、お前ら如きに破壊出来るとも思わないが、万が一ということもあるしな」
お喋りな魔星将はいつの間にか黒い渦巻きと冠の前に立ち、〔サランストリーム〕を完全に防御している。
「こいつらは俺がやる。お前は門を守れ」
「分かった」
さっきまで俺とリィナの前にいた魔星将は背を向けて門へと向う。その歩みは牛のようにゆっくりだ。
(けど、これでとりあえず魔星将は一人減った)
リィナの作戦通りだ。まだ劣勢には違いないけど、これでかなり有利になった。
「しっかし、性格の悪い作戦だな。そこのお嬢ちゃんの考えか? あんたにもお仕置きが必要だな」
魔星将はニヤニヤと笑いながらリィナを見つめる。くそっ……気持ち悪い目でリィナをみるな!
「あんたは俺がたっぷり……そしてねっとりと汚してやるからな。その上品な顔が絶望で歪むのが楽しみだよ」
この……許さないぞ、そんなこと!
”な、なんと汚らわしい! リィナ姉様に邪な思いを抱くなど万死に値します!“
“落ち着け、二人共! 戦闘中じゃぞ!”
そ、そうだが。グググ……
(ネアの言う通りだ。冷静に……)
戦う前から心を乱していては勝てるわけがないからな。
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