修羅の道
ヒートアップする因縁の二人の戦い……もう誰にも止められないッ!
荒れ狂う爆風が肌を焼く。直撃こそ免れたけど、なんの影響も受けない距離じゃない。
(レイナもそれなりのダメージを受けたはず……)
けど、レイナならきっと……
ダッ!
爆煙を斬り裂くような斬撃をかわす。今、レイナの剣を受ける訳にはいかない。
「〔風刃〕!」
回避しながらもスキルを放つ。当たるとは思わないけど、かわすにしろ、防御するにしろ、隙が生まれ──
ゴゥ!
レイナの体が黒炎に包まれる。
(〔風刃〕が防がれた!)
〔風刃〕が黒炎で消されることを確認する前にレイアが蹴りを放つ。くっ……しまった!
「ガッ」
スキルを放った直後だから体が満足に動くわけじゃない。けど、何とか急所だけは避けられた。
「満身創痍じゃない、レイア」
肩で息をしながらレイナがそう言ってくる。既に黒炎は消えている。多分あれは自爆技に近い種類のものなのだろう。
「あなたこそ余裕はなさそうだけど」
別に強がりを言ったつもりはない。レイナだってもうボロボロ。傷がない場所を探す方が難しいくらいだ。
「ここまで追い込まれたのは久しぶりよ。けど、次で終わりね」
お互いもう限界なのだ。次の一撃が最後。そして……
(お互い、もう考えてることは筒抜けってことね)
レイナの言葉で確信できた。私はレイナの、レイナには私の考えてることが伝わっている。
「ええ」
だけど、もう終わり。お互いのことはもう分かった。なら、後は決着をつけるだけ。
「放してもらうわよ、真実を」
「真実も何も、あなたの知ってる通りよ」
私達は剣を構えて向き合った。思えば、こんな風に向き合うのは久しぶりね。
※
(フェイ視点)
(……これで最後か)
結局、ここまで全く何もできずに来てしまった。
(計画では初撃だけレイアが一人でってことだったけど……)
でも、オスクリタの秘密に加え、これだけの激戦……タイミングを間違うとレイアの邪魔になる可能性さえあったからな。
「……フェイ兄」
”このままでいいの?“と聞きたげなリィナに俺はしっかりと頷いた。レイアにはリィナのバフさえかかっていない。正真正銘の一騎打ちなのだ。
「俺達は二人の決着に邪魔が入らないようにしよう」
「……分かった」
迷いはあるし、正直心配だ。でも
今手を出してはいけない……そんな気がする。
“泣いても笑っても次で最後じゃな……”
”レイア様……“
厳かな声で呟くネアと祈るようにレイアを見守るミア。レイアを心配する気持ちは二人とも同じだ。
(でも、何だろう。何か忘れてる気がするな……)
こんな大事な場面なのに何か別のことを考えなきゃいけない気がする。何でだ?
“大丈夫です、マスター。マスターは──”
”これ、ミア!“
ん?
“ミア姉様、二人が動く……”
あ、ニアがまた喋った!
※
(レイア視点)
レイナは何かを隠している。いえ……
(何かを一人で抱えてる……)
何かを守るために。いや、違う。多分……
(私を守るために……)
証拠はない。それに私自身信じられない。でも、今までの戦いでそれが分かった。
(だから、後は証明するだけ)
レイナに伝えなきゃ。もう一人で抱えなくても良いんだって。
(そのために……私は今の力を全て込める!)
レイナに対する憎しみ──それは今までとは違い、何故本当のことを言ってくれたという想いになってる──や真実が知りたいという想い、気づけなかった自分に対する不甲斐なさ……ここに来るまでに出会った全てをぶつける。
(行くわよ、レイナ!)
今の私の全力……見せてあげる!
※
(レイナ視点)
(まさかここまで追い込まれるとは……)
私はレイナに殺されて全てを終わりにするつもりだった。そうすれば、全ては闇の中。レイナは何も知ることなく……これ以上傷つくことなく生きていける。
(でも、レイアは強くなった)
何があったのかは分からない。けど、今のレイアは私が知ってた頃とは違う。自分で自分の道を切り開く力と覚悟を持っている。
(なら、選ばせてあげなきゃ行けないのかも)
傷つけたくないから黙ってた。あの子の信じていた世界を壊したくなかったから真実を隠した。でも、あの子が傷ついても前へ……未来へと向かうというのなら……
(勿論私を納得させられる力があれば、だけどね)
真実を知った先の道は修羅の道だ。本当はそれがあの子の運命なのかも知れない。けど、私はあの子をそんな道へと進ませたくない。だから……
(私は全力で抗う。あの子は普通の女の子として生きるんだ!)
それが私の意志で願い。我儘なのかも知れない。けど、それでも譲れない!
(いくわよ、レイア!)
私はこの戦いに勝って、事実ではなく私の願いを真実にする!
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