交差する想い
レイア対レイナ! 姉妹対決の行方は……
「くっ……」
再び飛び退き、距離を取るレイナさん。追撃にはもってこいなタイミングだが、レイアはそれをせず、ただオスクリタを少し下げた。
「……腕を上げたわね」
確かに。手も足も出なかったレイナさん相手にここまで……もう俺より強いんじゃないか?
「もう嘘はいいの」
深い傷を負って尚、余裕のある態度を崩していなかったレイナさんの表情が一瞬凍りつく。何だ? 一体何が……
「何のことかしら」
「私は強くなってない。あなたが弱くなったんでしょ、しかも自ら望んで」
な、何???
「少し考えれば分かることだった。オスクリタの魔力は重力……魔星将と同じってことに」
あっ……
「オスクリタの魔力は元々は貴方のもの何でしょ、レイナ。そして、今オスクリタは貴方の魔星将としての貴方の力……魔王の力を吸い込んでいる」
レイナさんの力を吸い込む!?
(オスクリタの重力の力はクロードさんの魔力を吸ったこともあるし……有り得ない話じゃないか)
だが、魔剣とは言え、使い手の意思なくしてそんなこと……
(だけど、レイアの言う通り、オスクリタの魔力が元々レイナさんのもの。なら有り得なくはない……のか?)
だが、何でそんな自分が不利になるようなことを?
「良くわからないけど、そんなことをして私に何の得があるのかしら?」
「……分からないわ」
「筋が通らないわね」
ばっさりと言い捨てるレイナさんだが……余裕がなさそうに見えるのは気のせいか?
「でも、良いの。これから聞けば良いんだから」
レイアは再びオスクリタを構える。その横顔は何かを決意した人のそれ。迷いなくすべきことを見据えた表情だ。
「お互い剣士なんだから、剣を交えて話しましょう。もし、剣が振るえないって言うならリィナが治療してくれるわよ」
「ふ……ちょっとまぐれ当たりしたのがよほど嬉しいみたいね」
ガッ!
レイナさんの体から黒い炎に似た闘気が溢れ出る! 何てプレッシャーだ!
「いいわ。その思い上がり、正してあげる! つまらない妄想と共にね!」
※
(レイア視点)
そう……全ては嘘だった。
(レイナが義兄を……レナード兄さんを殺したのは本当。そして私の両親が殺されたことも事実。でも、それが全てじゃない)
大切な両親に大好きだった、優しいレナード兄さん。思えば私は色んな大人に見守られて育っていたんだ。
(あの時はそれが全部崩れたような気がしたけど……そんなことなかった)
レイナが結婚すると聞いた時には嬉しいような悲しいような何とも言えない気持ちになったっけ。でも……
(幸せそうなレイナとレナード兄さんを見ているうちに私は二人を応援したくなった)
今までとは別の形になる。でも、誰かが欠けるわけじゃない。在り方が変わるだけで私も、両親も、レナード兄さんもレイナもいる。なら、それは今までと同じ。
(今は無理でもいつかそれはきっと真実になる)
だから、自分の想いに蓋をした。それはいつか別のものになると信じて。別にレイナに遠慮したとかじゃない。自分がそうしたかったのだ。
(レイナは私の大切な人を殺し、私が育った大切な世界を壊した。けど……今なら分かる。何かおかしい)
あの二人の笑顔に嘘はなかった。今まで私はそこに目を背けていたけど、もしかしたら……
「食らいなさい! 〔漆黒門〕!」
レイナの前から五つの重力球が飛んでくる。それらの放つ圧倒的な重力の前には誰も立ってはいられないだろう。
(でも……)
私はその門を難なくくぐり、レイナに向けて剣を振るう。
キン! キン! ガキン!
数合打ち合ってから今度は私から距離を取る。様子を見るように下がったと見せかけて……
ビュッ!
アドンの〔竜剣同化〕からの突進! 流石のレイナも意表を突かれたらしく、傷を負い、大きく体勢を崩す。
(ここっ!)
私はオスクリタの重力を反転して斥力を発生させ、高速の突きを放つ。これなら攻撃直後の崩れた体制でも攻撃出来る!
「舐めないでよね!」
ズン!
突如発生した重力が私の突きから速度を奪う。しまった……
カキンィィ!
レイナは私の手からオスクリタを弾き飛ばす。しまった……無理な体制からの突きだったからオスクリタを十分に握れなかったんだ!
ビュッ!
私とレイナは申し合わせたように距離を取る。私はオスクリタを手に取るために、レイナは体勢を整える時間を手にするために。
(まさかあの状態から魔法を……それに)
交えた剣から感じたレイナの想い、それは”まだ……“という焦りだった。
(追い込まれていることよりも時間を気にしているの……?)
レイナに浴びせた初撃は決して浅くない。それにさっきの突きも……いかに魔星将といえど確かなダメージにはなってるはず。
(まだ……何を待ってるの?)
援軍? いや、それとは違う。レイナの焦りはもっと……
「悠長な攻めね、レイア」
私みたいにレイナも私の考えが分かるのか。そりゃそうよね、姉妹だもの。
「あなたは焦ってるのかしら、レイナ。“焦りは刃を鈍らせる”っておじいちゃんに習わなかった?」
「生憎私は古臭い剣術には興味なくて。戦いの途中に談笑するのもおじいちゃんの教えなのかしら」
「どうかしらね……でも、あなたにはそんな余裕もなさそうね、レイナ」
「減らず口を……良いわ、私の方が優位だってことを教えてあげる!」
レイナの周りに八つの黒い球が現れる。あれは……!?
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