理由は……
色々あってたどり着いた魔都の最下層。そこには……
「ここが魔都の最下層……」
天才的な頭脳を生かし魔都の構造を完璧に把握したリィナに連れてこられた場所は墓地だった。
「魔都が封じているのは死した魔族の魂。恨みを持って亡くなった人も多いからアンデット化しないようにそうしてるんだって」
リーマスで豹炎悪魔を封じていたようにここでは死者の魂を封じているのか。
“まあ、身内がアンデット化するのは避けたいのは理解出来るのじゃ”
”……それを警戒するほど無念な最後を迎えた方がいるというのは悲しいことですね“
ネアとミアはそれぞれ感想を口にしていると……
“……でも静かで……好き”
ぽそりとニアが呟いた。ニアの声は初めて聞いたかも。
”ですね。大切にされているようですし“
“妾はあまり辛気臭い場所は好かんのじゃ”
ニアに共感するミアと対照的にネアはそっぽを向く。こっちも前途多難だな。
(あ、誰かいる……)
ここは魔都の最下層。こんな朝から来てるんな──
シュッ!
気づいた瞬間、人影は消え……
「こんな場所で会うなんて意外ね」
背後から聞こえたのはレイナさんの声!?
「「!!!」」
「心配しないで。ここでやり合う気はないわ」
身を固くする俺達に向けてレイナさんは何も持っていないことを証明するかのように手を振った。
「それにあの子もいないんじゃ、尚更ね」
あの子ってのはレイアのことか。
(レイナさんはレイアと戦いたいのか……?)
レイアがレイナさんと戦いたいのは分かる。が、レイナさんは……どうしてだ?
(師匠はレイナさんが婚約者とレイアの両親を殺したって言ってたけど……そもそも何でそんなことを……)
今目の前にいるレイナさんは残虐非道な魔星将ではなく、誰かの死を悼む普通の人間だ。何も考えずに誰かを殺すような人には思えない。
「……何があったんですか?」
そんなことを考えていたせいだろう。気がつけば俺はこんなことを口走っていた。
「面白いわね、貴方。そんなことを聞いてどうするの?」
「どうもしません。何があっても貴方とレイアの戦いは止められないでしょうし。それに貴男が魔星将ならレイアのことがなくても戦わなくてはならないでしょうし」
「なら、何故……?」
うん、確かに何故だろうな。多分それはきっと……
「全力でレイナさんと戦うために、ですかね。貴方との戦いは避けられない。でも……いや、だからこそ貴方がどんな人なのかは知っておきたい」
本当に戦うべきなのか、だとしたらどんな理由で争わなくてはならないのか。甘いようだが、そこに納得していないと気持ちの踏ん張りが効かないのだ。
「……いいわ、分かった」
レイナさんはそう言うと俺の背後から移動した。
「なら教えてあげる。私がどれだけ救いようのない悪女なのかをね」
※
(魔星将レイナ視点)
「全力でレイナさんと戦うために、ですかね。貴方との戦いは避けられない。でも……いや、だからこそ貴方がどんな人なのかは知っておきたい」
……この男、危険だ。
(このフェイという冒険者は肝が座ってる。やらなきゃいけないと覚悟したらそれを貫く強さがある……)
それはどんな不利な盤面でも覆す可能性を秘めた心の力。でも、今私にとって脅威なのはそこじゃない。
(私の願い……計画に気づかれる可能性がある!)
カンの鋭さ……いや、物事の本質に気づく嗅覚といったものが鋭いのだろう。
(油断なくこっちを観察しているあの娘ばかり警戒していたけど……要注意なのはこっちね)
大事の前の小事。ここは念入りに私が邪悪な存在であることを印象付けなくては……!
「……いいわ、分かった」
私はフェイの背後から移動した。
「なら教えてあげる。私がどれだけ救いようのない悪女なのかをね」
演技をする必要はない。真実を話せば良いんだ。もう少しで真実になる私の作った物語を……
「私はあの子の両親と自分の婚約者を殺した。理由は特にないわ。ただ殺しただけじゃない。亡骸は焼いて灰にして捨て、更には魂も切り刻み、成仏しないように今も手許に置いている。でも、それだけじゃない」
そう。それだけじゃない。
「私の婚約者、つまりレイアの義兄になるはずだった男はレイアの憧れの存在。初恋の相手なのよ」
そう……私はそれを知っていて彼と婚約した。なのに、結婚する前に殺した。それは偽りのない事実。
「つまり、私はレイアの家族を殺し、憧れを奪い、踏みにじった女なの。レイアが……いえ誰から憎まれても当然の人間なのよ!」
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