クラスアップ
師匠との話は続きますが……
「じゃあ、強くなるにはどうしたらいいの? とにかく後二日で出来るだけ強くならないと」
まあ、この言葉だけを聞けば、何を馬鹿な琴をという話だ。強くなるためには考えて、鍛えて……と一朝一夕には行かないのが当たり前たからな。でも……
(とにかく時間がない……)
相手はユベルを一撃で倒す力があるんだ。とにかく出来ることをしていかないと。
「まあ、普通に考えたらクラスアップじゃな。レイアとリィナ嬢はそろそろLvが上限に近いじゃろ」
リィナの『聖女』とレイアの『剣聖』は最上級職でレベルの上限は100だ。ちなみに俺の『パラディンロード』は最上級職の上らしいから上限は……どうなるんだろう?
「クラスアップ……フェイ頼みってこと?」
「それなのじゃが……おそらく託宣の聖印で最上級職以上が出る可能性はかなり低いぞ。レイアも『剣聖』を引くまでにかなり使ったと聞くが、最上級職を超えるクラス、エクストラクラスは引いとらんじゃろ」
確かに。あまり分のいい賭けではないかもしれない。
「フェイがエクストラクラスの『パラディンロード』を引いたのは凄まじく運がいいか、必然だったのじゃろう」
運が良いか、必然か……
(うーん、確かにlukは高かったと思うけど)
いや、師匠の言う運ってパラメーターのことなのか?
「その辺りが分かってから試す方が良いじゃろう。とにかく儂も調べとるから待ってくれ」
「……分かったわ。じゃあ、まずは連携の確認とかお互いの技の共有をしようかしら」
「そうですね」「そうだな」
レイアの言葉に俺とリィナは頷いた。
※
その日の夜。眠りについてから俺は自分の失策に気がついた。
(しまった! オスクリタのこと忘れてた!)
師匠にオスクリタのことを聞くはずだったのに!
”いや、大丈夫だ“
青ざめた顔の俺にオズさんがそう言ってくれた。
“未来が変わり始めている。私には分かる”
未来が変わり始めてる……それって
”どんな未来かはまだ分からない。だが、予知が変わる前兆を感じるのだ“
なるほど。レイアが一人でレイナさんと戦い、敗れたために魔王が復活するという未来は変わり始めてるってことか。
“未来というものは本来不確定なものだからな。これで良いのだ”
”良い未来が来ると分かっていなくても良いと?“
“今は良くとも最期にどうなるかはわからないだろう?”
”確かにの“
“分からないというのはどうにか出来る可能性があるということだ。逆に未来が決まってしまうと悪いことは悪いまま。私の助言のように時空を超えた何かがないと変わりようがないからな”
なるほど。分からないのが良いっていうのは、未来予知能力者としては達観した考え方だな。
”未来は神の領分。オズ様の考えは実に謙虚なものだと思います“
ミアがそう言うと、輪郭だけのオズさんは苦笑した(ように見えた)。
“私は未来が神のものだと考えているわけではないが……まあ、この話はよそう。時間は限られてるしな”
”じゃな“ ”分かりました“
ネアもミアも頷いた。確かに時間は限られている。俺が覚醒したらオズさんとは話が出来ないしな。
“君達のパワーアップについては君達に任せる他はないな。クラスアップについては、今はこの魔都にヒントがあるという情報くらいしか提供出来ない”
魔都にクラスアップするヒントがある!? 十分過ぎる情報だ!
”そして、もう一つの問題、レイナの居場所たが……“
オズさんから語られた場所は……
※
(はっ……)
急に意識が覚醒した。そんな気分だ。
「……何か見落として、いや」
隠された事実がある。そんなことに気付かされたような感じだ。
(何だ……一体何に気づけてないんだ?)
焦れば焦るほど答えが遠ざかる。そんな感覚が一層焦燥感を掻き立てる。
“どうしたんじゃ、マスター。らしくないぞ”
ネアか。
”『出来ることをする』じゃろ? 今出来ることは力をつけることと……“
(レイナの居場所を見つけること、そうだな!)
ネアの言う通りだ。期限は明日。まずは皆と今日の過ごし方を相談だ!
※
朝食を摂りながら相談した結果、レイアは師匠と一緒にクラスアップの方法を探し、オレとリィナがレイナさんが居そうな場所を探すことになった。
(本当はここに詳しいレイアや師匠の方が向いてるんだろうけどな)
まあ、でもレイアにさせるわけにはいかないし、レイアを止められるのも師匠しかいないし、こうなったのだ。
「どうする、フェイ兄?」
探すと言っても魔都は広い。闇雲に歩いても迷うだけだろうな。
”……こ、ここはあえて逆を行って下に行くのはどうでしょうか?“
逆……? 下……?
“探しものは高い場所からといいますが、相手は魔星将。普通の方法は通じません。ですから……”
なるほど、確かに高い場所に登れば魔都の全体像が掴めるな。
”ち、違います、マスター!“
”何やっとんじゃ、ミア“
ん? 今度はネアか。
“マスター。ミアが言いたいのはの、そう考えることはレイナも良くわかっとるじゃろうという話じゃ。じゃから、逆に上から見渡しても分からない場所に行ってみてはどうじゃ”
なるほど……確かに一理あるな。
※
(レイア視点)
フェイ達が出た後、私は道場でオスクリタと向き合った。
(私達は一心同体……でも、私はまだまだオスクリタのことを知らない)
別に知らないことがあってもいいと思ってた。オスクリタはオスクリタ。私は私なんだから。でも……
(おじいちゃんの話を聞いて気づいてしまった。オスクリタの魔力……重力の力って魔星将の魔力と同じよね)
私は何故今までこのことに気づかなかったんだろう。いや、理由ははっきりしてる。
(復讐のことで、強くなることで頭がいっぱいだったからだ……)
力を得ることばかりで力そのものについて考えることをしてこなかったんだ。
(ごめん、オスクリタ)
私はオスクリタに自分の至らなさを謝罪する。本当、我ながら情けない話。
(でも、もしまだ手遅れでないのなら……あなたのことを教えてくれないかしら)
ポゥ……
私の呼びかけに応えてオスクリタが淡い光を放つ。それと共に映像のような物が頭に流れてくる。
(これはオスクリタの……って!)
これは一体……!?
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します!
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