約束
魔物は無事に退治しましたが……
黒血鰐と異形象の解体も俺達だけ……ということは流石になく、しばらくすると大勢魔族の人達が道具を持ってやってきた。
「こ、これは黒血鰐じゃないか」
「しかもこの量! やはりジェイド殿が?」
「待て! 奥に倒れているのは異形象じゃないか!?」
「つい最近出た超高難度の依頼……三年は塩漬けだと思っていたのに」
異形象はやっぱりヤバい魔物なんだな。あの巨体で暴れられたら城跡でも壊されそうだもんな……
「ジェイド殿、ありがとうございます! これで安心して採取ができます」
「いやいや、素材の礼の方が先だろ! 黒血鰐も貴重だが、異形象となるとこれだけで何件家が立つか……」
「いや、儂は何も。そこの二人がやったのじゃ」
師匠が飄々とした顔で俺達のことを指すと、大騒ぎしていた魔族達の注目は一気に俺達へと集まった。
「君達が……? 若いのに大して腕だ」
「ジェイド様が連れてきたんだから只者じゃないとは思っていたが、まさかここまでとは……」
魔族達は俺達と魔物の山を見比べながらやたらと関心している。
「ほれ、解体を急いでくれ。素材が傷んだら骨折り損じゃからな」
「確かに! おい、とりかかるぞ。君達、礼は後で言わせてくれ!」
「何か持っていくからよ、欲しいもや食いたいものがあったら言ってくれ!」
「本当にありがとな!」
そんな声をかけながら魔族達は魔物の山へ向かっていった。一応手伝いを申し出て見たが、“ここからは俺達の仕事だ”の一点張りだった。
(えらい騒ぎになったな……)
いや、喜んで貰えたのは良かったけどさ。何か悪目立ちしたんじゃないか、俺達?
「ふむ。まだ時間はあるが、十分仕事はしたしの。ここは奴らに任せて帰るか」
事の現況たる師匠はそんなことをつぶやきながら歩き始めた。まあ、”師匠は見ていただけですよね?“みたいなツッコミはあって当然かもしれないが、俺はしない。こう見えても師匠との付き合いはそれなりに長いのだ。
※
それから武具の手入れをしたり、少し休息をとったりしていると時間になったので、俺とリィナは約束の場所へと向かった。
「早かったわね」
別に不安があった訳じゃないが、レイアは約束通りに現れた。
(昨日とはちょっと印象が違うな)
張り詰めたような危うさが消え、少しゆとりが出来ているように見える。
「レイアさん!」
リィナがレイアの元に駆け寄り、存在を確かめるようにすがりついた。
「心配したんですよ、レイアさん……」
「ごめん、リィナ。私、自分のことしか見えてなかった」
レイアはそう言いながら優しくリィナの背中を撫でる。
(リィナも表に出さないだけで相当思い詰めてたんだな……無理もないが)
しばらくすると、リィナも気持ちが落ち着いたらしい。そっと体を離した。
「もう無茶はしないで下さいね、レイアさん」
「分かった。リィナに心配かけるようなことはしないわ」
良かった……まあ、これでひとまずは安心だな。
「だけど、今日を入れなければレイナとの対決まで後三日。あいつに勝つ作戦を考えないとね」
確かに。
(冷静になったレイアの言うことは的を得ているな)
やはりバトルとなれば、レイアは頼りになるな。
(やっぱりコンビネーションを考えるしかないか……)
俺もリィナも新技は考えたが、それだけでどうにかなるような相手では決してない。後三日で急激なレベルアップが出来る訳でもないしな……
“………”
ん? ミア?
(どうしたんだ、ミア?)
”これ、ミア!“
”す、すみません。何か手はないかと考え込んでしまって“
別に謝らなくても良いけど……何かミアの様子が変だな。
「短期間でパワーアップするにはコンビネーションか、後は武具だけど……フェイにはミアが、私にはオスクリタがあるから武器はこれ以上の選択肢はないわね」
「ああ」
まあ、リィナの武器を考えても良いかもしれないけどな。杖にはスキルや魔法の威力や効果を上げてくれるものもあるし。
(防具もかなり良い物だしな……これ以上っていうと魔都にもあるかどうか)
今身につけている防具はルーカスさんとクラウディアさんが手配してくれたものでかなりの業物なのだ。
「後はレイナさんの攻撃に対する対策とか……でも」
リィナが言いよどむのも分かる。レイナさんが見せた攻撃といえば、ユベルの〔コラプサーズエンド〕に似た攻撃を事も無げに繰り出したくらい。対策と言っても接近戦で気をつけるくらいしか……
「アイツの攻撃……そう言えば私、気になることがあるのよね」
えっ……何だ?
「おじいちゃんなら分かるかしら。ちょっと面倒くさいけど、家に帰らないと行けないわね」
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