出会い
聖王国への巡礼に向かうアバロン。そんな彼が出会ったのは……
そんなこんなで不精不精聖王国へ向かうことになったのだが……
(何だこりゃ……)
聖王国へ行くにはリーマスに戻ってから陸路で行くしかないので、クロムウェルの港へ戻ったのだが……眼の前の光景は俺の思ったものと大分違った。
(もはや廃墟じゃねーか)
あれだけ賑わっていた港は閑散として、人影があまりない。一体どうしたんだ?
(いや、人はいるにはいるか)
最初は変化に驚いたせいで廃墟とか言ったが、それは流石に言い過ぎだ。まあ、静かな漁村くらいのイメージだ。
(それにしても……)
港には漁をするための小船しかない。くそ、これじゃリーマスどころかオルタシュまで行くことさえ出来ねぇぞ!
「おい、どこかに船はないか?」
近くで海をぼんやりと眺めていた老人にそう尋ねると……
「船? あんた、ブリゲイド大陸の外にいくつもりかい?」
当たり前だろうが。ここは港だろ?
(“クロムウェルはブリゲイド大陸の玄関口”って誰も彼も言ってたじゃねーか!)
そう言えば、こう言う老人は前のクロムウェルでは見なかったな。居たのは血気盛んな若者や気の荒い男ばかりだったが……
「まあ、そんな顔をしなさんな。クロムウェルがブリゲイド大陸の玄関口だったのは少し前までじゃ。今はもっと早く安全な航路があるからの」
なにぃ?
「男爵航路とか言ったか? 今じゃあのギアス荒地から船が出とるんじゃと。昔、そんな話をひいじさんから聞いたことがあったが、まさかそれが現実になるとの」
……そういや、そんな話をドレイクがしていたっけな。
(別に忘れてた訳じゃないが……)
ギアス荒地の港には当然、あいつらもいる。あえて遠いクロムウェルを選んだつもりだったのだが……
(ここまでの荒れ具合は予想してなかったな……)
かつての活気が見る影もない……
「賑わってたのに残念だったな」
それは思いやりというより独り言に近い一言。が、それに対する老人の返答は予想外のものだった。
「いや? 別に困らんぞ。賑やかなのが、好きなやつは新しい港へ行けばいい。最もあっちではちと勝手が違うらしいがの」
ふぅん、そんなもんか。
「まあ、困っとる奴がいないわけじゃないが……自業自得じゃし」
ん?
(なんだ、あいつは……)
爺さんの視線の先には酒瓶に囲まれながら路上で寝ている男が一人……
「何でも男爵航路のせいで商売が駄目になったらしいぞ。まあ、今まで散々威張っとったから丁度いいんじゃないかの?」
そう言うとジジイは歯の抜けた顔で笑いながらその場を立ち去った。
(哀れな奴だな……)
街を出ようと踵を返したその時……
「あんた……船を探してるんじゃないか?」
さっきまで寝ていた男が起き上がり、俺に話しかけてきた!
*
(ニーナをいじめていた青嵐団の男視点)
何故こうなった………
こんなはずじゃなかったのに……
俺の頭の中はそればかり。だって、そうだろ? 俺の計画は完璧だったんだから。
(獣人から安く仕入れた岩塩をオルタシュや他の街で高く売り、獣人には生活物資を高く売る……完璧じゃないか)
この計画が崩れたのは獣人から岩塩を買い取る奴らが他に出てきたことだ。
(アリステッド男爵とか言う冒険者……一体何者なんだ?)
思ったように利益が上がらないと思ったら、あっという間に岩塩の持ち込み量も生活物資の販売量も激減。他の業者は焦って岩塩の買い取り価格を上げたが、なんの効果もなかった。
(そうこうしているうちに奴らは港まで……)
クロムウェルは他の大陸とブリゲイド大陸の貿易で潤っていた街だ。それがそっくりそのまま無くなってしまったのだ……
(おかげで青嵐団は壊滅……他のところもろともな……)
他の奴らはこの街に見切りをつけ、ブリゲイド大陸を出たり、他の街へ行ったり……だが俺は諦めきれなかった。だって、そうだろ? あと一歩……後一步だったんだ!
(俺は一体どうしたら……)
自慢じゃないが、俺は悪知恵が回る。が、大きな方針を決めるのは得意じゃない。細かなリスクが見えるから、どの道を選んだらいいか分からなくなっちまうんだ。
(……あのユベルとかいう謎の男とも連絡が取れなくなっちまったし)
少し前まではユベルという謎の男が指示をくれた。素性は確かだが、頭は切れる。こいつについていけば間違いないと確信させてくれる力の持ち主だったんだが……
(何だ? 話し声?)
酒でぼんやりした目と耳に何やら会話が聞こえてくる。一体何だ……?
「%§&#℃※」
「@∑≧¡¡」
やはり会話は聞き取れない。顔も良く分からない。が、男が踵を返した瞬間、俺の濁った目の焦点があった!
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します! ただ、テンションが高まったら早まるかも! その時はご容赦頂きたいm(_ _)m
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