同胞
戦いの行方は……
俺はネアの言葉に従い、ハリネズミのようになったユベルから距離をとる。よく見れば、頭部はいつの間にかフルフェイスの兜で覆われており、そこからも無数の針が伸びている。
(いつの間に兜が!?)
ネアの炎による攻撃の最中だろうか。あの鎧は一体……
「どうした? 攻撃はもう終わりか?」
くそ……奴はまだまだ余裕だな。
“マスター……恐らくあやつの鎧は妾の同胞だ”
(なっ!)
“あの魔星将は二つのものを混ぜ合わせる力があるのじゃろう。その力で鎧と妾の同胞を一つにしているのじゃと思う”
“なるほど。以前戦った不審な魔物やレイア様を壁に拘束したのもその力で……”
くそっ……ってことは最初から攻撃は効いてない。しかも、それどころかネアの仲間にダメージを与えてたってことか。
“今は気にするな、マスター。ダメージは鎧の方に行っているのかもしれんし、大体今はあやつの意識を感じない”
確かにネアの言う通りだ。今すべきことを考えないと……!
(まずは鎧からネアの仲間を分離するか、鎧を脱がせないといけないな)
でないと攻撃することさえ出来ない。
“私のギフトで境界を引けば分離は可能です。ただ、そのためには意識を戻さないと……”
“上手くいくか分からないが、妾が呼びかけてみよう”
(俺は何をしたらいいかな……)
“マスターは攻撃を!“
(だ、大丈夫なのか?)
”攻撃の瞬間、私はギフトを使って境界に干渉します。そうすればネアの声はより届きやすくなります”
“それに叩かれるのも燃える……じゃなくて、刺激が加わった方が意識も戻りやすいじゃろ。今のあやつは寝ているに等しい。鎧の変形がワンテンポ遅れているのがその証拠じゃ”
そうか……正直戸惑いがないわけじゃないか、二人がそう言うならやってみるか。
「どうした、男爵。打つ手なしか」
ここまでの会話は念話で行っているからほぼ一瞬。ユベルはゆっくりと距離を詰めてくる。それと同時に鎧も最初の姿へと戻っていく。
「変わった鎧じゃないか。流石にびっくりしたよ」
俺もゆっくりとやつに向かって歩く。会話は時間稼ぎだ。
「拾い物の使い道を最近思いついてな。まあ、それは男爵。君のおかげだ」
「つまり、私の真似と言う訳だ。人間を見下す割にその真似をするとはなかなか節操がないな」
「………口の減らない奴め!」
ダッ!
ユベルが地面を蹴り、俺に飛びかかる! 来たな!
カン! ドン!
俺は黒い籠手から伸ばした刃を聖剣で払い除けると同時にユベルの顔面に盾を叩きつける。
(〔デュアシールドカウンター〕!)
確かな手応え……だが、それも一瞬で消えてしまう。それもそのはず。既にヤツの頭部は黒い兜に覆われている!
“こら! そんな奴を守ってどうするのじゃ!”
ネアの言葉は呼びかけというより愚痴だろう。だが……
“守る……それが私の役割”
これはネアの仲間の声か?
“役割じゃと? それを果たしてそなたは何を得るのじゃ?”
ネアの叫びと共に俺の突きが突き刺さる。本来ならかわされていてもおかしくなかったのだが……
ザッ!
ワンテンポ遅れてユベルが後退する。一体何が!?
「くそ、馬鹿女! 何で動きを止めてるんだ!」
……もしかして、ネアの言葉で鎧と融合している子の動きが止まったのか?
(ネアの仲間の意識がこちらへ向けば、ユベルの動きを止められる……)
その隙に攻撃出来れば、活路が見いだせるか……?
「良い作戦だ、アリステッド男爵!」
その言葉と共に現れたのはクロードさんだ。
(フェイ兄、遅くなってゴメン! クロードさんにもバフをかけたけど……気をつけて!)
心強い! これで攻め方のバリエーションも広がる!
「ふん、役立たずの龍人が一人加わったところでどうだというんだ!」
「一人じゃないぞ」
一人じゃない……?
「お前は人質のために我が同胞をこの大地の裂け目に封印したのだろうが……それは失敗だったな」
「貴様何を言──」
「むん、〔龍活性〕!」
クロードさんがスキルを発動した瞬間、無数の龍人達が結界の中に現れた!
(あれ、龍人達の体は透けてるぞ……これは幻体か)
よく考えれば、体は封印されてるんだから当たり前か。
「この大地の裂け目は元々我々の聖地! 〔龍活性〕を使えばこんなことも出来る! さらに……」
……! 力が!
(やはり君にも効果があったか。恐らく聖獣様から授かったスキルの影響だろうな)
有り難い! これなら!
「踏みつけてきた者達の怒りを知れ、魔星将!」
龍人達とクロードさんがユベルに向かって突進した!
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