互いの奥の手
卑怯なユベルの作戦に為すすべはあるのか!?
ビィィン!
ユベルの手が禍々しい光を発すると、エーデルローズ(レイア)の体が壁の中に沈んでいく!
「これでお前に出来ることは俺と男爵の戦いを見ることだけ……ククク、いいざまだな」
「ユベル、貴様ッ!」
ユベルの卑劣な行動に怒ったオレは作戦も忘れて突進してしまう!
“マスター!“
「ハッ……」
ドガッ! ガキィン!
冷静さを失った俺を鼻で笑いながらユベルはカウンターを繰り出す。が、その一撃はネアが瞬時に具現化し、受け止めてくれた。
ザザザッ!
受け止めたとは言え、その衝撃で俺は再び元の位置まで押し戻される。やはり、コイツは無茶苦茶強い。力押しで勝てる相手じゃないな。
(すまない、ネア。ありがとう)
“良い。貸しじゃぞ”
そう言って笑うネアの顔が脳裏をよぎる。ああ、これは借りだ。気を引き締めないとな!
“来ます!”
ミアの警告と共にユベルが突進してきる! 凄いスピード! やはりコイツとはパラメーターに開きがあり過ぎる!
(だが、これで……)
ユベルの拳が俺に触れる瞬間、俺とユベルの体はまばゆい光に包まれた!
*
ザザザッ!
攻撃の瞬間にリィナの〔龍幻術〕が発動したおかげで、ユベルの攻撃は速度、威力共に緩み、俺はネアの盾での防御に成功! だが、その場で踏みとどまることは出来ず、再び後退させられた。
「何だ、ここは!」
「私が用意した特等石だよ、ユベル」
正確にはリィナだが、コイツが怒りの矛先をリィナに向けたら困るからな。
(〔龍幻術〕により創り出した幻術空間……ここなら周りに被害が及ぶことは少ないはず)
要は竜人族の試練の時と同じだ。詳しいことは分からないが。あ、でも違いはある。ここにいるのはユベルと俺達だけだ。
“流石リィナ姉様……これほどの結界を即席で!”
“リーマスの結界にも似とるな。やるのお”
二人も驚いているようだ。だが、今は──
(よし、二人共行くぞ!)
“ハイっ!”
“おう!”
俺は〔アイテムボックス+〕の中にあるレベル封じの宝玉を操作した。
(リリース!)
これは一度だけの切り札。普段レベル封じの宝玉が封じていた力を解放し、俺に戻すことが出来る。つまり、封じていた力の強さと時間に比例して俺のパラメーターが上昇するのだ!
「行くぞ、ユベル!」
俺の動きはその言葉さえ置き去りにする! 俺は周りを見回すユベルへと聖剣を振り下──
ガキィン!
ユベルは瞬時に黒い籠手のようなもので覆われた腕で俺の攻撃を防御する。だが、ここで終わりじゃない!
「〔サランストリーム〕!」
零距離での〔サランストリーム〕が炸裂! 魔を滅する力があるこのスキルなら効果があるはず!
「ぐっ……調子にのるなよ」
くそ、まだ余裕がありそうだな……
“マスター! 魔星将の体が!”
ミアに言われて気づいたが、いつの間にかヤツの体は黒い鎧で覆われている。〔サランストリーム〕は最初の一瞬しか当たっていないようだ。
(とは言え、まだまだパラメーターに差があるか……)
不意をついたから何か戦いっぽくなってるが、俺の攻撃がユベルに通じてないことには変わりが無い。
(なら、やっぱりあれを使うか。ネア、頼む!)
“まかせろなのじゃ!”
俺は飛び退き、ユベルから距離を取る。が、その間盾からは炎が吹き出し、ヤツの動きを封じる。
“鎧はムリでもむき出しの部分は消し炭じゃ!”
あながち不可能ではないと思うくらいの熱量だ。やるな、ネア!
(……っと、早くスキルを発動させるか)
俺は心の中でまだ名前も知らないギアス荒地の聖獣に祈りをささげ、与えられたスキルを発動した。
「〔聖樹の加護〕!」
すると、みるみる間に体中に力が満ちるのが分かる。このスキルは一定時間、俺のパラメーターを上げてくれるスキルなのだ。
“〔真紫天使の加護〕!”
リィナのバフ。しかもこれはクラウディアさんが豹炎悪魔との戦いで使っていたスキル……
(凄い……力が湧いてくる)
これならユベルとも戦える!
(行くぞ!)
炎を止めた瞬間に斬りかかる! だが、黒い鎧は全身を覆っているし、頭部は腕でガードしている……
(鎧の上からじゃ刀身が痛むな……)
振り下ろす瞬間、俺は躊躇した。が……
“大丈夫です! マスター、攻撃を!”
ミアの声に押されて俺は聖剣を振るう。すると倒れこそしないが、その衝撃でユベルの体がニ、三メートル程後退した。
(これなら!)
俺はさらなる追撃を試みるが……
ズン! ズン! ズン!
突然ユベルの体から、いや黒い鎧から鋭い槍が伸びてくる!
“この力……まさか! 一旦後退じゃ、マスター!”
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