下劣……
皆の連携攻撃でユベルに深手を負わせたか……!?
「くっ……お前らっ!」
なっ、効いてないのか!?
(いや、そんなはずは……)
だが、起き上がるユベルの動作に淀みはないし、声色も平然としたもの。演技か?……いや
「話を遮って攻撃とか……蛮族め! まあ、困るのはお前らだから構わないが」
困るのは俺達だと?
(ハッタリか? どちらにしろ様子を見るか)
レイアにやリィナ、クロードさんも同じ考えらしく、警戒しながらも様子を見る姿勢を見せる。そんな俺達を見てユベルは満足そうに頷いた。
「そうそう。初めからそうしてれば良いんだよ」
「煩いわね……早く話しなさいよ」
レイアが苛立った声を上げるのは、俺達を嘲るようなヤツの態度だけじゃないだろう。
「威勢がいいな、女。じゃあ、まずお前がぶつかった壁から見てみろ……別に不意打ちなんてしねーから、早くみろよ」
最後の言葉はユベルから中々目を外そうとしないレイアに対する言葉だが……中々むちゃなことを言うな。
「フェイ!」
「分かってる」
馬鹿正直に敵から目を外すなんて有り得ない。オレが見て、レイアに伝えたらいいだけの話だ。
(ただの岩……ん?)
光量が高いとは言えないから最初は気づいてなかったが、何かキラッと……
(岩じゃなくて水晶か?)
水晶……いや、まさか!
「気づいたか? この洞窟は水晶で覆われてある。勿論ただの水晶じゃない、龍人族を封じた水晶だ!
「えっ……」「!!!」「何だと!?」
くそっ、それじゃ……
「お前らの足元にあるものもそうだ。下手に戦ったら……どうなるのか分かるよな?」
これじゃ効果範囲が広いスキルは使えない……くそっ、かなり戦い方が限られるな!
「お前ら、今自分達の攻撃手段の心配をしたろ? 浅はかだよな……俺の攻撃とお前らの攻撃……どっちが強いと思う?」
何ぃ!?
ブン!
何気なくユベルがレイアに向かって拳を突きだす。スキルどころか何の仕掛けもない達だの攻撃……レイアならかわすどころか、カウンターを狙うことさえ簡単な一撃だ。
(だけど、壁に当たれば……!)
ドカッ!
まともに受けたレイアが吹き飛ぶ。相手は魔星将、何気ない攻撃でもとんでもない威力だ!
(いや、それよりも……)
攻撃どころか回避も危ない。〔竜剣同化〕で強化されているレイアを吹き飛ばすくらいの威力の攻撃が当たれば、間違いなく壁は破損する。そうしたら……
(理想は攻撃の隙を与えずにアイツを攻撃し続けることだが……)
魔星将相手にそんなことが出来るはずがない。
「……フェイ兄、あの」
それだけで俺はリィナが何を言わんとしたかが分かった。同時にそれを躊躇している理由も。
「やってくれ。俺がアイツを引きつける」
「……分かった」
ユベルは抵抗出来ないレイアに執拗に攻撃を加えている。防御はしているため、致命傷を浴びることはないと思うが……くそっ
“遊んどるな……下劣な奴め”
“許せません! マスター!”
ああ、勿論だ! アイツは俺が倒す!
「〔励声叱咤〕!」
相手のヘイトを集めるスキル。これが奴に効くとは思えないが……
「あ? 今度はお前がボコられてぇのか?」
ボカッ!
ユベルはレイアを叩き伏せると俺の方を向いた。
(レイア……)
床に伏せたままのレイアが心配だが……今はコイツだ。
「女を庇うとか、カッコつけは衣装だけじゃねーみたいだな」
「そっちこそ、もう少し外聞を気にしたほうがいいな。抵抗出来ない女性を一方的に殴るなんてあまりにも品がないな」
ジーナさんから受けたアリステッド男爵の心得……いつも超然と。
(アリステッド男爵は静かに怒る……静かにだ)
本当は今すぐ突っ込みたいが、それは駄目だ。ユベルがこっちに来ないとリィナの作戦が使えない。
「調子に乗り上がって……お前の美的センスだけは買ってやってたって言うのによ。まあ、いい。なら、お前からやってやるか」
ユベルはレイアに背を向け、俺の方を向く。すると、レイアが音もなく立ち上がり……
ブン! ガシィッ!
隙をついた一閃を難なく躱したユベルはレイアの首を掴み、彼女を宙吊りに! あれでは息が──
「まだ仕置きが足らないか……まあいい、楽しみはゆっくりたっぷりとやる方がいいしな」
「レ……エーデルローズを離せ! 下郎!」
くそっ、コイツどこまで……
「言われずとも離すさ。コイツには特等席を用意してやるだけさ」
特等席だと!?
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