決意と誓い
ついに決着……そして、父子の永遠の別れ。
ぐすっ、ノンストレスは何処に……
「それで良い……それで良いのだ」
ヴィクトーさんは立ち上がると、クロードさんの肩を優しく叩いた。
「責務を果たそうとする気持ちは分かる。だが、そなたはもっと自分の感情を大切にしても良い。案ずるな、お前のことは私がいつも見守っているのだから」
「……父上」
ヴィクトーさんの体が虹色の光を放つ。それと共に、まるで夢から覚めるときのように目の前の景色が崩れ始め──
※
(ここは……元の)
気がつけば、俺達は元の部屋に戻っていた。
(相変わらずチリ一つないな……)
高度な保護魔法がかけられた以外は何の変哲もない部──あれ!?
(あんなもの、あったっけ?)
部屋の真ん中に立派な台座がある。試練に挑んだときはあんなものはなかったはずだけど……
「フム、恐らくあれが砂漠の紅薔薇だろう。確認して見よう。フェイ殿、頼めるか?」
「え……あ、はい」
今回俺は何もしてないし、俺でいいのかという疑問はあるが……
(……断る理由もないか)
俺が台座の前に移動して箱を開けると、中には薔薇の形をした赤い石が整然と並んでいた。
(一応本物か確認するか)
〔超鑑定〕!
◆◆◆
砂漠の紅薔薇
聖域となった土地に出来る鉱石の一つ。武
具に使えるほどの硬度はないが、アクセサリ
ーに加工すると様々な効果を付与出来る素
材。用途によってはダンジョンコアの代替品
になり得る。
◆◆◆
おおっ、本物だ!
(用途によってはダンジョンコアの代替品になり得る……もしかしたらレベル封じの宝玉を作れたりするかも)
多分、魔将星戦ではレベル封じの宝玉の真の力を使うことになる。真の力を開放すると最悪壊れる可能性があると師匠に言われてるし、これで作れるなら嬉しいな。
“ここにある砂漠の紅薔薇は最高品質のものですから、腕の良い職人であれば恐らく可能でしょう”
良かった。まあ、聖獣復活のために全部使っちゃうかも知れないけどな。
“そんなことはないじゃろ。一つで十分なはずじゃ。これだけあるのは単に様々な用途がある鉱物だからじゃろ”
そうなのか。まあ、何にせよ、聖獣の復活が最優先だな。
「クロードさん、俺のスキルでも確認が取れました」
「ありがとう。じゃあ、近くの拠点に戻るとするか」
※
拠点へ戻った次の日、ごくひっそりと新たな聖獣を迎える儀式が行われた。本当は大々的に行いたいところなんだけど、魔星将に目をつけられるかもしれないしな。
“──天よりの御使い、我らの願いに応え降臨し賜え”
メルヴィルさんが厳かに唱える祝詞を聞くのは俺の他にはリィナ、レイア、クロードさん、グレゴリーさんのみ。ちなみにミアは人化して俺の傍にいる。
ピィィィン!
台座に備えた砂漠の紅薔薇が聖なる光を放つ。それはゆっくりと形を変え……
(え! もしかして木?)
砂漠の紅薔薇を入れていた皿にはいつの間にか土が満ちており、小さな鉢植えのようになっている。
(……! この感じ、間違いなく聖獣だ)
聖獣って言うくらいだから動物の姿をしてるのかと思ったけど、そうとも限らないみたいだな。
”………“
ん、何か喋りかけてくれてるのか? 良く聞き取れないな。
“まだ降臨したてなのと、聖域に力が足りないためでしょう。感謝の気持ちと魔星将打倒への意欲を語られたようです”
(メルヴィルさんは会話出来るのですか?)
”いえ……なんとなくのニュアンスが感じ取れる程度です“
そっか……じゃあ、名前とかは分からないな。
(でも、確かにギアス荒地の復興はまだまだだもんな)
最初に実験した第一拠点でさえ土地を豊かにするために植えたバルシャの芽が出始めたレベル。まだまだこれからなのだ。
(……! 何だ?)
何か暖かな物が体に……これはスキルか?
“フェイ様に加護を捧げたいと。大した力ではないと恐縮されていますが”
(とんでもない!)
気持ちだけで十分だ。でも、どうやって伝えたら良いんだろう?
”……言葉にすれば大丈夫ですよ、マスター“
ミアが優しげな眼差しでこちらを見ながらそう教えてくれた。ありがとう、ミア。
「聖獣様、良くぞ私達の願いに応えて下さいました。ありがとうございます」
聖獣の復活と聖域の復興、それによる獣人達が住みよい世界になることは俺の願い。だから、まずは感謝を。
「そのご厚意に応えるためにも、必ずや魔星将を倒し、この地を元に戻してみせます!」
聖獣に向かってそう誓う。まあ、勿論聖獣からの答えはないけれど……
「勿論!」
「アドンの分も魔星将をぶん殴ってやるわ!」「ああ! 今度こそ負けん!」
「全力でサポートしますぞ!」
皆のテンションはだだ上がりだ! よし、この意気なら行ける!
読んで頂きありがとうございました! 次話は来週月曜日の朝7時に投稿します! ただ、テンションが高まったら早まるかも! その時はご容赦頂きたいm(_ _)m
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