真の姿と最後の試練
リュドミーラさんの試練も無事クリア。いよいよ現れる最後の相手とは……
「リィナ、良かった!」
「マスター! ご無事でしたか!」
リィナと共に幻術の世界から出ると、レイアとミアが口々に声をかけてくる。どうもかなり心配をかけていたらしいな……
「大事よ、ミア。レイアさんもごめんなさい、心配をかけました」
リィナはすがりついて離れないミアをあやしたり、怪我がないかと心配するレイアに返答したりと忙しそうだ。
(大丈夫そうだな……)
さっきは急に抱きついてきたかと思えば赤くなって急に離れたりと忙しそうだったけど……
(そういや、リュドミーラさんはリィナに何か言ってたな)
聞き取れなかったけど……まあ、いいか
「うちのば──いや、リュドミーラ様のせいで済まないな」
クロードさんが申し訳無さそうな顔で声をかけて来てくれたのは、修行が厳しすぎないかと心配してくれてたんだろうな。
「いえ、幻術の危険性を考えてのものだと思いますので。それにリィナは無事やり遂げられましたから」
幻術に溺れて現実を見失ってはいけない……リュドミーラさんの話はもっともだ。そして、幻術を習得する前にその資質を確かめるというのがとても大切だというのは何となくわかる。
「全く君は……いや君達はというべきかな」
「……?」
クロードさんはやたらと感心した感じだが、どうしたんだろう?
「よくやり遂げましたね、リィナ」
後ろから聞こえたリュドミーラさんの声に振り返ると……え!?
(誰だ? リュドミーラさんじゃない……)
そこにはいたのは七十代くらいのおばあちゃん。リュドミーラさんは一体……待てよ?
「リュドミーラさん、それが本当のお姿ですか?」
リィナがそう言うと、リュドミーラさんは楽しそうに笑った。
「そう。本当はこんなしわくちゃのおばあちゃん。幻術って凄いじゃろ?」
喋り方まで変わってるのは何でだ? まあ、今の姿にはあってるけど……
「でも、リュドミーラ様の美しさはごまかせませんね」
「おかしな娘じゃな、リィナは」
リュドミーラさんはそう言って笑うが、リィナの言う事も分かる気がする。
(確かに今の姿でも綺麗な人だな)
変な話だが、あまり印象自体は変わらないというか……
「幻術は便利な力じゃが、使い方次第では術者を滅ぼす力にもなる。忘れないようにな」
「はい!」
「ではそなたに我が一族秘伝の幻術、龍幻術のスキルを授ける……」
その瞬間、虹色の光が広がった!
(これはアドンさんの時と同じ……)
光は次第に強まり、俺達を包み込んで………
※
(………)
気がつくと眼の前の景色が一変していた。
(アドンさんの時と同じだな……)
アドンさんのときはコロシアム、リュドミーラさんの時は神殿だった。そして、何と今度は大自然だ……
(どこかの山頂って感じだな)
周りを見れば豊かな森が広がっているのは勿論、下を見ても見渡す限り緑が広がっている。
「これは……聖域」
ポツリとクロードさんが呟く。えっ、まさか……
(ここは昔のギアス荒地なのか!)
今の姿とは似ても似つかない……
「確かここが最後なのよね」
俺が言葉を失っていると、レイアはマイペースにそんな言葉を口にした。まあ、レイアらしいが……
「ああ。そして、ここにはおそらく……」
クロードさんが何か言おうとしたその時、森の奥から誰かがこちらへとやってきた。
(龍人……しかも……)
俺も大分龍人には慣れてきたから分かる。今、姿を見せた龍人はクロードさんと瓜二つと言っても良いくらいだ。
「よく来たな、我が息子よ」
「父上、お久しぶりです」
やっぱりクロードさんのお父さんだったのか!
「大体の経緯は把握している。随分苦労をかけたな」
「いえっ……面目ありません」
クロードさんが項垂れると、クロードさんのお父さんは首を振った。
「お主は良くやった。敵が強大すぎたのじゃ。魔将星の力がまさかここまで高まっていようとは……龍人族がまだ滅んでいないのはお主のお陰じゃ」
「………勿体ないお言葉」
クロードさんが肩を震わせている。多分、いつも凄まじい責任を感じて生きてるんだろうな。
(何か力になれたら良いな……)
いや、力にならないとな! 俺にだって何かできるはずだ!
「積もる話もあるのだが、残念ながら生憎時間がない。私、ヴィクトーの試練は誰が受けてくれるのかな?」
クロードさんのお父さん、ヴィクトーさんはそう言うと、俺達を見回した。
(これが最後の試練……レイア、リィナとくれば当然次は俺だな!)
俺は覚悟を決めて前に出た!
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