もう一人の自分
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もし、相手がもう一人の自分なら……リィナの考えは!?
(もし、この子がもう一人の私なら……)
そう考えると胸が締め付けられるような思いになる。泣いても喚いても気づいてもらえず、ただただ時が過ぎていくだけなんて、あまりに酷い。
(もしかしてこんなふうにひたすら攻撃し続けるのは私がずっと無視し続けてるから……?)
もしそうだとしたら、彼女の次の行動は……
「……こうなったら、最後の切り札を見せてあげる」
私にそっくりな子──いや、もう一人の私がそういうと、彼女の頭の上に黒い雷が渦巻きながら集まっていく。次第に球状になり、どんどん大きさを増すそれはまたたく間に凄まじい大きさにまで成長した。
「もうかわすことも防ぐことも出来ないわよ!」
やっぱり!
(広範囲を対象にした高威力の攻撃……私が彼女ならそうする)
だとしたら私がすべきことは……多分一つしかない。
(これは賭け。失敗すれば最悪死ぬかも)
もっと他の方法もあるだろう。例えば冷静に話し合うとか、謝罪するとかだ。普段の私ならそうするだろう。でも……
(この子が私なら……多分どれも不正解)
この子は私と話したいんじゃないし、ましてや謝って欲しいわけじゃないんだ。
(この子(私)の願いは──)
私はありったけのバフを自分にかけ、彼女の元へと走った!
「いまさら特攻? 無駄よ! 食らいなさい!」
彼女がそう叫ぶと同時に黒い雷球が膨張し、次の瞬間には豆粒のように小さくなる。そして……
バリバリバリッ!
荒れ狂う猛牛を思わせるような勢いで黒い雷が辺りを蹂躙する。それは当然彼女に向かう私にも襲いかかる! が……
(い、痛くない!?)
正直かなりのダメージを覚悟したのだが……
「なっ!」
だけど、私は止まらない。スピードを緩めず走り、彼女に手を伸ばす……
「っ!」
力を使い果たしたのだろうか。彼女は身を固めて立ち尽くし、手を伸ばす私から逃げることさえしない。
(馬鹿ね……)
そう、馬鹿だ。私もあなたも馬鹿だった。だって、自分自身から逃げられる訳がないのに。
ギュッ!
私は彼女を──いや、もう一人の私をしっかりと抱きしめた。
「長い間、気づかないふりをしてごめんね」
「………」
一筋の涙が彼女の頬から流れ落ちる。ああ、私、なんて悪いことをしたんだろう………
「私、お父さんとお母さんがいなくなってから他の人から嫌われるのが怖かったんだと思う……一人になるのが嫌だったから」
誰よりフェイ兄に嫌われるのが嫌だった。
いつも優しく励ましてくれるフェイ兄、
強くなるために努力を愛しまないフェイ兄、
そして、そんな自分の良いところに全く無頓着なフェイ兄。
フェイ兄は私にとって太陽にも等しい存在なのだ。
「でも、それじゃあフェイ兄とは対等になれない。フェイ兄に頼ってばかりの子どもの私と何も変わらない……」
いつまでもフェイ兄の大事な妹だというだけでは嫌だ。私はフェイ兄の隣に立てる大人の女性になりたい。
「私はもういらないの………?」
私は感情のこもらぬ声でそう呟く彼女の体をさらに強く抱きしめた。
「馬鹿ね……仕方ないか。あなたは私だもんね」
そうだ。そんなふうに誰かの役に立たないと愛してもらえないんじゃないかと思う心こそが不安の源泉。そして、私が大人になれていない原因なのだ。
(だから、私は……)
私はフェイ兄のようになりたい。そのためには……
「一緒に行きましょう。あなたの力も私には必要なの」
出来ることを生かし、全ての力を最大限に発揮させるのがフェイ兄のやり方。だったら私だってそうして見せる。
「でも、私はなんの役にも立たない。迷惑をかけるだけ……」
「それでもいいの。それでもいいから私はあなたと一緒に生きていたい」
「どうして……」
それだけ言うと彼女はうなだれる。だが、言葉にならなかったその先も私には何となく分かる気がした。
「だって、フェイ兄は凄いのよ。そんな人と対等になるためには自分の中で喧嘩してる場合じゃないもの」
そうだ。彼女も私の力を、私自身の一部なんだ。なら、彼女にも協力して貰わないと本当のいみでの全力は発揮出来ない。
「……」
「それに私はなんだかあなたのことが好きになってきちゃったし」
いつも強がって虚勢を張る女の子って可愛いくない気が……たまには素直に不安を表に出した方が絶対可愛い。
「戻っておいで」
「うん!」
そういうと彼女は私の体に手を伸ばす。おたがいに抱きしめ合うと鼻先まで互いの顔が近づいていく。
スッ……
目を閉じた彼女が唇と唇を合わせようと顔を傾ける。あらがわずにじっとしていると唇が触れ合う寸前で彼女の体は消え去った。
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