戦う聖女
リュドミーラさんに自分の想いを告げたリィナ。さてどうなるか……
そして、フェイはリィナを止められるのか!?
「貴方の気持ちは分かりました。私、貴方のことが気に入りましたよ、リィナ」
「っ!!!」
クロードさんのリアクションは驚き……なのか?
(ここに来てからクロードさんの見たことないない表情ばかり見るな……)
まあ、ここで会う人の凄さを一番よく分かってるから……なのか?
「では試練を始めたいのですが……お兄様もよろしいですか?」
クスクスと笑いながらリュドミーラさんが聞いてくるのは本気で俺の許可を取りたいのではないからなんだろう。
(気持ちは分かる。けど……)
足元に脅威を抱えていたリーマスの住民にとって、平和とは皆で勝ち取るもの。だから、リーマスの住民は誰もが街の平和に貢献できる力を持とうとするのが、当たり前なのだ。そう言う意味では、リィナの考えは理解できるのだが……
(でも……それでも……)
危険な目には遭って欲しくないという思いは消えない。ブリゲイド大陸まで連れてきたのも、いざとなれば自分がリィナの盾になれたからだ。
(だけど、試練となれば手出しが出来ない……)
それはつまり、俺がリィナを守ってやれないということだ。到底納得出来るはずもない。
「……」
「想いは複雑なようですね」
リュドミーラさんの言う通りだ。リィナの意志は俺にとって最も大事なものの一つと言っても過言じゃないのだ。
(危険な目にあって欲しくない……けどリィナの意志も尊重したい……)
俺にとってそのどちらかを取るなんて出来ない選択。一体どうしたら……
「なら、こうしましょう。お兄様にも試練に参加して頂きましょう」
え!?
「勿論手伝ったり、助けたりといったことは出来ません。けれど、近くで見守れた方が安心ではないですか?」
「た、確かに……」
危険なことに代わりはないが、近くにいられるならまだマシか……
「ま、待って下さい、おば──」
ゾクッ!
背筋が凍るような殺気が走る! 自分に向けられたものではないことは分かってるが、それでも思わず体が強張ってしまうほどだ。
「いえ、リュドミーラ様!」
クロードさんが慌てた声で訂正する。すると、殺気は再び消えた。
「……まあ、いいでしょう。何ですか、クロード?」
「その……試練にフェイどのも参加するというのは……その……どうなんでしょうか……」
???
(あれ……クロードさんは反対なのか?)
どうしたんだろう。妙に歯切れが悪いな。クロードさんらしくない。
「何も悪いことはないでしょう。フェイもそれを望んでいます」
「はい。しかし……」
「クロード、時間はあまりないことは分かっているのですか? 横から口を挟まないで下さい」
ズン!
という効果音がでそうなプレッシャーに押され、クロードさんが言葉を失う。うーん、龍人の家族って色々複雑なのかな?
「コホン……失礼しました。時間もあまりありません。始めましょうか」
「……はい」「宜しくお願いします」
正直まだ割り切れないものがあるが、ちょっとこの雰囲気じゃな。でも……
「試練に命の危険はないんですよね?」
「勿論です。ここは幻術の世界ですから」
リュドミーラさんはそう言うと試練の開始を宣言した。
“命の危険はありません……”
リュドミーラさんが放つ光に包まれるなか、もう一度さっきの言葉を耳元で囁かれた気がした。
*
(リィナ視点)
「では試練を始めます」
リュドミーラさんがそう告げると光が放たれ……気がつけば私は霧の中にいた。
(ここは……)
見回すと私は誰かに手を引かれている。一体誰に? いや、それよりも……
(ここは何処……いや、まさか)
そんなはずはないと心を落ちつかせながら見回したけど……ああ、やっぱりそうだ。
“ほら、リィナ。星がキレイだろ”
そう私に話しかけて来たのはフェイ兄。だけど、今のフェイ兄じゃない。ずっと小さいころのフェイ兄だ。
(確かお父さんとお母さんが豹炎悪魔を封印した直後の頃の……)
あの頃の私は両親が戻らなかったショックで心を閉ざしていた。フェイ兄はそんな私を元気づけようとあの手この手を尽くしてくれていたのだ。
(ごめん……ごめんね、フェイ兄)
正直この時はフェイ兄が構ってくれることに何とも思ってなかった。だって、フェイ兄にはお父さんお母さんがいて、私にはいない。フェイ兄は誰にも置いていかれたりしていないから。でも……
(この時、私を構っていなかったらもっとお父さんお母さんとの思い出があったかも知れないのに……)
フェイ兄の両親は豹炎悪魔封印後に悪魔の撒いた瘴気で亡くなったのだ。
(でも、フェイ兄は私を責めるどころか、私のことを気づかってくれた………)
生活のことも、失った声のことも心配するなと今まで以上に励ましてくれるフェイ兄。そんな私は……
“罪悪感を持った……”
えっ……違っ……
“両親との最後の時間を奪ったかもしれない、そんな罪から目を背けるために彼に尽くそうと思った……”
そんな……
“貴方は本当に彼を好きなの? 愛してるの?”
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