快勝……
GW特別更新4日目!
遂に決着!?
“……ッ! 敵が”
奴はネアの炎で焼けて使い物にならなくなった部位を切り取り、更には残った部分を変形させることで何とか身動きが出来るようになったようだ。
(さっきの捨て身の攻撃といい、自分の体だとは思えない扱いだな……)
戦闘中だということを考えたらむしろこの合理性は理想的だと考えるべきなのか?
(いや……今は戦闘に集中だ!)
奴がこちらに向かって突進してくる! 速い!
“させぬ!”
ネアが火球を放つ。奴も流石にさっきまでのように食らうことはせず、変形させた腕で防御した。
(足は止めたぞ、マスター!)
ああ、ここからは俺の出番だ!
「〔白鯨の加護〕!」
生み出し三体の幻体を奴に突進させ……
「!!!」
初めて見るスキルに驚きつつも、奴は最初に襲いかかってきた幻体に攻撃する。が……
フッ!
コイツは端から牽制。本命は……
ガキン!
逆サイドに走らせた幻体と位置を入れ替えて攻撃! これも防ぐか……
(だが……)
俺の後ろにいるもう一体の幻体は既に奴の頭上へと迫っている!
ズバッ!
頭上から迫る幻体の動きに対応しようとした奴を切り裂いたのは最初に突進した幻体。そのまま奴の背後に待機させておいたのだ!
(フェイントに見せてこいつが本命だ!)
予想外の攻撃に奴の動きが止まる。今だ、ミア!
(“〔クロスディバイド〕!”)
必殺のギフトが炸裂し、奴の体をバラバラに分割した!
“や、やりました”
“やったぞ、マスター!”
バラバラになって地面を転がる奴の体からは煙のようなものが上り、既に端から崩壊が始まっている。
(境界を複数引くギフト、〔クロスディバイド〕……これほどの威力とは)
完っ全にオーバーキルだな。凄まじい威力だ……
“流石マスターじゃ! 蓋を開けてみれば快勝じゃな!”
“油断しては駄目ですよ、ネア!”
“分かっとる! 浮かれたり調子に乗ったりはせんわい!”
(ありがとう、二人共。俺達の勝ちだ!)
内心で勝鬨を上げながら俺は今の戦闘での違和感を思い出した。
(最後の一瞬、不意を付いたにしても動きが完全に止まっていたような……)
反応くらいはがあるだろうと構えていたのだが……
(ま、勝利には変わりないか)
糸が切れた操り人形のような不自然な動きのような気がしたのだが……気のせいかな?
※
(魔将星ユベル視点)
(フン、こんなものか……)
最後の一瞬、瘴気がなくなったために身動きが取れずにやられてしまった。が、元々破棄する予定だった体だ。問題ない。
(周囲の瘴気を吸って体の形状を変化させる機能は確かに生きていた。それが確認出来たのは大きな成果だからな)
この能力は最近拾った素材を〔合成〕で取り込んだおかげでついたものだが……予想以上の発動速度だ!
(だが、消費する瘴気が多すぎる……改良の余地があかな)
体に残っていた瘴気は勿論、辺りの瘴気まで消費してしまったので、動きが止まってしまたのだ。
(まあ元々戦闘用じゃないしな……)
つい使ってしまったのは相手が予想外の動きをしたからだ。いや、そんなことよりも……
(多分さっき戦った奴がイベルが言ってたアリステッド男爵とかいう冒険者だろうな)
夜会に使うような仮面に黒尽くめの格好、人間にしては中々のセンスだ。
(だが、もう切り札は見た。やはり我らの敵ではないな)
直接戦えば我らの敵ではない……が、人間にしては中々の力がある。イベルの拙い作戦を挫くことくらいはやってのける力はあるな。
(ま、別に急ぎはしない。準備が出来たら仕掛けるとしよう)
俺は部屋の中央にある水槽に目をやった。中には女が一人横になっている。人間でもエルフでもないその女はここ、大地の裂け目で拾った玩具だ。
(豹炎悪魔の忘れ形見、どう使ったらいいかよく分からなかったが……)
何をしても反応が無いのだ。髪の一部を素材にするくらいしか使い道を思いつかなかったのだが……
(アリステッド男爵はいいヒントをくれたな。こいつを俺の〔合成〕で……)
俺はほくそ笑みながら一糸まとわぬ姿の女の体に手を伸ばした。
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