薬と呼び声
すったもんだで完成したレイアの薬品。汚染された土壌を浄化することは出来るのか……
【ギアス荒地 : 第一拠点への道中】
その後、何度も失敗したものの、何とか土中の瘴気を取り払う薬が完成した。後はこれを試して見るだけだ。
(とりあえず一つ目の拠点で試してみるか)
ちなみに土地が痩せてしまっているため瘴気を取り払うだけでは作物は育たないらしい。なので、色々な処置をした後、先ずは開花の早い花を植えてみるらしい。
(名前は確かバルシャだっけ?)
何でも根っこにいる菌が土地を肥やす力があるとかいう話だが、詳しいことは分からない。だが意外というか、何というか、クロードさんがこうしたことに詳しかった。
(そう言えば、グレゴリーさんが“爺様から聞いておけばよかった”って言って悔しがっていたな)
農業の知識があるのは一つ上の世代の獣人達のだけで、今の代の獣人達はほぼ何も知らない。普段使わない知識を覚える余裕なんて獣人達にはなかったのだろう。
「あ、見えてきましたよ! アリステッド男爵!」
グレゴリーさんがそう言って教えてくれた。ちなみにそろそろ目立ってきそうだったのでフェイではなく、アリステッド男爵で活動することにしている。
(マントと仮面で砂埃が防げて意外と悪くないな……)
暑苦しいかと思ったが、直射日光を防げるしな。
「ありがとう。順調だな」
「そりゃそうですよ! 何せ男爵やエーデルローズさんが蛇竜獣を秒殺して下さるんですから!」
秒殺は言いすぎじゃ……
(でも、かなりスムーズになったのは間違いないな)
何度も戦ったこともあって、蛇竜獣との戦いはかなりスムーズで危なげのないものになった。そのため、今では蛇竜獣の少ないルートではなく、最短距離を移動することさえ出来るようになってるのだ。
「エーデルローズ様の薬の効果、楽しみです!」
機嫌がいいのはグレゴリーさんだけではない。クロードさんという龍人の帰還、それにギアス荒地の土壌改良計画。トントン拍子に進んでいるため、獣人達のやる気はうなぎ上りなのだ。
「まだ試作段階だ。上手くいくかは分からないぞ」
「行きますって! アリステッド男爵にお会いしてから良いこと尽くめですから」
うーん、別に俺がしたことってあんまりないんだけど……やる気に水を差すのも何だし黙ってるか。
※
「おお……いい感じに塩分が抜けてる。流石アリステッド男爵!」
「ありが……いや、役に立てなら嬉しいな」
おっと、地が出そうになった!
(クロードさん相手だとちょっとやり辛いな)
実は下手したら怒られるかもと覚悟しながら、真面目なクロードさんにアリステッド男爵のことを説明したら、逆に関心されてしまったのだ。曰く、
“敵を欺くにはまず味方から。確かに奴らは闇に紛れてくるのだから、こちらも相応の対策をしないとな!”
つまり、イベルに対する対策だと思ってるらしいのだ。
(ジーナさんの悪ノリから始まってるなんて今更言えないな……)
そんなこんなで騙しているようで少し後ろめたいのだ。
「リィナ嬢、念のために土中の塩分を調べて貰えるか」
「分かりました」
リィナが持っているのはレイアが作成した塩分濃度を測るためのキットだ。作ったレイア<エーデルローズ>ではなく、リィナが使っている理由はお察しの通りだ。
「大丈夫です。作物に影響がでない濃度です」
「よし、後は瘴気だな。リィナ嬢、引き続きあれを頼めるか?」
「分かりました。では、グレゴリーさん、ニーナちゃん、手伝って貰えますか?」
「「分かりました!」」
そんなこんなで、作物栽培のための土壌改良は無事終了。それなりの広さの土地に対して行ったため、終わった頃には夕暮れになっていたが、誰も気にしない。というより、結果には皆が満足していた。
(獣人は感覚が鋭いって話だからなにか分かるのかな)
俺にはあまり分からないが、クロードさんとグレゴリーさんは土の匂いを嗅いだり、少し口に含んだりしながらしきりと頷きあっているのだ。
(まあ、何も感じないわけじゃないけど)
誰かから呼ばれているような……
(いかんいかん、早く寝ないと!)
夕食もとうに終わり、もう寝る時間。普段より時間は早いが、気温が低い朝に行動したいから早く寝ないとな。
“フェイ様! ミア様! 聞こえますか?”
こ、この声は!
“マスター!”
(ああ、メルヴィルさんの声だ!)
俺はガバっと起きると枕元の聖剣フェリドゥーンを掴み、外へと駆け出した!
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