ネアの想い
前半はネア回! 今までにあまり語られなかったネアの心情が明らかに……
後半は……名もなきあの人(笑)
(ネア視点)
(妾は一体何を……)
正直、“何故人間如きに肩入れするのか……”と首を傾げる自分がいる。しかし……
(不思議なものよのう……最初は肉体をのっとってやろうと思っとったのに)
ミアとかいう聖剣の小娘は力だけで、世間知らずも甚だしい。ちょいちょいと口を挟めば簡単に騙せてしまうようなちょろい小娘なのだ。
(じゃが、今ではそんなあやつの力になってやりたいなどと思うのじゃから不思議なものじゃな……)
何がどう間違ってこうなったのか。理由はおそらく……
(こやつらアホじゃから……)
そう。悪魔から生まれた妾を普通に扱うアホじゃからじゃ。
(妾のような得体のしれない存在は無視するか、もっと強力に封印するかのどちらかを選ぶのかがセオリーじゃろうに……)
じゃが、聖剣の小娘もフェイとかいう小僧も無視するどころか、次第に妾の意見を求めてくる始末。挙句の果てには妾の言葉を信用してこんな遠征計画まで立てる始末じゃ。
(まあ、嘘は言っとらんし問題は──)
いやいや、そういう問題ではない!
(……まっ、今更か)
自分を誤魔化しても仕方がない。妾はフェイやミアを助け、力になってやりたいらしい。こういう感情を何というのかはよく分からんが……
(まあ、妾も元悪魔。自分の欲求には素直にならんとな)
そもそも妾は悪魔でもなければ、魔物でもない。ましてや、人間でもないという不確かな存在なのじゃ。自分の想いを曲げては何のために生きているのかさえ不確かになってしまう。
(……それにマスターを助ければ同胞にも会えるし、悪い話じゃないの)
じゃが、そのためにはまずはアレが出来ないと……
(仕方ない……本気でやってみるしかないの)
誰かのために何かをするのも、本気で何かに取り組むのも初めての経験──じゃが、気分は悪くない。
(妾の力、一体どれほどのものか楽しみにしとれよ!)
※
(ニーナを殴ろうとしていた青嵐団の男視点)
(……やはり少し売上が減ってるな)
目の前には大量の金貨。獣人から塩を安い値で買い取り、オルタシュの住人には今まで通りの値段で売るという完璧な商売を見つけた俺だったが、何故か日を追うごとに少しずつ売上が減り始めたのだ。
(この完璧な商法に穴がある訳ないのに……)
売上増を能天気に喜ぶ他の商会の奴らからは“誤差の範囲だろ”と言われるが、そうじゃない。
(もっと……もっと儲かっても良いはずだ!)
買取価格を下げれば、獣人達は生活のためにもっと岩塩を運んで来ざるを得なくなる。確かにそういう動きもあるのだが、一部に留まっているのだ。
(まるで余所に流れたかのような……)
いやいや、有り得ない。オルタシュ中の商会で獣人と取引する奴らとは既に買取価格を統一するための交渉を終えている。何処へ持っていっても同じはず……
(まさか誰か裏切って買取価格を上げた……? いや、それはないか)
俺がそう思い直したのは、皆が約束を守ると信じている訳じゃない。他の商会の奴らが目先の利益を減らしてまで獣人に媚びるはずがないからだ。
(こうなら食料品の値段も上げるか? ……しかしな)
俺の商法が完璧なのは岩塩の買取に加え、食料品の販売もしているところだ。
(獣人に物を売りたがらない店は多いからな……)
俺だって本当は獣人にものを売りたくない。だが、うちで必要な物資を買うようになれば、奴らからさらに搾り取ることが出来るからな。
(クククッ……岩塩の買取と生活物資の供給、どちらも俺に依存すれば、嫌でも俺の言うことを聞かざるを得なくなる)
これぞアメとムチ。叩くだけなんで芸が無い。生物は僅かでも希望があるから足掻くのだ。
(まあ、俺が考えた訳じゃないが)
だが、この商法が完璧なことには変わらない。クククッ、全く笑いが止まらないぜ!
(それだけにこの誤差は気になるな)
だが、この時俺が気になっていたのは好奇心レベル。脅威はおろか、自分の計画が破綻する可能性なんて微塵も感じていなかった。だが、後から思えば、この時がやり方を改める最後の機会だったんだ。
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