人工呼吸
アバロン編、如何だったでしょうか? 勿論まだまだ続きます! 三人の暴走、お楽しみに!
さて、物語は主人公サイドに戻ります!
(アリステッド男爵<フェイ>視点)
“マスター! 大丈夫ですか、マスター!”
声が聞こえる……これは?
“ッ!”
その瞬間、柔らかな感触と共に肺に空気が送り込まれる。それと同時に今まで肺に溜まっていた水が──
「うっ……ガハッガハッ!」
「マスター! 良かった!」
ミアが泣きそうな顔で俺の顔をのぞき込んでる……ああ、これは大分心配をかけてしまったな。
「心配かけてごめんな、ミア」
「滅相もない! 私の力が足りなかったばっかりに……」
「いや、そんなことは!」
今回、こんなことになったのは俺が先にイーサンを助けてくれと言ったからだ。ミアは悪くない。
「いえ、本来なら最初に大王烏賊と海の間に境界を引けばそれで終わりなのですが、私がまだそこまでの力を取り戻せてなかったがためにこんなことに……」
え、マジで? ミアって全力ならそんなこともできちゃうわけ?
(ミアが万全なら大王烏賊なんて余裕で倒せる相手かもな)
大王烏賊を海から引き釣り出せるのなら、それって勝ったも同然だ。
“とんでもない! マスターのお力があればこそです!”
そ、そうか?
……まあ、いいか。褒められて悪い気はしないし、それよりも──
「そう言えば一体ここはどこなんだ? 俺は溺れたところをミアに助けてもらったのは分かるんだけど……」
ん? ちょっとミアの顔が赤いな。どうした?
「………ここは聖域です。恐らくマスターは聖獣に呼ばれたのではないかと」
聖域? 聖獣?
「聖獣とは魔物から全ての生物を守るために神が生み出した守護獣です。そして、守護獣が住むための場所が聖域です」
な、なるほど。つまり、凄い存在なんだな。
「世界を循環する魔素が集まる重要な場所には守護獣がいて、魔素を魔物に奪われないようにしています」
……何だがスケールがデカすぎる話だが、この辺りの海で魚や貝なんかの海産物が豊富なのは魔素の影響なのかな。
(そう言えば、大王烏賊が現れたのってもしかして……)
大王烏賊は本来こんな暖かい海に現れる魔物じゃないってタイラーギルド長も言ってたしな。
“流石マスター! おっしゃる通り、大王烏賊が出現した原因には守護獣に何かあった可能性が高いです”
ううむ、何だか凄い話になってきたな。
(そう言えば、大王烏賊を倒したからLvが上がってるかも……)
正直パラメーターや新スキルの有無に関心はあるが……
(状況確認が先だな)
とりあえず守護獣に会ってみるべきだろうな。ステータスの確認はもう少し落ち着いてからでいいか。
「とりあえず、呼ばれたなら会いに行くか」
「はい!」
「どっちに行ったらいいか分かる?」
「勿論です!」
辺りは起伏があったり、水草が生えていたりするものの、さほど目印になるようなものはない。が、ミアは迷うことなく歩き続けている。おそらく聖獣の気配を追っているのだろう。
「この先です」
ミアがそう言って指した小さなトンネルのような場所を通ると……
(広っ!)
くぐった先には恐ろしくだだっ広い空間が広がっていた。が……何もいな──
“ようこそおいてくださいました、英雄よ”
ミアとは違う声に驚いて頭上を見上げると、そこには大きな白い鯨がいた。
“大王烏賊の討伐、真にありがとうございました。私が弱ったばかりにあのような存在の侵入を許してしまうなど一生の不覚です”
“気になさらないで下さい。メルヴィル様の働きは天界でも知れ渡っています”
メルヴィルって言うのが、この聖獣の名前か。
“天界……ややっ、貴方様はフェリドゥーン様!? まさかこのようなところに! これはとんでもない失礼を……っ!”
白い鯨は急いで身をかがめようとしたが、急に辛そうに体を震わせた。
“謝罪は不要です。現在私はパラディンに使役される聖剣の一本に過ぎないのですから”
“いや、しかし……ん? 今、パラディンと言われましたか、フェリドゥーン様”
“はい。ミアという名を頂いています”
白い鯨の目がギョロリと動き、俺の方を向く。
“失礼しました。フェリドゥーン様のマスターである偉大なパラディン様。何分歳なので貴方様に気づかす申し訳ありませんでした”
“気になさらないで下さい。ちなみに何処かお体が悪いのですか?”
何となく尾の辺りにささってるように見えるかに目をやってしまう。「弱った」とも言ってたしな……
ミアの人工呼吸の辺りはまたSSとかかけたら楽しそうかも(笑)
ちなみにパワーアップしたフェイのステータスは来週月曜投稿予定の次話で公開です!
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