表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

エピローグ

エピローグ



わたしは、砂時計が大好きだ。

さらさら、さらさらと流れ落ちていく砂。

それを見つめながら、わたしは時間の流れを感じる。

今、わたしはたくさんの笑顔に囲まれながら生きている。


そして、わたしの目には……あの日から。

奇跡が起きたあの日から、砂時計が消えていた。

何で見えなくなったのか、それはよく分からない。

……けれど、なんとなく――わたしには、砂時計が見える意味がなくなったんだろうと……そう思った。

砂時計は、ずっと確実だった。

どんな時でも、誰であっても……確実に命を見せていた。

――それが、確実ではなくなったから。

 わたしは、砂時計が見せる確実な死を、確実ではなくしてしまったから。

 だから、もうわたしには、砂時計が必要ないのだろう。


 ――結局、砂時計は何だったのだろう。

 何でわたしに、命を見せる必要があったのだろう。

 それは、全くわからない。

 

 見えなくなってしまってからは、元々わたしに砂時計が見えていたのだということすらも、確実な証拠はない。

 命の砂時計は、完全に消えてしまったんだ。


 そうして時間は流れていき……わたしたちは高校三年生になった。


ヒカリは……体のリハビリを終えて、作家活動を再開。今では天才女子高生作家として、多くの賞を受賞し……最近では、テレビにも出演するような――いわゆるアイドル作家へと成長していた。

退院してから発表した新作は、ヒカリの作家生活の中でも一番の注目を浴び、ヒカリの代表作となった。

命の価値を扱ったその作品は、幅広い年齢層に愛され、そして感動を与えていた。


ノゾミは……。


「新入生の皆さん、御入学おめでとうございます!」


 ……ノゾミは、生徒会長になっていた。


「ミコトもヒカリも皆すごく頑張っているんだから、私も負けてられない!」

……とのことで、突然立候補し――見事に当選を果たしたのだ。

その応援演説は、殆ど強制的にわたしがすることになったのだけど。

生徒会長となったノゾミは、今までにないような楽しい学校を作りたい――と、日々努力を重ねていた。

その頑張りと、ノゾミの明るさから、下級生、同級生問わず支持を集め、学校内でその存在を知らない人はいない――とまで言われるようになった。


 ヒカリもノゾミも、どんどん成長していく……。時間の流れに乗って、どんどん――どんどん。


 ――そして……わたしは。


「ミコトー! 頑張れー!」

「絶対勝つんだぞー! ミコトー!」


 わたしの耳に聞こえる、ヒカリとノゾミの声。

 

 ――うん、優勝するよ……!


 陸上――女子百メートル……全国大会の、決勝戦。


 わたしは今、その舞台に居た。


 心地よい緊張……周囲の声、音。

 

 まるで、今のこの時間だけが、ゆっくり動いているような、そんな感覚。


 ――ピストルがなる。

 さあ、スタートだ……!


 地面を蹴る!

 強く蹴る!

 そして風を切り、前へ前へ……!

 誰よりも速く――!


 走る、走る!

 前だけを見つめて……!


『わあああああああぁぁぁ!』


 大きな歓声、喜ぶ声、悲しむ声……悔しがる声。

 

 そんな声の中から、わたしは探し出す。


「ミコトォー! すごかったぞぉー!」

「おめでとー! ミコト、おめでとー!」


どんな時でも、わたしを呼んで……一緒に喜び、一緒に泣いて……。


――わたしと一緒に生きる、大好きな親友達の声を。


「ありがとうー! ノゾミー! ヒカリー!」




――命は、生きることを望み……そして光る!


水上夕日です。

この作品は既に書き上げてあった作品なので、一気に全章公開としました。

何かしらのメッセージが届いていたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ