教室
その人はとても存在感の薄い人だった。だが顔は美人、体型も申し分ない。きっとクラスの中心人物となって青春を謳歌しているような人だ。その人と初めて会った、いやその人を初めて認識したのは、きっとあの日だった。彼女は屋上で空を見ていた。なぜあの時彼女が空を見ていたかその時はわからなかった。ただ空を見上げて、泣きそうな顔をしていた。
「おはよー」
教室の入り口で誰かが言った。僕は気にせず本を読んでいた。入学式が終わり一週間、仲良くなる人ができる頃であろう期間だ。クラスでは塊がすでに出来上がっていた。男も女も毎回授業が終わるたびに同じ人と話している。僕は変わらず本を読む。別に友達がいないわけではない。僕にも友達と呼べる人はいる。
「また本読んでんのかよ」
彼はそう僕に話しかけてきた。僕の両目を手で覆いかぶせて。
「またお前か」
本を置き振り払う。彼の方を向き話す。
「今度は何?朝は遅刻したからいなかったけど、休み時間はほぼ毎回僕のとこに来るじゃないか。暇か?」
彼は小さく吹き出し笑いながら答える。
「休み時間は暇だろ」
「それで?今度はなんのようだい?」
「今度の週末暇?」