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9話:脱出は屁の後で




誘拐されて何日たっただろう・・・。

洞窟の中だと分からんな・・・。


洞窟の中の明かりは魔道具で、定期的に魔石を補充しに来るし、飯も持ってきてくれる。

飯の回数は、ここに来てから6回持ってきてくれた。体感的に朝飯と晩飯だと思う。

それの通りに持ってきてくれているとすると、今日が10日がじゃないだろうか?

いや、まずいじゃん。今日神託の日じゃん。誘拐されてる場合じゃないって!

それを何回もカティもどきの男に話してるんだけど、


「はっ!嘘ならもう少しマシな嘘つけよ。それに、俺達の知ったことじゃねぇ。どうせ逃げられねぇよ。」


そりゃそうだよな・・・。



ジュスタンは大人しくしている。

最初はギャーギャー五月蝿かったが、今は一言も喋らない。大丈夫だろうか?

飯には苦戦している。普段硬い黒パンは食べないそうだ。

助けてあげたいが、どうしようも出来ないし、悩みが贅沢過ぎる。せめて、スープに浸けて食えと教えておいた。


青色のスライムはずっと遊んでいるみたいだ。自分の体を捻って遊んだり、檻に触れない様に、触手の様に体を伸ばして此方に触れようとしてきたりだ。

今は、上下に体の大部分を交互に持ってきて、上下運動して跳ねているようだ。

コレが気に入ってるのか、ずっとやっている。

凄く目障りだし、効果音みたいなのが五月蝿い。

だが、五月蝿いと言ったら暫く止まってくれる。言葉分かるのかな?


それと、僕達の他にも人が誘拐されてきた。

全部で3人。皆知っている奴等だ。孤児院の子供達である。

全員男の子なのは偶然ですよね?きっと女の子のガードが硬かったんだろう。

皆、僕より年下だが、僕の一つ下の男の子だけ亀甲縛りだ。

・・・これも偶然だよね?お頭が僕ぐらいの歳の子供が好きって言うのは関係無いよね?



うーん。一応全員、変態おやぢ達の関係者だな。

罪深いロリコン共め。罪深くないロリコン共って居るのか?

今日中に来ないと、一生恨むぞ。





◆◆◆





それから暫くして・・・、何処からか視線を感じた。

ん?何だよ?誰だ?

人質の皆ではないし、スライムは目があるのか分からん。

カティもどきの男でもない。暇そうに欠伸している。


この部屋の入り口の方を見る。居た。リタだ。

リタが気配を殺して、こちらを頬を赤らめて見ている。


おお!遂に助けが来たか!ただ、なんで恥ずかしそうなんだ?

リタはモジモジしながら、トロンとした目でこちらを見ている。

何だアイツ?前からオカシイ奴だと思っていたが、遂にイカれたのか?何もこんなタイミングじゃなくていいのに・・・。


「ん?誰だ?」


ほらぁー。カティもどきに気付かれたじゃん。

あーもう!どうすんねん!えぇい、ままよ!


「すみません、僕の屁です。」

「は?・・・屁?」

「はい、屁です。最高に芳しいでしょう?」

「いや、クセぇだけだろ屁なんて・・・。それより入り口から気配が・・・。」

「ですから、それが屁です。」

「はぁ?トチ狂ってんのかお前?」

「いいえ、正常です。僕は屁を自在に操れます。」

「いや・・・どう聞いても正常じゃないだろ・・・。」


くそっ!リタの奴!ニヤニヤしてないで、はよ行け!偵察に来たんじゃないのかよ!

アイツ、僕の三文芝居を全部聞いていく気か?アホか!誰の為に屁の魔術師になってると思ってんだ!!


「仕方ないですね。MPが残り少ないんですけど、実演しましょう。」

「馬鹿野郎!こんな窓もない所でこくな!」

「あっ!・・・・・・・・・分かりました止めときます。」

「おいっ!何だ今の間は!オメェやりやがったな!?」

「大丈夫です。屁の操作はしてないんで、拡散しました。」

「大丈夫じゃねーよ!!せめて操作できるなら操作しろ!」

「仕方ないですね。じゃあもう一回・・・。」

「どわっー!止めろっ!」



リタのお馬鹿は・・・やっと行ったか・・・。

結局アイツ全部見ていきやがったな!何のために来たんだ?


ジュスタンも孤児院の子達もドン引きするんじゃないよ!皆のためにやったんだろう!




「・・・ったくよー。お頭のお気に入りじゃなけりゃ、ぶっ殺してたぜ・・・・・・っっ!!?」


カティもどきの男が僕を引っ叩いて、元の位置に戻ろうとしたその時、急に横に飛び退いた。

間一髪で何かを避けたようだ。その何かは洞窟の壁に刺さる。

黒いナイフ、最近リタが使っている投げナイフだ。


「外したっ!?」

「テメ・・・。」


リタが驚愕の眼を見はって言う。

カティもどきの男は腰のナイフを抜いてリタに襲い掛かろうとするが、凄いスピードでリタの横を走り抜けてくる人物に驚き、身構える。

その人物は、目にも留まらぬ早業で、男のナイフを弾き飛ばし、男の腹にパンチ打ち込む。


「グッ・・・。」


更には、腹を押さえた男の首筋に手刀をみまい、男の意識を刈り取った。


「リタっ!」

「分かってるよ〜。フォローありがと〜。」


その人物がリタを呼び、リタが素早く、カティもどきの男をロープで縛っていた。



カティもどきの男の意識を刈り取った人物は、僕の知らない人物だった。

リタとは知り合いなんだろうか。


それよりもこの人、美少女だ。それもとびきりの美少女だ。

年の頃は僕と同じ位だろうか。人形みたいに顔が整い過ぎている。怖い位に美しい・・・。

スタイルはまだ発展途上だが、これはとんでもない美女になるぞ・・・いやもう充分な位だ。

元の世界でこんな子を見たら、社会的地位なんて全部捨ててハイエースしてしまいそうだ。

リタと居るから皆と一緒に来たんだろうか?

うちの変態おやぢ達に変なことはされていないだろうか?アイツら犯罪者だからな!近寄っちゃいけませんよお嬢さん!



男をちょちょいと拘束したリタは、また僕を発情した目で見る。

何なんだコイツは。なんで僕の身内はこんな奴ばっかりなんだ?


「おい、リタ。どうでもいいから、このロープほどいてくれ。」

「え〜♡そんな素敵な格好を解くなんてボクには出来ないよ〜♡」


何言ってんだコイツ?

見れば隣の美少女も頬を赤らめて目を逸らしている。

は?そんなに変な格好か?

・・・あぁ、亀甲縛りのことか?


「好きでこんな格好してないっつーの!さっさと解け!」

「え〜・・・ボクもう、そのまま寝室まで担いで行きたいよ〜・・・。」


渋々、全員のロープを解いていくリタ。



全員のロープを解き終わると、洞窟の奥から鉄と鉄のぶつかり合う音と怒号が響いてきた。


「行かなきゃ!! 後は頼むわ、リタ!」


そう言うと、美少女は飛び出して行った。


「分かったよ〜。リョウ、立てる〜?」

「あ、ああ。僕よりジュスタン様を頼む。」


ジュスタンや他の子達は結構弱っている。

さっさと保護してやりたい。


「? リョウも早く行くよ〜。」

「ちょっとやることがあるんだ。先に他の子達を連れて行け。」

「う、うん〜・・・。敵地なんだから気を付けてよ〜。」


リタはそう言うと、ジュスタンと他の子達を連れて出ていった。



僕にはやることががある。どうしても放って置けない。


「・・・ちょっと待ってろ。今出してやるからな。」


この青いスライムだ。

プルプル波打ってるが、喜んでるのか悲しんでるのか分からんて。


えーっと、開けるには・・・鍵が必要か。

カティもどきの男の身体を探してみる・・・うほっ、いい男・・・。

コイツは持ってそうにないな。じゃあ、お頭だろうか?

弱ったなそれは・・・。

まだ、戦いの音は響いている。あそこに向かうしかないか・・・。


「待っててくれよ。鍵持ってきてやる。」


そう言って、スライムを置いて、戦いの音が響く方に向かって行った。





◆◆◆





奥に行くと少し開けた所に出た。

そこで戦っていたようだ。


床には大勢の男達が転がっている。

全員賊の奴等のようだ。息をしているものも何人か居るが、殆ど死んでいるみたいだ。


この世界での盗賊の扱いはこういうもんだ。

魔物と殆ど変わらない扱い。放って置いても善良な市民達の生活が危険に晒されるだけだ。

ただ、やっぱり同じ人間なんだよ。死体を見るだけでも、精神的にくるものがある。

この世界の死は身近にある。元の世界とは全然違う。剣や魔法があるだけで、こんなに近いんだ。

魔物だってキツかった、いや今でもキツい。よく皆、魔物の死体を抉って魔石なんか採れるもんだな。


僕もいつか、人間を殺さなければならない時がくるのだろうか?

今回の件がいい例だ。

今回はジュスタンだったから、良かったんだよ。

・・・いやまぁ、それもどうかと思うけども。

もし、誘拐されそうになったのが、カティなら?マルタなら?リタならエリオなら?

僕はその賊を殺してでも守ることができるだろうか?

この世界の死は身近にある。故に、武力がものを言う。

だから、力をつけなければいけない。

同じ人間でも殺める覚悟をつけなければいけない。


・・・まぁ、その武力が全くつかない状況なんだけどな。

武力さえつけば何とかなるんではないだろうか。

元の世界で客商売の仕事してた時とか、何回ムカつく客に死ねと思ったことか。

・・・それとこれとは次元が違うか。



「・・・じょうぶ?大丈夫?」


前から声が聴こえる。

顔を上げると、あの美少女が目の前に居て、手を握ってくれていた。

どうやら考え事をしている間に、心配してくれて来てくれたらしい。


「凄い顔してたわ。どうして此処まで来たの?」


うおぉ・・・可愛いっっ!!!

なんじゃコイツ!可愛いっ!

駄目だわ・・・女性相手は全然緊張しなくなったと思っていたけど、本当に好みどストライクだと緊張しちゃうわ・・・悔しいっ!でも・・・可愛いっ!!


「おふぅ・・・。いや・・・わたくし此処に用がありまして・・・。」


おふぅって何だよ。

ぬぅ!くそっ!私としたことが!!

女の子に緊張しては駄目だぁ。常に!大人でジェントルマンで対応すれば女なんてイチコロ・・・。


「・・・そう。安心して。絶対リョウを守ってみせるから。」


ふおお・・・なんと言う・・・守る宣言きましたよぉ〜。

そ、そんな・・・私には世界中の美女美少女達を愛でると言う使命が・・・。

ハ、ハニー。キミは僕がま、守ってあげるよぉ〜。

な、なんなら夜の方も・・・だ!駄目だぁー!!これは恥ずかしくて言えねぇぇーっ!!




僕が来たときには4人しか立っていなかった。

この美少女と、ゲバルド氏とディーノ氏、そして賊のお頭。

僕がチェリーボーイを拗らせている間も3人は戦い続けていた。


「くそがぁ!死にやがれっ!!」


横薙ぎに払われた賊のお頭の大剣に、おやぢ二人が距離をとる。

凄いなあの賊のお頭、変態おやぢ二人相手に戦えてるぞ。


「ぬぅ!私とディーノ、二人を以てしてもここまでやるとは!」

「・・・スティーグよ、騎士時代より更に強くなったようであるな。」

「ハッ!当たり前だぁ!俺はこの怨みはぜってぇ忘れねぇ!貴様らに復讐するために、ここまで這い上がったんだからなぁ!!」


なんと!元騎士仲間でしたか!

余計なことに巻き込みやがって!


「むぅ。そんなに怨まれることをした覚えは無いのである。」

「テメェ・・・例の薬を俺から奪っただろうがっ!!」


ディーノ氏をいっそう怒気を含んだ目で睨み、叫ぶ、スティーグと呼ばれた賊のお頭。

・・・おいおいおい。例の薬ってもしかして・・・。


「あれは正当な手段で買い取ったのだ。それを貴様が奪い取ろうとしたのだろうがっ!」

「うるせえっ!アレを探すのに俺がどれだけ協力したと思ってんだ!それを1個だけしかねぇからと、抜け駆けしやがって!!」

「自分の都合のいいように考えおって!無関係の子供達を巻き込む必要もないだろうに!」

「テメェらだけ良い思いさせられるか!俺の痛みを少しでも分からせる為に、テメェらの育てた男子達を貰ってやろうって言うんじゃねぇか!」

「このっ・・・。悪い変態がぁっっ!!!」

「うるせえっ!あの薬さえあれば・・・俺は・・・俺はぁっっ!!」



え?なにこれ?

隣の美少女は、凄い戦いだぁ・・・みたいな目でみてるけども・・・。

いや、戦闘の技術は凄いよ3人共。

だけど戦う理由が・・・あの幼い子を造る薬って・・・。

3人共ただの変態やんけ!

はぁ、あほらし。

勝手にやってろよ。3人共くたばればいいのに・・・。



僕が肩の力を抜いたその時だった。

後ろから、何者かに拘束され、首筋にナイフを突き付けられた。


「!!! しまったっ!!」


美少女が反応し、剣を抜こうとするが、


「動くなっ!!動くとコイツとお別れすることになるぜ。」


僕を拘束した何者かに静止させられる。

・・・いたっ!いやいや!もう刺さってるって!血が出てるから!


「くっ・・・気配に気付けなかったなんて・・・。」

「悪いな、これでもクラス盗賊でな。気配を消すのは慣れてるんだよ。」


美少女も相当強いんだろうが、おやぢ達の戦闘に魅入っていたのだろうか。



変態おやぢ達もこちらに気付いて、戦いの手を止める。


「チッ。ロイド!テメェ何してやがる!それは俺の物だろうがっ!!」


いつお前の物になったんだよ。

お前アイスティーくれただけじゃねぇか。

ただのアイスティーおじさんだわ。


「お頭、もう計画は失敗ですよ。コイツを人質にして逃げましょう。」


僕を捕まえてる奴はロイドと言うらしい。

コイツ凄い力だ。・・・まぁ、僕が非力なだけか。

どうやら僕を人質にして逃げる気らしい。

いやぁ、僕、凄くヒロインやってるな。もしかしてこの作品のヒロイン僕だった?


「待て。外には我輩達の仲間が居るのであるぞ。逃げられると思っているのであるか?」

「あんたらこそ。コイツがどうなってもいいのかい?」


ディーノ氏がそう言うが、全く怯まない。

う、う〜ん。こんな時ってどうすればいいんだ?

あっちの世界で見た、刑事ドラマを思いだせないかな・・・。


「待ちやがれロイド!誰が逃げるっつったんだよ!俺はコイツらぶっ殺すまで終わらねぇからな!」

「勝てるんですかい?お頭?国の英雄二人相手に・・・。」

「んだとぉ・・・?」


お?仲間割れか?やれやれ!!



「・・・分かりました。こうしましょう。・・・英雄のお二方、お頭の攻撃に反撃するんじゃねぇ。」

「む?何を言っている?」

「反撃したら・・・こうなるぜっ!!!」


ロイドと呼ばれた男は、僕の首筋に当てていたナイフを振り上げ、僕の二の腕を刺した!


「ぐあっ!!」

「リョウ!!!」

「「リョウ氏!!」」

「ロイドっ!!テメェ!!」


い、いてぇ!めちゃくちゃいてぇ!!血が!血が出てるじゃん!

コイツ!遂にやりやがった!

モブの癖に!私の美しい身体に傷をつけやがった!

くそっ!人質ならもっと丁寧に扱えよ!殺す気かよ!!


「さぁ、お頭。思う存分やってくだせぇ。」

「このっ!外道がぁ!!リョウをよくもっ!!」

「おっと!お嬢さん。それ以上は近づくんじゃねぇ。さっきは手も足も出なかったし、腕は立つようだが、この距離なら俺がコイツに止めを刺す方が速ぇぞ。」

「ぐっ・・・。」


美少女が悔しそうに歯噛みする。

くっそぉ・・・俺の女を泣かせやがって!このっ!・・・だめだぁ。力が強くて動けない・・・。


「ふっ・・・。丁度いいや。お嬢さんに選ばせてやるよ。次は何処を刺して欲しい?さっきは急所を外したが、人間の急所ってのは色々あってなぁ・・・代表的なのは首だよなぁ。ここをちょん切れば人間は直ぐに死ぬぜ?後は臓器の在る所は大体急所だし、意外な所だと脇の下なんかも急所なんだぜ?ここは止血が難しくてなぁ。早く回復魔法を掛けないと出血多量で死んじまう。お嬢さん、回復魔法は使えるのかい?使えねぇだろうなぁ。剣一筋って感じだもんなぁ。」

「ぐっ・・・このっ・・・。」

「さあ、まだまだ急所はあるんだぜ?全部聞いていくか?それとも、今言った中から選ぶか?」



くそ・・・僕はなんて無力なんだ・・・。

こんな賊に好き勝手やらせて。女の子悲しませて・・・。


異世界転生したからって、何にもなってないじゃないか!

何が高いステータスを持ってるかもだよ!何が強いクラス貰えるかもだよ!

結局運が良い奴だけが得するのかよ!

生まれ持った才能で決まるのかよ!

生まれた順番で決まるのかよ!


何が努力だよ!何が神様が見てるだよ!

こんな死にそうになってる状況で発揮しないんじゃ、なんにも意味無いじゃないか!


こんな力がモノを言う世界で、何にも無い僕はどうすりゃいいんだよ!

せめて最後の頼みの綱のクラスを貰うしかねぇじゃねえか!

こうなったら、村人でも何でもいいんだよ!

クラス取りに行かせろ!・・・この!・・・ボケナスぅ・・・だめだぁ〜、力強すぎるってぇ〜。




「ロイド。テメェ、俺がそんなもん望んでると思ってんのか?」


暫く黙っていたが、ロイドと呼ばれる男の行動が気に食わなかったようで、スティーグはそう言った。


「望んでないんですかい?まぁ、どっちでもいいですよ。俺はまだ死にたくないんで、コイツを人質に俺だけでも逃げさせて貰いますよ。」

「なんだとぉ・・・。テメェ何言ってやがる!!ソイツは俺の・・・。」

「俺の物・・・って言うんですかい?・・・もう俺に飽きちまったんですかい?お頭。・・・仕方ないですかね。俺はもうでかくなっちまった。お頭の好みではありませんもんね・・・。」


おいおい、こんな状況で何暴露してんだよ。

モブとモブの絡み♂とか誰が得すんねん。

いやまあ、好きな方も居られるでしょうが・・・。



・・・ん?おいおいどうした?ロイド君震えてんぞ?


「こんな・・・こんな奴が居るから・・・。俺はお頭に・・・。テメェさえ居なくなればっっ!!!」


ロイドがまたナイフを振り上げる!

ど、どわーー!!止めろっ!!急にヤンデレ化してんじゃねー!!

死に戻り!死に戻りチートくれ!コンティニューできるよね!復活の呪文!目が覚めたら王様の前だよね?おお 死んでしまうとは何事だ!ダイナマイトの火を吹き消せ!9、8、7ハドーケン!デッデッデケデッデケデデッ ヘイ!ブラザー!ギブアップかい?まだまだあああああああああ!!!


「ダメええええええええええええっ!!」

















・・・・・・あれっ?


・・・・・・生きてるじゃん。


「こっちへ!早くっ!!」


ロイドの拘束が緩んだので、振りほどいて、急いで美少女の方に逃げる。

・・・追撃は来ない。


振り返って見てみる。

そこには、あのカティもどきの男性が立っていた。

コイツがロイドだったのか!

気絶から覚めて、僕について来ていたのか。


「うぅ・・・ぐっ・・・。」


そのロイドだが、口から血を流し、うめき声を上げている。

それも無理はない。ロイド振り上げた右腕と胸辺りを何者かが後ろから串刺しにしている。

ロイドの身体からソレが引き抜かれ、ロイドが堪らず膝をつく。

振り返って、串刺しにした者を見て、ロイドは驚愕した。


「て、テメェ・・・何で・・・こんなところに・・・ぐっ・・・。」


ロイドの串刺しにした者とは・・・青いスライムだった。

青いスライムは、檻の中に居た時のように、体から触手を伸ばして、その触手の先を針のように尖らせ、ロイドの身体を貫いたのである。


今気付いた事だが、普通の緑色のスライムは、あんな体から触手を出したりはしない。

あんな風に触手を自由自在に操れたら、スライムが魔物最弱なんて言われていないだろう。

あれがあのスライムのレア種としての能力なのだろうか。


それにしても、アイツ1人で出てこれたんだな・・・。

そりゃそうだ。あんなに体を自由自在にできるんだ。いくら檻に仕掛けがあっても、檻に触れずに出てくればいいもんな・・・。

最初っから鍵なんて要らんかったんや!

じゃあ言えよ!!喋れないけど。



「くそぅ・・・こんなところで・・・俺がぁっっ!!」


ロイドは急に立ち上がり、鬼のような形相で僕に向かって来る。


「そう何度もっ!!」


美少女が僕の前に出て、立ちはだかる。

少女は素早く剣を抜き、捨て身で襲い掛かるロイドに斬りかかった。

少女の剣は、ロイドの振り上げられた左腕を切り飛ばし、そのまま首を半分まで叩き斬った。

それと同時に、青いスライムが一際大きな触手針を作り、ロイドの胸を貫いた。



ロイドはピクリとも動かない。

もう目には何も映していなかった。


「くっ・・・ロイド・・・バカ野郎がっ!」


スティーグが小さく呟いた。


「・・・して、どうするのであるか?まだやるか?」

「・・・こうするぜぇっ!!」


スティーグが小さな石のような物を地面に投げる。

するとそこから、物凄い勢いで黒い煙が吹き出してきた。


「ぬぅ!煙幕か!」

「い、いかんっ!痺れる効果も混じっておるぞ!早く脱出を!」

「ハッハー!俺の秘蔵の魔道具だ!!ディーノ、ゲバルド!次はぜってぇ殺してやる!それと、リョウ!また会おうぜぇ!アバヨぉっ!!」


黒い煙はドンドン広がっていく。

僕はゲバルド氏に抱えられ、ディーノ氏と美少女と一緒に洞窟を脱出する。


・・・あっ!やべっ!青いスライムを置いていったぞ!

スライムちゃ〜ん!頑張って逃げてくれぇ〜!




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