8話:お頭の眼光
変態増えます。
すいやせん。
ドーモ、みなさん。リョウ君です。
先日めでたく10歳になりました。
前世と合わせますと、36歳でしょうか。早いものですねー。
いよいよ女神様から信託を受ける時期がやって来ました。
今日は4月7日。
ルナ様は各地を順番に回って降臨されてるらしいです。
ルナ様凄いマメなんだな。
詳しく話を聞くまでは、もっとこう4月1日になった瞬間に、世界中に光がパァーって広がったりして、それで頭の中にクラスが浮かんでくるとかそんなのだと思ってたよ。
というわけで、女神様はお忙しいので、パイマーンの街に来るのは4月の10日のようです。
後3日後ですね。
僕はもう今日まで、やれるだけやったわ。
後は運次第。神のみぞ知るってやつだな。神様にも知らねぇって言われてんだけど。
自分でも相当努力したと思うんだよなぁ。
ホント、自分の才能の無さを痛感したよ。
いや、もう才能云々の話じゃないんだよなぁ。
剣を持って振ってみれば、ふにゃふにゃ〜と音が出るような剣速だ。
5歳の頃からずっとこれだ。何も進歩していない。
もういっその事、ふにゃふにゃ剣法の開祖として、道場でも建ててやろうか。
誰も人を傷付けることの無いふにゃちん剣法の師範リョウ君です。誰がふにゃちんじゃ!カチカチじゃ!
最後まで付き合ってくれたディーノ氏も、
「あー・・・何と言うか・・・うむ。リョウ氏なら大丈夫であるよ。・・・うむ。・・・多分。」
と太鼓判を押してくれた。
もう剣なんていいんだよ。僕は格闘家目指すから。
レアクラスで、レスラーとかないかな?無いか。そうか・・・。
ゲバルド氏も張り切って稽古をつけてくれた。
最後には、此方も太鼓判を押してくれたよ。
「むぅ・・・。リョウ氏・・・後継者の話は無かった事にしてくれないだろうか・・・。」
最初から後継者なるなんて言ってないんだよ!
どうせ何回練習してもハエが止まるようなパンチさ・・・。
もういいよ。僕ふにゃちんで・・・。
魔法はほとんど練習しなかった。
もうマルタの邪魔をするのも悪いしなぁ。
優しさの塊なマルタは、僕を何回か練習に誘ってくれたが、剣術や格闘に専念したいと、だいたい断ってしまった。
悪いことしたかな・・・。
でも、僕のせいで魔法使いになれなかった。なんてなったら、どうやって詫びたらいいのか・・・。
マルタは絶対僕のせいにしないだろうが・・・。
そのマルタだが、かなりの魔法を覚えたそうだ。
どれくらい凄いかって言うと、大人の皆さんがびっくりするくらいらしい。僕にはこの世界の基準を知らんのでよく分からん。
この前見せて貰ったが、直径10センチくらいの火の玉を3つ同時に出していた。
この魔法がこの世界でどれだけ凄いのかはよく分からんが、魔法の無い世界で約30年生きてきた僕には、衝撃的だった。
僕にも魔法が使えたらなぁ・・・。せめて火の玉1つ、せめてもっと小さい火の玉でもいいのに・・・。
・・・と言いつつですね。実は僕、魔法使えたんですよね。
マルタとの最後の練習の時だ。さっき言った火の玉を見せて貰った時だね。
指先に全神経を集中させて、炎のイメージを思い描く。
8歳からずっとこの練習しかしてこなかった。
魔法の初歩中の初歩なのだ。これが出来ないと先に進めない。
1時間以上、集中してたかも知れない。
遂に、指先に蝋燭の炎くらいの物が現れた。
や、やった・・・やったわ・・・。遂に、遂に僕がまほ・・・・・・アチッ!アチャーー!!自分が出した炎で指が火傷したんですけど!なんでっ!
そりゃそうだよ。指先で燃えてるんだもん。
いや!そうだけど!!魔法だからそんな物理法則無視できそうじゃん!!
「うーん、まだ魔力の操作がまだ出来ていませんね。火の魔法を出すたびに火傷をしていると、手がいくつあっても足りませんよ。」
厳しいお言葉をいただきました。
どうやら、回復魔法も使えるらしいので、かけてもらった。
「でも使えるようになりましたね。凄いです!間に合わなかったらどうしようかと思いました。」
健気にも、僕の事を心配してくれてたようだ。
まだ魔法と呼べるかどうか怪しい火ではあったが・・・。
種火にもなるかどうか・・・。
しかし、僕の指先から火が出るなんてな!元の世界では考えられない話だ。
感動的やね〜。ホントにファンタジーに来たんだなぁ〜。
これで少しは魔法使いに近づけただろうか。
「え?・・・・・・そ、そうですね。可能性は上がったと思いますよ。このまま魔力の操作を練習すれば、あるいは・・・いえっ!どんどん近づきます!頑張りましょう!まだだ!まだ終わらんよ!ってやつですね!」
いえ、違います。
後は、エリオとリタだが・・・、
エリオは剣一筋でここ迄来たな。
カティが居ない今は、同い年の中では一番強い。
孤児院に居る年上の子達にも何人か勝っているそうだ。
10歳以上の子になると、クラス貰って、街の外に出ている子も居るって言うのに、よくやるよ。
一緒に剣の修業をしてても全く勝てない。結局一度も勝てなかったな。
まぁ、僕は誰にも一度も勝つことは無かったが。
剣の腕も良くて、背も高く、性格も良い、そしてイケメン。
唯一の欠点は影が薄いところだろう。
くそう。嫉妬でクラスが決めれたら。
村人になればいいのに。
でも、村人になっても普通に強くなりそうだな。
遊び人とかクラスに無いのかな?遊び人になればいいのに。
・・・駄目だ。後々賢者になりそうだ。
ちくしょう。せめてリタに掘られろ。
一方リタだが・・・。
一段と女らしくなりました。なんでだ?
マルタが出るとこが出て来て、将来が楽しみですな。ってなっているのだが、
リタは、腰や尻辺りが私好みになってきてしまった。
一応、男のはずなんだが・・・。
気の持ちようで何とかなるものなのかな・・・。
まぁ、実に素晴らしくなってきたので、良しとしよう。
剣の腕の方はそこそこと言ったところだろうか。
エリオには作戦勝ちして、稀に勝つくらい。マルタには勝ち越しているようだ。
僕かい?勿論僕が負けるよ。
後、コイツは尻ばかり狙ってくるので、やりたくない。そんな木剣入る訳ないだろ!
リタのクラスは何になるんだろうなぁ。
剣の他に、投げナイフと鞭をある程度使える用になった後は、冒険に使うアイテムの事や、冒険に役立つ知識、特にダンジョンのを勉強しだした。
ホントに考古学者の冒険家でも目指してんだろうか。
トレジャーハンターとかか?レアクラスでありそうだな。
とまあ、皆さん順調でいらっしゃるようで何より。
僕も充分頑張ったので、神託の日までのんびり過ごそうと思う。
後は野となれ山となれだ。
今はパイマーンの街でも商業施設が多く立ち並ぶ、繁華街に来ている。
ヨハンナさんにお使いを頼まれたのだ。
今日は、カティが王都から戻って来るらしいので、ご馳走を用意するそうだ。
本当なら、もっと余裕を持って帰って来る予定だったらしいが、色々あって、今日になったらしい。
ルナ様の神託を受けるのは、この世界ではとても大事な事だ。
そりゃクラスを貰うんだから当然だ。
さっきも言ったが、ルナ様は街を順番に回って来ている。
事前に知らされている日に神託を受けれなかった人間は、もうクラスを貰えない。
ルナ様がそのドジな一人の人間の為に帰ってくることはないそうだ。
なので、日付と時間は絶対に守らなければならない。この世界の常識だ。
・・・しかし、ルナ様も女神様なんだし、ちょっと大目にみてやればいいのにねぇ。
まぁ、特別扱いするって言うのがだめなのかね?
あのルナ様のことだから、面倒くさいだけかもしれないが・・・。
頼まれていた物をある程度買ったところで、見知った後ろ姿が見えた。
どうやら屋台で肉の串焼きを買っているようだ。
「ジュスタン様、こんな所で奇遇ですね。」
「やべっ!?・・・なんだお前か。今、黙って出て来てるんだ。邪魔すんな。後、チクんなよ。」
相変わらず、くそ生意気なお坊ちゃんだこと。
可愛げがないね。姉とは大違いだ。
コイツの名前はジュスタン=アルベルティーニ。
名前で分かるだろうが、領主様の息子だ。
弱冠5歳でこの言葉遣い。
大方、僕が孤児だから舐めているのだろう。
コイツはそう言う奴だ。孤児院に来ている時でも、領主様が見ていない所ではこんな態度だ。
まぁ、まだガキだ。甘やかされて育てられて、家も貴族だ。調子に乗るのも無理ないだろう。
時間が解決してくれるのではないだろうか。歳を食えば落ち着くだろう。
それに、コイツは後1年で学園行きだろう。もう顔を見なくて済むわ。
「チッ、カネねぇわ・・・・・おい、そこの・・・えーと、孤児院の奴。ちょっとカネ貸せよ。」
やーねー奥さん、カツアゲですよ。見ました?
自分から関わるなって言ってきて、自分から関わってきましたよ。
後、返す気は無いんだから、カネくれだろ?
ホントこんなガキ嫌いだわー。元の世界でもよく居るんだよなー。
まぁ、後でディーノ氏に請求すればいいや。チクりにもなるし、将来の領主様に媚びも売れるから一石二鳥だろ。
「お?持ってるの?持ってないと思ってたけど、言ってみるもんだな・・・っておいおい。お前めっちゃ持ってるじゃん。」
そりゃお前のとこの変態おやぢから稼がせて貰ってるからな。
あの人、幼女の短編小説にめっちゃカネ出してるぞ。
流石にジュスタンも聞いたら呆れて物も言えないだろう。
「まぁ、いいや。そこの屋台でお菓子買おーぜ。」
「よく食いますね。・・・ん?これ・・・。」
10センチ位で茶色で真ん中が膨らんでいる。
屋台のおやぢから2つ貰って食べてみる。カラメルのような香ばしい風味がした。
「これ、カルメ焼きですね。」
「ふーん。お前詳しいね。」
知らずに食ってたのか?
屋台のおやぢが作って見せているが、沸騰した茶色の液体に何か入れてかき混ぜている。あれが重曹かな?
んー。なんか小学生の時に理科の授業でやったような気がするな。
食べてみると、懐かしい味がした。
ちょっと日本が恋しくなってしまった。
「なぁ。お前、名前なんだっけ?」
「リョウです。」
「そうそう、リョウだ。なぁ、リョウ。お前そんなにカネ持ってるなら、あっちに行かねぇか?何か珍しい物が売ってるらしいんだ。」
ジュスタンが指を指す方向に目を向けるが特に変わった物は無い。
んー?あっちって何があったっけ?
「あっちは親父と居ても連れて行ってくれたことねぇんだ。ただ、珍しい物が買えるってのは聞いたことがある。何か旨い物があるかも知れないし、行ってみようぜ。」
んー。冒険心か?その気持ち分からんでもない。
しかしそれは、危ないから連れて行って貰えないのでは?
「危ないですよ。護衛も居ないのに。」
「ビビってんのか?別に、お前は護衛として期待してねぇから。俺より弱いし。俺が守ってやるから行くぞ。」
と言うと、ジュスタンはカルメ焼きを口に詰め込んで、さっさと先に行ってしまう。
フンッ!どうせ一回も勝ったことねぇよ!
くそうっ!何であんなに修業したのに、5歳児にすら勝てないんだ?
後、このカネは僕のカネなんだが・・・後で絶対請求するからなディーノ氏!!何なら領収書貰ってくるぞ。
急いでジュスタンの後を追っかけて、一緒に歩いて行く。
そしてたどり着いた先は・・・
「いや、スラムじゃないですか。ここ。」
「ふーん。ここがスラムかぁ。」
ふーん。じゃねえよ!
「いや、そんなキョロキョロしてないで、戻りますよ。危ないですって。」
何かあったら、僕のせいになるんだぞ!
「うーん。屋台も無さそうだな。何だったんだろうな、珍しい物って・・・。」
「まぁ・・・ここなら衛兵とかも来ないでしょうし、何か違法な珍しい物があるでしょうね・・・。」
「何だそれ?女とかか?」
女?何で女?いやまて・・・女?女ってあの女か?あの女だよな?その・・・せ、性奴隷的な?ま、マジ?買えちゃうの?遂に僕が念願の?性奴隷的な女の子?え?おい?マジ?あのファンタジーならではの?元の世界では絶対有り得ないやつ?うそ?買えちゃうの?いいの?好きにして?だって対価は払うんだもんね?大丈夫?足りるコレ?お金足りる?えーおい?いやマジ?おいマジ?弱冠10歳にしてハーレム築いちゃうの?築けちゃうの?我慢する理由ないよね?だってファンタジーだし?だってお金あるし?マジかおい?今日から家に帰ったら「お帰りなさいませご主人様」だよね?ご飯にする?お風呂にする?否っ!お前だあああああぁぁぁ!!うっははー!タマランチっ!
「何だよ急に黙って。」
「一生付いていきます!ジュスタン様!」
「お、おう。そうか・・・。」
「ささっ!引いている場合ではありませんぞ。早速女を探しましょ・・・・・・??」
辺りを見回していると、おんぼろの建物の間の裏路地から人が出てくるのが見えた。
普通なら気に留めないのだが、その人物、髪が赤色でポニーテールだった。
「え?・・・カティ?おい!?」
なんでカティがスラムに居るんだ?それに、帰って来ていたなら孤児院に顔を出せばいいのに。
僕はその人物に声をかけると、その人物はこちらを見た。
「あぁ?なんだぁ?てめえら・・・?」
「おお!カティ!久しぶりだな!ガリガリじゃないか?学園じゃ満足に食わしてくれなかったのか?声も男っぽいし、大丈夫か?」
どうしたんだカティ?顔も男っぽいじゃないか?
小さい頃からマウンテンゴリラみたいな馬鹿力してるから男っぽくなるんだよ。
あっ。マウンテンゴリラにもメスは居ますね。リョウ君反省。
「いや、リョウ。お前の言っているカティって、エカテリーナのことだろ?そいつ男だろ。どうみても。」
「ああ!?何なんだ?てめえらは・・・?」
む!本当だ!男じゃん!紛らわしい髪型しやがって!鼻水も無いじゃん!コイツぁ偽物だぁ!!
だいたい、たまに送ってくる写真が全部ボケていて顔が全然分からないのが駄目なんだろう!
私は悪くねぇ!カティの残念さが悪い!
そのカティもどきの男性は、こっちを見て不思議そうな顔をした後、何やら人相書きのような物を見ている。
そして、びっくりした顔して、もと来た路地裏に消えて行った。
「リョウ。エカテリーナが帰ってくるのか?姉様は帰って来るとは聞いてないぞ。」
「・・・え?あぁ、僕もカティも今年はクラスを授かるんですよ。」
「あぁ、そうか・・・。」
あ、そうだ、カティが帰って来るんだった。お使い早くやらねえと・・・。
「それより、もう此処には用はないでしょう。早く戻りましょう。」
「あ?ああ。そうだな・・・。」
僕とジュスタンが振り返ると、ガラの悪い男達が目の前に立ち塞がった。
あのカティもどきの男も居る。
「おい。そこのガキ。テメェはジュスタン=アルベルティーニだな?」
一人の屈強な男が、ジュスタンに向かって言う。
「あ?誰だそれ?俺はジュスタンなんて名前じゃねえよ!」
うお。コイツすげえな。5歳でこんなこと言える胆力があんのか。
「ハッ!・・・隠しても無駄だ。調べはついてるんだよジュスタン様。おいっ!」
目の前の屈強な男が合図を送ると、後ろから新たに男達が現れて、僕達を拘束してきた。え?僕も?
素早く拘束されて、口に布を当ててくる。
あ、これアカン奴や・・・。
僕達は何もする暇もなく、意識を手放してしまった。
◆◆◆
・・・深い眠りから目が覚めた。
身体が痛い。何かされたんだろうか?
いや、違うか。変な体勢で寝てたからかな。
身体はロープで縛られている。って亀甲縛りなんですけど?何処に需要があんねん!
辺りを見回して見る。
ここは洞窟のようだ。街から別の所に連れていかれたのだろうか?
隣にジュスタンが居る。まだ目覚めてないみたいだ。
てか、ジュスタンは普通にロープで縛られてるんですけど、なんで僕だけ亀甲縛り?
他にも色々な物が置いてある。武器とか防具、麻袋がたくさん、高そうな装飾品。ここは彼奴らの宝物庫か?
何より一番目立つのが、部屋の中央に置かれている小さい檻だ。
中に何か入っている。
どうやらスライムのようだ。青色のスライム。・・・青色のスライム!?
青色のスライムって、僕と死闘を繰り広げたあの時の青色のスライムか?
覚えているだろうか?僕のこと。
「おい。スライム。僕だよ、僕。覚えているか?強敵よ。」
スライムは僕の声に気付いたようで、こっちを振り向いた・・・気がする。何処が顔か分からん。
だが、その後のスライムは、体を曲げたり捻ったりして遊んでいるだけのようだ。
「なにやってんだ?お前。魔物に声なんてかけて。大事な商品なんだから、ストレス与えんなよ。」
あ、誰か居たのか。見張り位いるか、拐われたんだろうし。
声がした方を見ると、あのカティもどきの男だった。
「商品?売るのか?レア種だから?」
「ああ。レア種は高く売れるからな。生け捕りだと価値が上がるんだよ。」
「でもこの檻だと普通に出てきそうだけど?不定形の魔物だし。」
「この檻はちょっと特殊でな、力の強い魔物じゃなきゃ大丈夫だ。そのぶん高いが、この魔物が売れたら充分お釣がくるだろ。」
「でも、こいつレア種だけど・・・。」
「もう長いこと檻の中に居るから、出れないんだろ。スライムだしな。それより、ほら、飯だ。」
飯、くれるんだ・・・。
どうやって亀甲縛りで食うんだよ。と思ってたら手だけナイフで切ってくれた。手だけ別に縛ってたのか。何なんコレ?誰かの趣味?
飯は硬い黒パンと、何も入ってないスープ。
この世界に来たばっかりなら、ゲンナリしてたかもな。
「スープがあるだけマシだぜ・・・。って問題無さそうだな。」
「僕はね。隣の奴は嫌がるかもね。」
「お前は貴族じゃないのか?」
「貴族に見えるの?僕が?」
「いや、貴族と一緒に居ただろ?」
「僕は孤児だよ。コイツとはちょっと知り合いなだけ。」
「お?お前パイマーンの孤児院の奴か?」
「そうだよ。」
「へぇ、名前は?」
「リョウだ。」
「リストに有ったかも知れねぇな。よいしょっと!」
そう言って、カティもどきの男は出て行った。
なんだよリストって・・・。
誘拐のリストか?なんでそれに僕みたいな孤児が入っているんだよ。人違いだろ。
まぁ、どっちにしろジュスタンに巻き込まれて誘拐されたのは確定的だな。
ディーノ氏にどう責任をとらせるかな?
飯を食い終わったら、カティもどきの男が戻ってきた。
「やっぱりリストにお前の名前があったな。お前も人質予定だったってこった。残念だったな。」
「僕みたいな孤児が?何かの間違いじゃないの?」
「いや、間違いじゃねぇ。俺のお頭は、パイマーンの領主と司祭に恨みがあんだよ。恨むんならソイツらを恨め。」
あの変態おやぢども・・・何したんだよ・・・。
賊のお頭の娘に手を出したとかじゃないよな?
「まぁ、飯はしっかり持ってきてやるよ。丁重に扱えって言われてるからな。」
「へぇー。何で待遇がそんなにいいんだ?」
「そりゃお前、これからの作戦に必要なのと・・・、お頭はな、お前位の男の子が大好きなんだよ♂」
ん?何ですかその♂って?
い、いやー。まさかそんな・・・。
すると突然、誘拐する時に目の前に立ち塞がった、屈強な男が部屋に入ってきた。
「あ、お頭。どうしたんです?」
カティもどきの男がそう言ったって事は、この人がお頭か。
何かお盆に茶色の飲み物を乗っけて持ってきている。
あ、何か入れてますよ?白い粉だ。めっちゃサッー!って聞こえますけど?せめて隠れて入れてくれ!
「待たせたな。アイスティーしか無かったけどいいか?」
・・・何が?
あぁ、食後のお茶?
いや、いりません。睡眠薬入りなんで。絶対。
「い、いや。お気持ちはありがたく・・・。」
「暴れるなよ・・・。お前の為に用意したんだよ!」
「アッーーーーー!!」
「あっー。香りがいいっすね。」
「だろ?俺がブレンドしたんだ。」
「最後に入れた粉はなんですか?」
「砂糖だ。甘かったか?」
「いえ、ちょうどいいです。」
ただの子供好きの紅茶好きでよかった・・・。
いやホント。意味深とかじゃないから。