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71話:逆境女神ルナちゃん




・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。


「・・・HIGHよ。」


この場には似つかわしくない少女が、緊張を隠せない震えた声で宣言する。

他のプレイヤーも見守る中、伏せていた少女のカードが表向きになった。


少女のカードは、ハートのクイーン。

親のカードは、クローバーの6。


・・・勝った。

少女は賭けに勝ったのだ。


「・・・んふっ、んふふふふふふっ。ついに・・・ついに取り戻したわ!これで私の3連勝!今日の負け分、ついに戻って来たのよっ!!」


どよめく観衆に気分を良くする少女。

そしてディーラーが続けて勝負をするか?と確認をとった・・・。


「んふふっ、当然やるに決まってるわ!!倍p・・・」

「ルナ様、何してるんですか?」




・・・僕は今にも転落するであろうルナ様の肩を掴んだ。

3連勝とか関係ない。こんな奴、次は絶対負ける。


「あ・・・あらぁ〜〜?リョウちゃん随分お早いご到着ですことぉ・・・。」

「人の金でするギャンブルは楽しいですか?」

「なな、ななななな何言ってるのよぉ〜。自分のお金に決まってるじゃない・・・。」

「その腕輪、セリスがしてたアイテムボックスですよね?」

「こ、これはぁ〜・・・これから必要なるじゃない?元々私の腕輪だもの。態々持って来てあげたのですわ・・・。」

「中身はルナ様の物ではないですけど?パーティーの物ばかりです。」

「そ、それはぁ〜・・・い・・・いいじゃないのよ!!私だってパーティーの一員でしょ!?これから一生働かないでいいくらい稼いでやるわよ!!最高の鞭でも最高の剣でも人数分揃えてやろうって言ってんのよ!!」


白状しやがった。

マジかよ、人の心とかねぇのかよ。神だけど。余計悪いわ。


「僕のパーティーはギャンブル禁止です。」

「何それぇ!!?何時決めたって言うのよ!!?」

「今です。」

「ヒドいわぁ!横暴よぉ!!今日から何を楽しみで生きたらいいのよぉ!!!」


知 る かッッ!!?

甘いもんでも食ってろ!!!!



「ルナ様ダメですよ。賭け事はちゃんと大人になってからです!」


カティが的外れに慰め、イムはルナ様の肩を抱きながら親指を立てている。

イムの慰め方ムカつくわぁ。どこで覚えるんだよあんなの。


「・・・仕方ないですわね。この1回で最後にしますわ。」


・・・まだ分からねぇみたいだなこの女神様は。

ギャンブルはするなって言ってんだろ。最後の1回じゃねーんだよ、もう元に戻ったんならここで止めておけばいいんだよ。


「・・・それは出来ませんよリョウ。私は続きをすると宣言したのです。この勝負は必ずしなければなりませんわ。」



・・・・・・は?はぁ!!?


慌てて周りの様子を見る。

僕達のコントに冷やかな目を向ける他のプレイヤー達。微笑んではいるが目がまったく笑っていないディーラー。テーブルにはハートのクイーンと裏向きのカード・・・。


・・・状況から察するに、これはハイアンドロー。

ルールは至ってシンプル。今表向きになっているカードより、裏向きのカードの数字が高いか低いかを当てるゲーム。

ルナ様は3連勝だと言っていた。これってもしかしてダブルアップってやつ?

ちょ、ちょっと待てよ・・・勝てば倍額、負ければ全額没収だろこれ?


人の金でとんでもない勝負やってやがる・・・!?

ダブルアップ3連勝でなんだ、負け分が戻って来たってか?

一体どれだけ負けてたんだよ。あんた神様だろ?普段からズルばかりしてるくせに、なんでこんなとこだけ真剣勝負してんだよ。


あぁ・・・鼻と顎と上唇が尖ってきやがる………!

周りもざわ…ざわ…言ってんじゃねぇよ!言ってない?嘘だ!聞こえるもん!!


「んふふっ、安心なさいリョウ。この3連勝中の女神に任せていれば富など思いのままなのですわ!!」

「絶対駄目だ!!?あんた今迄負けているのを無視してるよ!3連勝するまでは大負けしてるでしょ!!」

「だから今、私に流れが来ているのですわ!!勝利の女神は私と共にあります!!」

「あんたが女神様でしょーが!!!」

「ええい!うるさいですわね!私が始めた勝負なのですから、私がけりをつけます!!」

「いやあああああ!?止めてぇ!!!」


ルナ様を止める為、腰に縋り付く。

幼女のフローラルなオイニー・・・足蹴にされたって構うものか!


「うがーーッ!!?リョウ!ルナ様にまで抱きつくな!!!」

「そんな事言ってる場合じゃねえんだよ!!僕達の明日がかかって・・・そうだっ!!?カティ!お前が勝負しろ!!ルナ様よりマシだ!」

「え・・・ええーーーーーーッ!!!!?」


我ながらナイスアイデア。

カティは勇者。勇者といえば主人公。主人公といえば豪運の持ち主。

カティは嘗て、ルナちゃんガチャでチートを引き当てている。その強運をここでも発揮させるんだ!!!




イムと2人してルナ様の口と身体を押さえる。

ルナ様は暴れているが、仕方がない。この人には絶対に任せてはおけないのだ。

セリスが見てたら怒り狂いそうな行為ではある。だが私は覚悟の上。神罰があるなら後で潔く受けましょう。だからここは!勇者様に全てを託してみませんか?


「お、う、お・・・おおう。あ、ちょ。え?えええ???」


どうした勇者!しっかりしろ!さっきまで威勢はどこに行った?

ルール理解したか?ただのハイアンドローだぞ?


「お、おいカティ、今説明しただろ?高いか低いか当てるだけだぞ?」

「わ、わかってらい!?」


江戸っ子?


「ハートの女王様・・・トランプで女王様は12。3+3の答えは12。3✕3の答えも12。つまりそこから導き出される答えは、あたしにリョウの運命がかかってて・・・。 お、落ち着かなきゃ。こんな時ってどうするんだっけ・・・そうだ、ソスウを数えるってリュドミラちゃんが・・・・・・ソスウってなに?代わりにヒツジでいいかな?ヒツジが1匹、ヒツジが2匹、ヒツジがs・・・( ˘ω˘)スヤァ………」


・・・馬鹿なの?

いや馬鹿なんだけど。ホンモノの馬鹿だ。


「馬鹿ヤロー!起きろ!!!」

「ふぎゃ!?わ、分かった!!・・・う、うえ!!!高い!!!」

「はあああああ!!?嘘だろ!?クイーンだぞ!?普通LOWなんだぞ!?」

「えっ!?ウゾッッ!?なんで教えてくれないの!!?」


ああああああ!!やっぱ何も考えてねぇ!!馬鹿過ぎるぅ!!!

ディーラーさんちょっと待って!?それめくるの待って!!!


うわああああああ!セーブ&ロードしてえええええ!!

かぁみさまあああああ!!(勝負の)

おぉたすけええええええええええ………………





◆◆◆





・・・ルナ様と一緒に居なかったピノとメイコは、どうやら別館とやらに居るようだ。

これ以上の被害を出さない為、早急に向かわなければ。


「・・・ケツの穴のちっさい男はやぁねぇ〜。勇者ちゃんが勝ったんだから、被害も何もないでしょう?」

「もうルナ様は黙っててください。」


一蹴してやると、むっすりとして黙ってしまうルナ様。

女神がけつあなとか言うなよ。反省しているのか?いや、してないな多分。



・・・そう、先程のハイアンドロー。

めくられたカードはジョーカーだった。つまりは1番上のカード。

なんとカティは勝ってしまった。確率通りにやっていれば勝負に敗れていたところをだ。

流石は勇者様か・・・恐れ入る。


そしてジョーカーの次はLOWが確定する。

だが店側の決まりでダブルアップのハイアンドローは5連勝までと決まっているらしい。

カティが2回分勝負をした後は、ディーラーからこれでご勘弁くださいと勝負が終わらされた。


僕はそれに文句は無かったが、ゴネだしたのがこの女神様。

あーだこーだと言ってまだ勝負をし始めそうだったので、イムと協力して簀巻きにして強制連行してきた。

もうこんな女神様はこんな扱いでいいんじゃないかな?神罰とかねぇだろどうせ。


「・・・で、カジノの別館ってここですか?・・・ここってもしかして?」

「そ〜よ〜。賭け事といえば地下闘技場でしょ?ワクワクするでしょう?」


筵が無かったので、代わりの寝袋でぐるぐる巻きにされたルナ様が得意気に答えている。




簀巻き女神に言われるがまま案内された先は、カジノの地下にある円形闘技場であった。

・・・確かにカジノに闘技場は付き物。RPGでは必ずといっていいほど存在する施設だ。よく主人公側が巻き込まれて出場する事になってしまうのは定番だな。


だがここはどうだろう・・・。

中央の空間で行われている2人の男の戦いは、今まさに佳境のようだ。

片方の背の高い男が持つ三叉槍が、もう一人の男の右肩を突く。三叉槍の男が戦いを有利に持っていってるらしい。

それを見た観客が興奮し、コールをし始めるのだ。


KILL!!KILL!!KILL!!KILL!!………



・・・えーっと、ここってカジノの闘技場ですよね?

コールは殺せ!!でいいんですか?勝ってくれ!とか、お前に賭けてるんだよ!とかではないんですね?

それと戦うのも魔物とかではないんですね。如何にもな半裸の男達ですが。


「あっらぁ〜?リョウちゃんもしかしてビビッちゃった?貴方の居た世界にも実際にあったものなのですよ?」

「まぁ・・・実際に見るのは迫力が違いますね。」

「無理しちゃって〜。ウリウリ〜。」


なにがウリウリ〜だよ。手も出せないクセに。

このまま闘技場の中央に投げ入れてやろうか。ほらっ、神罰とかしてみろよ。


「カティが出てた武術大会はここでやったのか?」

「ううん、ここは始めてだよ。ここよりももっと大きい闘技場があるんだよ。」


一体いくつあるんだ闘技場。

娯楽の少ない世界とはいえ、これを嗜みたくはないなぁ。



たが、地下闘技場に先に来ていた2人は楽しんでいるようだ。人間形態で2人並んで仲良く観戦しておられる。淫ピの方は殺せコールまでやっておるわ。野蛮ですこと。


「ピノ、メイコ。帰るぞ。」

「・・・ゲェっ!!?リョ〜君じゃん!?ヤバっ!?」


ヤバっ、だと?

この淫ピまさか・・・?


「・・・大丈夫よ。私の分を合わせればこっちはそんなに負けてないわ。・・・そちらのルナちゃん様に比べたらね。」


僕を見て逃げようとするピノの首根っこを掴んで、メイコが呆れ果てた様子で告げる。

()()()()・・・ね。負けてはいるんだな。

はぁ〜・・・呆れたいのはこっちだよ。


「ふっふっふっ。そんなものは過去の女神ですわ!!今の私は!負けなど超越した大勝ち女神なのよ!!!」


・・・よく恥ずかしげもなく簀巻きの状態で威張れるものだ。



「ピノ、メイコ。帰るぞ。パーティーの大事な金でギャンブルなんかやってんじゃないよ。」

「あとちょっとじゃん!もう1試合だけだし!」


ホンマこの淫ピは・・・。

だがピノもメイコも2人してチケットを握り締めているところを見ると、もう既に賭けてしまっているようだ。


「あんたも座りなさい。次は魔物と人間の試合よ。人間が無様に喰い殺される姿が観えるわ。」


こっちを睨みながら言わないでもらえますかねメイコさん?

僕が喰い殺される姿が観たいと言うのかね?もう3年以上の付き合いだというのに、まだこんな事を言っておられる?一体今まで何を育んできたのか。

お言葉に甘えてメイコの隣に腰掛けようとすると、刀に手をかけるので、1つ空けて座る。あぁ、僕に対する愛は無いのか!?


「スゴいね、あたし闘技場を観戦するの始めて!ねぇリョウ、あたしもどっちが勝つか当てていい?」

「あなた今までの話は理解してない?」


僕が空けた席に座ったカティが、子供のように目を輝かせて聞いてくる。

僕はさっきから、ギャンブルは止めよう帰りましょうとしか言っていませんが?そんな僕に何故またギャンブルの許可を求める?


とはいえ、カティはさっき大勝ちしているので特別に許可する事にした。カティは僕からOKを貰うと、大喜びしてイムと一緒にチケットを買いに行った。


「んふふっ、リョウはやっぱり勇者ちゃんに甘いのねぇ〜。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・ねぇ、リョウ。私もチケット買いに行きたのですけど?これを解いてくださる?」

「・・・・・・・・・・・・。」

「ちょっとぉ!無視するんじゃないわよぉ!!私は女神なのよ!?なんなのこの仕打ちぃ!! みてなさいよ!こんな拘束・・・すぐに自力でぇ・・・・・・ちょっとぉ!!固く結び過ぎよ!!!どんだけ本気で結んでんのよバカぁ!!!?」



・・・暫くして、カティとイムが戻って来る。

リョウの分も買っておいたね!と、僕にチケットを渡してくるカティ。


・・・・・・え?何コレ?

僕は誰が勝つとか予想させてくれないの?

いやそれ以前に僕はする気なかったし。更に、次の試合1回だけのつもりだったんだけど、何故何試合も買ってあるのか?


イムをじっと見て、目で問い詰めてみる。

・・・イムは親指を立てた。


・・・そうか・・・分からん。

念話で聞けばすぐだろう。だが何故だろう。念話で聞いても多分理解出来ないんだろうなと思った。

人これをめんどくさいと言う。考えるのを止めよう。




先程の男達の試合の後片付けが終わって、次の試合が始まろうとしていた。

まずは4人の男女が入場してくる。先程の奴隷のような男達とは違って、それなりの防具をつけたパーティーだ。


反対側から入場してきたのは・・・ミノタウロスのような牛の魔物だ。

僕達が何回かオシリ山で戦った事のあるミノタウロスとも違うし、あの時に戦ったレア種のミノタウロスでもない。筋骨隆々ではあるが、体の色が白と黒のまだら模様で、巨斧ではなく鬼の金棒のような、棘々の棍棒を持っている。


カティが買ってきたチケットを見てみる。

第12試合、Eランク冒険者パーティー“眉間の皺”対、ハチノスタウロスの“サムライ”。と書いてある。

あの魔物はハチノスタウロスというらしい。そして名前があるという事は、従魔なのだろうか?

・・・この世界のサムライは鈍器を持つものなのだろうか?

どうやらカティは、ハチノスタウロスのサムライが勝つ方に賭けてきたようだ。まぁいいだろう。僕が予想したとしても、眉間の皺なんてパーティーには賭けない。



試合の方はというと・・・

早速、後衛の弓使いの女がやられた。ハチノスタウロスの棍棒が当たったのか、吹っ飛んで動かなくなった。

早過ぎるよ。なにやってんだよ前衛の奴。僕だったらブチ切れて・・・いや、僕も同じように口も利けなくなっているか。

それに後衛だって攻撃が飛んで来ないわけじゃない。ある程度動けないと前でやってる奴が可哀想なだけだ。


ただまぁ・・・僕は人に文句も言えるようなつよさではないんだけどな。

メイコが加入してからの約3年・・・冒険の知識はしっかりついた。だが、肝心の戦いの腕前は3年前から全く変わらなかった。

フィリップさんもセリスも、途中で投げずによく僕を鍛えてくれた。・・・けどダメだった。結局僕がスライムに勝つことは1回もなかった。

確実にこの世界に順応していっているのに、身体だけは平和な日本人のままみたいだ。

もうすぐ成人。まだまだこれからだと思う気持ちと、一生このままなんだろうと思う気持ちが、ぐちゃぐちゃになって僕の中で漂っている・・・。



「・・・・・・リョウ?リョウどうしたの?」


・・・気付いたら、カティに手を握られていた。

おっといけない。おセンチな気分になってしまった。


「いや、なんでもない。」

「ホントに?大丈夫だよ、リョウはあたしが護るもん。」


・・・コイツ、僕の心でも読んだのか?


「・・・そうか。まぁお手並み拝見だな。」

「えへへ〜、楽しみだね。リョウと冒険。」


・・・ふむ。このままホテルに行ってもOKしてくれそうなイイ雰囲気だが、場所のムードが最悪だ。

ほら。また1人、眉間の皺が吹っ飛ばされたぞ。


「冒険者の方に賭けなくてよかったな。」

「あたしまた勝ったわ!カジノって簡単ね!」


と、無理矢理に話題を変えると、笑顔でおっしゃる勇者様。

眉間の皺はあんなにも必死に頑張っているというのに、この笑顔。残念だが、こちら側に眉間の皺の勝利を願っている者は居ないのだ。哀しい奴等よ。

まぁ、眉間の皺だって自分達の意志で闘技場に出ているだろう。腕試しなのか金儲けなのかは知らないが。


ハチノスタウロスはどうなんだろうな?

僕のイメージでの闘技場の魔物は、野良の魔物を捕まえてきて、戦わせてるってイメージがある。

だがやはり名前がある以上、誰かの従魔なのだろう。

つーことは僕以外の魔物使いがここに居るって事か。ゲバルド氏の知り合いのカーリンさんは学園の副学長をやってるって言ってたから、こんなところには居ないだろう。

となれば別の魔物使いか。やっぱりここは王都だね。レアクラスである魔物使いが2人も居るなんて。



・・・それからは、僕は金儲けの事しか考えてなかった。

ここの闘技場で雇ってもらったら将来安泰なのでは?とか、出場させた僕のモン娘に賭ければ一攫千金なのでは?とか・・・。

謎の魔物使いの事はすっかり忘れてしまった・・・。




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