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70話:余の顔を見忘れたか




朝。

大都会での朝である。

都会派のバリバリなシティボーイである私は、朝からヨーロピアンなブレックファーストを所望する。

だがお付きのメイドに連絡を取るも、返事が無い。昨日の事をまだ怒っているのだろうか?ルシルらしくもない。


二度寝でもしようかと思っていると、人間形態のイムが部屋に入って来た。ノックくらいしたらどうでしょうか?


「おはよう、イム。」

「・・・・・・はよ。」

「他のみんなは起きてるか?」

「・・・・・・ルナちゃん様、ひとり、どっか消えた。後は、カティナと昨日の店、いった。」

「えっ!?イムしか居ないのか?」


ルナ様は放って置くとして、イムを残してみんな出て行っちゃったのか?

おいおい、なんで何も言わずにどっか行くのよ。


「何か緊急事態でもあったのか?」

「・・・・・・・・・。」


イムの涎が垂れそうな半開きの口を見るに、特に緊急事態があったわけでもなさそうだ。


今日はダンジョンに入る準備の日にする予定だったのに、勝手な事をしてくれるじゃない。みんなの分の買物、僕とイムの2人に行かせるつもりじゃないだろうな?


「・・・・・・リョウ、どうするの?・・・・・・ねる?」


イムが突然、僕が寝ているベッドに、バターっと倒れてくる。


「だあああ!!今の会話で、何で寝る事になるんだよ!早く出掛ける用意しろ!!」

「どうしたの、リョウ?・・・・・・いっぱい、ぱふぱふ、していい。」

「やかましいわ!!!」


乱暴にイムをベッドから蹴落として、起床する。

包まったシーツから、あざとく目だけ出してコッチを見るイムも無視して、身支度する事にする。着替えはガッツリ見られたが気にしない。




フザケても相手にされない事が分かり、大人しくなったイムと共に宿出た。

適当な屋台でプルーンのような果物を買い、買物しがてら、朝食にした。


宿を出て、さっそくイムが屋台の店主と普通に会話して買物をしている。

パイマーンではよく見た光景だが、アノールでもそこは変わらないらしい。

店内に魔物を入れるのはマナー違反だが、魔物相手でも商売はするぜ!という事なんだろうか?

ちょっと何言ってるか分かんないっすね。



イムとこうやって2人で居るのは久しぶりだな。

セリスと3人パーティーだった時に何度かあった以来か。あれからセリスも居なくなり、従魔も一気に増えたからな。


「・・・食料と水はみんなが居る時にするか。2人じゃ持てないし。」

「・・・・・・ん。」


大きく変わったのは、やはりセリスのアイテムボックスの有無だろうか。

多くの物を持てないというのもあるし、食料も日持ちがする物を選ばなければならない。

ルナ様がなんとかしてくれるとは考えない方がいいだろう。ダンジョンの中にまでは付いて来ないだろうし。

僕が荷物持ちをするしかないな。それぐらいはさせてもらわないと。



・・・・・・今になって気付いたが、魔物の素材などのパーティーの財産は半分以上セリスのアイテムボックスに入っていた。

受け取ってないな・・・。


・・・おっとぉ?イムは、ルナ様は何処かに消えたって言ったよな?

あるぇ?嫌な予感しないか?

大丈夫だろぉ?ルナ様は今や僕のパーティーメンバーですよ?パーティーの金を勝手に使うような人では・・・。


・・・いやぁ、使うような人なんだよなぁ。勝手に使うような奴なんだよあの神は。


「リョウ、悩みごと、大丈夫?・・・・・・吸う?」

「吸わねえよ。」


イムのおフザケを受け流し、ルナ様の事も考えるのは止めておこう。

どうせ考えたってどうにもならねえんだ。全てはルナ様の掌の上。





◆◆◆





イムとぶらぶら街を歩きながら、シュリ先輩の店の方へ。

裏通りに入ると、向こうから恰幅のいい男が歩いてくるのが見えた。

小さな通りを半分くらい占領しながら、此方に向かって歩いてくる。何かに怒っている様子で、スピードを緩める気はなさそうだ。


「どけ。」


その男は小さく呟くと、半身になって避けた僕にわざと肩をぶつからせ、そのまま振り向く事なく歩き去って行った。



「・・・・・・あいつ、ころすね。」


確定?許可を得るんじゃなく、殺す事確定なの?


「いいよもう。放っておけよ。」

「だめ・・・・・・もう、顔、おぼえた。みんなと、共有。」


おっそろしい魔物やで。名も知らぬデブは、知らぬ間にモン娘達から命を狙われる事になった。


「あんなのは相手にするだけ損だよ。いつも何かにキレてたりするんだよああいう奴って。」

「それを他にぶつける、よくない。・・・・・・リョウは、何もわるいこと、してない。」


そりゃその通りです。魔物に言われるなんて情けないぞ、名も無きデブよ。


「・・・アンドニにも聞かせてやりたいね。その言葉。」

「あいつはもう、しんでいる。・・・・・・さっきのも、すぐ、あとを追わせる。」


勝手に殺すな。世紀末救世主かっつーの。

・・・しかし、アンドニか。懐かしいね。

ああいう奴ってしぶといし、多分生きていると思うけどね。このまま一生会いたくないが、ここは王都だしな。もしかしたら遭遇するかもしれない。




シュリ先輩の店に入ると、カウンターの中には人間形態のルシルが居た。


「これはご主人様。どうぞお入りください。」


何だこれは?メイド喫茶ならぬメイド武器屋か?


「えーっと、どうしたルシル?人間の姿になって店番か?」

「その通りでございます。」


イグザクトリーと言っていますよこのメイドは。

何故愛しのご主人様を放っておいて、ルシルがシュリ先輩の店の手伝っているというのか。


「勝手な行動をとってしまい、申し訳ありません、ご主人様。」

「いや、自由にすればいいんだけど。何かあったのか?」

「シュリ様にはご迷惑をお掛けする事になります。これからお忙しくなると仰いましたので、お店のお手伝いを出来ればと思いまして。」


魔剣の修繕の事か。

ふむ・・・シュリ先輩から詳しく聞いたほうが早いか。



「それはそうとルシル、お前店番なんて出来るのか?」

「お任せください。先程も1人追い返したところでございます。」


いや駄目じゃねーか。商売しろよ。


「ご安心くださいご主人様。先程の男は客ではございませんでした。」

「そうなのか・・・? もしかして大柄な男だったか?」

「確かに丸々と肥えた、イライラと落ち着きのない男でございました。ご存知なのですか?」


じゃあさっきの男の事だったか。

イライラは元からだったらしい。チンピラみたいなやつだったしなぁ。


「ルシル・・・・・・その男、危険度2。」

「なんですって!?あの男がご主人様に危害を加えたのですか!?イム、何故その男を逃したのです!?」

「ルシル、危険度2、だから・・・・・・あせっては、だめ。」

「・・・そうでございますね。あの者の顔は確りと覚えております。人相書も認め、ピノとメイコにも報せる必要がありますね。」


なんかまた変な事やってる・・・。

なんだよ危険度2って。人相書まで用意してさ、犯罪者じゃねーんだから。

詳しく聞きたくないわー。もうええもうええ、好きにさせとこ。




悪巧みする2匹(イムとルシル)を店内に置いて、店の奥にある工房に入る。

そこではシュリ先輩が一人作業していた。


「シュリ先輩。お邪魔します。」

「ん?おぉ、リョウ君いらっしゃい。ゴメンね。今カティナは、ある人と会っているの。」


挨拶をするやいなや、聞いてもいない事を言うシュリ先輩。

いや、確かにカティと従魔達を探しに来たのだが。


・・・なんだ?察しろって事かね?

カティが今会っているのは、話し合いを邪魔されると困る人物って事かね?


「そうだリョウ君!メイドの従魔がお店を手伝ってくれるって言うから、お言葉に甘えさせてもらってるよ。」

「はぁ、それは構いませんけど。」

「本当は魔剣修復の最中はお店閉めとくつもりだったんだ。でもその話をしたら、あのメイドの従魔が代わりに店番してくれるって言ってくれたんだよ。」


なるほど、そういう事か。

えらく優しいじゃないかルシルちゃん。あまりそういう事を僕以外にするイメージはなかったんだが。



「いやぁしかし、リョウ君は面白い事を考えるね!」


作業をしながらも、話を続けるシュリ先輩。

ゴーレム血石のサイズを測りながら魔法陣を描いている。

流石ファンタジー。何の工程なのかまったく分からん。


「何がですか?」

「魔物に武器を使わせようって発想がスゴいよね!なんでそんな事思い付くの?」


何だそんな事か。

別に僕の発想ではない。あっちの世界でのゲームを参考にしているだけで、僕のアイデアではない。

それに僕の従魔はそこら辺の魔物とは違うしな。知性があるし、人型になれる。人間と同じように武器が使えるだろうと思い付くのは自然だと思う。


「そんなに珍しい事ですかね?」

「珍しいなんてもんじゃないよ!だってあの魔物だよ!?人間を発見したら本能で襲ってくる知性の欠片も無い・・・・・・あっ、ゴメンね。リョウ君の従魔の悪口みたいだよね?」

「い、いえ、大丈夫です。気にしてません。」


突然身を乗り出して語り出したシュリ先輩にびっくりしただけなんで。

そんな従魔の事よりシュリ先輩の香りがいい香りである。あぁ、ママになって欲しい。ここを実家にしたい。



「それにね、ボクが驚いたのはそれだけじゃないんだ。さっきリョウ君の従魔達に話を聞いたんだけど、使わせてる武器が面白いよね。ブーメランとか、獣人がよく使ってるカタナ。俗に言うサムライソードっていう剣とか・・・」


随分と興奮しておられるシュリ先輩。

なんだろう。クリエイターとしての彼女に刺激を与えてしまっただろうか?


「そう!フライパン!?1番驚いたのはフライパンだよ!!まさか調理器具を武器にするなんてスゴい発見だよ!なんで気付かなかったかなぁ。確かに武器に適した形状してるよね!」


・・・果たしてそうですか?

ちょっと落ち着いて下さい。僕が言うのもなんだが、フライパンは武器に適した形状ではないよ?調理に適しているんです。


「そんな話聞いちゃったら、もう僕我慢出来なくなっちゃってさぁ・・・お願い、リョウ君!!従魔達の武器もボクに作らせて!!リョウ君の武器も作ってあげるし、お金もいいからさ!」


なんと。願ってもない事があちらからやって来た。丁度武器を新調しようとしていたところだったのでありがたい。

シュリ先輩はドワーフ。ドワーフといえば鍛冶だ。

まだ若いから腕は良くないだろうが、それでもドワーフに装備を作ってもらえるのはありがたい。


「此方からもお願いします。それとお金はありますんで、ちゃんと払いますよ。」

「・・・ホント? あはは。勢いで言っちゃったけど、できればそっちの方がうれしいかなぁ。」


照れた顔もカワイイ。

あぁ、ママになって欲しい。盆と正月に帰省したい。



「でもまずはカティナの魔剣を直さないとね。従魔達の武器はその後かなぁ。 あ、調理器具は手の空いた時に作るね。とにかく丈夫にって注文でいいんだよね?」

「・・・何ですかそれは?」

「え?さっきメイドの従魔が言ってたよ?」


・・・なに勝手な注文してんだよ。

ご迷惑をお掛けするって、ルシルが掛けてたのかよ。


「いえ、調理器具は最後の最後でいいです。1番後で。」

「そうなの?確かに丈夫ってだけじゃ面白くないよね。折角変わった武器使ってるんだから、何か1つアイデアが欲しいね。」


調理器具に何する気だよ。

取っ手でも取れるようにするか?ティ○ァールかよ。


「じゃあ、リョウ君は武器何使ってるの?」

「僕はこの銅の剣です。」

「そっちの白い棒は?」

「あぁ、これですか?一応武器ですが、お守りみたいな物なんで使ってないです。」


シュリ先輩が興味を持ったのは、メイコに作ってもらったドスだ。あの時に鉄砲玉になって、それからは一度も使っていない。

・・・だって刺さんなかったよ?斬れないけど刺す事は出来るって言ったじゃん。それに壊したら殺されるもん。お守りとして肌身離さず持つしかないじゃん。


「珍しいね!ちょっと見せてもらっていい?」

「どうぞ。」


そりゃ珍しいだろう。棒術の心得なんてないし、もはや武器にすらならない。



シュリ先輩はドスを受け取ると、丹念に観察しだす。

・・・いたいけな少女が棒を弄くり回しておるではないか。これはモザイクいるぞ。


「・・・えーっと、コレってサムライソード?何でできてるの?」


鞘を抜いて、一応刃の部分である場所を素手で触りながら聞いてくるシュリ先輩。

当然、シュリ先輩の手が切れる事はない。


「・・・アラクネの糸、らしいです。」

「アラクネの糸!?そんな素材で武器を作っているの!? え、えぇ・・・な、なんの為にそんな物を?」


なにやらシュリ先輩がドン引きしておられる。流石のシュリ先輩にも考えられない素材のようだ。


「僕が作ったんじゃないですよ。メイコっていうアラクネの従魔が作ってくれたんです。」

「あのアラクネが?アラクネってそんな事出来るの?」

「・・・いや、メイコだけが特別なんだと思いますけど。」

「そ、そうだよね。賢そうな従魔だったもんね。でも、これだと武器として使えないでしょ?硬くはあるけど、斬れはしないよね。」


まぁ木刀や竹光みたいなもんだと思っている。

決して命を預けれるような物ではない。だからこそ、メイコが想いを込めて作った招福の縁起物だと思い込むことで、ご利益を得ようというのだ。


「ですからお守りとして持っているだけなんです。」

「そうなんだね。じゃあリョウ君のサムライソードは、ボクが作らない方がいいみたいだね。」


・・・いやいやシュリ先輩、そこをなんとか。

もう刀じゃなくてドスでもいいんで。どうか僕にマトモな刀をくださいお願いしますなんでもしますから。




メイコの顔がちらつくが、ちゃんとした刀も欲しい。

そんな狭間で葛藤していると、扉の開く音がした。

開いたのは1階の店の扉ではなく、2階の生活スペースの扉だった。しかし出て来た者は、今日まだ顔を見ていないカティではなく、ピノでもメイコでもない奴だった。


()が階段を下りてくる。

金髪のサラサラヘアーをなびかせる、眉目秀麗の青少年だ。

そこら辺に掃いて捨てるほど居る冒険者風の恰好をしてはいるが、艶のある髪と化粧でもしているような整えられた顔は、上級の人間のようだ。


いや、実際に上級の人間なのだろう。

僕はコイツを知っている。会った事は無かったが、カティとシュリ先輩の知り合いで金髪の少年・・・この子がホムト君か。


「シュリ、邪魔をしたな。」

「ケイト君、もういいの?」

「うむ。今日は近況報告のようなものだったからな・・・。」


全然違ったわ。誰だよケイト君って。

ホムト君なら多少は我慢してやろうと思っていたが、他の男なら話は別やで。


「シュリ、その者は誰だ?」

「あ、この人はリョウ君だよ。ケイト君も聞いた事あるでしょ?」

「ふむ・・・店の奥まで案内するとは、シュリも隅に置けんな。どうした?ヴァルフリートにはもう飽きたのか?」

「ち、ちが!?ボクとヴァリーはそんなんじゃ・・・ちょっと!からかわないでよ!!」


・・・なんだ、随分と親しいようだな。

はぁ〜、二枚目は楽でいいね。



「ははは!冗談だすまぬ。そうか、お前か。」

「え?あぁそうです。僕がリョウですけど。」

「ふむ・・・・・・・・・?」


ケイトはシュリ先輩を軽くあしらい、僕を値踏みするように観察している。

つーかいきなりお前呼ばわりされる謂れは無いんだが?


「・・・エカテリーナとはもう会ったか?」

「ええ、まあ。」

「お前の話はエカテリーナからよく聞いている。さぞ喜んだだろう・・・。」


ケイトはそれだけを言うと、眉を顰めて黙ってしまう。

・・・一体何だコイツは?



「・・・シュリよ。エカテリーナに伝えておいてくれぬか?余は暫く此処には来れなくなると。」

「えっ!?ホントなの!?」

「うむ。余も学園を卒業せねばならぬ。そちらに専念するとな。」


・・・コイツ、やっぱり僕やカティと同い年か。

それに余だってよ、余。

絶対只者じゃないやん。全日本只者じゃない選手権他を圧倒して1位だろ。自分の事を余って呼ぶ奴なんて、コイツか正体明かす時の暴れん坊将軍ぐらいだわ。



ケイトは険しい顔のまま、工房から出て行く。

なんか変な奴だ・・・色々な意味で。


「ん〜・・・ケイト君、どうしたんだろ?様子がおかしかったよ。」

「そうなんですか?あっという間に帰ってしまったので、よく分からないですね。」

「ゴメンねリョウ君。ホントはもっと気のいい人なんだよ。」


あれで気のいい奴とは思えないけどね。初対面の奴に対してお前呼ばわりして、終始不機嫌だし、さっきまで会ってたんだから言っとけばいいのに態々伝言残して行くし。


「単に嫌われちゃっただけでしょう。」

「え?ケイト君がリョウ君を?何で??」


僕の予想では・・・恋敵。だと思われた、かな。


まぁ、嫌われた理由なんてどうでもいい。

奴も学園生、そして余。やんごとなき御方なのは間違い無いだろう。

ダンジョンの前で会った2人組と一緒だ。深く関わっていく必要は無い・・・。


・・・そう、必要は無いが・・・今回だけは難しそうだ。





◆◆◆





ルシルをシュリ先輩の店に残し、カティとイムを連れて再び街に出た。

どうもピノとメイコは、途中でルナ様に呼ばれて出て行ったらしい。カティも用が済んだら合流するように言われていたらしいので、3人でルナ様の元へ向かって行く。


「今朝は何も言わないで居なくなってごめんね。ケイト君と会う約束してたんだ。」

「大丈夫だ。」


カティは僕の手を引きながら歩き、機嫌も良さそうだ。

余さんと深刻な話をしていた訳でもなさそうだ。なら余さんの不機嫌は本当に恋の悩みなのかね。

・・・まぁ、その辺はどうでもいいか。それよりも正体を明らかにしとかんとね。



「なぁ、カティ。さっき会ってた男・・・ケイトって本当の名前じゃないよな?」

「うんそうだよ。あれ?リョウに言ってたっけ?」


カティに聞くと推理もへったくれもないな。何でもかんでも正直に言ってしまいそうで。


「やっぱりそうか。あの人がホムト君だな?」

「そうだよ〜。外ではケイトって名前にするんだって。あッ、これナイショだよッ!!?」


内緒ならこんな人の多い場所でデケェ声で言うなよ。馬鹿過ぎる。


・・・そうか。やっぱりアイツがホムト君か。

カティの幼馴染みである僕を敵視するのも、シュリ先輩と親しい仲なのも頷ける。


「・・・ホムト君は何故偽名を使ってる?何者だあの人は?」

「ホムト君は王子様だよ。」

「・・・・・・は?」

「だから王子様だって!あッ、これナイショだよッ!!?」



・・・王子?王子様ってもしかしなくてもあれだよな?お城に住んでて次期国王的なあれ?

・・・・・・・・・うわぁ、出たわぁ。ド定番の王族と簡単に関係持っちゃうやつ。

何でよりにもよって僕がこんな事に・・・。これが異世界転生ハーレム野郎の宿命なのか?


いやまて落ち着け。

関係を持ったのはカティだ。カティは200年振りの勇者。王族が関わるのも仕方ない。

僕は普通の人間だ。どこにでもいる平々凡々の日本人。何かしらの素質があって異世界に転生出来る権利があったとしても、拾われた場所で美少女勇者と幼馴染みになったとしても、女神も知らないレアクラスを授かったとしても、美女美少女のパーティーメンバーに恵まれたとしても!!わしは一般ピーポー主人公じゃないNPC!ここは アノールのまち ようこそ!!



「・・・そうか!!ならばよし!!!ケイトぼっちゃまの考えを尊重しようじゃないか!あの人はパンピー!そこら辺の冒険者と変わらない対応をすればいいのだな!!」

「え?リョウ聞いてた?ホムト君は・・・」

「カティ!卒業したらすぐ旅に出よう!!なんなら今からでもいい!!卒業とかもういいじゃん!!」

「だ、ダメだって・・・。リョウがやる気なのは嬉しいんだけど・・・。」


この国はもう駄目だ。障害が多過ぎる。

カティの卒業までは仕方ないとしても、それが終わればすぐに出国しよう。司祭様夫妻には申し訳ないがそれしかない。盆と正月は無理かもしれんけど、お歳暮とか贈るんで。それで許してクレメンス。




ホムトだかケイトだか知らんが、もう余さんの事は忘れよう!!

・・・・・・・・・おっ!おおお!?

あの建物はもしかして!?

何かを忘れるにはうってつけの娯楽施設があるじゃありませんか!!?


「あっ!?リョウ、あそこだよ。ルナ様が待ってるって言った場所!」




・・・・・・・・・・・・え?

嘘だと言ってよカティ。

どれだけびっくりさせれば気が済むの?冗談だと言ってよ。


あそこにルナ様が居るの・・・?

そんな・・・まさか・・・・・・



「・・・・・・カティナ、あれ、なに?」

「イムちゃん、あそこはカジノっていうんだって。あたしもよく知らないけど、賭け事して遊ぶ場所だって。」


そこは金銭を賭けて勝負を争う大人の遊戯場…!

生命を賭けた極限のギャンブル編が今始まるっ………!




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