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64話:赤い石 めずらしい石




僕とルナ様とルシル、そして迷いの森で死にかけていた獣人の少女は、インチキ商会の商隊に追い付いた。

獣人少女のくノ一ちゃんは、ルナ様に頻りに話し掛け、女神様女神様と呼んでいる。

その予想は当たらずとも遠からずではなく、ド真ん中ドストレートで当たっているのだが、それが確信に変わる事はないだろう。


乗っていた馬車まで到着すると同時に、イムが僕の顔面に貼り付いて来る。

・・・どうやら僕等が居ない間、ずっとロリさんに粘着されていたようだ。

ロリさんのスライム好きはここまでか。一体スライムの何処がそんなに好きなのだろう?


イムはずっと、「・・・・・・アイツ、嫌い。」と連呼している。

参ったなぁ。今もう1人連れて来ちゃったんですよ。従魔達の反人間感情を煽りそうな奴を。




ロリさんに事情を説明し、くノ一ちゃんを馬車に乗っけてもらう。

ロリさんはすんなりとOKをくれた。しっかりと追加料金は取られたが。


くノ一ちゃんが馬車に乗った事で、従魔達はイム以外が馬車と並走へ。

くノ一ちゃんは相変わらず僕に怯えているようだ。もう面倒くさいので、少女の相手はルナ様とロリさんに任せる事にする。

僕ぁ念話で従魔達としりとりでもやってる方がずっといいよ。



で、少女達の会話を横で聞いていたのだが・・・

あのくノ一ちゃんの名前は、“オモチ=トクモリ”と言うらしい。


また名字持ちか。

いや、問題はそこじゃない。僕はオモチという名前に覚えがある。

カティが送って来た写真に写っていた、パーティーメンバーの獣人の名前が“モチ”だった。

そう言われればこんな少女だったかなという程度だ。正直、どんな顔だったか覚えていない。ドワーフとエルフの先輩の方が印象深かった。

名前はカティが渾名を書いていただけだろう。


では先程くノ一ちゃんが話していた、私を信じて待っている彼女とはカティの事か?

・・・流石に早計か。

くノ一ちゃんは、アヌルスに急がなければと言っていた。カティを助けるならパイマーンに向かうだろう。


と、考えていると、ルシルが念話で話し掛けてきた。


『・・・ご主人様。あの女は救う必要があったのでございますか?』

『さぁな・・・ルナ様に何か考えがあるんだと思うぞ。』

『やはり女神様の計略だとお考えなのでございますね?』

『多分そうだろう。それが何かは皆目見当つかないが。』


(が、が、ガチョウ!)

(・・・梅。)

『・・・・・・めきしかんろーりんぐくらっちほーるど。』



勝手にしりとりを始めた3匹は放って置いて・・・


今回のルナ様の行動は全く目的が分からない。

普通に考えれば、このくノ一ちゃんが生き延びて王都に居る事が、何かしらルナ様の役に立つのかもしれない。

まぁ1つの生命が救われたという意味では、大いに意味のある行動ではあったが。


・・・あっ、そうか。難しく考え過ぎたか?

一応、女神様なんだしな。人が目の前で死にそうになってたら助けるか。


・・・いやでもルナ様って、人に対して特別扱いしないって考えだろ?

最初は結構甘いところあるんだな〜って思ってたんだけど、神子の話しを聞くとやっぱりそうでもないんだな〜って思ったし。


じゃあ、今回くノ一ちゃんを助けたのは・・・くノ一ちゃんが特別な人間って事か?

まさか、転生か転移でもして来た奴か?それとももっと他の・・・?


『ご主人様!私はあの女が嫌いでございます!』

『なんだよ急に。』

『だって!ご主人様を馬鹿にしています!無様に死ぬところだったクセに・・・助けてもらった者のする行動ではありません!』

『まぁ実際、僕が助けたんじゃないしな。お礼は言ってたからいいんじゃないか?』

『しかし・・・!!』

『もう会う事もないだろ、多分。放って置けばいい。』


(い、い、インコ!)

(・・・秋桜。)

『・・・・・・すてっぷおーばーとーほーるどうぃずふぇいすろっく。』



・・・イムちゃんは何故プロレス技ばっかり?確かに教えた気もするけど。


それはいいとして、ルシルは僕が蔑ろにされているから怒っているだけだろう。

僕が何かをしたわけでもないのに怯えられてるってのは、理不尽ではあるけどね。まぁあれだけの体験をしたんだ。仕方がないだろう。



それで、くノ一ちゃんが連れていた仲間はというと・・・ここに来て落ち着いたくノ一ちゃんが言うには、やっぱりくノ一ちゃん以外は死んでしまっていたらしい。


僕は初耳だったのだが、迷いの森っていう密林は、オシリ王国の国土の20%も占めているそうだ。

僕のイメージする迷いの森ってのは、森全体に掛かっている魔法のせいで同じ道を何度もループさせられるって感じだったが、この世界の迷いの森は、何処までも続くジャングルに方向感覚を狂わされるという物理的なものだった。


で、その広大過ぎる迷いの森は数種類のエリアに分かれているようで、昔僕達が冒険に行ったドピュー湿原経由の迷いの森は、難易度が高いエリアだったらしい。

なーんでもっとよく調べて行かなかったのか。そりゃ、これは無理だわと早々に撤退した訳だわ。

そんな毒の森とは違って、くノ一ちゃんが通った王都からタマティーまでのショートカット。大したショートカットにはならないが、森の難易度は初心者レベルに低めの冒険者御用達のコースとなっているそうだ。



しかし、そんな初心者コースに予想外の魔物が現れたらしい・・・。


「あれは・・・巨大なドラゴンだったッス。奴は此方を見付けると一直線にやって来て・・・。護衛の方々は次々にやられてしまったッスが、自分を必死に護ってくれて・・・自分だけが生き残れたッス。」

「そう。それは災難だったわね、オモチとやら。しかしそうですか。他の者は救えませんでしたか。」


悲しそうに嘆きながら天を仰いでいるルナ様。

・・・神様が天を仰ぐってのも変な話だが。


「あんな場所にドラゴンですか!?これは早急に対応せーへんと!」


そして、大慌てでロリさんは前の方の馬車に向かって行った。

多分王都の方に連絡してくれるのだろう。色んな人が通るであろう道に危険な魔物が居たら大変な事だ。



「・・・それで、油断していたところをあの魔物達にやられてしまったのですね。私とリョウが偶々通り掛かって、運が良かったわねぇ〜。」

「本当にありがとうございますッス!女神様が現れなかったらと思うと自分・・・。そこの人が現れた時には、今度はこの男に襲われるのかと・・・・・・あっ!?い、いえ!何でも無いッス!!」


・・・何なんだコイツ?真面目そうに見えて、結構言うじゃねーかよ。口が滑ったとかのレベルじゃねーぞ?

誰が襲うかっつーの。


『わ、私はいつでも構いませんよ!ご主人様!!』

『駄犬は黙っとれ。』


(れ、れ、レンジャク!)

(・・・梔子。)

『・・・・・・しゅーてぃんぐすたーぷれす。』


お前らも黙っとれ。



「それで?貴女は何故アヌルスに向かっていたのかしら?」

「よく聞いてくれたッス!自分の大切なあの御方の・・・折れた魔剣を直すという素材を手に入れるためッス!」


なんだよ、野郎かよ・・・って違うか。彼女って言ってたんだし。

折れた魔剣・・・か。そういえば映像の最後で魔剣が折れていたな。

やっぱり、くノ一ちゃんが言う彼女とは・・・


「・・・んふふ。その大切な御方とは、あの時の人、エカテリーナ=トクレンコね?」

「え・・・?1回も言って無いッスよね?何で分かるんッスか?流石は女神様ッス!」


ルナ様があっさりと聞いてくれた。

やっぱりそうだったか。くノ一ちゃんは、カティの為にこんな事を・・・。



「そりゃ分かるわよ。今の王国で、勇者ちゃんの為に動ける人間は限られていますもの。ねぇ?女神教現法皇の御息女、オモチ様?」


・・・っ!!?


は、はぁ?

こ、このふざけたくノ一が・・・法皇猊下の娘ぇ?


「・・・・・・何故そこまでお分かりになるんッスか?」


途端にくノ一ちゃんのトーンが落ちる。


「あらあら?妙な勘繰りは止めてほしいわね。私があのドラゴンを用意して襲わせたと言うのかしら?」

「こんなに魔物を連れているッス。アレも女g・・・貴女の従魔ではないッスか?」

「私は魔物使いではないわ。従魔を連れているのはリョウよ。」

「この男を擁しているのは貴女ッス!命令するのは簡単ッス!」

「パーティーのリーダーはリョウなのですけど。それにクッコロオークやゴブリンもそうだと言うのですか?」

「その下劣な男ならやりかねないッス!!」


ついに下劣な男にまで格下げされたが?

一体僕が何をしたというのか。



「・・・もう、いいッス!!」


急に大きな声を上げて、くノ一ちゃんは勢いよく立ち上がる。


「生命を救ってもらった事には感謝するッス!ですけど、素性不明の者と一緒には居られないッス!!」

「そう。では気をつけて帰るのですよ。」


ルナ様のあっさりとした別れの挨拶に顔を真っ赤にさせながら、くノ一ちゃんは馬車を飛び出した。

そして王都方面に街道を凄い速さで駆けていく。

・・・足速っ!やっぱり速さはあるな。流石なんちゃってくノ一。




なんというか・・・嵐のような少女だった。

あれだけの事をしたのに、自分勝手な事ばっかり言ってさっさと帰って行きやがって。礼儀がなっていねぇや。法皇様はどんな教育していらっしゃるんですかね?

・・・ロリさんに払った乗車賃くらい出して帰れっての。


「ルナ様。オモチさん、帰してよかったんですか?」

「いいわよ。充分に役目を果たしてくれると思うわ。」


・・・充分に役目を果たしてくれると思う、ね。

肩書からしてヤバそうな奴だったが、今後の活躍に期待って事ね。

つーか役目ってなんだよ。



・・・・・・なら僕も考えるのはいいか。

くノ一ちゃんは、カティの送って来た写真の獣人で間違いないだろう。

カティの為にアヌルスまで行こうとしていた人物だ。カティともそこそこの関係なんだろうし、また会うかもしれない。

・・・何だ、やっぱまた会うのか。はぁ〜、めんどくさ。



・・・そういや、カティの魔剣は折れたままだと言ったな。あの武術大会から折れたままなら、結構な期間になる。


「ルナ様、魔剣を直すのってそんなに大変なんですか?」

「そうねぇ。武器そのものを直すなら、鍛冶師に任せれば直してくれるでしょう。でも魔剣の効力まで元通りにするなら、ある物がいるわ。」


はぁん。魔剣ってのは壊れたら壊れたでめんどくせぇんだな。


『ご主人様、前にアヌルス鉱山で入手した赤い鉱石の事でございますよ。』

「え?・・・あぁ、あの赤い石の事か。」


(か、か、カワセミ!)

(・・・水芭蕉。)

『・・・・・・うるてぃもどらごん。』


技名でもねーよもう。



・・・あの赤い石は確か、アヌルス周辺やアヌルス鉱山に生息している岩男ゴーレムという魔物のドロップアイテムだ。

岩男かゴーレムどっちかでいいじゃんと思うネーミングだが、見た目は典型的な岩でできたゴーレムだ。

アヌルスに居た期間は短かったが2個も落ちたので、比較的落ちやすいアイテムだと思っていたのだが、アヌルスで世話になった鍛冶師のおやぢが運が良いなと褒めてくれてたな。

親切にも王都に行けばもっと高く売れると教えてくれたもんだがら、赤い石だけは取って置いたんだった。

う〜ん。やっぱり勇者が使う剣を修復するには赤い石を使うんやな。村一番の強いヤツと酒飲み対決しなくても手に入ったよ。


じゃあくノ一ちゃんは、目の前にお目当ての素材を持っている奴が居たというのに、何も知らずに帰っちゃったわけか。

でも僕が持ってると名乗り出ても、タダで持っていかれそうだったよな。何だかんだと言われてさ・・・。

じゃあ別にいいか・・・。それよりもカティが必要としているんなら、直接渡してやったらいい。




「・・・あら?オモチ様は?」

「もう行っちゃいましたよ。急いでいるみたいでしてね。」


ロリさんが帰って来たので、適当に返しておいた。

まぁ理由なんてなんでもいいだろう。


「はぁ・・・?まぁお忙しい方なんでしょうし、仕方無いですね。色々話を伺ってみたかったのですが。」

「女神教の事とかですか?」

「おや、やはりリョウ様は知っておられたのですね。まぁ、“トクモリ”というラストネームは珍しいですから。何故かミドルネームの方は隠されとったみたいですね。知っている者なら名前を聞けばすぐ分かると思うのですが。」


ふっ。僕は聞いても全く分からなかったがな。

それとも嫌味で言っているのかな?この腹黒幼女め。くノ一ちゃんの分の乗車賃返せ。



「ロリさん。一応聞いておきたいんですが、魔剣の修復に使うという赤い石は取り扱っていますか?」

「はわっ!・・・あー、ゴーレム血石ですか。あれは今駄目なんですよ・・・。」


あぁん?取り扱ってないじゃなく、今は駄目ってなんだよ?


「何かあったんですか?」

「・・・知らんのでしたらええんですけど。今、王国ではゴーレム血石の販売に制限が掛かってまして・・・申し訳ありませんが、お売りする事は出来ません。」

「それだけ?今は駄目って言いましたけど?」

「いや、今はお譲り出来ないって意味です。」

「じゃあ待てば売ってもらえる?」

「制限が解除された後なら。ですが、いつになるやら検討もつかんのです。」

「そこをなんとか。」

「無理やって。在庫ないですもん。」


・・・これはあれだ。

在庫はあるし、お得意先にはこっそり売っているな。

別にいらないんだけど・・・ここまできたらしつこくいってみるか。


『よし、イム。』

『・・・・・・むとうけいじ。』

『もうしりとりはいいわ!さっき負けてたろ!』

『ろーどうぉりあーず・・・・・・なに?』

『ちょっとロリさんに色仕掛けしてみよう。』

『なぜ?・・・・・・たぶん、コイツには、効かない。』

『そうか?随分とイムにお熱だったぞ?』

『ちがう・・・・・・コイツ、イムのこと、すきじゃない。』

『は?』

『何も、感じない・・・・・・何も・・・・・・リョウのとこ来る前の、ニンゲンたちと、いっしょ。』


・・・何を言っている?

従魔達は所詮魔物だしな。飼い慣らされてるとしても、中には怖がる人も居るだろう。

じゃあロリさんの今までの態度は嘘か?僕も客商売くらいならした事はある。大なり小なり口からでまかせを言うもんだ。

だが嘘だったら何が目的だというのだ?

動物嫌いなクセに見識を広める無茶をしているのか?

それとも・・・



「お嬢。」


イムの言葉に考え込んでいると、ガチムチ兄貴商人がロリさんを呼びにやって来た。


「すぐ行きます。・・・リョウさん、1つ伝えておきましょう。」


ロリさんは立ち上がり、背を向けながら僕に言った。

・・・ちょっと怒らせてしまったかな?


「もし、ゴーレム血石をお持ちであるなら・・・今の王都で売却する事はお勧めしません。」


全然違った。

どうやらありがたい忠告のようだ。


「一体なぜ?」

「今、ゴーレム血石には、販売制限の他にも輸入制限も掛かっているのです。他の町ならいざ知らず、王都で取引しようものなら、すぐに衛兵に捕まってしまいますよ。」


そりゃタイミングが悪いな・・・。



・・・いや、何かおかしいだろ。

本当に偶々タイミングが悪かっただけなのか?

カティに課せられた理不尽な卒業課題。魔王軍の来訪。出るはずのないドラゴンに襲われ危機一髪だった女神教法皇の娘。魔剣を直す素材の販売制限・・・。

全部偶然か?それとも繋がっているのか?


「・・・お恥ずかしながら、ウチらの商会でも原因となった情報を手に入れてないんですよ。眉唾な情報なら沢山ありますが・・・?」


そこでロリさんは何故僕の方を向く?

いらねぇよ眉唾な情報なんか。


「・・・もう1つ良い事をお教えしときましょう。アイテムボックスをお持ちなら、そこに入れておくと王都に入る時の検問で調べられる事はありません。これは意外に知らない人が多いんですよ。」


ほぅ、アイテムボックスにそんな裏技があるとは。

持っているところをバレたら捕まるらしいし、しっかりとアイテムボックスに入れておこう。

だが、何故アイテムボックスだと調べられる事がないのだろうか?



「・・・これで恩返しは出来たでしょうか?」


ニコッと可愛らしい笑顔を向けてロリさんが聞いてくる。

僕、ロリさんに何かやったっけ?

・・・あぁ、従魔の事か。


「十分です。おつりが出るくらいですよ。」

「それは良かったです。では、ウチはこれで。」


そう言って、ロリさんはガチムチ兄貴と一緒に前の方の馬車に向かって行く。



「・・・んふふっ。」


僕とロリさんの会話を聞いていたであろうルナ様は、小さく笑うだけで何も言ってこない。

今回立て続けに起きた事件の裏を、ルナ様は何処まで知っているのだろう?


・・・どっちにしろか。

時が来るまで何も教えてはくれないだろう。


アテにしたって駄目だな。

何が起きたって、全て乗り越えてやる・・・。


もうすぐカティの待つ、王都アノールだ・・・。




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