57話:修行が足りんぞ!ド○ン!!
・・・静かだ。
その森は騒がしい筈なのに、私の周りだけ時が止まったかのように静かだった。
葉を揺らす風の音も、小動物の鳴き声も、周りで戦っている筈の仲間達の声も、何も聞こえない。
私の類稀なる集中力がそうさせるのか。
今、私はかなりの集中力を発揮しているらしい。
悪霊の屋敷での経験が私の糧となり、私は明鏡止水への境地へと達したのだ。
コレが明鏡止水。見えちゃいましたわ水の一滴。マジで見える5秒前。マジ卍。
そして私は今、一匹の痩せこけた大型の狼と対峙している。
人間の肉を欲して彷徨う飢えたケモノが、私の喉に喰らいつこうと牙を剥き、威嚇する。
奴は今回遭遇した群れの中の一匹。タンク役の仲間を素通りして、愚かにも私を狙って来たのだ。
・・・いや、奴は愚か者では無い(豹変)
集団戦ではまず頭から潰す。理にかなった戦法だ。
確かに私はこのパーティーの司令塔。そして戦闘はあまり得意ではない。
だが弱い駒が強い駒を抑え、時間稼ぎをすれば、仲間達が他の魔物を倒し私を助けに向かって来るだろう。
やはり所詮はケモノ。貴様は愚かだ(豹変)
ただ、一つ誤算があるとすれば、このフォレストウルフは別に強い駒でもなんでもないという事だ。
フォレストウルフが私に飛び掛かって来た。
素早い跳躍、鋭い牙、見事な攻撃だと言っておこう。
だが私は明鏡止水の境地へと達している。故にフォレストウルフの素早い筈の攻撃は、コマ送りのようにスローだ。
スロー過ぎてあくびが出るぜ。ほらね、走馬灯まで見えて来たぜ。
ヨハンナさんのちっちゃいおてて。カティのウサギさんパンツ。リタのある訳が無い胸。やおい本を隠れて読むマルタ。
・・・おい。ロクな思い出なさ過ぎやろ。
それに何でそんなちっちゃい子ばっかり!
もっとセリスの腰回りとか、パーラさんの腰回りとか、ルナ様の腰回りとか、もっともっこり美女の下半身な思い出一杯あるだろう!!?
・・・いやいや、いやいやいや!!!!
走馬灯って死の直前に見えるんだよ!!!!
おおおおおおお!!!死ぬかバカヤロおおおおおお!!?
◆◆◆
「あんた、何やってんの?」
「明鏡止水の心よ。わだかまりや、やましさのない澄んだ心。それが明鏡止水。」
「あんた、血出てるわよ。」
なんだよ。それが人に己を超えた力を持たせることができるのに。
・・・助けるのが遅いんじゃいアラクネはんよぉ!首だけでも死守してなかったら危なかったぞ!
「メーコ・・・・・ちゃんと、リョウまもる。」
「・・・ふん。悪かったわね。こんなに弱いとは思わなかったわ。」
イムちゃんの熱い指導が、あの偏屈なメイコを謝らせた。
流石イムちゃん。わしの1番の従魔。
「リョウ、大丈夫?ごめんね、ちょっと時間掛かっちゃった。」
「いやいや〜、エリオ〜。ボク達のせいじゃないよ〜wwリョウが弱っちいだけだよね〜wwww」
そうやって馬鹿にしながらも、手を差し伸べて立たせてくれるリタちゃんが好きです。
「リョウ君、本当に大丈夫かい?頭から出てる血、凄いけど・・・。やっぱり、セリスさんが居た方が良かったんじゃない?」
「大丈夫ですフィリップさん。ギャグ漫画の登場人物はこんなもんでは死なないんで。」
「・・・相変わらず意味が分からないね。ほら、薬草。」
フィリップさんが薬草を手渡してくれる。
なんの意味が分からないですか?僕は探せばその辺に生えてる草や回復薬で、この重症が治る世界の方がよっぽど分からないね。
「うぷぷ〜wwリョウ一人で何個薬草使うの〜?」
「だまらっしゃい。リタが数が多いところに案内するからだろ。」
「ほらほら、喧嘩しない。リタちゃんも、今度は数が少ないところを頼むよ。」
「ぶ〜ぶ〜。リョウに合わせてたら面白くないで〜す。」
フィリップさんに注意されて、リタがぶー垂れる。
面白い面白くないで敵の数を決めてもらっては困るね。こっちにはか弱いリョウ君が居るんだからね!
「リョウ君も、もう少し・・・いや、無理なのかな?でも少しくらい強くなってる筈なんだけど・・・。」
フィリップさんよぉ。一緒にあれだけの死線をくぐり抜けたというのに、まだ僕の実力が分からないのかね?
悪霊の屋敷の中で、僕が一回でも戦いましたか?いーや戦って無いね。
経験値だけはしっかりと貰っていますよ。経験値だけは。
だから新しいスキルもゲットしたんですよ。マジ人間離れしたスキルがね・・・。
あの長〜い1日から、数日後の事だ。
たっぷりと英気を養った僕は、フィリップさんが泊まっている宿に行って、契約の延長を申し出た。
数ヶ月の予定だったところを、取り敢えず2〜3年くらいに。
果たしてそこまで長くして学ぶところはあるのだろうか?こういう事は勢いでするもんだ。ドーンといってみよう。
当然というかなんというか、フィリップさんは断わろうとし、お断りの言葉を並べている。
生命を救ってくれたのは感謝するけど、君達に教えれる事はもう無いよとかなんとか色々とあーだこーだと・・・。
えぇい!ガバガバ言うんじゃねぃっ!!
金ならあるんじゃい!と、ダミーダンジョンコアを2つぶつけてやった。
まだ足りねぇのかと金貨を投げてやろうと思ったら、フィリップさんの方から折れたので、これで契約成立である。
カネに物を言わせる交渉が出来る日がくるとはな。僕もデカくなったものだ。
そして翌日。
メイコの能力把握の為、冒険に出る事にした。
フィリップさんを入れると7人になってしまうので、誰を置いていくか考えていると、アンドニ達が居なくなって手持ち無沙汰になっていたエリオとリタを発見した。
ていうか、アンドニ達は知らん間に出て行ってしまったらしい。
僕はともかくとして、エリオとリタも知らんとは。
更にゲバルド氏まで知らんかったらしい。ヨハンナさんにだけ、モルガンが挨拶していったそうな。
マジくそ無礼な奴等だ、と罵るだけ罵ってやりたいが・・・あっちの世界の両親や兄弟達に何も言わず出て行き、帰らなくていいやと思っている僕が偉そうに言える訳が無いか。
・・・まぁまぁ。あっちの世界の事はどうでもいいんで。
まったくぅ、お前ら僕が一緒に行ってやらねぇと冒険も出来ないのかぁ?と謎の上から目線で、エリオとリタを連れて行く事にした。
という訳で今回のパーティーメンバーは、僕、フィリップさん、エリオとリタに、イムとメイコだ。
なんと今回はあのルシルがお留守番。しかも自らお留守番を願い出てきたのだ。
なんでも自分はご主人様のメイドだから、家を守る為に家事を勉強するとのことだ。そしてパーティーの方は、イムが居るから大丈夫だと言っていた。
いつの間にそんな信頼関係を築いていたのか。悪霊の屋敷でだろうか?
確かにイムは最後の戦いで頑張ってたけど、地下ではずっとビビり倒してたよ?あれのどこに頼もしさを見出したのか。
元魔王軍の偉い奴が、魔物界最弱の生物スライムを一目置いている姿を見えるのは我がチームだけ。
セリスは趣味の奉仕活動へ。
ルナ様がいつか言っていた、青竜教に負けてられないとか言って張り切ってたな。
なんか僕も調べてみたんだが、青竜教って大した事無いらしいじゃん。
女神教が負ける要素が無いと思うが・・・女神教も一枚岩じゃないみたいだしな。
あの強欲過ぎる女神様と、ガタガタの神子の家系。どうなるか分かったもんじゃないね。
ピノもお留守番。多分子守りをしている。
子守りといっても、やっている事は屋根の上からの監視だ。
やっぱこの世は物騒ですから。子供も商品となる世界でございます。
孤児院なんて特に狙う奴多いですからね。まぁこの孤児院は、鬼のようなおやぢが司祭やってるんで、なかなか狙われないですけどね。
狙う奴はよっぽどのアホか、ショタコンの変態おやぢ・・・後は銀色の狼だけだろう。
さて、メイコは既にモン娘形態となっている。
元はマスタ君の配下だったので、マスタ君から变化の事を教えてもらっていたらしい。
着る物もマスタ君が着せているので、魔物形態から変化した時のもっこりヌードタイムは無かった。
マスタ君めぇ・・・!やはりあの時殺して正解であったなぁ!
だが最初、メイコが出来た変化は、魔物形態と人間形態のみ。
上半身が人間で下半身が蜘蛛の体の魔物形態と、悪霊の屋敷地下で度々現れていた赤い着物の人間形態。
マスタ君よ!魔物の要素も残しつつ、人間の姿をしたモン娘形態の良さが分からんとは。やはり貴方とはいい酒は飲めなかったな!
よかろうもん。僕がモン娘を素晴らしさをメイコにみっちり教えておくから!マスタ君は草葉の陰で悶々としていればいいよ。
モン娘の素晴らしさを理解したメイコは、僕を軽蔑する目で見ながら変化をしたのだった。
・・・ふむ。やはりいい!僕のパーティーメンバーは純粋過ぎた!こういう目を向ける娘が一人くらい居たっていい!!
モン娘形態となったメイコは、見た目は赤い着物を着た人間であった。
だが瞳は魔物形態と同じ、白目の無い真っ黒な宝石のような眼だ。
足は人間と同じ。手も、ほっそりとした綺麗な手だ。
更に背中から4本のデカい蜘蛛の脚が生えている。
いや、あの・・・まんまアメコミヒーローじゃないですか?
・・・一応、背中の4本は出し入れできる。いつか聞いた、骨が折れるような不快な音と共に。
いや・・・出し入れできてしまったら余計に近付いちゃって・・・。
メイコの不満なのかと訴える目で睨まれると、なんにも言えなかった。
いやまぁ・・・美女だし。和服だし。蜘蛛の糸は腕だけでなく色んなところから出せるらしいし。
被ってないよ。全然。まずこっちは魔物だからね。ホント。マジで。
「前方に〜、ハーピー4〜。桃モモンガー3〜。」
いや、多過ぎやろ。
フィリップさんの話聞いてたか?
「・・・・・・余裕。」
「問題ないわ。」
うちのモン娘達は強気でいらっしゃる。
君達は余裕でも、主人は余裕でないのよ?
「えーっと?・・・な、何かなコレは?行っても大丈夫なのかな?」
フィリップさんが僕の方を見て戸惑っている。
・・・いや、正確には僕の周りをフヨフヨと漂っている、まあるい3つの炎を見て。
この状態の僕を見て、何を以て良しと思ったのか知らんが、フィリップさんが魔物の群れと戦う事を決めたようだ。
エリオとイムが前に出る。それを追うようにリタとメイコが行く。
さっきのフォレストウルフの群れと同じ戦い方である。
であるからして、さっきと同じように桃モモンガーの1匹が、前に出た仲間達を無視して僕の方に向かって来る。
魔物界最弱のスライムにすら勝てない僕は、フォレストウルフにも桃モモンガーにも勝てる訳はない。
が、僕だってさっきの全身金色に輝いたつもりになっていた僕とは違うのだ。
今の僕にはこのフヨフヨと漂っている、まあるい3つの炎が・・・あれ?大丈夫だよね?
実は僕も初めてなのだ。
話だけは聞いていたけど、実際に見るのは今が初めてだ。
桃モモンガーはもう目の前だ。滑空して突撃してくる。
そこで遂に3つの炎のうち、2つが動いた。
2つの炎は僕の前に陣取り、桃モモンガーの突撃を防御するように立ち塞がる。
桃モモンガーと2つの炎が激突するが、力は互角だったようだ。全員がそれぞれに吹っ飛び、地面に転がる。
もう1つ残っていた炎が、火属性魔法を発動させる。
地面に転がっていた桃モモンガーが突然燃え始めた。
これを好機とみたか、地面を転がっていた炎も立ち直り、3つで桃モモンガーをタコ殴りにしている。
僕はその健気に戦う3つの炎を見守っていた。
・・・・・・なんだこの謎の生物達は?
桃モモンガーとかち合って目を回しているくらいだから、そんなに強くは無い。だがなんかマスコット的な可愛さはある。
遂に、3つの炎は桃モモンガーを倒したらしい。
動かなくなった桃モモンガーを放置して、僕の周りに戻って来た。
「お・・・おーし、良くやったぞ、皆の衆。」
(^v^)
(^v^)
( ´o`)
わ、笑ってやがる・・・!!
そう、この炎達にはシーツゴーストよろしく、油性マジックで描かれたような顔がある。
顔がなかったら人魂のようなカッコよさがあるのだが・・・相変わらずこの世界のホラーは可愛らしい。
「上手くいったのね。」
仕込み杖を持った着物美女が戻って来た。
どうやらあっちも片付いたらしい。
因みに、メイコの持っている仕込み杖は、あの悪霊の屋敷で拾った仕込み杖。
僕が使っても全然斬れなかったからいいんだけどさ・・・。あんなにカタナを持った姿が様になってると、あの仕込み杖はメイコの為に用意してあったんじゃないかと思う程。
僕のカタナで戦う夢は早くも崩れ去った。
「ああ、しっかり魔物を倒したぞ!」
「あんたは何もしてない。やったのは私の式神。」
そうだ。この僕の周りをフヨフヨ漂う3つの炎。これは、メイコのとくぎである、式神だ。
あの陰陽師が使役している使い魔的なやつだ。
普通のアラクネには無い技らしいので、メイコがレア種だから持っているとくぎだな。
「リョウ君、お疲れ様。翡翠の湖が近くにあるから休憩しようって話になっているけど、いいかな?」
「あ、はい。僕もそれでいいですよフィリップさん。」
「・・・リョウ君、もう従魔が増えたのかい?今度はオニビダマが3匹も?」
「あ、いえ、これは違うんです。これはこのメイコの能力でして。」
「能力?・・・へぇ、じゃあ従魔とは違うのか。 確かにリョウ君の従魔は変わった魔物ばかりだもんね。このオニビダマは普通だし。」
なんだよその判断基準。
悪かったな。スライムも狼もハーピーもアラクネも天使も変で。
◆◆◆
懐かしの翡翠の湖まで移動してきた。
懐かしいな。ここでルシルやイムと会ったんだ。
僕達の他にも、冒険者が休憩している。やっぱココはいいよな。景色もいいし、水も綺麗で。
それぞれが休憩する中、3つの炎は相変わらず僕の周りをフヨフヨしている。そして相変わらずニコニコしている。
フィリップさんが言うには、コイツらはオニビダマという魔物に似ているらしい。
いや、実際オニビダマという魔物なのかな?
レア種じゃないからなのか、メイコの式神だからなのか、コイツらの考えている事は全然分からない。
「メイコ、なかなか有用そうな能力だが、なんで僕達と戦っていた時は使わなかった?」
「・・・使ったわ。あの時は冒険者のユーレイを式神として使役していたの。」
冒険者の幽霊を使役?
・・・ああ!?あの!?
剣とかメイスとか持ってた奴等か?フィリップさんが知り合いの冒険者だったって言っていたやつ。
「魔物とかじゃなく、幽霊まで使役出来るのか。 ・・・えっと、じゃあメイコ。あの冒険者達はどうしたんだ?」
「あの使役していたユーレイは知らないうちに居なくなってたの。あんた達が倒したんじゃないの?」
あれはセリスが倒していた。
でも、倒したように見えたんだけど、ルナ様が言うには、あの攻撃で昇天したんじゃないらしいんだよな。
他の幽霊は倒した時点で、ダンジョンのシステムからは逃れられたみたいと言っていたし、あの冒険者達の幽霊も、セリスが斬った時点でメイコの式神の契約から逃れられたのかも。
えーっと、セリスが幽霊を倒した時は、メイコは死んでる最中だったな。だからメイコの知らないうちに、冒険者の幽霊達は自主的に昇天していったのかな。
もしくはメイコが1回死んでしまったからとか?
まぁなんにせよ、冒険者達の幽霊はメイコの元から居なくなったみたいだ。
「じゃあ、このオニビダマ達は?悪霊の屋敷には生息していなかったと思うが?」
「・・・あんた本気で言っているの?最低ね。」
なんで僕がここで最低になるのだ。
最低ばっかり言われてるけど、これ以上低くならないのではないか?
「こいつらはユーキ達よ。見てわからないの?」
「ほぉ、そうなのか・・・・・・は?」
・・・メイコは何を言っている?
ユーキ達ってあの結城さん、神さん、山本さんだろ?
結城さん達は幽霊だぞ?この世界には存在しないらしいから、連れて来れなかったんだ。だから、悪霊の屋敷と共にお別れしてきたんだぜ?
僕のパーティーメンバーは全員見ている筈だ。
あの悪霊の屋敷が消えていくのを。生きている人間が居なくなって、跡形も無く消えていったんだ。
百歩譲って、結城さん達が悪霊の屋敷から脱出していたとしよう。
でもあの人達は元人間だから。脱出できていても、人間で出て来るだろう。
魔物になるって事はないだろうよ。マスタ君の幽霊の概念を作るとか、魔物を合成してレア種を作るのとかとは違うベクトルの話だぞ。
「・・・なんで魔物に?確かに、ニコニコしていて陰気臭くないのは似ていると思うが。」
「似ているもなにも、本人達よ。」
メイコはどうしても、このオニビダマを結城さん達だと言うらしい。
ふ〜む・・・当然だが服を着ていない。
ホラー感も無ければエロスも無い。
普通の魔物だから考えている事も分からないし、喋る訳も無い。あるのはマスコット的な可愛いらしさだけ。
確かに数は3。ニコニコしているのが結城さんと神さんで、ちょっと陰気臭いのが山本さんだ。それだけは間違い無い。
「悪霊の屋敷を出る時に、ユーキ達を契約しておいたのよ。私だってこう上手くいくとは思っていなかったわ。」
「契約しておいた?おい、メイコ。結城さん達の意思は無視したのか?」
「馬鹿じゃないの?双方合意じゃないと契約なんて出来ないわよ。」
そんな事言われたって式神の契約なんか知るかよ。
そうか、結城さん達がねぇ・・・。
消滅するくらいならと思ったのか、僕達の事を気に入ってくれたのか・・・。
「魔物になったのは・・・メイコがやったんじゃないんだな?」
「そうね。私がやったのは、契約して悪霊の屋敷から連れ出しただけ。」
一体どういう事になったんだろう。
メイコがダンジョンから出て来た時には、青白く無くなっていた。
で、この前ルナホのつよさで見たメイコの能力がこれだ。
とくぎ:アラクネの糸(劣)、✕✕✕✕、式神、アイテム作成、变化
まほう:
とくせい:✕✕✕✕、物理弱点、水属性弱点、氷属性弱点
明らかに異様な、この“✕✕✕✕”というスキル。
僕はこれの事を、幽霊関連のスキルだと思っていた。
ダンジョンの外に出た事で幽霊でなくなり、スキルが使えなくなり、✕✕✕✕という表記になったのだと。
では結城さん達はどうだろう。
メイコとは違い、純粋な幽霊の彼女達。式神の契約をしてたとはいえ、幽霊でなくなったとなったら・・・。
スキルが消えるどころではないだろう。やはりセリスが言っていたように、存在できなくなってしまうのでは?
でも実際は魔物になって出て来たと。
・・・そうだな。やっぱり意味分からん。
別の生き物だからなぁ。それこそ転生でもしない・・・と・・・・・・?
「何?」
「・・・いや。なんとなくだが理由が分かったかなと。おそらくだけど、幽霊を魔物に出来る人を知ってる。」
「そう・・・その人、良い人なのね。」
「そうだな。」
メイコが少し微笑んだように見えた。
まぁ、人じゃなくて女神様なんだけどな。
メイコはまだ会った事ないか。そのうち会って、ルナ様のおかげだと分かるだろう。
まだ確定ではないが、おそらくルナ様がやってくれたんだと思う。
何故そこまで・・・何か理由があるのか、ただの気まぐれか。
取り敢えず純粋に感謝しておくとしよう。
もう無理だと思っていたのに、結城さん達が仲間になってくれたんだからな。
「・・・・・・リョウ。」
暫くして、イムがひょっこりと顔を出した。
「リタ、もう出発しよう、いってる。」
「ん〜・・・。」
メイコが隣で趣味の編み物を始めだすくらいには時間は経ったようだ。
けど、あっちでフィリップさんが爆睡中である。
酒でも飲んだのかもしれんが、あの人も一応病み上がり・・・というか死に上がりみたいな感じだしな。
「悪いイム、もうちょいだけエリオとリタの相手しててくれ。結城さん達も連れて行っていいから。」
「・・・・・・ユーキ?」
イムは小首を傾げて、結城さん達をじーっと見ている。
結城さんと神さんも負けじとニコニコしている。・・・つーか、全然オニビダマ達の顔が変わらないが・・・もしかして顔じゃない?
「・・・・・・リョウ。コイツら、私はユーキとジン、こっちは同族のヤマモト、言ってる。・・・・・・ほんとに?」
本当に?本当にそんな修行中の魔女みたいな紹介した?
ていうか、会話出来るんだ・・・。
そりゃそうか。魔物同士なんだしな。
「本当だよイム。彼女達は外まで付いて来てくれたんだよ。」
「ん・・・・・・。じゃあ、くる。リタに紹介、する。」
イムは嬉しそうに小躍りしながら、結城さん達を連れて行った。
イム・・・可愛いやつめ。
でも、出来ればエリオも思い出してやってくれ。
「・・・一応、疲れるのよ。」
「ん?何がだメイコ?」
「式神を出しっぱなしにしておく事よ。・・・今日は特別。ユーキ達も、喜んでるから。」
「あ、あぁ・・・マジか。そりゃ無神経だった。すまん。」
そりゃそうか。メイコの能力で出しているんだもんな。出しっぱなしにしておくと、MPを使い続けているという事かな。
・・・メイコの能力は多少、欠陥があった。
✕✕✕✕という消えてしまったスキル。
イム、ルシル、ピノには無かった、(劣)が付いているスキル。
そして、後から調べて分かった事だが、アラクネが物理に弱いなんてデータはない。それでも付いていた、物理弱点というスキル。
何故こんな事になっているのか。
おそらくだが、メイコが普通の方法で生まれた訳じゃないからだろう。
通常とは違う、マスタ君が勝手に作った魔物合成で生まれたレア種だ。その影響が出ているのかもしれない。
アラクネの糸(劣)は、文字通りの糸を出すスキル。
アラクネの攻撃方法は少なく、粘着く糸を飛ばしての行動阻害と、下半身での牙攻撃くらいだ。
言ってみればアラクネの生命線ともなるスキルだが、メイコにはそのスキルが上手く使えないのだ。
糸を大量に作ると、ぶっ倒れてしまうらしい。蜘蛛の巣を作るなどもってのほかだそうだ。
ダンジョンで体育館全体に巣を作っていたのは、マスタ君に無理矢理に作らされたらしい。・・・マスタ君、どこまでもヒドい奴だな。
だから、メイコに本来のアラクネの戦い方は出来ない。
・・・と思っていたのだが、なんとコレは解決していたらしい。
すっかり忘れていたメイコのドロップアイテムを、メイコ自身が使う事で解決していたそうだ。
何で主であるわしがその事を知らんねん・・・。だがこれに気づいたのは、まだあとの話である。
そしてもう1つ、レア種の証である珍しいスキルの2つ目、アイテム作成。
メイコは自分の糸を使って、アイテムを作り出す事が出来る。道具、防具は勿論、なんと武器も。
メイコは冒険には連れて行かず、孤児院に残していた方が良いのではないか。
セリスや他のモン娘達は、メイコの能力を知った時そう言っていた。
僕もそう思っていた。体が弱いのに、無理する必要は無いと。
それを聞いたメイコは、「そうね。」と素っ気なく返事をするだけだった。口癖のように言っている“最低“も使わず、哀しい顔をして。
・・・この時の僕はなんでこんな事を言ったんだろう。めちゃくちゃ後悔したもんだ。
メイコだって、他のモン娘達のように役に立ちたいと思うに決まってるじゃないか。
だから僕は考えた。メイコが他のモン娘達と並んで戦える方法を。
・・・まぁ考えたって言う程大した事してない。ステータスを見て模索してみただけだ。
まず、メイコは瞬発力が凄い。
あの細い体のどこにそんな筋肉があるのか知らんが、瞬間的にみせる速さは、この神の目を持つ私でも追えない程だ。
そして、僕の従魔になったレア種には、もう1つ強みがある。
武器を持たせるのだ。
そうさ、この仕込み杖。座頭市よろしくのソードステッキ。
メイコの瞬発力に仕込み杖が合わさるとどうなるか?
そらもうアレよ。目にも留まらぬ抜刀術の誕生よ。
イムなんかがそうだが、モン娘達は武器を渡した瞬間に、昔から使ってたかのように使い出しやがる。
いいよいいよ。やっぱり僕が使う武器じゃなかったんだよ。
なんだよ、喜んで損したわ。あんな棒切れ振り回せるかっつーの。腰いわすわ。
・・・まぁこれでメイコは戦えるようになった。
今日初めての実戦だったが、上手く戦えている。
「・・・なぁ、メイコ。」
「・・・何?」
面倒くさそうに返事をするメイコ。編み物に夢中でこっちを見もしない。
・・・まぁ、元々目なんて見てくれないが。
「メイコはさ、僕に付いて来る事になって良かったか?」
「・・・なんなの?また私が役立たずって話?最低ね。」
なんでそうなる。
「いや、メイコは役立たずなんかじゃないよ。勿論、失敗作なんかでもない!絶対ないさ!」
「・・・ふん。何、急に?気持ち悪いわ。」
ふっふっふっ。そんなつれない事言って。実は嬉しくてニヤニヤして・・・・・・してない!?
なんだコイツは!?本当に気持ち悪いと思っているというのか!?あんなにクサいセリフ言ったのに!!
心持たんかもしれん・・・でも負けないよ!
「いやでも、ホントに思ってるんだよ?僕よりも全然強いし・・・。」
「・・・ふん。確かにあんたよりは何倍も強いわね。ありがと、元気出たわ。」
くっ・・・!!?どのセリフで鼻で笑ってんねん。
コイツやっぱ性格悪いやろ。ルナ様といい勝負だわ。
「・・・別に私に気を使う必要無いわ。私をあの場所から解放してくれただけで感謝してる。例えその後が、あんたの下でもね。」
・・・こういう事を言う娘が一人くらい居たっていいと言ったな?アレは嘘だ。
なんだろう・・・メイコと一緒にやっていけるのかな・・・。
あぁ。イムに甘やかされたい。ピノの足を眺めていたい。ルシルのメイド服触っていたい・・・。
「・・・・・・ほら、出来たわよ。あんたが血の涙流してまでくれたカタナの代わり。」
そう言って、白い棒状の物を手渡してくるメイコ。
ち、血の涙まで流してないやい!確かにあげたくなかったけど、自分で使えないんじゃどうしようもないじゃん!
・・・って、仕込み杖の代わりが白い棒って何だよ?
コレってちょっと前からメイコが作っていた編み物だろ?なんでコレが武器の代わりになるんだ?
訝しく白い棒を見てみる。
30センチくらいの白い棒・・・この色は、メイコの糸で作られているから白いのか。
太さは仕込み杖と同じような細さで、丁度握りやすい。
仕込み杖と同じ・・・?
あっ!?もしかして・・・。
棒の端と真ん中を持って、抜いてみる。
中から出て来たのは、白い刀身。・・・全部が同じ色。全体が白い色の、真っ白の短刀だ。
「全部私の糸でできているから、脆いわよ。斬るのは難しいと思うけど、刺すくらいなら出来るわ。」
なんと・・・メイコは僕の武器を作ってくれていたらしい。
確かにメイコの作っていた編み物は、明らかにマフラーとかセーターとか、そんな物を作っている気配ではなかった。
それがまさか武器だったなんて・・・アイテム作成のスキルってあんな風に使うのか・・・。
・・・・・・いや・・・いやでも、コレさぁ。
分類としては日本刀だと思うよ。でもコレはドスじゃん?
ヤ○ザ者の方々が使うやつですよね?明らかにサムライじゃなくて、町人とかが護身用に持ってるやつですよ?
これ鉄砲玉かなんかで、体当たりしながら刺すやつだよね?
君行けるかい?魔物相手にコレを小脇に抱えて体当たりするんだよ?相手がまぁ爪ネズミならいいとしようや、お前コレをクッコロオークとか怪力ベアーに出来るかい?アイツらは刺したって平然として殴り返してくるよ絶対。自殺行為だよ。必死でルシルあたりが止めに入るぞ。
「・・・なんなの?迷惑だったんなら言えば?」
「そんな事ない!マジ嬉しい!いやぁ〜、丁度欲しかったんだよこういうの!!」
「・・・そうよね。貰ったカタナは精巧だし良い素材だもの。私の脆弱な糸で作った武器なんて邪魔よね。」
「ノオオオオオオ!!!そんな事言って無い!!心の中でも言って無い!!マジイケる!天下取れる!鉄砲玉でもなんでもなるから!!」
「・・・そう。じゃあ使って。壊したら許さないから。」
・・・・・・・・・・・・。
「前方に〜、クッコロオークが2〜、怪力ベアー1〜。」
「怪力ベアーか、じゃあみんな、慎重n・・・」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!タマとったあらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「りょ!リョウ君!!!??」
その後、リョウの行方を知る者は誰もいなかった・・・
最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ
第4章終了です。




