56話:まったく、女神様は慈悲深い
今日1日色々あったな・・・。
悪霊の屋敷の地下を攻略して・・・メイコを従魔にして・・・ダンジョンも制覇して・・・祝勝会を開いてもらって、フィリップさんの過去の話も聞いて・・・フィリップさんが何者かに襲われた。
疲れている筈なのに眠れない。
今日は睡眠時間も少なかったんだけどな。
スッキリしない事が多い。このまま勢いだけで行っていいものだろうか。
気付いたら孤児院の裏庭に出ていた。
いつもの場所である。
もう夜でも暑くなってきたな。また、夏がくるなぁ・・・
夏が来るぅ〜。きっと夏が来るぅ〜。真っ白な馬に乗った王子様がぁ〜。
「・・・貴方ねぇ〜、悩みが多くて可哀想だから来てあげたのに、えらく能天気じゃないの。」
あ、暗躍が趣味の女神が生えてきた。
何も無い空間から突然現れる。我らが女神、ルナ様である。
「珍しいですね。悩みを聞きに来て頂けるなんて。」
「そうかしら?リョウの困った時には必ず現れていると思いますけど?」
ヒーローかな?
いや、必ずでは無い。でも助けても貰ってはいる。微妙。
「そうですね。僕だけはよく気にかけてくださっていて、助かってます。」
「あら?思うところがあるのかしら?」
そりゃあ母国の言葉で断末魔を聞けば、思うところも出てくるでしょうよ。
「・・・いいでしょう。今日はなんでも聞いてあげましょう。」
「じゃあ女神様のスリーサイズを。」
「上から110.110.110ですわ。他には?」
・・・なんでも聞くけど、真面目に答える気は無いらしい。
「・・・んふふっ。だったら貴方も真面目に質問するのね。 どちらを聞きたいのですか?悪霊の屋敷のダンジョンマスターの事?それとも、ピース=アロマライトの事ですか?」
「どちらもです。」
「んふふっ。欲張りさんね。」
丁度いい機会だし、聞けるだけ聞いておこう。
次にいつ気まぐれを起こしてくれるか分からないし。
「貴方の想像通り、悪霊の屋敷のダンジョンマスターは、貴方と同じ世界から来た者ですね。あの者の希望で、ダンジョンコアへ転移させました。」
「転移?ダンジョンコアにですか?」
「ダンジョンの核の中に入れるのですよ?転生では出来ませんわ。」
ダンジョンコアの中に入っていたのか。
あっちの世界の姿のまま?ダンジョンコアの中ってワンルームとかなんだろうか?
「・・・そうですね。部屋みたいなものですわ。」
「その部屋に住みながら、ダンジョンの経営をしてたんですね。」
「そうね。私が開発したダンジョン経営システムを使ってね。」
そうか。そんな道もあったんだなぁ。
「あの、僕はどうなりたいかとか希望を聞いてもらえてないんですけど?」
「聞きましたわよ?転移か転生どちらがいいかと、しっかり言いましたわ。」
ダンジョン経営とかは全然言ってないじゃんよ。
僕だってダンジョンとか・・・いや、まぁ今の方がいいか。
ルナ様は溜息を一つ吐くと、僕に何かを投げてきた。
ペットボトル・・・お茶だ。
自分はいつかのクソデカ湯呑みを取り出して、熱いお茶を飲んでいる。
「・・・ダンジョンもね、別に楽じゃあないのよ?まぁ、リョウなら上手くやったかもしれませんが。」
そうかなぁ・・・。
一応、今でも6年間は生き残れてはいるが。
更に、ダンジョン制覇なんていう偉業も成し遂げはしたけど。
詳しく聞いた訳ではないが、異世界転移転生の先輩方は不甲斐ない結果に終わっていると聞いている。それに比べると良くやっているんだろうし、そういう評価にもなるのか。
「あの子も・・・そうね。才能もあったみたいだし、上手くやっていたのかしらね。でも、結局は1年で駄目でしたわ。」
「才能ですか?あっちの世界のゲーム丸パクリでしたよ?」
「んふふっ。個性的では無かったわね。でもあれはあれで効率はいいのよ。」
ルナ様お手製ダンジョン経営システムではそうなんだろう。やる予定の無い僕にはどうでもいい知識だ。
「でもそうね。同じ世界から来た人間の事を考えていなかったわ。あっという間にリョウに仕掛けを解かれてね。慌ててあんな対応しちゃ駄目よね。冷静さを欠いて、自分で首を締めちゃったもの。」
「やっぱ一部始終観てたんですね。」
「そりゃ観てるわよ。あの子の最後だったでしょう?」
そう、最後だった。
名前も姿も知らんが、かつて同じ世界の同じ国に住んでいた人間の。
ルナ様はまた大きく溜息を吐く。
「・・・別に貴方だけを贔屓している訳ではありませんわ。私が異世界から転移や転生させて来た者達は、みんなちゃんと気にかけていますよ。」
「それにしては、どちらもピンチだった場面に、いいタイミングで数珠を頂けましたね。」
「あの数珠は・・・冗談のつもりだったのよねぇ。まさか本当に幽霊に効果があるなんてね。」
・・・聞きとうなかったなその話。
という事は、いつものように僕からカツアゲした訳だ。ボロい商売やで。
「・・・まぁ数珠の定価はどうでもいいんですよ。結果的にあの数珠とセリスの大鎌が攻略の鍵になりました。そして僕は生き残り、ダンジョンマスターをやっていた奴は・・・死にました。」
「そうね。」
「やっぱりルナ様は、このままいけば僕がダンジョンマスターを殺す事になると思ってやったんですかね?」
「数珠は冗談とはいえ、そういう事になるわね。ショックでしたか?」
なんかあっさり認められたなぁ。
つまりルナ様は、悪霊の屋敷のダンジョンマスターが死んでもいいと思った。自分で異世界転移して連れて来たのにだ。
「ショックもそりゃありました。・・・でもそれ以上に覚悟が足りなかったなぁと。」
「覚悟?」
「なんて言うんですかね。僕の好きなように生きる覚悟って言うんですかね。僕のこのクラスで冒険者になろうとすると、必ず他の生命を奪う事になります。魔物は勿論ですし、盗賊とか現れたら、同じ人でも殺さなきゃいけない時もあるでしょうし、他のダンジョンにも行く事があるでしょう。 僕、どこかで覚悟したつもりだったんですけど、やっぱ人を殺すって覚悟は出来て無かったんだなぁって。だから、ダンジョンマスターが日本語で叫びながら死んだからって、殺す必要無かったんじゃないかって動揺して、ルナ様が僕に殺させようと仕向けたんじゃないかって考えちゃったりして・・・。」
カティもどきのロイドとかいう人が死んだ時に、覚悟は出来たと思っていた。
でもあれじゃあ全然出来ていなかった。
どこか他人事だっのか。それとも、今回死んだのが日本人だったからなのか。
「リョウ、覚悟なんか簡単に出来る訳ないわ。それがあちらの世界に住んでいた者の普通よ。」
「そりゃそうですが・・・。」
「んふふっ。こういう葛藤をする物語はいっぱいあるものね。貴方、自分はあんな事にはならないとか思っていた口でしょ? んふふふふっ、恥ずかしー!貴方はそんな強い人間じゃないわよ!」
・・・くっ、人の心を簡単に抉ってきやがる!
ちょっと思ってたよ!その根拠のない自信を打ち砕かれたんだよ!チクショーー!!!
「んふふっ、恥ずかしがらなくていいのよ。この世界に来る者は大体みんなそんなものですわ。」
と言っているルナ様の顔は、馬鹿にしたように笑っている。
ムカつく。
「・・・そ。大体、ね。大部分は貴方のような平々凡々な者達なんですよ。」
今度は子を慈しむ母のような、優しく微笑む顔に変わる。
ふつくしい・・・。だが、どこか悲しそうでもある。
「そうね、本当は適当にはぐらかすつもりだったんだけど、悲しい気持ちさせちゃったお詫びに、悪霊の屋敷のダンジョンマスターがどんな子だったか話してあげるわ。」
またなんか悪い事言ってる・・・。
なんでも聞くとは一体・・・。
「セリスにも一応口止めしていたんだけど、無駄になったわね。まぁセリスは誤魔化すのが下手だから、あまり意味は無いわよね。」
そういやダンジョンマスターが死ぬ時は知らんぷりしてたな。
いつ話し合ったのか知らんが、セリスもダンジョンマスターを殺すのは同意してたと。
「もう一度言いますけど、悪霊の屋敷のダンジョンマスターは貴方と同じ世界、同じ時間、そして同じ国で生きていた人間よ。あちらでの人生は教えられませんけどね。」
そうなのか。プライバシーの侵害とかかな?
なんかルナ様の言い方だと、僕達の世界とは他の世界からも異世界転移とかしてそうだな。
まぁいいけど。関係無いだろ。
悪霊の屋敷のダンジョンマスター・・・長いのでこっからはマスタ君と言わせてもらう。
マスタ君は僕と同じ世界の住人。僕と同じようになんらかの適正があり、選ばれし者となったので、異世界へ飛ばされる事に。
マスタ君が異世界に来たのは1年半くらい前。僕の後輩にあたるそうです。
僕の時は、転移か転生どっちか選べや。チートは言語喋れるだけな。さぁ野垂れ死んでこいや。スタイルだったが、マスタ君の時は意見も聞いてそこそこのラインナップの中から選ばしてあげたらしい。
マスタ君よ、ルナ様のその対応は、僕の活躍があってこそだという事を忘れるな!あの世でな!
ダンジョンのマスターになることを選んだマスタ君は、ダンジョンコアとかいう優良物件にお引越し。
そこで助手の天使様とダンジョン経営システムの研修、ダンジョンの製作を数ヶ月間行い、準備ができ次第、マルスルナに出店という運びになると。
なんだか聞いている限りでは面白そうなダンジョン経営。
しかも助手に天使様が付く高待遇っぷり。僕の時とはえらい違いよ。
僕はまず孤児院で目覚めたからね。両親は既に他界。勿論もっこりな天使様は居なかったよ。居たのはやたら懐いてくるハナタレ馬鹿だけ。
まぁこれはルナ様お手製ダンジョン経営システムがあるからだ。ダンジョン経営を選んだ人には通常プランなんだそうだ。
それでは、これからマスタ君のダンジョンマスターへの道が始まります。
胸くそ悪いので、苦手な人はブラウザバック推奨。
まずマスタ君。研修もそこそこに、助手の天使様を同人誌みたいに襲います。
なかなかいい趣味の性癖でいらっしゃるのと、異世界転移のおかげで無敵の人となったマスタ君。退廃的な生活を送ってしまいます。
ダンジョン経営はポイント制だそうで、最初に女神様からダンジョン20〜30階層分の初期ポイントを頂けます。
ですがマスタ君。その初期ポイントのほとんどを自分の欲望に使います。
勿論、性欲ですよ。自分の肉体を改造してみたり、性的な目的の為に魔物を召喚してみたり、天使様の調教に使ってみたり・・・。
最終的に助手の天使様は色んな意味で壊れてしまいました。使いものにならなくなったそうです。
助手の天使様の話をするルナ様は、すまし顔でしたが、目がマジで怖かったです。
マスタ君がルナ様の怒りを買ったのはこれだな。
その後は助手の天使様の話は出てきませんでした。どうなったのか?あまり聞く雰囲気ではなかった。
マスタ君の快進撃は止まりません。
遊ぶポイントの無くなったマスタ君は、ダンジョンをマルスルナに初出店。パイマーン前本店“悪霊の屋敷”が新規オープンされました。
地上4階の小規模ダンジョンでしたが、アイデアが良かったのか運が良かったのか。高ランク冒険者に瞬殺される事も無く、探索終了宣言が出され、初心者向けのダンジョンという安定した集客が約束されました。
だがこれで数年は安泰でしょうが、安心は出来ません。
高ランク冒険者は滅多に来なくなったといっても来る時は来るし、大型ルーキーの登場だってあるでしょう。
早々にダンジョン増強の為のポイントを獲得し、立派なダンジョンにせねばならないのです。
まずマスタ君が始めたのが、ダンジョンに来た冒険者を囚える事。
ダンジョン内に牢屋を作って、探索に失敗して大怪我を負った冒険者を囚えていたそうです。
ダンジョンのポイントを得る方法は様々あるそうですが、ダンジョン内に人を監禁しておくのも、その一つだそうです。
しかし、監禁でポイントを得るのはあまりよろしくない方法なんだそうだ。
その欠点とは、行方不明の人間を探しに、より強い人間が来てしまう事。ルナ様的には非推奨の方法だ。
しかしマスタ君にはどうしても人間を監禁したい理由があり、譲れなかった。
その理由は、勿論劣情を発散するためである。
マスタ君のどうしょうもない性癖は、あの牢屋での惨状を見れば容易に想像できてしまう。
牢屋に痛めつけた男性を入れ、その対面の牢屋に知り合いの女性を入れ、別の意味で痛めつけ、男性に見せ付けていたのだろう。
と、この推理を自慢気にルナ様に話したら、ドン引きされた。あれ?違うの?・・・合ってるんかい!じゃあドン引きすんなや!
続いてマスタ君は、ルナ様お手製ダンジョン経営システムを改造しました。
研修もロクに受けずに、ダンジョン経営システムの一部を改造してしまう・・・ルナ様が、才能があって上手くやっていたと一応褒めていたのは、このためである。
マスタ君はシステムを改造し、この世界には無い筈の幽霊を、ダンジョン内限定ではあるが作ってしまう。
・・・なんかとんでもない事をしてないか?
幽霊という概念を作ってしまったという事だろうか?
マスタ君はそんなに凄いのか・・・いや、多分ルナ様が開発したっていう経営システムの方がぶっ飛んでいるんだろう。
肉体を改造したり、魔物を召喚したりって言ってたし。確かによくよく考えるとぶっ飛んでいる。
ここまで説明されると、悪霊の屋敷でセリスに説明された事と繋がってくる。
幽霊は、改造された経営システムでその存在が作られた。
幽霊の元になった人間は、マスタ君が散々痛めつけた後に殺した、囚われの冒険者達。
召喚した魔物と同じように、幽霊も従える。
幽霊の服装も、学校の雰囲気に合わせてマスタ君が変えたのだ。
マスタ君は、冒険者を監禁してポイントを得て、お楽しみの時間を過ごし、飽きたら殺してポイントを得た後で、幽霊としてダンジョンを守らせる。一石四鳥のシステムを組んでしまった訳だ。
更にマスタ君は、上位種とは違う、より強力なボスの作成に取り掛かる。
マスタ君が新たに考えた改造システムは、魔物の合成。
魔物と魔物を混ぜて一つの珍しい魔物を作る・・・所謂レア種を作ろうと彼は考えたのだ。
如何なルナ様お手製ダンジョンシステムでも、レア種を狙って作る事は出来ない。通常の魔物を作り出した際に、運が良ければレア種が生まれる。文字通りの珍しい現象なのだ。
なんという事を考えるのだろうマスタ君は・・・だが、コレはマスタ君的には失敗に終わっていたそうだ。
マスタ君が魔物の合成で作った魔物は2体。
勿論、合成に使った片方は、物理も魔法も受け付けない幽霊だ。
最初はオヤマノモンキーと幽霊の合成魔物。
結果は失敗。体は青白くなったが、幽霊の能力を少しだけしか引き継げていないオヤマノモンキーが出来上がった。
次はアラクネと幽霊の合成魔物。
結果は失敗。本来の能力の上に、アラクネも幽霊も持っていない能力を得たが、物理も魔法も受け付けない能力は無かった。
「・・・いや、それって成功してませんか?」
「そうよ。レア種を作る事に成功しているわ。とんでもない事をしてくれるわよねぇ。もしあの子が3回目をしていたら・・・さて、どうなったでしょうね。」
完璧な幽霊のレア種が出来てたかも・・・ってか?
「まぁそんなありもしない話しても仕様が無いわね。それとアラクネに関しては、失敗作として扱った方が都合が良かったみたいよ?リョウなら分かるわよねぇ?」
「あ〜、失敗作だと罵りながらプレイしたかった。って事ですかね?」
・・・またドン引きしてる。
違うならそう言えよ・・・合ってるんかい!
その後は、メイコを躾てるうちに、僕達が現れたらしい。
マスタ君の快進撃もここまでだった訳だ。
・・・そうか。メイコや結城さん達、囚えられていた冒険者達の他にも、助手の天使様もめちゃくちゃにされてたのか。
なんて鬼畜野郎だ・・・そんな事していいのは2次元だけだぜ。
ただその裏で、幽霊を作ったみせたり、魔物を合成してレア種を作ってみせたり、とんでもない事までやっている。
性欲の塊のイカれた野郎だったが、才能の面でもイカれた野郎だったらしい。
メイコが幻覚を見せ、僕にマスタ君を殺してとお願いしてきたのも無理はない。
辛かったろう・・・マスタ君は許されない事をしている。
「ここまで説明したら分かってもらえたかしら?私も一応女神として、人とは平等に接しようとしているのよ。でも今回は私も我慢ならなかったわ。我が子も同然である天使に、あんな事やこんな事してくれちゃってねぇ。 私にだって心はあるのよ。怒りもするわ。それでも我慢して、リョウをちょっと助けるだけで止めたのよ。セリスも今回は協力してくれたし。」
・・・いいんだろうか、神様がこんな考えで。
まぁ許せない気持ちも分かるんだが。
死の軽いこの世界では、例え女神や天使でもあんなの殺してしまおうとなるものなんだろうかね。
取り敢えず、悪霊の屋敷についてはこのくらいか。
マスタ君の事は分かったし、ルナ様が、マスタ君ではなく僕を選び、助けてくれた事も分かった。
「あら?リョウを使って、ダンジョンマスターを殺させた事はもういいのかしら?」
「多少の違和感はありますが、結局助けてもらっているのでいいです。」
多少の違和感ってのは、僕が今回、人を不幸にさせていた悪人に正義の鉄槌を下した!という、正義の使者的なポジションにいる事だ。
僕達がマスタ君に生命を狙われたから、返り討ちにして殺したって方がまだ分かる。
仕掛けたのは僕達のパーティーからだ。マスタ君は自衛したに過ぎない。実際には悪人だった訳だけど。
法で裁かずに僕が裁いてしまった形になったから?
それとも、正義の使者というポジションが気恥ずかしいのか?
なんでスッキリしないのか自分でもよく分からんのよね。
答えを知っても大した事じゃないのかもしれないけど・・・難しく考える必要も無いのかな。
マスタ君を殺す事で、メイコや結城さん達には感謝をされた。それを素直に喜べばいいのだろうか。
・・・あ、メイコには感謝の言葉は貰ってない気がする。ま、いいけど。
「助けてもらっているとは言うけど・・・私も幽霊への対応は当てずっぽうでしたのよ?数珠なんて正にそうだし・・・セリスに渡していた武器は、何らかの効果はあると思ってはいましたけど。」
・・・それも聞きとうなかったな。
なんでも正直に喋ればいいってもんじゃないですよ女神様。
「でも実際に大鎌で斬ったら、幽霊は昇天してたみたいですけど。」
「なんで大鎌で斬ったら昇天するのよ。する訳ないじゃない。」
・・・え!?しないの!?
「え、でも、セリスが大鎌で斬った幽霊は、安心したような顔して光の粒子になって・・・。」
「じゃあ、貴方に付いて来た女の幽霊はどうなの?昇天していれば付いて来れないわよね?彼女達は元人間よ。召喚された魔物のように従わされてはいたけど、魔物ではないのよ?貴方の従魔とは違うわ。」
えーっと・・・じゃあ幽霊達は昇天はしていなかったって事か?
魔物ではないのは分かってたんだけど。従魔じゃないなら、確かに一回死んで復活ってのはおかしい。
そもそも魔物が一回死んで復活も普通におかしい。まぁそれは今回置いといて。
でも実際付いて来て、名前まで決めたんだぜ?
・・・・・・いや。よーく思い出してみれば、結城さん達は名前を付けろと要求していなかった気がする。
僕が呼びやすいように勝手に付けたんだ。なんか4番目の従魔だからって、適当にライダーから付けちゃったな・・・迷惑だったかもしれない。
多分、本人達に聞いたら名前を教えてくれてたかも・・・あ〜、だったらその時には魔物じゃないって気付いてたのか。
うお〜、分かんねぇよそんなの。
「じゃあ、悪霊の屋敷で斬った幽霊達は、倒した訳じゃない?」
「倒したとは言ってもいいんじゃない?正確には、あの大鎌では、昇天も成仏も消滅もしてないわ。ただ、倒した時点でダンジョンのシステムからは逃れられたみたいね。その後、自分の意思で、昇天したり、貴方に付いて行ったりしたみたいね。」
倒した時点でダンジョンのシステムから逃れられた?
そこがもう分かんないが。
「・・・・・・・・・。」
「ルナ様?」
「・・・そこは私にも分からないのよ。結果的にそうなったみたいなの!それでいいでしょ!」
「じゃあ、システムから逃れた後、幽霊達は自分の意思で動いたんですよね?何で女性だけが僕に付いて来たんですかね?」
「知らないわよぉ!本人達に聞いてみたら!?」
最終的に何も分からねぇと逆ギレしてらっしゃいますが?
本人達に聞けたらどれだけ嬉しいか。分かってて言ってます?
「もう悪霊の屋敷の事はいいでしょ?話せる事は話したわよ。」
話せる事は、ね。
まぁいいでしょう。もう知りたい事も思いつかないし。
「後は、ピース=アロマライトの事ね。こっちはもっと単純よ。 エーコ=ピース=アロマライトの父親で、アロマライト家の当主・・・いえ、もう死んだから元当主ね。元当主のフレッド=ピース=アロマライトはね、それはもう女性が好きな人だったわ。」
2連続で女性にだらしない人の話だわ。
関係ありそうだけど、全然関係無い二人なんだよね。
「そこら中の女性と関係を持っていて、子供がいたんですよね?」
「そうねぇ。まぁ当主としてはある意味優秀じゃない?子孫を多く残すのが仕事だもの。」
まぁ・・・神子というものを代々受け継いてきた人達なら、そういう事になる。
「でも身内同士で殺し合いをしてしまったんですよね?やっぱ、跡継ぎ候補を作り過ぎてしまった事が原因なんでしょうか?」
「んふふっ。それも多少はあるんだけど、今回の跡目争いは、それ以外に原因があるのよ。」
ありゃ?違うのか?
でもそれ以外って言うと・・・?
「・・・あ〜、まさか女神教の偉い人達が、その跡目争いを?」
「ご名答〜。よく分かったわ〜。リョウちゃんエラい!」
わあ〜い!ありがとうルナお姉ちゃん!
・・・て、え?なんでそんな笑顔になれるんですか?
貴女のとこの宗教ですよね?
「だ〜か〜ら〜、私は人間同士がやっている事に干渉したりしないの。例えそれが私に仕えている者達でもね。同じ人間が解決するべきだわ。」
「でも、全然関係ない話でもないですよね?いいんですか、アロマライトの系譜が無くなっても?」
「別にぃ〜。私困らないも〜ん。なんだったら神子なんて一人でもいいしぃ〜。なんだったら神子なんて要らないしぃ〜。」
なんだコイツ。
女神教関係者が聞いてたら卒倒しそうな内容をベラベラと。
「で、何なんですか?その原因って?」
「あんな獣人のおっさんの為に、貴方もよくやるわね~。」
あんなおっさんとはなんだ。フィリップさんだよ。
さんをつけろよd・・・あっ、おっさんってさんついてるわ。
神子は全部で3人。
3人それぞれがピースの名を冠している家系の出身で、それぞれの家は、夜のレスリングをフリースタイルでやって、子孫を残し、代々女神様に仕えています。ここまではOK。
一つ目は、ピース=アロマライト家。
今の神子は、リリアン=ピース=アロマライト。元当主はフレッド=ピース=アロマライト。今はリリアンさんが当主もやっています。
二つ目は、ピース=アロマロイヤル家。
今の神子は、ストレイ=ピース=アロマロイヤル。当主がエロヘロフ=ピース=アロマロイヤル。
三つ目は、ピース=アロマクラウン家。
今の神子も当主も、オリヴィア=ピース=アロマクラウンという方がやっています。
・・・なんだろう。もうほぼ忘れた。
覚えにくいよ。エロエルフさんしか覚えられない。
何か、アロマライトが本家らしくて、他は分家らしいです。
折角名字を変えるんなら、もっと大胆に変えといてくれよ。
さっきも言っていたように、フレッドさんは当主としては優秀で、女性が好きな人なんだそうです。
当然、女性にもモテモテであったそうで、如何にも精力の強そうな色黒マッチョマンだったそうです。
女性に優しいジェントルメンだったそうですが、同性には優秀さを鼻に掛ける糞みたいなイヤな奴だったそうです。
一方、アロマロイヤル家のエロエルフ・・・じゃなくってエロヘロフさん。
名前の通りのスケベなエルフ・・・ではなく、ちょっと頼りなさげなおじさんだそうです。
気の毒なんですが、子供も出来にくい方だったそうで・・・いつもフレッドさんに嫌味などを言われていたそうであります。
察しの良い方ならお分かりでしょう。
どうもアロマライト家の跡目争い騒動はエロエルf・・・エロヘロフさんが裏で糸を引いていたそうです。
一応他にも居るらしいが、主犯はこの人のようで。
一回点けた火は瞬く間に飛び火し燃え上がり、大惨事となった。
後はラーク達に聞いた通り、リリアンさんがフィリップさんに頭を下げに行く。
エーコさんの実家の為、フィリップさんは今も頑張っているって訳だ。
「貴方もまた妙な事に首を突っ込んだものね。あのフィリップって男、助ける程の価値がそこまであるのかしら?」
「まぁ乗りかかった船ってやつですかね。流石に貴族と絡む気は無いんで、フィリップさんのランク上げの手伝いをしたら終わりでしょうけど。」
「ふ~ん。これから何年も契約ってなるとお金もかかるのに。そんなお金あるのなら、ガチャでも回して欲しいわ。」
・・・あ、お金の事は考えて無かったな。
いや、ラークとパーラさんがなんかあったら手伝うと・・・お金は流石に無理か。
「まぁ何とかなるでしょう。」
「あらら〜、ブルジョアね〜。そうよね、ダンジョン制覇したんだもの。結構儲かったでしょ?どう?今ならなんと!初回10連ガチャ半額よ!!」
うるせぇなあ引かねぇよ!
どうせ回復薬10個出して終わりだろ!
・・・あっ、そういえばダンジョン制覇で思い出した。
「ルナ様、さっきフィリップさんが襲われたんです。その時、ダンジョンコアを盗られちゃったみたいで。あれってまさか・・・。」
「なに?教えて欲しいの?そうねぇ、ルナホに金貨を5枚入れてくれたら、考えてもいいわよ〜?」
「じゃあいいです。」
「ちょっとぉ!?少しは悩みなさいよ!!」
なんかルナ様に変なスイッチ入っちゃったな。
今日はもうここまでにした方がいいかも。
「これから僕もお金が必要になってきますから。無駄遣い出来ないんですよ。」
「無駄遣いとは言ってくれるじゃない。コレは投資よ。未来の貴方の為にもやっておくべきだわ。」
未来の僕の為というより、今の甘味の為なんだろうな。
「誰かが神子の件で考えを改めてくれれば、僕もお金を使えるんですけどね。」
「あら?私を脅すつもりかしら? でも駄目よ。リリアンの任期は後4年。もう決めたんだから今更変えたりしないわ。大体、最近若さが足りないわ。ババアが二人も居ちゃあ華やかさがないのよ。」
・・・ん?
ババアが二人?
「ババアが二人って神子の事ですか?」
「そうよ、さっきも言ったでしょう?リリアンはもう40過ぎたおばさんよ。ストレイは18歳のピチピチの男の子。オリヴィアは70超えてたと思うわ。」
いや、歳まで聞いてないですけど・・・。
ちょっと待てよ。70超えてる婆さんが神子やってんの!
?
「70歳を超えた方が神子をやってらっしゃるなら、リリアンさんも待ってあげればいいじゃないですか?」
「イ・ヤ・よ!リリアン、年取ってから口煩いんだもの。セリスが二人居るみたいだわ。神に意見する奴なんて、神子には要らないの。後4年しか待ってあげない!」
なんて呆れた理由なんだ。
4年は厳しいのか慈悲深いのか。もうわしには分からん。
こんな女神様に振り回される、女神教関係者とフィリップさんが気の毒だわ。
でも多分ありがたがってたりするんだろうな・・・。目を覚ませ皆の衆!
・・・その後は、何を言っても金の話しかしなくなった。
欲望の塊だな。何でそんなに金がいるんだよ。ホストにでも狂ってるのか?
さっきも、神子には若さが〜なんて言ってたし、そっち方面の欲も強そうだな。
大体、リリアンさんをババアとか言ってるけど、自分は何歳なんだよと。
・・・・・・と思ってしまったら、怒って帰ってしまった。
・・・あれ?意外に気にしてるのか?
いやいや、神様に年齢の概念ある?まず人間とは違うんだから、人間と同じ考えでショック受けてどうすんだよ。
人間とは生きてる桁が違うじゃん。絶対おかしいって。
・・・・・・そういえば、セリスも年齢がどうこう言ったら怒ってたな。
・・・そうか。次会ったら謝っとこう。
ふと手元を見ると、まだ口を付けてないペットボトルのお茶があった。
フタを開け、一口飲む。
・・・・・・・・・ッッ!!!?
う、うまっ!!?
な、なんだコレ!?ホントにただのお茶か!?
そういえばセリスが言っていた。水が美味しくないからビールも不味かったと。
そうだよなぁ、やっぱこの世界とあっちの世界じゃ、水の美味しさが全然違うよなぁ。
・・・もうちょっとルナ様に優しくしよう。
一人、お茶を飲みながらそんな現金な事を考える僕だった。
未来の僕が居たら必ずこう言うだろう。
目を覚ませ!と・・・。




