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55話:普段から履かない派(4名)vs履かないと情緒がないだろ派(1名)vs紐パン派(1名)




食堂の人達によくお礼を言って、みんなで帰路につく。

すっかり真っ暗だな。早く帰らないと。


「ふふっ。やっぱりこの辺のビールはぁ、ちょっとイマイチですねぇ。多分水が美味しくないんですねぇ。どう思いますかぁリョウさぁん?」


ルシルに嫌がらせしていた筈なのに、帰り道でセリスは僕の腕に絡み付いてきた。

どういう事なの・・・。まぁ僕にとってはご褒美ですがね。



「いいですか、メイコ。これから向かうのはご主人様のお住まいです。ご主人様のご両親は、私達従魔に人間と同じ部屋を1室ご用意してくださっております。ありがたく使わせていただき、日々感謝を忘れないようにしなさい。」

(分かってるわよ。五月蝿いわね。)


ルシル達はメイコに今後の事を教えてくれているようだ。

そうしてくれると僕の手間が省けていい。素晴らしいぞ。


「リョ〜君のお母さんは、魔物の姿で家の中に入ったら怒るわよ。怒ると怖いんだから怒らせないようにしてよね。後、ムカつくオスが2匹居るけど、殺しちゃダメ。」

(仕方ないわね。人間と一緒に生活するんだもの。それくらいするわ。)


そうそう、たまにピノが不便だからとモン娘形態で居たりすると、ヨハンナさんめっちゃ怒るんだよな。何故か僕にもな。

飼い主だから仕方ないけどね。つらたん。

でも僕は知っているんだぁ。最近ヨハンナさんがイムを魔物形態にさせて、腐った物とか生ゴミを与えて処分させているのを・・・。


「ぱんつは、ぜったい履く・・・・・・じゃないと、リョウ怒る。」

(なによそれ・・・変態じゃない。最低だわ。)


なんでぇ〜?⤴

今イムちゃん1番大事な事言いましたよねぇ?

魔物ってノーパン派なんですかぁ?何その派閥。勘弁してくれません?

あれ?もしかして僕って、モン娘達にとんでもなく変態的な事を要求してた?魔物にパンツは屈辱的だったのかしら?

知らない事とはいえゴメンねぇ。でも履いてね。



「そぉいえば、リョウさぁん。さっきラークさん達とぉ、ルニャ様の事を話してましたかぁ?」


急に女神様が可愛くなったぞ。

セリスに聞こえていたか。

だがルニャ様の事では無い。まったく関係なくはないが。


「ルナ様の事じゃなくて、神子の事を話していたんだ。」

「ミコぉ・・・? あぁ〜、あの神子の事ですかぁ。ルナしゃまが下界でお話がある時の為に置いている連絡係ですねぇ。」


・・・わざとだろ?他はちゃんと言えてるじゃん。


「でも何で神子の話なんてぇ?リョウさんには関係無いですよねぇ?」

「実はフィリップさんがピース=アロマライト家の人間と結婚していたらしい。その息子が神子になれるかどうかって話をしていた。」

「あぁ〜。よりにもよってアロマライト家ですかぁ。あそこはもう没落しますよぉ?」

「それをさせないようにする。どれくらい出来るか分からんが、フィリップさんを助ける事にした。」

「そおですかぁ。ルニャしゃまは多分無理って言ってましたけどねぇ。」


なんかさっきから言ってる事が辛辣だな。

ルナ様も当然、全部知っているだろう。知っている上で多分無理だとセリスには言ったと。

慈悲深くも妥協案を出してくれたらしいが、ルナ様自身はどうこうする気は無いんだな。


いや、少し前に、人類に対して特別扱いすることは無いって言っていたな。確かセリスに聞いたんだったか。

アロマライト家がここで復活しようが没落しようが、それがアロマライト家の運命って事か。

それでも少しだけでも手を差し伸べているのは、ちょっとは気にかけているのかもな。


「ふふっ、そおですかぁ。リョウさんがそおいうなら私もお手伝いしますぅ。私が女神になった暁にはぁ、アロマライト家を復興させてみせますよぉ。」


それだと遅えんだよなぁ。話聞いてたんか?

大体、ほんとに女神になれんのかよ?この前も言ってたけど。


相変わらずセリスは幸せそうにヘラヘラヘラヘラしている。

明日には忘れてそうだな。

まぁいいか。取り敢えずは明日、フィリップさんに会ってからだな・・・・・・






「・・・ご主人様。あの、少しよろしいですか?」


孤児院までもう少しというところで、ルシルが打って変わった真剣な表情で話し掛けてくる。


「なんだ?」

「あの・・・血のにおいがします。それも結構な量でございます。」


血のにおい・・・?


「まさか・・・!!?」

「あ、いえ。孤児院ではありません。全然別の方向でございます。」


び、ビックリしたぁ・・・。

いきなりとんでもない方向に話がいくのかと思ったよ。


いや、でも血のにおいかぁ。穏やかじゃありませんね。

何かの事件か?

どうだろう。巻き込まれるのもなんだし、放って置いてよくねぇか?


「ルシルさぁん。どうしましたぁ?」

「ぐっ!?クサッッ!!!? セリス!貴方もう近寄らないでください!!」

「失敬ですねぇ。ちゃんと毎日身体洗ってますよぉ。」


1番こういう事に関わろうとしそうなセリスがこんなだし、もう放って置こうや。

僕はセリスの身体を拭いてやらないといけないからねぇ。酔ってる今ならイケるな。デュフッフッフッフ・・・



「・・・もう!私は今、真面目に言っているんです!ご主人様、この血のにおい・・・()()()()()様ですよ!!」


ッッ!!?

な、なんだとっ・・・!?


「ルシル!魔物形態!」


ルシルは一瞬で、狼の姿となる。

その背中に僕は飛び乗り、ルシルは走り出した。

僕の背中にはイムがかろうじてくっついていた。セリスとピノとメイコは付いてこれていない。



・・・ああ!くそ!!

フィリップさんが怪我しているなら、セリスがいる。

こんな肝心な時に酔っ払いやがって!


「イム!セリスを連れて来い!僕とルシルは先に行く!!」


イムがパッと僕から手を離し、猛スピードで移動している中をゴロゴロと転がって行った。

ジャッキー・チェンみたいな離れ業してたけど、イムなら大丈夫だ。すぐに追い付いて来る。





◆◆◆





街のメインストリートには街灯があり、夜になっても明るくなるように整備が行き届いている。

だが、街のスラムにほど近いこの場所にまでは街灯はない。

各自でカンテラなどの灯りを用意しないと、夜では移動する事もままならない。


フィリップさんの泊まっている宿は安い。だからスラムの近くのあまりよろしくない土地にあるのだ。

こういう場所は、やはり悪い人間は活動しやすい。

何処にショタ好きのおじさんが居るか分かったもんじゃない!

まぁ今回は違うだろう。盗賊・・・あるいは、刺客か。



「フィリップさん!!?」


おんぼろの建物と建物の間の裏路地に、黒いモジャ毛の獣人が血まみれで倒れている。

ルシルの背中からすぐに降りて、抱き抱える。

息は・・・良かった、まだある!


「・・・・・・リョウ君・・・よく、分かったね。」

「言ったでしょう!?僕の従魔、超優秀だって!」

「はは・・・言って、たね・・・。」


フィリップさんが力無く笑う。

顔も青白く、身体にはいくつもの刺し傷切り傷があり、血がどんどん流れていく。咳き込むと、口から血が出てくる。

あぁ、あああ・・・。マジでこんな時どうすればいいんだ!?

清潔な布!あと、回復薬・・・そう、回復!魔法!!


「る、ルシル、早くセリスを・・・。」

「いやぁ・・・もう、ダメだね。 ・・・リョウ君・・・最後に頼みが、あるんだ・・・。」

「い、いやいや!まだ間に合います!セリスの回復魔法だって普通じゃないんです!!」


そんな事言うなよ!

僕、フィリップさんを助けるって決めたんだぞ!こんな死亡フラグあるかよ!!


ルシルはいつの間にかモン娘形態に戻り、僕の隣に座った。


「何してる!?早く行けって!!」

「ご主人様。もう高位の回復魔法でも無理でございます。最後の言葉を聞いてあげて下さい。」

「な、何!?魔法だろ!?魔法だったら何でも出来るだろ!ここはファンタジーだろ!?死なねぇよ、なぁ!!そうだ、お前の時魔法なら・・・」

「ご主人様。」


ルシルは僕を諭すように見つめてくる。

・・・ルシルの目は真剣だ。いつもの僕に劣情を向けている顔では無い。


あぁ・・・嘘だろう。

こんな簡単に人が死ぬのかよ。

さっきまで一緒に苦楽を共にしてた人だぞ?

あの僕を誘拐した賊共とは訳が違う。信頼出来る人なんだよ。


駄目だ。気持ちが抑えられない。

フィリップさんの最後の頼みを聞かないと。

もう死ぬんだフィリップさんは。僕の目の前で、何もできず。

誰だよフィリップさんをやったのは。スラムの奴か?盗賊の奴等か?女神教の糞共か?



・・・あぁ。今考えてる場合じゃない。

フィリップさんが最後の力で僕に伝える事があるんだ。

しっかり聞け。一言も聞き逃すな。絶対に遂行する。フィリップさんの頼みを。


「・・・なんですか、フィリップさん。」

「この、カタナを・・・・・・。」


フィリップさんがいつも使っていたカタナ。

鞘に収まったソレを、此方に差し出してくる。


「このカタナを、僕に?」

「・・・いや、その・・・。」

「ち、違いますよね!?えーっと、そう!モリス君!モリス君に届けるんですよね!?」


あああああああ!こんな時にボケかましてんじゃねえええ僕ううう!!!


「知って、いるんだね・・・・・・モリスは、もう神子にはなれない。・・・このカタナで、生きてくれと・・・伝えてくれないか?」

「はい!・・・はいっ!!!分かりました!必ず伝えます!!」


カタナをしっかりと受け取る。

あぁ、クソ!涙が出てきた。嫌だ。別れたくない。


「ごめんね、リョウ君。・・・ダンジョンコア、盗られたみたいだ。・・・最初、からそれが狙いだったみたい・・・・・・。」

「い、いいですよ、そんなの!気にしなくて!?もう無理しないでください!すぐにセリスが来ます!!」



その時、後ろから複数の足音が聞こえた。

セリス達だ・・・・・・。


「!!? フィリップ、さん!?」

「・・・・・・おっさん。」

「うそっ!?何よこれ・・・!?」

(・・・・・・・・・。)


各各が状態を見て驚き、フィリップさん周りに集まる。

それを見たフィリップさんは、薄く笑った。


「君達は、強いよ・・・もっと強くなるだろう。・・・・・・僕なんか、いらなかったね・・・。」

「そんな事ないです!フィリップさんに、凄く色んな事を教えてもらいました!!フィリップさんが付いて来てくれてなかったら、ダンジョンなんて制覇出来ませんでした!!」

「ふ、ふふ・・・。そう、かな・・・。」


もう、笑った顔も出来ていない。

声量も、羽虫のようにか細い。



「え、エーコ・・・・・・ごめ・・・ん、きみ・・・の………………………






あぁ・・・あぁ・・・・・・

逝った・・・逝ったぞ。


目の前で、人が・・・・・・フィリップさん、が・・・・・・

涙が溢れる・・・止まらない・・・・・・。



「せ、セリス・・・頼む。魔法で・・・魔法でぇ・・・な、何とかしてくれよぉ・・・・・・頼む。頼むよぉ・・・。」

「あ、はい。分かりました。」


























・・・・・・・・・へ???



セリスの両手が輝く。

額に油汗を出しながら頑張っている・・・みたいだ。


「・・・・・・くっ、なるほど。かなり魔力を消費しますね。」


・・・そうなのか。

・・・・・・ん?アレ?今何してんだっけ?


セリスの発していた輝きが収まる。

死んだ筈のフィリップさんの身体にあった傷も、大量に流れた筈の血も綺麗サッパリなくなった。


「・・・・・・ん?・・・あれ?生きてる?」


フィリップさんが何事も無かったように目を覚ます。

血色も良くなっている。いつものフィリップさんだ。


「・・・あれ、リョウ君。僕って死ななかった?」

「えーっと、はい。死にました。」


なんだこの会話は?

涙も吹っ飛んだわ。わしの水分返せ。



「ルシル?あの、これってどういう事だ?」

「・・・いえ、確かに高位の回復魔法でも無理でございます。・・・いや、私は正しい筈。・・・確かに亡くなりましたよね?・・・そんな回復魔法など無い筈でございます。・・・では何故? ・・・・・・・・・。」


なんか黙ったぞ。

嘘を言っているようにも見えなかったがな。

では本人に聞いてみればいい。


「セリス、さっきの魔法はなんだ?」

「えっと。実は私も使うのは初めてで・・・。 わ、私もフィリップさんの状態を見て、私の回復魔法でもこれは助けられないと思ったんですよ!?でも、リョウさんに死者を回復させる魔法を使ってくれと頼まれましたら、頭の中に魔法が浮かんてきまして。あ、出来そうだなぁと思ったので・・・。」


僕が魔法を使ってくれと頼んだら、頭の中に浮かんできたぁ?


・・・こんなの前にもあったな。

そう、変化(へんげ)だ。

セリスは蘇生魔法を使える自覚をしてなかったから、僕に言われて使えるようになった。

と、いう事は、だ。


ルナホを起動し、つよさの項目をザッと見てみる。

・・・・・・・・・・・・。



「リョウさん、何か分かったんですか?」

「・・・まぁ色々とな。セリスもいい感じだぞ。」


この3日間のダンジョン攻略が効いてるな。みんなのレベルが上がっている。

やはりレベル上げはいい。成長を数値でみると興奮してくるぜ。

やっぱりRPGはやっぱコツコツいかねぇとな。


「よっしゃ!明日1日休んで、明後日からはメイコを連れてレベル上げだな!今日はみんなお疲れ様!!」

「ふふっ、はい。頑張りましょう。」

「何処までも付いて行きます!ご主人様!!」

「ピノ・・・・・・泣いてる。」

「ばっ!!?泣いてねーっての!!んもー!おっさんが悪いんだからね!」

(・・・ふん。)






「・・・・・・えっ?ちょ、ちょっと。何で急に爽やかに終わってるんだい?全然ついていけないよ。 流石にこれは説明を・・・や、やっぱり説明無し?ちゃんとお礼も言えてないんだけど・・・。」


「・・・はぁ。ありがとう。リョウ君・・・。」




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