54話:お持ち帰りぃー
「よ〜う、遅くなったぜぇ。取り敢えず、おめでとさん。」
「おめでとう。まさかダンジョンまで制覇してしまうとはな。」
武勇伝も語り終わり、聞き手達が満足して帰っていった頃に、ラークとパーラさんが現れた。
帰れると思っていたイムが白目をむいてテーブルに突っ伏す。
哀れなりイムちゃん。せめて先に帰っててもいいのよと念を送ってみる。
・・・帰る気は無いらしい。従魔故の哀しいサガよな。
ラークが目の前にピューター製のマグを置いてくれる。
おっ!遂に酒が・・・ってまたジュースかい!!
何珍しく気遣ってんだよ!そんなキャラじゃないだろ!
「な〜んだよぉ。ダンジョン制覇出来そうなら、言ってくれりゃいいのによ〜。俺達なら喜んで助太刀してたぜ?」
「止めろラーク、みっともない。」
相変わらずだなこの二人も。
「残念でしたね。僕らの依頼を受けてたら、一緒に制覇出来たんですけどね。」
「・・・あー、うん。まぁその事なんだがな・・・。」
ん?何だ歯切れが悪いな。
ラークなら、まったくだぜフィリップさんに譲るんじゃなかった〜とか言いそうなのに。
「・・・なぁ、ボウズ。フィリップさんどうだった?いい人だろ?」
「どうって・・・いい人ですよ。教え方も優しいし、分かりやすい。義理堅い人だとも思いますし、頼りにしてますよ。」
何なんだ?ラークが紹介した訳だから、気にしてたのか?
別に上手くやったけどな。
「だろ?じゃあ今後はどうするんだ?フィリップさんと組むんだろ?」
「あ〜・・・それは・・・。」
フィリップさんに依頼を頼んでから、まだ数日しか経ってない。
折角だから、まだ付いて来てもらって色々教えて欲しいんだけど・・・。
僕はあっちの世界ではおっさんだったけど、こっちの世界の知識がある訳じゃない。見た目通りの子供だ。
セリスも知識に関しては頼りないんだよな。僕がこの世界の知識を教える時もあったりするし、世界の裏側的な知識なら全然あったりするんだけど。
モン娘達は言わずもがな。基本的に人の居ない場所に居た奴等だから。
という訳で、フィリップさんみたいな常識人が居てくれると助かる。
・・・だが、その契約も解除しなければいけないのかなと思ってる。
その理由は勿論、悪霊の屋敷前で色仕掛けしようとしてきたおねいさん!・・・ではなく、新手の金魚のフンであるシモン様でもない。
メイコの加入だ。
僕達のパーティーメンバーは、僕、セリス、モン娘4匹で、6人パーティーになってしまったのだ。
この世界の謎ルールにより、パーティーは6人までが最大となる。フィリップさんを入れるなら誰か1人抜けなければいけない。
僕、数えなくてよくない?
戦わないよ?後ろでハナクソほじってるだけだもん。
じゃあ、僕お留守番してようか?フィリップさんと女の子5人のハーレムパーティー。
どういう事だよ。主人公交代してんじゃんソレ。
そりゃ僕もフィリップさんという大人をパーティーに置いて安心を得たい。
だが何時までもという訳にもいかないしな。正直、こんなに早く従魔が増えるとは思っていなかった。まぁこれも自立するいい機会なのかなと思っている。
「従魔の事もありますし、早いですけどお断りしようかなと思ってます。」
「従魔? ・・・おぉ、また増えたのか。今度はアラクネかよ。」
ラークが呆れたように言いながらメイコの方を見ている。
当の本人は・・・凄く不機嫌そうだ。
多分アイツも帰りたいんだぞ。一人だけ魔物形態だしな。仲間になったばかりで人間にも慣れてない。居心地悪かったろう。
「あれ・・・あれアラクネか?何で獣人みたいな服着てんだ?なぁパーラ?」
「私に聞くな。」
そうそうラークよ、気にするな!
パーラさんを見習いなさい。あんなにも思考停止しておられる。
「お前、ちょっとの間で増え過ぎだろう?異常なんじゃないか?」
こんな事を面と向かって言えるところが、ラークの凄いところだよな。
普通ならパーラさんが窘めたりするんだろうが、相手が僕だからな・・・。パーラさんも間違い無く、異常と思ってるし。
「魔物使いが従魔予定の魔物を見付けるのは、運次第ですよね?たまたま運が良かっただけですよ。」
「そうなのか?・・・どうなんだパーラ?」
「知らん。」
もう埒が明かねぇよ。僕の従魔の話はもういいだろうよ。
「はぁ・・・リョウ、単刀直入に言う。フィリップとの依頼、そのままに出来ないか?」
パーラさんも埒が明かないと思ったのか、話をぶった切って本題を切り出した。
「・・・フィリップさんとの依頼をですか?何でまた、パーラさんがそんな事?」
「そうだな、私達が言う事じゃないだろう。これは私達が勝手に善意でやっている事だ。」
善意で?
何だろう・・・あっ、金か?
「報酬は予定通り払いますよ。僕の都合で止めるんですから、値切ったりはしません。」
「いや、そうじゃないんだ。なんというか、フィリップさんに必要なのはよ・・・冒険者ランクなんだよ。」
冒険者ランクぅ?
フィリップさんの冒険者ランクが何でラークに関係が・・・あ、そうか善意だったか。
じゃあフィリップさんが、冒険者ランクを上げる事を求めているのか。そういう風には見えなかったが。
「俺達、ここにはもうちょっと早く来てたんだよ。ギルドに入るところで、丁度抜けようとしているフィリップさんと会ってな・・・・・・」
ラークが言うにはこうだ。
他の場所に冒険に出ていた紫煙の風。
街に帰って来てすぐに、ダンジョン制覇の祝勝会があると聞く。
予定があると言うケント、メントと別れ、タダ飯タダ酒を食いに冒険者ギルドにやって来のだが、そこで祝勝会の主役であるはずのフィリップさんとばったり会った。
どうやら、宴もたけなわだというのに、僕達には何も言わず抜け出そうとしていたらしい。
おう、どうしたどうしたと。まだ俺達は来たばっかりなんだぜ?と説得するも、どうも浮かない顔をするフィリップさん。
ここはかつて共に戦った俺達が相談に乗ろうじゃないかと。悩めるフィリップさんと、さっきまで話をしていたそうだ。
「彼らは強い。いや、強過ぎるよ。とても僕の手には負えない。」
フィリップさんは開口一番そう言ったそうだ。
手に負えないって事はないだろうよ。人類の手には負えないや!
更にフィリップさんはダンジョン内でも、信じられない事の連続だったと語ったらしい。
大量の魔物や上位種にも、大した傷もなく乗り越える戦力。知っているかのように解かれていく謎。物理も魔法も効かない未知の魔物すら簡単に倒してしまった。
順調過ぎて怖いくらいだった。実は自分はダンジョンに囚えられていて、ダンジョンコアに夢でも見させられているんじゃないかと。そう思ったそうだ。
あー・・・。それはなんと言うか・・・怖がらせてしまったのね・・・。
でも戦力に関していえば、僕から見ても怖いけどね!
ゾンビとかマジ無理だもん。ポイズンギガゾンビとかめっちゃ速かったよ!速いゾンビとかマジ無理だから。
ゾンビにしろ、クマにしろ、棍棒もった大きなブタしろ・・・全部無理だから。あれをものともしないとか、おっかしいって。
僕からすればフィリップさんも十分化け物なんだよ。
この世界の人間は、みんな、ね。
ダンジョンの謎については知らん。あれはダンジョンマスターが悪い。
だが、フィリップさんが思った事はそれだけではなかったそうだ。
女神からレアクラスを授かった少年。その少年に付き添う、強さも美しさも卓越した女性。少年に絶対的な忠誠を誓う、これまた抜きん出た強さの従魔達。
更には、少年の父親代わりをしている人物は、かつてオシリ王国の英雄といわれたゲバルド=トクレンコ。
同じく、現在はパイマーンの領主であるコッラデーノ=アルベルティーニとも交流がある。
終には、200年ぶりに現れた伝説のレアクラス“勇者”は少年の幼馴染み。
これは、自分の目標達成に役立つかもしれない。
このパーティーに居れば安泰だと。このパーティーに居れば、自分の冒険者ランクは簡単に上がっていく。
そう思った。思ってしまった。と・・・。
「・・・じゃあなんですか?フィリップさんは僕達を利用してしまうのが浅ましいと思って、身を引くつもりだと?」
「まぁ、そういう事だな。従魔が増えたのも、いいタイミングだと思ったんじゃないか?」
全部説明し終えたと言わんばかりに、ラークが酒を流し込む。
・・・ふ〜ん。なんかフィリップさんって・・・
「しょ〜もない事考えるんですね。フィリップさんって。」
「はは、ボウズもそう思うか?・・・俺もそう思う。」
ラークも苦笑いしながら同意する。
人が良すぎるんだあの人は。別に大した下心でもないぞ?イキった大学生の方がもっとヤバい。
「そう言ってやるな。今時珍しいぞあんな人は。」
「まぁなぁ。でもこんな調子じゃいつまで経ってもAにいけねーよ。」
パーラさんもラークも相当フィリップさんが心配らしい。
それだけいい人って事だな。まぁそれは分かるが・・・
「フィリップさんは何故そんなにランクを上げないといけないんですか?」
「うん?・・・言ってもいいんかな?なぁパーラ?」
「ラーク、言わないとリョウも協力出来んぞ。」
込み入った話かね?
じゃあ辞めとこうかな・・・あぁ、語りだしちゃったよ。
フィリップさんには奥さんが居て、子供も居るらしい。
奥さんの名前はエーコ=ピース=アロマライトというそうだ。
平和とかいう仰々しい名前だが、この世界でラストネームを持っているのは所謂、上級国民の人だ。
で、エーコさんって方はミドルネームまである。あっちの世界ではありふれているんだろうが、こっちの世界では・・・超上級国民が持ってる名前だ。
エーコさんは、女神教総本山の神子の家系の方らしい。
何故そんな方とフィリップさんがくっついたのか。・・・まぁ関係無いので割愛。想像にも容易い、テンプレ展開だったと言っておこう。
神子というのは、クラスを授かる神託の儀式以外で、女神様と直接お話出来る事を許された唯一のお方らしい。
・・・・・・う〜ん?僕はよく喋ってますけど?
訂正しよう。神子というのは、マルスルナの人間の中で、女神様と直接お話出来る事を許された唯一のお方だそうだ。
・・・・・・う〜ん?ルナ様ってカティやゲバルド氏とも儀式関係無く喋ってたような。
ルナ様、実は女神様じゃない説。
ルナ様や神子というのが、本当に偉い奴なのか分かんなくなってきたわ。
それはさておいて、その神子っていうのは、なんか知らんが全部で3人もいるらしい。
3人それぞれがピースの名を冠している家系の出身らしく、それぞれの家は夜な夜なプロレスごっこを頑張って、子孫を残し、代々女神様に仕えているそうだ。
そんな先祖代々神子のアロマライト家の方であるエーコさん。
当主が精力旺盛な夜のプロレスラーだったこともあり、10人以上もいる子供の中の一人だそうだ。
彼女自身は長女や次女でもないので、はっきり言うと、神子にならないであろう重要視されていない人物だったらしい。
だからこそ、どこの馬の骨とも分からないモジャ毛のおっさんと恋に落ちても、まぁ本人達が幸せならと見逃された訳だ。
子宝にも恵まれ、二人は幸せなキスをして終了・・・と、まぁ上手くいかなかったのは、今のフィリップさんをみれば分かるだろう。
エーコさんは死んだ。
いや、正確には行方不明だ。
ダンジョンを一緒に冒険中に、罠に掛かって離れ離れに。その後、死体すら発見されず、エーコさんの姿を見た人は誰も居ない。
あぁ、そういう事だったのか。
フィリップさんが悪霊の屋敷で、あんなにも感情的になっていたのは。
あの牢屋にあった屍体は、エーコさんではない・・・ではないが、屍体や幽霊にエーコさんを重ねて見てしまっただろう。
フィリップさんの気持ちを思うと胸が張り裂けそうだ。
そうか、だからこそ裸踊りで乗り越えようと・・・
・・・・・・ふっ。いやいや、ねーよ。
だからといって裸踊りはねーよ。
お前その裸踊りエーコさんや息子に見せれんのか?
ゲバルド氏がワイン渡しに行った時なんか、裸で土下座してたぞ?
エーコさんが実は生きてて、もし会う時があったら、絶対この話してやるからな。覚悟しとけよ。
「ハハハ!ボウズも見たのかあの裸踊り!そうそう、フィリップさんって最高潮に酔うとああなるんだよ!」
「・・・お似合いではないか。リョウ、フィリップを頼むぞ。」
パーラさんさぁ、なんで裸踊りするおっさんと僕がお似合いなんだよ。
誠に遺憾でありますぅ〜。
「で、ラークさん。フィリップさんに悲しい過去があるのは分かりましたよ。それで何で冒険者ランクを上げなきゃいけないんです?」
「ん?・・・あぁ。エーコさんが行方不明になって、立て続けにアロマライト家にもよくない事が起こってな・・・」
エーコさんの父親、アロマライト家の当主は、そりゃ〜もう優秀な・・・種馬だったらしい。
一夫多妻だったにもかかわらず、外でせっせと種を蒔いておったそうな。
優秀故に強い種だったのでしょう。当主の種は見事にそこら中で芽吹き、我こそはピース=アロマライトの人間だと名乗り出る者達がアロマライト家に殺到した。
そりゃもう、貴族だろうが一般人だろうが関係なく、次から次へと出るわ出るわ。
種付けおじさんならぬ、種蒔きおじさんだ。なんと羨まけしからん。
10人なんてもんじゃない。エーコさんの血の繋がった家族はまだまだ居たんだってよ。
長年、神子を輩出しているアロマライト家だ。当主がこれだけ優秀なら、次代の神子の輩出に困る事はない。
アロマライト家の未来は安泰だぜぇ!!・・・という訳にはいかなかった。
何が起こったのか。それは、次代の神子を賭けた身内同士の足の引っ張り合い。仁義なき跡目争いだ。
死の軽い世界で行われる、暗殺、誘拐、暴力、セッ・・。
理由は至ってシンプル。次の神子候補が減れば、次は我が子が、神の使い。
非常に多くの血が流れ、史上最悪の跡目争いとして歴史に残るレベルだったそうだ。
因みに、当時オシリ王国内の獣人の里で、息子と暮らしていたフィリップさんのところにも刺客はやって来たらしい。
思いがけない幸運もあって、なんとか護りきったそうだ。ヒュ〜、やるじゃん。
で、その跡目争いが落ち着いたのが・・・というか、殺す人間が居なくなったから落ち着いたと言った方が正しいか。
最後の最後で自爆特攻までやらかしたバカが居たらしい。
そのおかげで、アロマライト家は滅亡寸前。正当な血を持つのは、今代の神子の家族と・・・フィリップさんとエーコさんの一人息子、モリス君だけとなった。
更にこの事態を受けて、法王猊下並び女神教の偉い人達は一つの法をつくった。
神子は、ピースの名を持つ者と、貴族かそれに準ずる者との子供から選出するっていう法を。
神子になる条件は、15歳以上の成人である事。ピースの血が流れている事。そして、ピースの名を持つ者と、貴族かそれに準ずる者の子供である事。
それらをクリアして、女神様からお許しが出れば、晴れて神子になれるそうだ・・・。
「・・・へぇ、そうですか。じゃあフィリップさんは、貴族になる為に頑張っていると?」
「正確には、名字を得る為にだ。ボウズの親父さんみたいにな。」
ゲバルド氏か?
ゲバルド氏とディーノ氏は王国騎士だった時に、上位種が率いる魔物の軍勢の中を、王妃と幼い第一王子を連れて帰って来たという。しかも、一緒に居た召使いなども無傷で。
しかもしかも、その魔物の軍勢ってのは、3匹の上位種が同時に襲ってくるという、前代未聞の襲撃だったらしい。
だが、その中の上位種1匹をおやぢ達2人でヤッてきちゃったそうだ。
勿論、王妃達を逃がしつつ。魔物の軍勢を半壊させてね。
いつ思い出しても化け物じみてるな。
他にも色々やらかしているらしいが、この出来事が決め手になって、と話に聞いている・・・。
「いや、無理でしょフィリップさんじゃあ。」
「あのなぁ。別にトクレンコさんと同じ事をする訳じゃないぞ。あんな事出来る人なんてそうそう居るかよ。」
人の父親を化け物で変態みたいに言って。
僕はいいけど、ラークは駄目だ。
「では、冒険者ランクを上げると、名字を貰えるんですか?」
「そういう事だ。依頼の中には国が出してる依頼があってな、それを受けれる最低がAランクだ。しかも、受ける条件が厳しいくせに、依頼内容は大した事なかったりする。それを忠実にやってるだけで名字が貰える可能性があんのよ。実際、Aランクの冒険者の大半が名字持ちだぞ。」
へぇ。Aランクになるだけで、貴族並になれる可能性があるのか。
「でもそれだと、名字持ちだらけになっちゃいそうですけど?」
「ボウズよぉ、アホかお前は。Aがそう簡単になれるかよ。」
・・・知るわけねーだろ冒険者じゃねーんだから。
「・・・私もフィリップから話を聞いた時は無謀だと思った。・・・リョウ、お前が現れる前まではな。」
「は?僕がですか、パーラさん?」
パーラさんは椅子に深く腰掛け、腕を組んで黙ってしまう。
その代わりに、酒を一気に飲み干したラークが、僕を指差しながらこう言った。
「そうよ!このままだとフィリップさんのAランク入りは絶望的だった。だが、ボウズ。お前のおかげで全然無理な話じゃなくなったんだよ!」
僕のおかげで?
えーっとそれって・・・
「僕の身体から溢れ出る高貴なオーラがフィリップさんにも?」
「そうだ、ダンジョン制h・・・あ?なに?」
「いえ、どうぞ続けて下さい。」
「お、おぅ・・・。ダンジョン制覇だよ!ダンジョン制覇ってのはな、Aランクがやりゃあ一発で名字持ちだぞ!この歓迎具合をみりゃ分かんだろ?」
確かに・・・この祝勝会の費用って、お偉いさんと冒険者ギルドが出してんだっけ。
街を挙げての宴会だもんな。改めて言われてみれば、かなりの大事だったんだと分かる。
じゃあもうフィリップさんは名字ゲット?
でもAランクならって言ってるし、足らないのか。
「後はギルドが今回のダンジョン制覇、どう評価してくるかだな。よう、パーラはどう思う?」
「・・・・・・パーティーは6人。だがその中の3匹は従魔。なら3人で制覇したと評価されるだろう。しかもリョウは未成年で、セリスはギルドに未所属だ。評価は全部フィリップにいく。」
「まぁ、ボウズとねーちゃんの評価が丸々いくわけじゃねーだろうがな。それでも、AやBが攻略出来ずに探索終了しちまったダンジョンだ。確実にBランクはいくな。一気にAランクもなくもないが、それには流石に足んねぇだろ。 ってところでボウズ、またお前の出番って訳だ。」
ラークがまた指を差してくる。
今度は何かをさせようってらしい。
「なんですラークさん?今度はアヌルス鉱山でも制覇してこいって言うんですか?」
「はっはっは!そりゃ流石にダンジョンをナメ過ぎだぜ。いくらボウズ達でも・・・あれ?・・・出来ねーよな?なぁ? ・・・・・・ちょっとボウズ、今度は俺と組んでみるか?」
「止めろラーク。出来る訳ないだろう。」
まぁそれは冗談だ。パーラさんの言う通り、出来る訳がない。
「フィリップさんに冒険者の事を教えてもらう。この依頼を継続していくんですよね?」
「そうそう、それよ。これ系の依頼はランクを上げるのに最適なんだよ。ギルドの将来にも繋がるからな。欠点があるとすれば、依頼者側が途中で死んだりする事だが、ボウズならその心配も無いだろ?」
ラークは随分僕を高く評価しているようだが、僕だって死ぬ時は死ぬよ?まぁ簡単に死ぬつもりはないが。
・・・ん〜。将来の冒険者を育てているから、評価のポイントが高いのかね?
ダンジョン制覇とか、上位種の襲来とか、そんなビッグイベントなかなか無いだろうしな。
この依頼だと毎日受けている事になるのかな?だとしたらランクを上げるのに最適だ。
まぁ・・・ここまで長い事ラーク達と話をしたが。
どうするかな・・・。
元々、フィリップさんと冒険するのはメリットがあると思っていた。フィリップさんにもそういう事情があるって言うなら、協力してみるのもいいだろう。
パーティーの方は・・・まぁ誰か一人お留守番かな。
フィリップさん抜きのパーティーでいきたかった理由も、従魔やセリスのレベルを上げたかったってだけだ。
ステータスでは計れないレベル上げってのもあるだろう。今はそれをするいい機会って事だ。
しかし、フィリップさんも大変なものに巻き込まれたものだな。
名字を貰う・・・いってみれば、国に認められた冒険者になるって事だ。
大変だろうなぁ・・・。
「・・・女神教の偉い人達は、何でこんなタイミングでそんな決まりをつくったんでしょう?」
「あぁ?名字持ちじゃないと駄目ってやつか? 一応は、こんな情けない事件を起こしたアロマライト家への罰らしい。今、神子の条件を増やせば、確実にヤバいからな。」
「追い打ちかけてるみたいですね。」
「実際そうなんじゃねぇか?神子が出せなきゃもう終わりだろ?そういう理由で貴族やってんだからよ。」
「他のピースの家は文句無いんですかね?」
「ソイツらも法をつくった側なんだろ。貴族と結婚する奴なんて貴族だけだろ。困らねんだろソイツらは。」
女神教の上層部はアロマライト家を潰す気なのか。
てか何でラークがイライラしてんだよ。確かに胸くそ悪い話だが。
「リョウ、この話には変な噂がある。」
「噂?なんですかパーラさん?」
「アロマライト家で殺し合いあったといえども、全員は死なん。実際に当主が外で作っていた一般人との子供は何人か生きていた。・・・だが、その法がつくられる前に全員消えた。」
・・・は?なんだそれ?
それって女神教の人間が消したって事だよな?
「えーっと、何故そんな事を?」
「あくまで噂。証拠は無い。たまたまその者達が消息不明になる可能性もある。」
いやまぁこの世界ならそれもあるんだろうけどさ。
まぁこれ以上パーラさんに言っても仕方ないか。こんな話もあるよってくらいに覚えておこう。
なんか偉い奴の考える事ってのは分かんねぇや。
こんなんでも、代々神子の家系のやつらは平和と名乗っているのか。
ちゃんちゃらおかしいよ。
「今代の神子の協力はなさそうなんですか?」
「協力っつーか、今の神子の方がフィリップさんに頭下げて来たんだぞ?どうにか名字を得て、モリス君を神子にしてくれってよ。」
ラークが苦笑いで答えた。
そっちからかぁ。
まぁ偉い人には違い無いし、フィリップさんがAランクにいけさえすれば、後はなんとかなりそうだな。
「でも今代の神子の家族は生きてるって言ってましたよね?子供は居ないんでしょうか?」
「最近産まれたらしいわ。だから任期までに間に合わないってよ。」
「えっと、神子に任期があるんですか?」
「一応はっきりと決まってないがあるんだと。なんか噂では女神様の気まぐれで決めるらしいが・・・眉唾だよな。さっきの人が消えたって方が信じれそうだ。」
あっ・・・(察し)
ラークよ。人が消えた方は嘘だ。多分こっちが本物。
ルナ様が神子に向かって、「貴方そろそろ飽きたわね。新しい神子に代わってくださる?」って言ってる姿が目に浮かぶ。
「でもそれだといつ任期がくるか分かんないですね。」
「今の神子も結構歳らしいぜ?でも女神様が直々に・・・えっと後4年か。そこまでは待つと仰ってくれたらしい。流石は女神様だぜ。寛大な心を持っていらっしゃる。」
「モリスが成人するまで待って頂けるらしい。まったく、女神様は慈悲深い。」
慈悲深い・・・のか?
そういやこの世界の人達って女神様に対してはこんなだったわ。ラークやパーラさんまでもこうなのか。
慈悲深いってんなら、今代の神子の子供が成人するまで待ってあげれはええやん。どうせ任期なんてあってないようなもんだろ?ルナ様のワガママ次第なんだから。
大体、神子3人もいらないだろ。暫く2人でいいじゃん。
そもそも、神子って必要?直々にお話が出来る?僕でも出来ますけど?
今呼んだら来そうだけどな。呼びましょうかココに?多分甘い物用意してたら来るぞ。
・・・まあまあ。多分何かしら問題があって、ルナ様でもどうにも出来ないんだろう。
そうに違いない。多分、きっと。ていうか僕が言っても聞いてくれないし。どうでもええわ。
「分かりました。フィリップさんは任しといてください。必ずAランクにしてみせましょう。」
「ハハっ。お前がそれを言うのかよ。なら、後でフィリップさんの説得もしないとな。」
「そこはまぁ・・・子供らしく駄々でもこねてみますかね。モリス君とは歳も近いみたいだし、僕も獣人っぽいですから、勝手に自分の息子と重ねて見てくれるでしょう。」
「・・・ボウズ、お前ホント可愛くねぇなぁ。」
今日そのセリフは2度目だよラーク君。こんな千年に一度の美少年に向かって何を言うか。ショタ好きのおねいさんが居たら絶対ほっとかないよ。
そこのパーラさん、そんな蔑んだ目で見ない!貴女もショタ好きおねいさんであれ!!
「ま、フィリップさんの事、よろしく頼むわ。俺達もなんか出来る事があったら手伝うからよ。なぁ、パーラ。」
「・・・・・・ッチ。仕方ない。リョウ、何かあったら言え。」
おい、舌打ちされたぞ。
つれないなぁ。またパーラさんとは一緒に組みたいのに。
ラークとパーラさんが席を立つ。
食堂にはもう僕達しか居なかった。やべ、すっかり話し込んでしまった。
「おぉそうだ。フィリップさんのところに行くのは、今日は止めとけ。俺達と別れた後は、誰か連れていたみたいだったからな。」
「あぁ、女性ですね。了解です。」
ラークはそれを聞いて、苦笑いをして去って行く。やっぱ可愛くねぇな、と呟きながら。
あぁ、パーラさんの目が痛い!痛気持ちいい!!
「リョウ・・・・・・つかれた。」
(急に人間の多い場所に連れてくるなんて、最低だわ。本当、疲れたわよ。)
ラークとパーラさんが去って早々、うちの根暗コンビが文句を言いに近付いて来た。
だから先に帰れって言ったのに。
「そう〜?わたしは楽しかった〜。特にわたしこのハチミツ酒、気に入っちゃった。今度また飲ませてね〜。」
くそぅ、僕は全然飲んでないのに!
誰だよピノに酒の味なんて覚えさせた奴は!?
「ふふっ、ピノさん分かっていませんねぇ。やっぱりぃお酒はぁビールなんですよぉ。ねぇ、ルシルさぁん?」
「ぐふっ!?クサッッ!!? セリス!私に話し掛ける時は息をするなと言ったでしょう!!」
「ふふっ、ルシルさぁんそれだと死んでしまいますよぉ。 あ、リョウさん。ニンニク焼いたの食べますぅ?」
「ゴホッ!!ゴホッッ!!!あ、貴女わざとやっているでしょう!?」
セリスがやたらとヘラヘラしているな。
もうルシルに任せとこう。面倒くさいし。




