49話:オーラロードがひらかれた
・・・なんかとんでもない約束してしまった。
この仕込み杖を僕が使う代わりに、ピノにはもっと綺麗な武器をプレゼントすると約束してしまった。
ピノのご所望はピカピカの武器。攻撃力が高いでも潜水ヘルメットでもなく、ピカピカの武器。
この新品の仕込み杖の刀身よりピカピカと光る武器を、僕は用意しなければならない。
ピノの武器は銃を考えていたんだが・・・刀よりピカピカ光る銃ってなんなんだよ。
・・・金とか?黄金銃か?007かっつーの。黄金銃が存在するんだったら僕が欲しいわ。あんなん取ったやつ勝確やんけ。
・・・さて、地下一階の入口である階段まで戻って来た。
左右に伸びる廊下は攻略済み。その先には地下二階への道も、ボス部屋も無かった。
残るは正面にある渡り廊下のみ。地上の階のようなふざけた仕掛けが無ければ、この渡り廊下の先が正解ルートだろう。
「・・・そういえば、地下一階にはまだ魔力溜まりの場所は無いですね。」
「まぁ・・・その辺は運次第だからね。もしかしたらこのまま最後まで無いなんて事もあり得るよ。」
フィリップさんがポリポリと頭を掻きながら答える。
マジか・・・まぁでもダンジョンなんてそんなもんだろうな。
ひょっとしたら見付けれてない可能性もあるかもしれないけど・・・隠し部屋とかありそうじゃん?
セーブポイントを見付けれるのは、盗賊か魔法に長けたクラスの人達らしいが・・・セリスが見付けれてないのなら無かったって事でいいんだろう。
・・・それにここに出てくる魔物は幽霊だ。
セーブポイント内で安心して休憩しているところを幽霊に襲われる!なんて事が十分にあり得そうで恐い。
ここまで10匹くらいの幽霊を倒したが、未だに謎だらけで、何も分からない奴等だ。
耐性を持っていて、従魔になったしという事で魔物なんだろうと言ってるが、まだまだ怪しいものである。
魔物ではなかったら、セーブポイントには入って来れるだろうし、そもそもレア種だから僕の従魔になれたんだし、セーブポイントには入って来れるという事になる。
もう自分でも何言ってんのか分かんねぇや。
やっぱり最初のように、魔物とは関係ない存在として考えた方がいいような気がする。
襲われたら対処する。協力してくれるなら拒まず、だ。
「は、は、は、早く出て来なさいよ!あの赤い女!!! こっちにはリョ~君とセリスが居るんだから!」
いちいち呼ばなくていいんだよ。出て来ない事に越したことはないんだから。
まぁ、ピノにも大分余裕ができたようだな。ビビりながら挑発できるくらいには。
さてこの渡り廊下。上部にはしっかりと天井があるが、側部には手摺りがあるだけ。つまり校庭に出られる作りになっているのだが・・・校庭には出られない。
何を言っているのか分からねーと思うが・・・地面が無いんだよね。ごっそりと無いらしい。
渡り廊下の外側は、足元に黒いスモークを焚いたようにもやがかかっており、一歩踏み出せば、底なしの穴に真っ逆さまとなるそうだ。
まぁ要するにマップでは無いという事だ。大人の事情とも言う。校庭まで捜索範囲が広がらなくてよかったと、ポジティブに考えておこう。
慎重に進みはしたものの、赤い着物の幽霊は出て来なかった。
赤い着物の幽霊が立っていたであろう場所まで来ると、渡り廊下は右に90度折れていた。その先に立っていた建物は・・・
「体育館・・・か。」
入口からではよく見えなかったが、渡り廊下の先は体育館だったか。
まぁ・・・ここが学校なら、体育館があっても不思議じゃないよな。
ふむ、体育館だけなのか。・・・まぁ取り敢えず体育館に入ってみるか。
他のみんなはノーリアクションだな。
まぁそれも当然か。ただのデカい建物ぐらいにか思わないよね。
「えっと・・・リョウさん?これもヒキドというやつですか?」
体育館の入口は4枚建ての引き戸になっている。教室の入口は2枚建てだった。
僕からすれば当たり前なんだが・・・分からんもんなんだろうね。
「そうだよセリス。中の2枚を引くんだよ。」
そう言いながら、自ら体育館の扉を開けてやる。
扉を開けた、その先は・・・
「・・・・・・・・・あぁもう。何がどうなってんだ!!?」
人が2〜3人並んで歩けるくらいの幅の通路に、両脇の赤い座席。
タタンタタンと規則正しく聞こえる音と、揺れ。
そして座席の上にある車窓からは、こちらの世界では見たこともない夜景が流れるている。
・・・・・・列車だ。間違いなく、列車だ。
ホラーな学校を抜けると、次は列車だった。・・・もう意味分からん!トンネルを抜けると不思議の街でしたの方がまだ現実味あらぁな!!
「リョウさん、落ち着いてください。確かに目まぐるしく状況が変わっていますが・・・。」
「そ、そーよ!落ち着きなさいよリョ~君!あんたがしっかりしないでどうすんのよ!!」
・・・・・・くっ!セリスとピノの言う通りだ、落ち着けっ!!!
こうやってイライラしている時は、猫吸いに限るんだがなぁ・・・仕方無いからピノの翼で我慢しよう!
スーハースーハースーハースーハーッッ!!!
「ピギャアアアアアアアアアッッ!!!キモイイイイイイッッ!!!」
おい、引っ掻かれたぞ!?僕がご主人様なのに!!!
ふっ・・・まぁいい。なんかいつもの調子が戻って来たぜ!
最近なんかこう、セクハラムーブが足りなかったよな!そうだろう諸君!?
やっぱりもっこりは世界を救うんやなぁ。しみじみ。
「しんっっじらんない!!?嫁入り前のハーピーの翼に・・・あ、あんなエッチな事するなんて!!!?」
何だよ、そんなに驚く事か?どうせスケベなくせに。そんなピンクの髪でスケベじゃないなんて言わせないぜ?
後、魔物に嫁入り前なんて概念あるのか?
「どうせピノは僕の嫁になるんだからいいだろ。」
「ッ・・・!? は、はあっ!!?セクハラなら、セリスかルシルにすればいいでしょ!?」
顔真っ赤にしちゃって。そういうところがセクハラされやすい理由だというのに。
「セリスにセクハラしても喜んじゃうだろ?」
「喜びません!!!」
ほんとぉ?セクハラしても恥ずかしいふりして我慢したりしない?夢がないなぁ・・・。
「あはは・・・、やっぱりリョウ君のパーティーは楽しそうでいいね。」
「そうですか?じゃあこのダンジョンが終わったら、フィリップさんも正式に僕のパーティーに入ります?」
「・・・・・・あ、あはは。ありがたい申し出だけど、遠慮しておくよ。」
でしょうね。知ってた。
心配しなくても社交辞令だよ。
まぁ・・・楽しそうって思ってくれてるのは本当かな。お世辞のような感じはしないし。
・・・よく見たら、結城さんと神さんもニコニコしている。従魔になってからというもの、全く陰気臭くないなこの幽霊達は。
「ま、取り敢えず進みましょう。 ・・・ルシル。さっさとモン娘形態に戻れよ。」
『ああっ!!? 何故!?何故でございますかご主人様!?魔物の体臭が嗅ぎたいのであれば、私の体をどうぞ御遠慮なくお使い下さい!!背中でもお腹でも肉球でも股関でも、どこでもお吸いになって下さい!!ああっ!!わ、私は、私は吸って欲しいんです!ご主人様あああああああああ!!!』
股関はやめとけ。バカかコイツは。
◆◆◆
突然現れた異世界の列車の中を進む訳だが・・・。
走行中であろう列車で進める道など一つしかない。次の車両に行くだけだ。
6人のパーティー+幽霊達なので列車内は当然狭いし、貫通扉なんて一人づつじゃないと通れない。
こんな場所で大鎌を振るう事など出来るのだろうか?願わくば、幽霊に合う事なく列車マップから抜け出したい。
・・・貫通扉を通った先は、やはり次の車両だった。
一体、何両編成で、ここは何号車だ?普通は車両の何処かに書いてあったりするんじゃないのか?
探してもどこにも書いてないな。それどころか、列車内ではお馴染みの広告も一切無い。吊り革だけはしっかりあるが。
「凄いですねぇ・・・。これって乗り物の中なんですか?」
「それを再現してるって感じかな。実際に乗っているわけじゃないよ。・・・そうだねぇ、まるで魔導列車みたいかな。」
!!?
・・・今、セリスとフィリップさんの会話で聞き捨てならない言葉が出てきたぞ!
魔導・・・魔導列車だってぇ!?
こっちの世界にも列車があったのか!?しかも蒸気とかじゃなく、魔法で動くの!!?
「やはり不思議なところですね。ダンジョンというのは。」
「流石にここまでのダンジョンは稀だけどね。参ったなぁ、どうやって地図作ればいいんだろう・・・。」
フィリップさんは地図作りに難航しているようだ。
頑張れおっさん!貴方にしか出来ない!
ちょいちょい会話も挟みつつ、次の貫通扉へ。
・・・まぁ当然、次の車両だよな。
・・・・・・その次も、同じ。
・・・・・・当然その次も、同じ。
・・・そりゃずっと一緒だよな。列車だもん。
大体、唐突に列車とか出してきたけど、列車と悪霊ってなんか繋がりがあんのか?
列車に・・・ホラーねぇ・・・。まぁ無くも無いかなぁ。
ふっと思い付いたのは、“猿夢”だ。
・・・いやあれって悪霊か?都市伝説的なものだろう?
大体、列車にしか共通点は無い。状況も全然違うし。
・・・・・・・・・・・・。
やばっ。恐くなってきちゃった。
ああいう類いの話って、思い出したり知っちゃったりするだけで効果があるのが厄介なんだよね。
あぁ、駄目だ。自分の心臓の音うるせぇ。車内アナウンスが聞こえたらもう終わりだよな、とか余計な事考えちゃう。
・・・突然、僕の腕に何かが絡まる。
一瞬ビクッとしたが、隣に居るのはセリスだ。セリスの方から僕と腕を組んでいるのだ。
「あの・・・何してんのセリス?」
「えっ!?・・・あの、ちょっと、不気味だなぁ・・・と。」
何ビビってんの?君が幽霊を倒さないで誰が倒すんだよ?
すると、空いていた右腕の方にも腕が絡まってくる。
「・・・何してんのルシル?」
「わ、私は怖くはございません!!!」
怖いかどうかなんて聞いてないけど?
誇り高い狼なんだろ?もっと頑張れよ。
すると、先程までも体重が乗っていた背中が、更に重くなる。
「リョ~君!この乗り物どこまであんのよ!? さっきから扉開けても同じ場所だし・・・な、何で段々と部屋の中が血だらけになっていってんのよ!!?」
ピノさん!言わないでそれ!考えないようにしてたんだから!!
それと3人同士に僕の身体持たないでくれます!?ていうか、いつの間にか僕が先頭じゃない!?洋ホラーには全然ビビってなかったじゃないか!和ホラーになってから何ビビり倒してんだよ!ぼ、ぼ、僕だって恐いんだよ!ふざけんな!!
・・・因みに、イムはずっと小さなスライムのまんまです。今は僕の服の中に侵入して、身体中を這い回っています。
コイツ・・・全然参加する気無いやん・・・。
「・・・これ、本物の血じゃないね。恐怖心を煽る演出、ってとこかな。こういうのは分かっていても冷静さを欠くから、仕様がないよね。」
あぁ、ベテラン特有の落ち着いた解説ありがとうフィリップさん。ついでに先頭行ってもらっていいですか?
「・・・!!? ご主人様、魔物でございます!!」
急にルシルが元気に叫んだ。
何なんもうこの感情の起伏・・・疲れるわぁ。
・・・・・・ん?あれ?さっき魔物って言ったか?
ここにきて幽霊じゃなく、魔物?幽霊だとルシルは反応しないしな・・・魔物で間違い無いんだろう。
だが、まだ何かあるようで、ルシルは言い淀んでいる。
「・・・ですが、その・・・。」
「何だ?遠慮なく言ってくれ。」
「は、はい。其の魔物、臭いが強いのは間違い無いのでございますが・・・臭いが薄いのでございます・・・。」
・・・ちょっと何言ってんのか分かんないっすね。
いや、薄いの反対って濃いだよな?じゃあ間違ってないのか?
「・・・う、うううぅ。・・・じ、自分が情けのうございます!!罠も見分けられない!ユーレイも倒せない!魔物の臭いまで自信がないなんて!! ・・・わ、私は天狼!誇り高き魔狼の頂点!偉大なるご主人様の2番目の従魔!………」
なんかブツブツと自分に言い聞かせてるが・・・あんまりフィリップさんの前では言わないで欲しいな。
兎に角、ルシルの話では、近くに上位種かレア種の魔物が居るらしい。まぁ道は一本道だから、次の車両だろう。
「昨日も、この従魔の子の言っている事が正しかったしね。今度も本当に居るんだろう。」
ほらっ。フィリップさんが独り言をスルーするだけじゃなく、フォローまでしてくれてるやん!
・・・ダメだ聞いてねえや。おっさんじゃダメだってよ。
「・・・上位種かレア種が居るんなら、そこの部屋はダンジョンコアルームかもしれないね。・・・本物のコアか・・・まぁ偽物の時の方が多いんだけどね。」
・・・確かにそうか!ダンジョン内でレアか上位が居たら、ボス部屋の可能性があるのか!?チャーーーンス!!
「やる気満々みたいだけど、流石に慎重になった方が・・・」
「なぁーに、大丈夫すよフィリップさん。相手は幽霊じゃなく魔物なんですから。なっ、ルシル!」
「・・・・・・はっ!?そ、そうでございますね!!相手は魔物!ならば偉大なるご主人様の従魔である、この私が負ける道理などありません!!流石はご主人様!見ていて下さい!相手がレア種だろうが、一瞬でこの世から消し去ってみせましょう!!!」
と、まくし立てたルシルは、フライパンを片手に次の車両に向かって行く。
おい、ちょっと待て。レア種をこの世からから消し去られたら困るんだよ!
「い、いや、普通に上位種だと思うんだけど・・・。リョウ君、流石に従魔一匹では危険だよ。早く行ってやらないと。」
・・・ふむ、確かに。上位種やレア種のヤバさはもう十分わかっている。魔族であるルシルといえど・・・まぁ倒すんだろうけど。
・・・って、ルシルがすぐに引き返して来たぞ。どうした?トイレか?
「ご主人様!?ゆ、ユーレイでございます!!?も・・・モンキーの、ユーレイでございますうぅぅぅぅ!!!」
おおお落ち着け!腰に縋り付くな!
モンキーの幽霊!?猿の幽霊か!?
何でここにきて猿の幽霊なんか!?僕が猿夢なんて思い出したからか?じ、冗談じゃねえぞ!!ピーーーンチ!!
内心慌てていると突然、前の方でガシャンガシャンと大きい音がする。
見ると、前の車両の貫通扉を何かが激しく叩いている。
貫通扉の薄汚れた窓には、青白く光る半透明のデカい猿の顔が。此方に向かって吼えているようだが、あまり咆哮は聞こえてこない。
「あれは・・・多分、オヤマノモンキーだ。この辺だと、オシリ山で生息が確認されている魔物なんだけど・・・悪霊の屋敷では確認されていない筈だ。」
フィリップさんがあの魔物の事を知っているようで、教えてくれた。
悪霊の屋敷では確認されていないと言うが、それは幽霊も同じ事だ。悪霊の屋敷の地上と地下では、生息する魔物が違うというアレだろう。
それよりも、あのオヤマノモンキーってやつが幽霊と同じように青白く透き通っているのが気になるんだが・・・
「お、お許しください!ご主人様ぁ!!お許しくださいぃぃぃぃぃぃ!!!」
あぁもう、うるせえなあ!!何を許すんだよ!怒ってねぇよ!?
頭を撫でてやるとすぐ大人しくなる。もうだめだ、この魔族バカみたいに強いクセに役にたたねえぞ。
「あーっと、あの〜フィリップさん?あのオヤマノモンキーってどうみても幽霊・・・ですよね?」
「・・・うん。リョウ君の言う通り、あのオヤマノモンキーは、ユーレイの特徴も併せ持っているようだね。当然、僕は見た事もないし、聞いた事もない。」
「じゃあフィリップさん。あれってオヤマノモンキーって魔物の・・・レア種って事ですよね。」
「・・・・・・その可能性はあるね。それにあの魔物は、あの扉から先に来れないようだね。と言う事は・・・。」
「あの部屋が・・・ボス部屋って事か・・・。」
・・・あの部屋がボス部屋。
地上階では行ったり来たりを繰り返し、モンスターハウスを2回も退け、挙句の果てにはボスまで倒して、地下への道の謎を解いた。
地下には、この世のものとは思えない学校マップに、幽霊のような魔物。
進んだ先には体育館。扉を開けば、列車マップ。待ち受けるは、ネットで有名な都市伝説・・・。
間違い無い・・・。ここが、悪霊の迷宮の・・・終点だ!
「オヤマノモンキー・・・!!魔物!魔物でございますか!?であれば、私にお任せください!!モンキーの魔物ごとき、この世から消し去って魅せましょう!!!」
君は何で僕のお腹に向かって喋ってんの?離れて喋ろうな。
・・・さて。安全な場所からボスの姿が見れたのは収穫だ。
ゆっくり対策を考えて・・・といっても、レア種ならデータに無い能力を使う可能性があるな・・・。
ていうか、あいつホントにレア種か?もしメスだったら従魔の可能性あるぞ。
次のモン娘は猿の幽霊なんか?なんだろう、全然可愛いイメージが湧かないぞ。
つーかこれ以上、幽霊の従魔いる?もう交通渋滞してんだろ。いやまあ仲間が増えるのは嬉しいんだけどさ。
・・・いやいや、まずは勝って無事に生き延びる事を考えないと。
フィリップさん情報によると、オヤマノモンキーとその上位種であるフジヤマモンキーは、共通して火属性魔法に弱いらしい。
火属性魔法が使えるのは、セリスだけか・・・いや、幽霊なら魔法は効かないか。
なんだよ!結局考えるだけ無駄じゃねーか!!
ゆーれい、セリスが、きる、てき、きれる、これ、しぜんのせつり。
「おれ、うごき、とめる。セリス、きる。てき、ほろぶ。おーけー?」
「えっと・・・何故そんな喋り方なのかは分かりませんが、分かりました。」
ふふふ!何故なら僕には、女神が与えたもうた神器があるからな!幽霊なんか相手にならんのですよ!!
・・・・・・ゆ、幽霊ならな!!!
・・・ゆ、幽霊だよな?
「さあさあ!!早くお行きなさい、セリス!!貴方がご主人様の盾となって、貴方が敵を斬るのでございますよ!!」
「ちょ、押さないで・・・ルシルさんも戦ってください!」
「そんな卑劣な武器を持って何を言っているのです!臆したのならその鎌を寄越しなさい!!」
「これは駄目です!ルナ様から授かった武器ですよ!?」
「私はもう女神様側の者でございましょう!?まだ私を信用出来ないのですか!?」
「そ、そういう問題では・・・。ルシルさんには時属性の魔法があるではないですか!それで戦ってください!」
「こ・・・怖がってなどおりません!!ユーレイが恐ろしいのを私のせいにするのは止めなさい!!」
「そんな事言っていません!ルシルさんが怖がっているんでしょう!?」
「は・・・あ゛ぁん!!?魔族の中でも最強格である天狼の私が、ゆ・・・ユーレイなんて恐れている訳ないでしょう!! ガルルルルル!!ご主人様の手前、我慢してきましたが、やはり貴方を殺さねばならぬようですね!!」
「図星をつかれたからって怒らないでください!熾天使である私を簡単に倒せるとお思いですか!?」
まーたイチャイチャしてるよ・・・。
本当はめっちゃ仲良いっすからねこの二人。僕の見てないところではチュッチュチュッチュやってっから。本当だよ!
「もうっ!ルシルさんは下がっててください!・・・リョウさん、準備はいいですか?」
「お、おうよ!・・・ルシル、おまえはこれ大事に持ってろ!」
なおも興奮収まらないルシルに、仕込み杖を押し付ける。僕が大事にしているのを分かっている筈だから、もう暴れたりはしないだろう。
どうせ僕とセリス以外は戦闘出来ないしな。ルシルは切り札として時属性魔法だけ使えればいい。
貫通扉を叩いていた筈の魔物は既に居なかった。
予想通りだとヤツはボスだから、部屋からは出れないので、奥に引っ込んだのだろう。
この血とサビに塗れたホラーな加工のせいで、汚い窓からは次の車両の様子は見えない。奇襲には注意しないと・・・。
セリスが先頭に立って貫通扉を開ける。
「ヒッ・・・!!?」
次の車両に入るなり短い悲鳴を上げ立ち尽くすセリスの脇から、僕も次の車両に入る。
・・・・・・うわぁ。ケチャップの量が尋常じゃないな。
座席も何年放置してんだってくらい汚ぇし、車両内の灯りもチカチカと付いたり消えたり・・・。これ以上ないってくらいホラー映画だな。
だが唯一、ホラー映画と違うところは・・・車両の奥にある石の台座。そしてその上にある黒い水晶玉。
・・・ダンジョンコアだ!
「ご主人様!セリス!!上です!!!?」
すぐ後でルシルが叫ぶ。
う、上ッッ!!?
僕は顔を上げると同時に、数珠を持った腕も上げる。
我ながら素晴らしい反射と判断であると、はなまるをあげたい。
「な、南無三ッ!!!」
咄嗟に出た言葉がこんなんじゃなければな。
もはや姿すら確認せず放った念仏だったが、やはりそこはルシル様の言うとおり、オヤマノモンキーの幽霊が居て、僕の念仏をモロにくらっていた。
天井に張り付いて待ち構えていたオヤマノモンキーの蹴りは、セリスに届かず、僕のありがたい念仏によって動きを封じられていた。
すかさずセリスが大鎌を振るう。
オヤマノモンキーの片脚を斬り飛ばしたが・・・ちょっ!!?そんなデカい武器を側でブンブンしないで!!
片脚の無くなったオヤマノモンキーは素早く距離をとった。台座のところまで下がったオヤマノモンキーは此方に睨みをきかせてくる。
・・・チッ。耳鳴りと動悸がしてきやがった。任意で発動出来るのかアレって?
「リョウさん、助かりました。流石です。」
僕もついでとばかりに君に斬られそうだったがね。
全く、油断したぜ。ホラーな演出とダンジョンコアに気を取られていた。な~にが、奇襲には注意しないと・・・。だよ!全然注意してねえわ!!
「セリス!早く決めてしまいなさい!!相手はレア種!何をしてくるか分かりませんよ!!?」
「そうだよ、リョウ君!それにオヤマノモンキーには自前で遠距離攻撃がある。倒せるならさっさと倒そう!」
ルシルに続いて、フィリップさんもが決着を急がせてくる。
オヤマノモンキーは魔法でも使えるのか?それは是非、先に聞きたかったな!!
オヤマノモンキーは短く吠えながら、何かを放ってきた。
点滅する灯りでよく見えなかったが、それは黒くて丸いモノ。幽霊であるヤツがどうやって用意したのか分からんが、その黒い物体は此方に向かって来る。
だが、そんなモノにやられる僕達じゃない。
スッと前に出たセリスが、その黒い物体を真っ二つにしてしまう。
何の魔法だったか知らんが、弱い魔法だ。これくらいの遠距離攻撃なら、何発打たれてもたかが知れて・・・・・・。
・・・・・・い、いや。
これ魔法・・・じゃないぞ!!?
こ、この芳しい臭い・・・ま、まさか・・・・・・
目の前のオヤマノモンキーは、次の装填の為に、ケツに手を当てている。
う・・・うああああああああああ嗚呼ああああ!!?で、できたてホカホカじゃねえかああああああああああああああああ!!!!!
「き、キャアアアアアアアアアッッ!!!わ、私の・・・女神様から授かった大事な武器に・・・モンキーの・・・う○ちが・・・。」
「ぎゃあああああああああ!!サイテええええええ!!!リョ〜君!殺して!!早く!!!」
「えっ!?あ、おっっ!?・・・えーっと!臨、兵!・・・・・・臨、兵、闘!・・・・・・あああああああああ!続き分からねええええええっっ!!!」
「し、知らないわよおおおおおおぉぉぉ・・・・・・!!」




