46話:おきのどくですが………
オシリ王国の辺境、パイマーン。
そのパイマーン近郊に約1年前に現れた、豪邸型のダンジョン”悪霊の屋敷“。
王国内でも腕利きの集まる街として有名なパイマーンの冒険者達は、小規模なダンジョンだった悪霊の屋敷を、あれよあれよという間に攻略していった。
ある者は最上階でダミーダンジョンコアを発見し、ある者は隅々まで攻略した地図を作成し、またある者は復活したての宝箱から魔剣を手に入れた。
しかし、その冒険者達は本物のダンジョンコアを発見することは出来なかった。持ち出せない装飾品に興味を向ける者がいなかった訳ではないだろうが、最後まで謎が解けた者は誰もいなかった。
そののち、ギルドから探索終了宣言が出される。
高ランクの冒険者達はダンジョンから離れて行き、低ランクの冒険者達の修行の場へと変わりつつあった。
パイマーンの周辺にはない不死系の魔物の素材。悪霊の屋敷はその入手元となる筈だった・・・。
パーラさんも使っていた、明るくする魔導具を使う。
コレ高かったんだよねぇ・・・。まぁダンジョンを攻略するには必須の魔導具だからいいんだけど。
道中で集めた魔石を数個入れ、両手で捻る。すると魔導具は宙に浮き、光を発する。これで使用者が動いたら追尾してくれるっていうんだもんな。スゲーよ異世界。
今回現れたのは梯子じゃなくて階段だ。
みんな一緒に降りれるな!梯子じゃなくて残念とかじゃないもん!
「暗いですね・・・魔導具を買っておいてよかったですねリョウさん。」
「あぁ、足元に気をつけろよセリス。」
階段の先は真っ暗だな。ここまでは明るかったんだけど・・・地下一階に光源は無いのか?
「フィリップさん、ダンジョンってこんなに暗い場所が多いんですか?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・フィリップさん?」
「え?・・・あぁ、すまない。ちょっと動揺しちゃって。 ・・・そうだね、こういう家みたいなタイプのダンジョンだと明るいんだけど、全体的にみると暗いところの方が多いかな。洞窟とか、遺跡とかね。」
しっかりしろよおっさん。こっから未知のエリアだぜ?
おっさんが頼りなんだからさ・・・。
木造の階段を踏み締めながら下りて行く。
・・・・・・ふっ。どうやらビビってるのは僕とフィリップさんだけだな。
前を行くセリスとモン娘3人は平気な顔してんな。それもそうか、魔物はほぼ全部こいつ等が倒してんだもんな。
「フィリップさん、大丈夫ですか?」
「え?大丈夫だよ。 ははは・・・、情けないねぇ。僕が1番歳上なのに・・・。」
いやいやそんな事ないぞ。僕だって自分の事、棚に上げてんだから。
「本当、大丈夫だよ。確かに未知のエリアは怖いけど、それ以上にワクワクするよ。僕は冒険者だからね、こんな事に怖がっていたら、商売上がったりだよ!」
ふっ、杞憂だったか。
・・・これでビビってんのは僕だけになったな。
フっフっフっフっフ・・・・・・怖ぇよぉ。
「リョウさん、ほんのりと光が・・・。」
セリスがそう言うので、階段の先を見てみる。
おっ!?本当にほんのりな光だな。
けど・・・何で光が緑色なんだ?
階段は・・・ここで降りきったのか。ここが地下一階か?
えっと・・・緑色の光の正体なんだけど・・・、これって、非常灯・・・だよな?
緑色に白い字で、非常口って書いてある・・・あっちの世界でよく見た物があるんですが・・・??
「何だいこれ? ・・・人のマークに?文字・・・なのかな?見た事無い言葉だね。」
そりゃフィリップさんも見た事は無いだろう。
だってそりゃ・・・日本語だからな。
「リョ〜君、あっちも光ってるよ。赤い光。」
ピノの向いている方向を見る。
・・・非常ベルだ。消火栓って書いた赤い扉の、これまたよく見るやつがある。
「う〜ん、これも見た事無い言葉だね。また何か謎が隠されているのかな?」
フィリップさんが顎を撫でながら、こっちを見てくる。
いやまあ・・・謎っちゃあ謎だけど、解き明かす仕掛け的な謎じゃなくて、何でこんなところにあっちの世界の物が?的な謎なんだよなぁ。
取り敢えずもっと調べない事にはなんとも言えないな。
当然ここは何かの建物の中だな。多分、地下一階がこういったエリアって事なんだろう。
さっき下りて来た階段も、この建物も木造だな。味わい深い感じがする。
んで、選べる道は3つもある。
1つは正面にある渡り廊下。向こうにあるであろう建物はここからでは見えないが、多分渡り廊下だろう。
月の光っぽいものが差し込んでんだよな。夜って設定なんだろう。だからこんなに暗いのね。
2つ目と3つ目は、階段の脇の左右に伸びる廊下。
まぁ調べるなら渡り廊下よりはこっちかな。
独断と偏見で左の廊下から行くことにする。
行動学うんぬんで無意識に左を選ぶ人が多いとか誰かが言ってた気がするけど、まんまと引っ掛かってやろうと思う。
月明かりに照らされた廊下、そのすぐ左手に扉があった。
「えっと・・・これって扉ですよね?」
「あぁ、セリス。それは引き戸だ。横に引くんだよ。」
・・・そういや、こっちの世界で引き戸は見た事無いな。無い事も無いと思うんだけど。
引き戸を開けると広い部屋だった。
そこには規則正しく並んだ、一人用の勉強机と椅子。
部屋の後方には掃除用具入れと各生徒の棚があり、そして部屋の前方には教卓と黒板。
僕は1人廊下に出て、この部屋のもう一つの引き戸の上にある表札を見た。
そこには・・・[3ー1]と書かれてあった。
間違い無い・・・ここは学校だ。
あっちの世界の学校をモデルにして作られているのか。
・・・いや、地上のモデルがゲームだっただろ?この学校も何かのゲームから取っているか?
もしくはアニメとか、マンガとか・・・。う〜む、学校が舞台のホラー物なんて一杯あるだろう。何を参考にしてるとか分からんぞ・・・。
考え込んでいた僕の視界の端に何かが映った気がした。
慌ててそちらを見る。・・・廊下の奥から青白い何かが近付いて来ていた。
・・・・・・えっ!?な、何だあれ!!?
その存在を認めた瞬間に、ヒドい耳鳴りが起こる。
心臓の音も凄い。何だよこれ!?僕の動悸の音か!?
ォォオオオオオオオオオォォォォォォ………………
何だよその叫び声は!?魔物・・・じゃない!!?
青白い何かが更に近付いて来ると、ソレが人の形をしているのが分かる。
女生徒の格好の、苦悶の表情をした・・・ゆ、幽霊!!!?
・・・ちょっと待てよ!今僕一人じゃないか!!?
光の魔導具も他のメンバーに追尾してるじゃない!?
や、ヤバッ・・・
「ご主人様ッッ!!!」
一瞬にして幽霊との距離が開く。
どうやらまた、ルシルの時属性魔法に救われたみたいだ。
「このヤロー!リョ〜君に何すんの!!」
すかさずピノが幽霊に向かって飛び蹴りをぶちかます。
飛び蹴りは幽霊に当たったように見えた。だが、当たった手応えは無く、幽霊の体をすり抜けるだけに終わった。
「なに・・・・・・・っ、あ、か、体が・・・!!」
着地したピノが片膝をつく。
何だ?攻撃された風には見えなかったぞ?
「これならどうです!?」
今度はセリスが光魔法で弓と矢を作り、幽霊に狙いを定める。
ちょ・・・いい遠距離攻撃あるやん。何で今まで使わなかったんや。
セリスが矢を射るが、やはり幽霊の体をすり抜けてしまう。矢はそのまま教室の窓を割り、黒板に刺さる。
「なっ・・・!?魔法も効かない!?」
ォォオオオオオオオオオォォォォォォ………………
ド………ウ………シ………テ………………オオオォォ………………
はぁ!?知らねぇよ!!
こ、こっちに来るんじゃねぇ!!
「止まりなさい!!ご主人様の邪魔は許しません!!」
ルシルが幽霊に突撃していく。
だが、ルシルの攻撃も当たりはしない。虚しく空を切っているだけだ。
攻撃を全く受け付けない幽霊の両手がルシルの首に伸びる。
「な、に・・・! あ、グゥッ・・・ァ・・・!!」
ウウウウウウアアアアアアァァァ………………
る、ルシルが!あのルシルが・・・負けてる!?
「く、くそっ!!ルシルを放しやがれ!!!」
今度は僕が突撃してやろうとしたが、フィリップさんに全力で止められた。
「リョウ君!!冷静になれ!!!一度逃げよう!上の階層までは追ってこない筈だ!!」
「離してください!逃げるにしても2人動けないんすよ!!?」
置いて逃げるなんて絶対出来ない!
けど、どうする?物理も、魔法も効かないなんて・・・本当に幽霊だってのか!?
「グウゥ・・・、うああああッッッ!!!!!」
その時、ルシルが吠えた。
そして・・・次の瞬間には・・・
1階の玄関ホールに全員が居た・・・。
◆◆◆
「・・・・・・アレって魔物、なのかな?」
悪霊の屋敷。その入口を今夜のキャンプ地にした。
なんとも気まずい空気が流れていたので、僕から喋ってみたのだが・・・おうおう、みんなどうした。これから、アレ・・・攻略していくんだぞ?
「・・・魔物以外で何が居るんだい?」
「そりゃあ、フィリップさん・・・・・・ゆ、幽霊・・・とかじゃないっすかね?」
「ユーレイ?何だいそれは?」
えぇ?通じないかなぁ?
こっちの世界に幽霊って無いのか?
「えーっと・・・オバケとかは分かります?」
「オバケ? ・・・・・・う〜ん、オバケコオロギって魔物なら聞いた事あるけど?」
何だよそれ、気持ち悪っ!!
絶対遭いたくないわそんなコオロギ。
「あっ。リョウさんここに初めて来た時もオバケって言ってましたよね?ゴーストの事じゃないんですか?」
いやいや、セリス君。ゴーストってあの、トゥーンの世界から飛び出したようなふざけた布野郎でしょ?布なんだったら背中に乗れて鹿児島弁で喋ってくれないとさぁ。それか素肌に布を巻いただけの美女でもいいぞ。
「・・・まぁ何にせよ、見た事はない生物だね。アレをどうにかしないと探索も出来ないよ。グズグズしてると他の冒険者に先を越される。」
生物・・・じゃないんじゃないかなぁ・・・。
まぁこの世界に幽霊って概念が無いんなら、フィリップさんが生物って思うのも無理ないのか。一応、動いてたし。
まぁ〜幽霊の対策もそうなんだけどさ・・・こっちの3匹のケアをしないとなぁ。
「ゆ、許せません・・・ユルセマセン・・・。この、魔王様と・・・ご主人様の寵愛を受けたこの私を・・・天狼をコケにするなんて!!許せません!許せません!許せません!!」
「な、何なのよアイツ・・・だ、ダメ・・・無理無理、コワいよぉ・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
多分ルシルって負けた事あんまり無いんじゃないかなぁ。今回、手も足も出なかった事で、相当プライドが傷付いたみたい。
物理も通じない。魔法の中でも最上位の光属性魔法も通じないんじゃあ、仕方無いと思うんだけどね。
ピノは困ったなぁ。怯えきっていて、戦意そのものが無い。
霊体をすり抜けた事で何が起こったのか。僕はルシルが護ってくれたから体験する事は無かったんだけど、かなりの精神的ダメージを受けたに違いない。・・・触れるだけで駄目なのか。厄介だな。
イムは・・・・・・あー、こりゃ駄目だな。
コイツが1番ビビってるもん。地下一階に行ってから一言も喋ってねぇし。
まぁ、取り敢えずはルシルさえ復帰すれば大丈夫だろう。
ルシルのケアなんて簡単だよ。顎とか頭撫でてやればいいんだから。
・・・・・・ほらな。もう甘えた声で鳴いてるよ。・・・天狼のプライドはどうした、プライドは。
「・・・ところで、リョウ君。さっき脱出できたのは、その魔物のおかげかい?」
ん?この発情してるメス犬の事ですかフィリップさん?
「そうですよ。コイツの時ぞk・・・。」
・・・おーっとぉ?大丈夫かこんな事言ってしまって?
いやもう結構見せてるなぁ・・・。どうする?殺らせるか?・・・いやいやアホかと。
「・・・大丈夫だよ、他言なんてしないから。 ・・・時属性の魔法なんて伝説上のものだと思っていたよ。その従魔、大切にしてあげるんだよ。」
してますよぉ。そんなに大切にしてないように見えます?
お前も「ご、ご主人様、あっちの茂みに行きましょう。大丈夫、痛くしませんから!」じゃねーんだよ!ナニをする気だよ!・・・いや、知ってるけど!ナニをする気だよ!!
「セリスさんも上位属性の魔法を使っているよね?素晴らしい力だと思うよ。」
「えっ!?あ・・・いや、その・・・は、はい。光魔法を、少々・・・。」
まぁフィリップさんなら何も無いだろう。
どうせ一緒にあの地下一階を攻略するんなら、隠し通せる事もできねぇだろうし。
・・・う〜ん。しかし、どうしたもんかなぁ。
雰囲気ある木造の学校に、青白い学生の幽霊ときたか・・・。
まず・・・あれは魔物じゃないんだろう。
フィリップさんによれば、あんな魔物は見た事も聞いた事も無いと言う。更に、物理も魔法もすり抜けてしまう魔物ってのも聞いた事が無いとか。
おっさんが知らないだけじゃないの?まぁそんな事言っても仕様がないので、こんな魔物居ないって事で話を進める。
魔物じゃないなら・・・取り敢えず幽霊って事にしよう。
どうもこっちの世界の人達には通じないみたいなんだけど、あの青白い何かは幽霊と名付ける事にした。
そんで、幽霊の対策・・・なんですが・・・。
みんな下を向いて黙ってしまう。
何か良い案ないですか?
・・・・・・まぁ無いよねぇ。そうよねぇ。
ここは僕が考えるしかないよね。
やっぱりゴーストをバスターするにはプロトンパックがいるんじゃない?それか鬼の手を持った地獄先生呼んで来ましょうか?まさか幽霊しばりアップリケですか?幽霊よ闇の世界に戻りなさ〜い(裏声)
・・・・・・みんなそんな顔すんなよ。
分かった分かった。真面目に考えればいいんでしょ?
・・・・・・って、真面目に考えたって幽霊に攻撃できる訳ねーだろ!それこそ一番効きそうな光属性魔法が効かなかったんだからな!
大体、あの光の矢って魔法扱いなのかよ?矢じゃん。物理攻撃だよ。
ってセリスに言ったら、アレは当たったら、当たった部分が光の粒子になって消し飛びますって言うんだ。
怖ぇよ何だよその技。味方に当たったらどうすんだよ。消し飛ぶぞ、フィリップさんの頭が。
まぁそれは置いといて、違う方向から考えてみよう。
悪霊の屋敷の1階から4階が、あっちの世界のゲームをモデルに作られていたな。1階の玄関ホールとか、道中のデザインとか、地下に降りる為の仕掛けとか、ほぼ一緒だったし。
であれば、地下一階の学校もあっちの世界の何かがモデルになっているって考えるのが普通かな。
ただ、学校を舞台にした幽霊の出るホラー作品なんて腐るほどあるんだよね。
因みに今のところ心当たりは無い。
地下一階はダンジョンコアのオリジナルで作ったって可能性もなくはないか・・・それでも非常灯や消火栓がある事から、あっちの世界が関係しているのは間違い無いだろう。
だったら幽霊への攻撃方法もあっちの世界と一緒・・・だから何なんだよそれは!
やっぱ鵺◯先生に助けてもらうしかないんじゃん?いやぁ、そんな人はこの世界に居ない。
・・・・・・除霊。
除霊か。除霊グッズか?お札とか、お香とか、お清めの塩とかか?
んなもんあったら準備の段階で買ってたわ。コンロの魔導具なんかより優先して買ったわ。
・・・・・・う〜ん、何かないもんかねぇ。
デデデデデデデデ デーデデン♪〜
「ピャーーーーーーーーーッッ!!!!?」
何処からか鳴った、装備に呪いが掛けられてたようなBGMに、ピノがびっくりして悲鳴を上げた。
「っーー!!何なのよその恐い音!?も、もう帰る!うちに帰るぅっっ!!!」
僕も心臓がキュッてなったわ。
誰しもに刻まれているトラウマBGMだからね。仕方ないね。
一体何でこんな冒険の書が消えてしまったようなBGMが?何処から聞こえた?
・・・僕のポケットか?ルナホからか?
何か知らんが、ルナホにプッシュ通知が来ていた。今までこんな事無かったのに・・・お知らせを見てみる。
[☆本日限定☆初心者応援ルナちゃんガチャキャンペーン! 今ならなんと!悪霊に特効が付いたレアアイテムが出現率2倍になt………
ルナホをポケットに仕舞った。
「やっぱり戦わず逃げるしかないんじゃない?そんな数も居ないだろ。」
「そうですね・・・。幸い、動きは遅かったですからね。」
「そんな・・・!!セリス、貴方は悔しくないのですか!?ご主人様!私にもう一度挽回の機会を下さい!!」
そうは言ってもなぁ。いくらルシルでも幽霊を倒すなんて無r・・・
デデデデデデデデ デーデデン♪〜
「ピギィーーーーーーーーーッッッ!!!!?もーヤメてよッッ!!!」
ごめんて・・・。いや、僕は悪くねぇんだってピノちゃん。悪いのはこんな通知音に設定してるルナ様や。
[残り1分!! ☆本日限定☆初心s………
ルナホをポケットに仕舞った。
「どう思います?フィリップさん。」
「う〜ん・・・やはり戦闘を避けるしかないのかね・・・。明日中に帰らないといけないし、明日はできるだけ地図を作って、あのユーレイとかいうのは高ランクの冒険者に討伐してもらうのがいいかもね。」
あー、そういや手に負えない魔物が居たらそうするんだったな。
でもルシルも駄目だったんだよ?豚トロ大好きおじさんとかロボット掃除機が勝てると思うか?いやー勝てn・・・
デデデデデデデデ………
ああああああああああああ!!!うるせえなあ!!!!!
何なんだよ一体!!!金がねーのか!!?
[ほら、後1分延ばしてあげるから早く引きなさい。]
ハアあああああああああ!!いらん気遣いなんじゃボケえええええ!!
もうメッセージアプリと化してんじゃねーかああああああ!!
「まさか・・・リョウさん、先程までの謎の音はルナ様からの命令ではないのですか!?何故無視しているのです!すぐに実行しましょう!!」
ああああああん!!めんどくせぇ!!!
セリスだってルナ様にはよく痛い目にあわされてんだろ!?
「・・・じゃあ、セリスが払ってくれ。ルナちゃんガチャ、金貨1枚。」
「・・・・・・では、フィリップさんの言う通りに行きましょう。ユーレイと会ったら逃げて、出来るだけ捜索するという作戦で。」
何がでは、だよ。
誤魔化してるつもりなんかね?
♪〜
[セリス、後で覚えておきなさい。]
直接言えよ・・・。
♪〜
[はぁ〜(´Д`)分かりました分かりました。確率3倍にしてあげるから、早く引きなさい。]
いや、そういう問題じゃないんですけどね。全然分かってないでしょ?
「リョ〜君!!やめてって言ってるじゃん!!こんなか弱いハーピー虐めて楽しいの!!?」
か弱い・・・??
いやいや、僕のせいじゃないんですけどね。
ピロリン♪〜
[五月蝿いハーピーねぇ〜。これで満足ですか?]
何か通知音変わったぞ?
・・・まぁ当然、遠隔操作できるわな。
♪〜
[さぁ、もういいでしょう?早く引きなさい。今なら4倍ですよ。4倍。]
あのさぁ・・・。何でどんどん増えてんのよ。
どっちにしてもね、いくら確率が上がったって元の確率が明らかにされてないんじゃあ、引ける訳ないんだよなぁ。たった1%が4倍になったって、たった4%なんだよ。
♪〜
[やれやれですわ。小難しい事考えず、脳死して引けばいいのですわ。 では、こうしましょう。ルナちゃんガチャを1回引いたら、女神様のありがたく素晴らしいヒントを教えてあげますわよ?]
素晴らしいヒントって何だよ?
・・・まぁ普通に考えれば悪霊の屋敷、地下一階に関した事なんだろうけど。
ヒントまでつけようとするなんて、どんだけ金が欲しいんだよ。
♪〜
[ほらほら、あと10秒しか無いですよ! はい。じゅ〜う、きゅ〜う、は〜ち、な〜な、ろ〜く、ご〜お、よぉ〜ん、さぁ〜ん、にぃ〜い、いぃーーーーーーーーーーーーーーーーーー………………]
・・・・・・はぁ〜、分かりましたよ。引けばいいんでしょ引けば。
金貨を1枚用意し、ルナホに押し込む。
画面の中のSDキャラのルナ様が金貨を持って小躍りしている。
・・・別に。可愛いから許そうかとか思ってないし。
この前のように、手元が光り出す。
次第に光が収まっていき、僕の手にあったものは・・・
「・・・数珠?」
数珠・・・数珠だよな?随分と安っぽいなぁ。
これってこっちの世界の物じゃないよね?・・・あっ!?有名な100円ショップのタグが・・・!!
・・・気のせいだ!!
きっと気のせいに決まっている!女神様がそんな事する訳・・・いや!!する訳ないじゃないか!!
だって数珠だよ?あの数珠ですよ?絶対にこれは悪霊に特効のあるレアアイテムに違いない!!
これで・・・・・・悪霊退散!!ってするんでしょ?極楽へ行かせてあげるわ!的な決めゼリフ言うんでしょ?
♪〜
[リョウ、タグの事は忘れなさい。いいわね?]
・・・・・・・・・・・・。
♪〜
[で、ではヒントを差し上げましょう! ー勇者が護りし地に突如とし現れし悪霊の住みし迷宮。其の悪霊を討ち果たし者は、超絶美人の女神が授けし力を持つ天使なりー です!!さぁ、この謎を解いて悪霊の屋敷に挑みなさい!我が忠誠なる配下達よ!!!]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
♪〜
[分かりました!分かりましたわ!!そんな死んだような目をしなくていいじゃない!! セリスの持つ武器が有効ですよ!はい、ヒントは終わりですわ!精々悪霊に取り殺されないようにしなさい!]
・・・始めからそうしてくれよ。マジで。
後、何だよその痛いヒント。〜しが多いわ。中二病拗らせ過ぎだろ。
「あの、リョウさん。結局、ルナ様は何と?」
「ん?ああ、地下一階の攻略にはセリスの武器が有効なんだってさ。」
「私の武器、ですか? あの・・・ブーメランでどうやってユーレイを倒すのでしょう?」
何でセリスの武器って言ったらブーメランなんだよ。普通に考えて、あの大鎌だろうよ。
「ご主人様、先程の光を発していたものは、女神様の奇跡でございますか?」
女神様の奇跡?・・・まぁその通りだが。
「そうだよ。 ところで、ルシル。この数珠を見てくれ。コイツをどう思う?」
「すごく・・・・・・ただの石ですね。ジュズというのですか、そのただの石は?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・はっ!?な、何故ご主人様が涙目に!!? ご主人様!さっきの発言は女神様に向けて言ったのでございます!決して、ご主人様には・・・・・・さ、さぁもう寝ましょう!あまり遅いとお身体に障りますから!・・・・・・う・・・うわーーーーーーん!!ご主人様が目を合わせてくれません!! セリス!元はと言えば女神様のせいです!貴方が責任を取りなさい!!!」
「・・・え?何ですか? それより聞いてください、ルシルさん。私のブーメランがユーレイに効くらしいのですが、どういう事だと思いますか?」
「ブーメランな訳ないでしょう!?私が敵わなかった相手に、貴方のブーメラン芸が有効だと思いますか!!?」
「げ、芸じゃないですよ!真剣にやってます!!」
「あれが真剣ですってぇ!?バカも休み休み言いなさい!大体、何故セリスだとあのユーレイに勝てるのですか!私一人で十分でございます!!」
「・・・攻撃、かすりもしなかったじゃないですか。」
「あ゛ぁん!!?それは貴方も一緒だったでしょうが!!? ○▼※△☆▲※◎★●!!!?」
「ま、またヒドい事言いました!! ●★◎※▲☆△※▼○!!!?」
「ガルルルルル! 殺しますよッ!!?」
「うううううっ! 許しませんッ!!?」
はぁ、よく飽きないね。もう何回見てきた事か。
さて・・・あの大鎌かぁ。凄い武器だよなぁ、やっぱり。すっかり存在を忘れていたよ。
なら、この数珠も・・・いやぁどうだろうなぁ。だって100均の数珠だよ?
まぁ、数珠は数珠だから。金貨1枚もしたんだし、役立つ時が来るんだろう。
明日は最後の1日。
明日までにダンジョンの探索を終えないと・・・正確には明後日の朝までに探索を終えないと、72時間が経ち、冒険者ギルドから捜索クエストが出されるだろう。
孤児院や冒険者ギルドに迷惑はかけられない。明日には必ず帰らないといけない。
その為に今日はもう寝よう・・・モン娘達は・・・もういいや。それぞれでなんとかするだろうよ・・・・・・。
「・・・・・・えーっと、さっきの光は何なのかな?それと、何で女神様の名前が出てくるんだい?全然ついていけないんだけど・・・・・・はぁ。やっぱりおじさんには説明は無いんだね。 ・・・・・・おやすみ。」




