45話:このクランクはもう必要ないようだ 捨てますか?
・・・さて。また3階層まで戻って来た。
魔物、そんなに出なかったな。打ち止めか?
しかしめんどくせぇ構造になってるもんだな。一度3階層まで上がってからじゃないと、最後のセーブポイントには行けないのか。
せめてもの救いは、目的のセーブポイントからは一方通行の扉があって、一階入口の玄関ホールまで帰れる事だな。これで態々来た道を戻らなくていい。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!もしかしてこの先に行くのかい!?この先はまた魔物召喚罠のある場所じゃないか!?」
なんだかんだ付いて来るフィリップさんがそう言ってくる。
え?マジで?
・・・・・・本当だ。モンスターハウスのマークがあるじゃん。
しかも2連続な。もうこんなの、この先には何かがありますよと言っているようなものだな。
「えっと・・・?? 特に問題は無いと思いますが?」
「ええっ!!?セリスさんまでそんな事を・・・。」
悲痛な叫びを上げるフィリップさんに、モン娘達が追い打ちをかける。
「もー、おじさんビビり過ぎ。さっきのもラクショーだったじゃん。」
「こわい?・・・・・・ならおっさん、後ろにいろ。」
「ピノとイムの言う通りでございます!私達と!ご主人様が!あんな雑魚共に負ける筈がありません!!!」
狂信者はもう放っておこう。そうだ、それがいい。
「リョウ君、本当に行くのかい?黙ってないで何か言ってやってくれよ。」
「・・・そうですね。イム、おっさんはフィリップさんに失礼だぞ。」
「・・・・・・ごめんなさい。・・・・・・じじい、どっか行け。」
「・・・・・・・・・。」
イムちゃんはかわいいなぁ。
扉を開ける。
・・・う〜ん、見事に同じ部屋。最初の魔物召喚罠があった部屋と、広さも内装も全く一緒の部屋じゃないコレ?
罠がある部屋ですよね?一回でも罠に掛かった人が見たら、すぐ罠があるってばれるでしょ?
ダンジョンコアは生きているって話だが、クリエイティブな奴じゃないんだろうか?創造的じゃないよね。パクりばっかりじゃん。
いや、逆に人を遠ざけようとこういう構造にしているのか?だったら頭いいな。まぁ僕には見破られたがな。フッフッフ・・・。
おっとぉ?そうこうと思考しているうちに、ここの魔物召喚罠はクリアしたのかい?圧倒的じゃないか、我が軍は。
「凄い・・・。ダンジョンの魔物召喚罠を相手にこんなに安定しているなんて・・・。」
「ご主人様と私達なら当然でございますよ!フィリップ様!!」
もうね、ルシルが僕を持ち上げる度に、僕がショボくなるように感じるんだよ。だからそのくらいにしておいて欲しいんだよなぁ。頼むよ。
まぁ安定してるってのも、罠の場所が分かっているが故なんだよな。
って事は、ここの2連続魔物召喚罠をクリアして、情報提供した人間達も居る訳だ。別に僕達がクリア出来てもおかしい事は無い。なんも問題無いよ。普通だよ。うん。
さあさあ、さっさと次のモンスターハウスに行きましょうか。
魔物の解体は、イムが殆ど吸収でやってくれている。
昨日は、ポイズンゾンビを吸収していた時に、
「おいしくない・・・・・・ヴぉえ。」
とか言ってたクセに、今は平気な顔してゾンビやらなんやらを吸収している。
一応ゾンビだし、腐ってるんだろうしな。食中毒でも起こしていたんだろうか?またポイズン・・・なんて名前に入ってる訳だし。
まぁどっちにしろ、セリスの魔法一発で治るんだがね。
便利過ぎだな魔法。覚えてあっちの世界に帰ったら大儲けできそう。救い料100億万円ローンも可。何?払えない?では貴方のカラダで払って貰いましょうかねぇ・・・ブホッ!タマランチ!
「ご主人様、次の魔物召喚罠はあちらの方角でよろしいでしょうか?」
「ん?そうだけど・・・何かあったのかルシル?」
「はい。どうやら3階層の魔物がその部屋に集結しているようです。」
えぇ・・・そうきたか。
つまりは、3階層に居た魔物全員と、魔物召喚罠から出て来る魔物を同時に相手にしなきゃいけないって事か?面倒だな。
「ですが、先程邪魔をしてきた時に殆ど倒してしまっていたようですね。必死に掻き集めたようで、大した数ではありません。・・・ただ、一匹だけ他と違う、強い臭いがございます。」
強い・・・臭い?
「・・・・・・あっ、ごめん。さっき僕、屁こいたわ。」
「うぐっ!?や、やはりそうでしたか!! ・・・い、いえ!そんな事を言っているのではありません!魔物召喚罠のある部屋に、他とは違う強い魔物が居ると言っているのでございます!」
そんな事とはなんだよそんな事とは。ご主人様の屁やぞ。芳しいやろ?
・・・・・・ごめん。屁は屁だな。
「えーっと、フィリップさん。どう思います?」
「うん?・・・いや、僕は何も臭わなかったけど?」
屁じゃねーよ。誰が屁の感想なんて知りてぇんだよ。
「他とは違う強い魔物の事かい?う〜ん、君の従魔の言う事が正しいのなら、今までに遭っていない魔物なんだろう?このダンジョンに出現する魔物には全部遭っているから・・・上位種か、レア種って事になるんだけど・・・。」
おいおいマジかよ。ここにきてレア種の登場!?
あ、いや、上位種の可能性もあるのか。
いやでもなぁ、レア種がいいなぁ。仲間チャンスは逃したくない!
なんたってルナ様のお墨付きだぜ?「貴方は、多くのレア種と出会う運命にあるのです!!?」ってドドーン!!っと効果音つきで言われているんだぜ?(言ってない)
アラクネ・・・いや、マイコーゾンビだな!?もうもう、会った瞬間ビビっと来たもん。これは将来、ダンスセッションする事になるなってビビっと来たもん。
「・・・えーっと、リョウ君。まだ上位種かレア種なんて決まった訳じゃないからね。そんなの中々出るものじゃ・・・」
「は?偉大なるご主人様の従魔であり、魔王様の最側近であったこの私の力を信じられないと言うのでございますか!!?」
「・・・・・・えーっと、リョウ君。この従魔の子は何を言っているんだい?」
知らん知らん。僕は何も知らんぞ。
「・・・お〜い、セリス。まだ掛かるか?」
「はい。今終わりましたよ。 イムさん大丈夫ですか?」
「・・・・・・よゆう。まだ、喰える。」
よぉ〜し。じゃあ、レア種の待つモンスターハウスへ、レッツラゴーだ!!
◆◆◆
2連続モンスターハウスの、2つ目の扉の前に到着。
ぷっぷっぷ。どんなモン娘かなぁ・・・。
「ご主人様、やはり強い臭いがします。間違いございません!」
「・・・あ、ごめん。僕、またやったわ。」
「ぐふッッ!!!? ご主人様!!私何か怒られるような事しましたか!?」
い、いや。怒ると屁が出る訳じゃねーけど。
・・・・・・すまん。
「あれですか?確かに他と違いますね。」
「あれは・・・ポイズンギガゾンビ。ポイズンゾンビの上位種だ。」
おい、そこの天使とおっさん。リーダーの僕を放っておいて先に見ないでもらえますかね?そしてさらっと上位種認定してんじゃねーよ。
・・・うん、確かに。一回りデカいゾンビと、4匹のポイズンゾンビが居るな。
一回りデカいゾンビは、腕と脚が肥大化している。それが人体模型のように皮膚が剥がれ、赤黒い筋肉が丸見えだ。
いやぁ・・・リアルで気持ち悪い。顔だけ他のポイズンゾンビと一緒で、可愛らしいのが腹立つが。
「何でこんなところにボスが・・・? い、いや、そんな事よりポイズンギガゾンビの戦い方は・・・。」
フィリップさんが慌てて古めかしい手帳をめくっている。
あれはフィリップさんの冒険手帳か?けど、そんな暇無いんじゃないですかね。上位種ゾンビはこっちを見ているぞ!
上位種ゾンビが咆哮する。
っち、うるせぇな。威嚇のつもりか?
咆哮の後、脇に控えていたポイズンゾンビ達が動き出した。それを見て、イムが突っ込もうとする。
「待て、イム!行くな!」
イムはビタッと動きを止めた。
部屋の中央まで行けば、魔物召喚罠が作動してしまう筈だ。あっちから向かって来てくれるなら好都合。迎え撃ってやろう。
「ピノ、セリス!遠距離攻撃だ!」
「りょ〜かい! 死ね!!」
「はいっ!いきます!イムさん、見ていて下さい!!」
ピノがお得意の羽根飛ばしを始める。
ポイズンゾンビはタフな方なので、致命傷にはならないものの、確実にダメージを与えている。動きを阻害できているのもいい。便利な技だ。
一方、セリスは、懐かしのブーメランを取り出す。
・・・は?
いや魔法でお願いしたいんですけど・・・。てゆうか、まだ持ってたのブーメラン・・・。
恐らくだけど、ずっと今まで遠距離攻撃の指示が出るのを待っていたのではないだろうか?セリスの目が子供のようにキラキラと輝いている。
時至れりと見たセリスの一投は、ポイズンゾンビの方へ・・・は向かわず、天井に向かう。天井で弾かれたブーメランは、丁度調べ物が終わって顔を上げたフィリップさんの頭に・・・。
「わかっ・・・ダッ!!!?」
「あぁっ!? 何故っ!?何故、私のブーメランは真っ直ぐ飛んでくれないのですか!?」
爽快な音を立てて、フィリップさんにブーメランが突き刺さる。
いや、ブーメランって真っ直ぐは飛ばないから。それよりフィリップさんの心配してあげよ?
「何をしているのですか!ふとっちょ天使!!?」
文句を言いながらも、ルシルが左手の指を水平に動かす。
指先から出る水のカッターが、セリスに向かっていた2匹のポイズンゾンビを切り裂く!
な、なんて殺傷力の高い魔法だ。やはりルシルは強力な魔族なんだなと改めて思う。
早々に取り巻きを2匹も倒された上位種が再び咆哮する。
今度は上位種が向かって来た。獣のように、四足歩行で素早く突っ込んで来る。
お前そうやって移動すんの!?
度肝を抜かれた訳だが・・・どうやら虚を衝かれたのは僕だけだったようで。イムが上位種に向かって突進して行った。
若干斜めからのイムの突進を受けた上位種が、イムと一緒に転がって行く。僕達への突撃はイムのおかげで防げたようだが、今度はイムに馬乗りになった上位種が、腹から毒々しい液体を出してイムにかけている。
お、お前!?馬乗りからのブッカケとか、何うらやま・・・ヒドい事やってんだよ!!
イムは物理攻撃はいいけど、毒はダメな筈だ。助けないと!
持ちギャグ?が終わったセリスが、ハルバードの先端でイムに組み敷く上位種の頭部を突く。
だが、上位種は防御すらしない。眉間にハルバードが刺さっているにも関わらず、焦点の合ってない目でセリスを睨み、咆哮した。
「くっっ!!? こ、この!愚弄しますか!?」
・・・正直、愚弄されても仕方がない行動はしていると思うぞ。
「ルシル!」
「かしこまりました。ご主人様は、ここに。」
そう言ってルシルが上位種に向かって行く。
ポイズンゾンビは・・・ピノとフィリップさんが留めてくれているな。魔物召喚罠も発動していない・・・完璧やんけ!
ハルバード天使とフライパン魔族の華麗な連携に、たじたじになっている上位種。あの二人に相手されたら、いくら上位種でも時間の問題だな。
その間にイムを助けておこう・・・って!イムちゃん凄い事なってますけどー!?
「お、おいっ!?イム!生きてるよな!?大丈夫だよな!?」
「・・・・・・ん。」
緑色のネバついた液体を上からかけられたイムが、微かに返事をした。
いや、この返事はいつもの事か。
取り敢えず、この汚い液をどうにかせんと・・・えーっと、これ触ったら危ないよな?布と・・・あと毒消しか。
「くッッ!!? すまない!!罠が発動した!!」
突然フィリップさんが叫ぶ。それと共に、黒い煙が立ち込めだした。
何やってんだよおっさん!?ヘマしたのか!?
いや、人を責めてる場合じゃないな。どうせ此処を抜ける為に倒す予定だったんだ。うちのパーティーなら乗り越えられる!
「セリス!ルシル!」
「分かっています!」「おまかせ下さい!!!」
上位種ゾンビの太い腕がルシルに振り下ろされる。
だがルシルはその剛腕をおたまで華麗に受け流す。そしてフライ返しを素早く振ってみせた。
するとあら不思議。上位種に切傷ができ、血を噴き出すではありませんか。
何そのおたまとフライ返しの使い方?僕の想像を遥かに超える使い方なんですけど?
その隙に、セリスの魔法が発動する。
両手を突き出すと、上位種の足元にオレンジ色の円が描かれる。その円から火柱が出現し、上位種を襲った。
炎の中で暴れ回る上位種ゾンビ。
暫くして、力尽きたのか、床に突っ伏した。
上位種ゾンビは・・・死んだのか?
だが、魔物召喚罠からの魔物が次々と出現している。
これはもう・・・やるか、僕も。
僕は剣を構え、戦闘態勢に入る。
ううううう・・・・・・こ、怖ぇ〜〜〜!!ま、まさかゾンビなんかと戦う事になるなんて!
無理だよぉ〜〜!!剣で近接戦闘なんて無理に決まってんじゃん!!ショットガンとかロケットランチャーの無限弾がないと無理だって!!?無理無理無理無理ムーリ長老!!
だが、ゾンビを中心とした群れの中に弓を持つ骨戦士が居た。
ちょっと待てよ!そんなマイクラみたいな個体いんの!?
骨戦士の狙いは・・・勿論、僕。
なんでだよ!?おっさんとか狙えよ!!
でもその矢は僕には届かない。何故なら・・・
「もう、だいじょぶ・・・・・・リョウは、イムがまもる。」
上位種の毒攻撃から立ち直ったイムが、僕の前に立ちはだかる。
骨戦士の射った矢。アラクネの放った糸。マイコーゾンビのポーゥ。
それらをイムは体で受け止める。物理無効のとくせいで、ダメージを受ける事無く、吸収のとくぎで全てを吸収した。
・・・いや、ポーゥは只の叫び声だけどな。アイツってやっぱ無害なんじゃないの?
◆◆◆
最後に残っていたヘビーマンの頭が、ルシルの足で踏み潰された。
「このっ!このっ!よくもご主人様を!この中で一番可愛らしいからと寄ってたかって!!魔物の分際で!魔物の分際で!魔物の分際でぇっ!!!」
怒りに任せて、ヘビーマンの死体を何度も踏みつけている。
・・・あのねぇ、その蛇ってアオダイショウとかマムシじゃないんだよ。熱帯雨林の人喰い蛇くらいデカいから。体長だってきみの倍くらいあるからね?踏んづけて頭が潰れるって、一体どんな力してんだよ・・・。
それと、ヘビーマンは遠距離攻撃してないから。完全にとばっちりだから。
なのにあんなに肉片を撒き散らされて・・・あーあ。あの様子じゃあ魔石も壊れてんな・・・。
魔物召喚罠で召喚された魔物達は、怒り狂ったルシルによっておおかた倒された。
何故怒り狂ったのかは見ての通りですね。
僕がプリティーでクソザコな為に、魔物達から集中砲火された事が逆鱗に触れたらしい。
今までで一番早くモンスターハウスが終わったかもしれないな。やっぱルシルの力は凄い。
「あいたた・・・。セリスさん、さっきのは何だったんだい?」
「す、すみませんフィリップさん・・・。」
セリスがフィリップさんに平謝りしている。
まぁ謝るしかないわな。あんな大事な場面で、あんなギャグを披露されたらな。
「その通りでございます!!セリス!なんですかあの行動は!?あの行動のせいでご主人様が危険に晒されたのですよ!!」
「なっ!?私のブーメランと、リョウさんが狙われた事は関係ないじゃないですか!?あれはリョウさんが弱すg・・・か、カッコいいから狙われたのではないですか!?」
「はぁ!?いくらご主人様が隙だらk・・・か、可愛らしいからとしても、あの様な狙われ方をされたのは上位種の処理に手間取った貴方のせいです!!」
「上位種はルシルさんも一緒に戦ったじゃないですか!?何で私だけのせいになるんです!?」
「当たり前です!貴方がグズなせいで、ご主人様に禁止されていた魔法まで使ってあげたのですよ!?私に責任がある訳がありません!!」
「ぐ、グズ・・・?ふ、ふとっちょだけでなく、グズまで・・・!? ・・・で、でしたら、そのルシルさんの強力な魔法を使ったせいで、大半の魔物の素材がダメになっているんですが!これは誰のせいですか!?ガサツなルシルさんのせいですよね!?」
「が、ガサツですってぇ・・・!!? こ、この・・・○▼※△☆▲※◎★●!!!?」
「な、なんて失礼なっっ!! ●★◎※▲☆△※▼○!!!?」
「ガルルルルル! なんです!!?」
「うううううっ! なんですか!!?」
何やってんだあいつら・・・。
あまり汚い言葉を使うなよ、放送禁止用語だよそれは。君等、淑女のイメージあるんだからさ。
「何故ボスがこんな所に・・・? いや、コイツはボスじゃなかったのか。じゃあ偶然・・・か?バカな、そんな事・・・。」
フィリップさんがブツブツ言っているが・・・同じパーティーメンバーなんだから僕にも教えてくれよ。
「フィリップさん。さっきの上位種はボスだったんですか?」
「え?・・・あ、あぁ。ポイズンギガゾンビはこの悪霊の屋敷のボスだよ。本来なら、4階に居る筈・・・なんだけど・・・。」
・・・ふ〜ん。じゃあ何でこんな所にいるんだよ。おかしいじゃねぇか。
どうもフィリップさんの話を聞いてみると、ダンジョンのボスってのはそのダンジョンに生息している魔物の上位種か、めちゃくちゃ稀にレア種が務めているらしい。
んで、悪霊の屋敷の場合はポイズンゾンビの上位種、ポイズンギガゾンビだった訳だが・・・今そこでまっ黒こげになってる奴な。
だが、本来なら4階にあった唯一の部屋、ダンジョンコアルームに鎮座しているらしいんだよ。ボスなら当たり前なんだろうけど。
「・・・ふ〜ん。じゃあこの上位種って、ボスではなくて、偶々ここに出現したんじゃないですか?街の外ではよくある話なんでしょう?」
「う〜ん、まぁ考えられる原因はそれしかないんだけど・・・。 でもなぁ。本当に上位種やレア種に遭遇するなんて滅多に無いんだよ?やっぱりここのボスなんじゃないかなぁ・・・。そう考える方がまだ現実味があるよ。」
なんやねん。僕達は運がよかったんだなぁ〜でいいじゃない。夢のないおっさんだぜ。
「・・・あっ!!そうだ。もしこの上位種がここのボスだったんなら、ダミーダンジョンコアが復活しているかもしれないよ!」
おっ!?そうか!!
確か、本物と同じくらい価値があるんだっけ?
よく気付いたおっさん!
・・・・・・あー。でもまた4階に行くのか?
正直、メンドクセ。だってまたモンスターハウスとか通るんだろ?今やっと攻略したんだよ、2連続で。それをもう一回とか無理だわ。
・・・・・・ん?いい事思いついた。
ここはあのインフレメイドにちゃちゃっと行ってもらおう。
「お〜い、ルシル〜。」
「大体ですね!ご主人様は私のフワフワのおっぱいの方が好きに決まっt・・・っ!!? は、はい!!何でございますか!?ご主人様ぁ!!!」
何その話?何であの放送禁止用語連発からそんな話になっちゃったの?ダンジョンコアよりそっちの話の方が気になるんですけど。
「ルシル、4階にダミーのダンジョンコアが現れている筈だ。・・・取って来て。40秒で。」
「はっ!? お任せ下さい!!!」
ルシルがそう言った瞬間には居なかった。あったのは、ルシルが走り去った後の風だけ。グズは嫌いだよ。
「・・・リョウ君、あの従魔一匹で行かせて大丈夫なのかい?」
「大丈夫ですよフィリップさん。僕の従魔、超優秀ですから。」
・・・規格外にな。多分、パイマーンで1番強いだろう。・・・そうでもないか。
「それより、フィリップさんがさっき見てた手帳って何ですか?」
「え?・・・あぁ、いや。大したものじゃないんだよ。魔物の弱点とか、素材になるものをメモしているだけで・・・。」
やっぱり冒険手帳か。それにフィリップさんの冒険の歴史が詰まっている訳ですね。
凄いなー。憧れちゃうなー。
「上位種なんて中々お目にかかれないからね。弱点なんて忘れちゃってて・・・。因みにポイズンギガゾンビの弱点は、ポイズンゾンビと同じ火属性の魔法が有効なんだよ。」
ほぉ〜。だからセリスは火の魔法を?
分かっててやったのか適当なのか知らんが、ゾンビは燃やすに限るんだよ。
しっかしエグい魔法やったな。あれをくらって生きてる魔物とか居るんだろうか?まぁ居るんだろうな。ファンタジーだし。
「後、ポイズンギガゾンビの素材は・・・魔石と腕の筋繊維、それと胸の中の毒袋なんだけど・・・。リョウ君、アレは大丈夫なのかい?」
ん?何だいアレって?
フィリップさんが指差した方を見る。そこには、上位種ゾンビを半分くらい呑み込んでいるイムの姿が・・・。
おいおい。さっきまでいかにも毒ですよ的な液体に塗れてたやん。その毒を出した張本人を頭から丸呑みってどういう事?美味しく無いって言ってたやん。
「ちょいちょい。イム、一回ペッってしよう。何も全部溶かして剥ぎ取りしなくていいんだよ。」
「リョウ、じゃまする・・・・・・よくない。」
「よくない、じゃねーっつーの。ほら、上位種はみんなで解体すっから。」
「・・・・・・リョウは、解体きらい。・・・・・・無理するの、よくない。」
こ、こいつ・・・まぁ分かって当然か。
「だからってイムが無理しちゃダメだろ?」
「無理じゃない。・・・・・・喰う。」
何なんだイムは。僕を無視して上位種を呑み込んじゃったぞ。
寧ろ喰わせろって・・・ハラ減ってんのか?
なんか僕が食事与えて無いみたいじゃん。やめてよね。そんなひもじい思いさせてないから。
僕がイムの反抗期にモヤモヤしていると、急に目の前に跪いたルシルが現れた。
「ご主人様、只今戻りました!やはり、ご主人様のご推察の通り、ダミーダンジョンコアが現れていました。」
・・・僕のご推察じゃねーけどな。
もうルシルの中では、僕のご推察になっているんだろう。・・・もうどうでもいいや。
「ご主人様!これがそのダミーダンジョンコアでございます!」
ルシルが差し出してきたのは、大きな水晶玉だった。
ボーリングの玉より少し小さいくらいで、中が透明ではなく、黒く濁っている。
何なん?濁りきったら魔女になんの?
いやいや、あんな汚くねーし。例えるなら、ガラス玉の中に黒いキラキラした煙を閉じ込めましたー・・・的な?
「あぁ、これがダミーダンジョンコアだよリョウ君。 という事はやっぱりこの上位種は・・・。」
悪霊の屋敷のボスって事か。
・・・いや、正確には、4階層のダミーコア部屋を護っていたボスだ。
だがそれとは別に、本当のダンジョンコア部屋がある・・・筈だ。ダンジョンコアを護っているボスは別に居ると思う。
何故3階層のモンスターハウスで、4階層を護るボスが出現したのかは気になりはするが、本当のダンジョンコア部屋の方がもっと気になる。
こんなのは前哨戦だ!絶対にこのダンジョンには奥がある!この世界の冒険者が、誰も気付かなかったダンジョンの奥がよ!!
◆◆◆
2連続モンスターハウスの後は、すぐに下り梯子があった。
そこから2階へ、そしてまたすぐに梯子があり、1階へ。
目的のセーブポイントまでは、魔物は出なかった。
やはり打ち止めか?さっきの上位種達が最後っ屁だったのだろうか?
セーブポイントに入る・・・よし!やっぱりあった!
めちゃくちゃ古いスロットマシン・・・のようなもの。これに集めたコインを入れて回せば・・・。
「おい、ピノ。さっきの3つのコイン出して。」
「え?やだ。」
「は?やだじゃねーよ。ここで使わなくていつ使うんだよ!」
「何なのよ、ちゃんと返してよね。」
返してどうすんだよ、外に持ち出せねぇっつーのに。
まぁ、どうせ返ってこねぇけどな。はい、コインを入れて、ガッチャンコっと。
レバーを下ろすと、リールが回り、勝手に止まる。
リールの図柄にはBARが3つ並び、筐体の下部がパカッと開いた。
中には鉄の塊が入っている。そうそう、これこれ・・・クランクだ。
「ちょっとリョ〜君、なんなのこの鉄くず!?わたしのコイン返しなさい!?」
ピノのじゃないって最初から言ってんじゃん・・・イダダッ!爪立てんな!
「・・・リョウ君、気が済んだかい? さあ、帰りは一方通行の扉があるんだ。そこを抜けたらダンジョンの入口まですぐだよ。」
・・・こりゃ、あれだね。フィリップさんももう帰りたいんだぞ、これ。
・・・フフフ。
終わると思ったら大間違いだぜ?このクランクを只の鉄の塊と思うなよ?
クランクを手に入れたので、早々にセーブポイントを出た。
魔物も出ないしスムーズやな。
・・・・・・っと、ここがさっき言ってた一方通行の扉?
見た目は普通の扉だけど?一方通行なの?
扉を開けてみる・・・おぉ!1階入口の玄関ホールだ!
全員が扉を通ると、扉がひとりでに閉じられた。再度開けてみようとしてみたが、びくともしない。
はは〜ん、所謂こちら側からは開かないようだってやつ?本当にこんなのあったんやなぁ。
「でもこれって、あちら側からなら開けられるんだから、開けっぱなしにしてしまえばこちら側の人間を通らせれるんじゃないの?」
「・・・確かにそうなんだろうけど、あちら側に行ったって何もないじゃないか。 ・・・さぁ、今日はダンジョン出てすぐの場所でキャンプしようか。」
何も無い事ないじゃない。あの必需品であるクランクがあったんだから。
・・・だがな、フィリップさん。今日はまだまだ終わりじゃないぜ?
「もうちょっとだけ付き合ってください、フィリップさん。そこの階段の裏なんで。」
僕の言葉に、溜息を吐きながら返事をするフィリップさん。
へへへ、旦那。損はさせませんぜ?
・・・さて、この巨大な玄関ホール。その中央にはこれまた大きな階段。
この階段を上っても2階層には行けないらしい、みてくれだけの階段らしいが、どうせ2階層なんかに用は無い。
階層の裏側に行くと・・・ふむ、一見何も無い。ただ壁があるだけ。
えーっと・・・ゲームだとこの辺だったか?
・・・・・・あったぜ!四角の小さい穴が!
僕はその四角い穴にクランクを差し込み、回し始めた。
カタカタと歯車か何かの音が鳴る。
僕以外のメンバーは、僕の奇行を固唾を呑んで見守っている。
カタカタ、カタカタ、カタカタ、カタカタ・・・・・・
「な・・・な・・・なんだってっ!!?」
「そうですか。リョウさんが探していたのは、更に奥・・・。」
「・・・・・・かいだん。」
「フフフフフっ!!流石は我が主!いえ、ご主人様でございます!!!」
「へぇ~。上に無いって事は、下にあるのね。」
クランクを回し終わると、壁が迫り上がり、下へと続く階段が現れた。
そう。僕達が用があるのは2階層じゃねぇ・・・地下だ。
「・・・よっしゃ、行くぜ!目指すは・・・ダンジョンコアだ!!!」




