41話:スライムが あらわれた!
あれから1週間。
皆さんに朗報でございます!
いや、僕に朗報でございます。
あの孤児院の暴君、金魚のフン先輩ことアンドニが近々孤児院を出る事が決定いたしました。
長かった・・・ホントに長かったです。
頑張って耐えましたよ僕。やり返す事なく頑張りましたよ。
どうもタイミング的に、フンのフン先輩が成人になるのを待っていたようだな。
仲良し過ぎだろ。ホモかな?くさそう。
ついでにモルガンも一緒に出るってよ。
ふ〜んって感じだが。
さてさて、金魚のフンの事なんてどうでもいいんですよ。
僕等に協力してもらえる、本職の冒険者が決まりました。
つい一昨日の事なのだが、やっと冒険者ギルドの酒場で昼間から飲んでるラークとパーラさんを見付けた。
早速、依頼の話をしたのだが・・・パーラさんは当然嫌な顔をするし、ラークも難色を示した。
依頼の報酬はきっちりあるのに・・・。
僕が報酬予定のレア種のミノタウロスの魔石をチラ見せすると、ラークは興奮していたが、パーラさんに怒られて落ち着かされていた。
くそぉ、そのままで良かったのに。
しかしその後も、報酬は魅力的だが、どうしても僕達に協力出来ない最大の理由があると言われて断られた。
その最大の理由とは何なのか。
それは、パーティーの人数だ。
紫煙の風が4人、僕達のパーティーが、僕、セリス、モン娘3人娘で計5人。
合計すると、9人のパーティーになる。それがどうしても駄目だと言われた。
・・・・・・えっ?何が駄目なん?
「何言ってんだよ。冒険者のパーティーは最大6人のパーティー。こんなん当たり前だろ?」
「・・・すみませんラークさん、勉強不足で。それは冒険者ギルドの規約か何かですか?」
「いいや、冒険者ギルドにそんなもんねぇよ?」
「え?じゃあ何でですか?」
「そりゃあ・・・・・・なぁ、何でだパーラ?」
「・・・私も知らんな。だが、6人以上のパーティーなど見た事が無い。」
「そう!そうだよ!!だから駄目なんだろ6人以上のパーティーは?当たり前じゃねーか。なぁ、パーラ!」
・・・別にこの2人はコントをしていた訳ではない。
冒険者のパーティーは最大6人まで戦闘に参加できる。
そして、自分達専用の馬車を持っていれば最大12人でパーティーが組める。
このゲームのような決まりがこの世界ではあるみたいだ。
理由なんてない。ただ、この世界のルールとして存在している。
今までだって散々あったんだ。
僕とルナ様の都合の悪い話はこの世界の人間には聞かれないし、クラスは抽選箱で決まる。モン娘達がいくら人間に近い格好をしても魔物と認識されるし、セリスの体重は増える。
ルナ様の決めたルールにこの世界の住人は逆らえない。
いや、逆らおうとも思っていないのだろう。
唯一、僕だけがルナ様の枠から外されている状態だ。
でも僕にはルナ様に逆らう理由なんて無い。僕には不自由に感じないしな。
だから好きに生きる。ルナ様に言われたように好きにする。
そう思うと、枠から外されていると言いつつ、手のひらの上で踊らされてるのかもな。
・・・なーんて、キザっぽく言ってみたが、関係ねぇよ。僕は好きに生きるんだ。
つーわけで、パーティーは6人までというゲームでも中々見ない設定のせいで、紫煙の風との協力はなくなった。
だが、ラークに別の冒険者を紹介してもらう事ができた。
その冒険者と交渉し、協力を取り付ける事に成功した。
今日はその人との冒険、最初の日だ。
僕達はそのおっさんを迎えに、おっさんの下宿先に来ていた。
だって時間になっても集合場所に来ないんだもんね。
初日から遅刻って何考えてんの?社会人として失格よ。
僕は、女の子達を外に待たせて、宿の中に入った。
宿の従業員だろうおやぢがカウンターの中で本を読んで居たので、聞いてみる。
「おじさん、ここにフィリップさんって人、泊まってますか?」
「・・・何か用か?」
「ええ、依頼の件でお会いしたいんですけど。」
「・・・2階の奥から2番目の部屋だ。」
それだけ言って、従業員のおやぢは目線を本に戻した。
個人情報も何もあったもんじゃないな。僕が何者かも聞いてないやんけ。
まぁ勝手に行っていいんだろう。遠慮なく行かせてもらう。
さっきも言ったように、僕達のパーティーの協力者とはフィリップさんだ。
約1年前にちょろっとだけ会った事のある、あの人当たりだけは良さそうなサムライの獣人だ。
6人パーティーという制約がある為に、協力者はソロの冒険者じゃないとだめだった。
そこで出てきたのが、フィリップさんという事だ。
当時は紫煙の風と組んでいたみたいだが、今はフリー。ラークが連絡を取ってくれたところ、暇にしていると言うので、快く依頼を受けてくれた。
依頼料もソロ故に安い。レア種の魔石も手放さなくてよくなった。
フィリップさんの部屋の扉を開ける。
開けた瞬間に中からタバコの臭いが押し寄せてくる。
机や床には酒瓶が転がり、他にはタバコの一杯詰まった灰皿と何かの飲みかけが入ったコップ。
ベッドには下着姿のモジャ毛のおっさんが死体のように眠っている。
流石だ。
絵に描いたようなだらしないおっさんの部屋だ。
ほらね、女性陣は連れて来なくてよかったでしょ?
「フィリップさん、起きてください。約束してた時間ですよ。」
「・・・・・・・・・。」
「おいおっさん。」
「・・・うん・・・んん?・・・あぁ、ええっと、君は確か・・・。」
やっと起きたか。
まったく・・・なんで僕は美女と組めなかったんだ。
「リョウです。フィリップさん、もう約束してた時間です。」
「えぇ?もうかい?・・・アイタタッ、頭が。」
情けない事だ。
あっちの世界でも僕はこんなにだらしなくなかったぞ。身体はだらしなかったがな。
「外でみんなを待たせてます。先に集合場所に戻ってますよ?」
「・・・分かった。すぐ行くから・・・ふぁ〜あ。」
でけぇ欠伸しやがって。
二度寝しやがったら、違約金もらってやる。
待つこと十数分。フィリップさんが現れた。
ホントにすぐ来たな。
まぁ髪も髭もボサボサだし、着物もどきもヨレヨレだ。
なんとも頼りない姿だが、これでも本職の冒険者だ。しっかり教わるところは教わっておこう。
ただ、女性陣からの信頼度がダダ下がりしている事は肝に銘じてほしい。
「いやぁ、すまない。待たせたね?ははは・・・。」
待ったといえば待ったな。本来なら1時間前には出発している訳だし。
「いえ、気にしないでください。改めて紹介しますね。僕のパーティーメンバーのセリスと、従魔のイム、ルシル、ピノです。」
「セリスです。フィリップさん、これから暫くよろしくお願いしますね。」
「ああ、よろしく。綺麗な女性だねぇ、リョウ君が羨ましいよ。」
そうやろ?あげないからな。
そしてモン娘達にはノーお世辞だ。
まぁ分かっていたけどね。みんなモン娘形態だし、フィリップさんには魔物にしか見えんのだろう。
「さて、そうだね・・・。まず何をしようか?」
・・・僕に聞くのか。
フィリップさんが考えてくれるんじゃないのね。
「僕としては、まず野営の体験ですね。日付を跨いで街の外に居た事は無いので。後は、ダンジョンへ行ってみたいです。」
「ダンジョン?う〜ん、それはなんと言うか・・・。」
「勿論、無茶な事はしません。フィリップさんが、まだ僕達には時期尚早だって判断するなら行きません。でも少しでも体験出来るなら、体験しておきたいです。」
「・・・そうかい?う〜ん。今日は野営の用意はしていないから、野営は明日以降にしようか。じゃあ今日は、みんなの腕前を見せてもらおう。僕は何もしないから、リョウ君達だけでいつものようにやってみせてくれるかい?」
ほぉ。いいだろう。
私の実力、存分に見るがいい!!
◆◆◆
「・・・えーっと。リョウ君は戦わないのかい?」
「何言ってんすかフィリップさん!ほらっ、こうやって!後方から戦場をコントロールしてるんです!!」
「・・・戦わない僕より後ろで剣を構えているだけに見えるけど。」
見たまんまの感想言うのやめろや!!
これは!フィリップさんにも想像だにしない高度な頭脳戦が繰り広げられているんだよ!
これだからおっさんは困る。もっとさぁ、僕みたいな教養高ぶる漢の戦い方を学んで欲しいよ。
いつも通りに森までやって来た。
見ての通り、僕は後方からの戦略的な観戦だ。
セリスとモン娘達の戦いを、熱い眼差しで見守っている。
その中で1人、調理器具で戦うルシルさんですが、問題なく戦えている様子だ。
数日前には頑丈だとかなんとか言ってたが、まぁ銅の剣を叩き折る奴からすれば調理器具など頑丈な訳は無い。それでもルシルは持ち前の器用さ?で、調理器具を壊す事無く魔物達をぶっ殺している。
ルシルの並外れたステータスと、調理器具を壊さないように戦う力加減が丁度いいようで、さっき魔物をぶっ飛ばした時なんて、
「そう・・・そうだったのでございますね!ご主人様!!これは私が皆と同じように戦えるようになる武器・・・仲間と一緒にご主人様を御守り出来るようにしてくれる唯一の武器なのでございますね!!あぁ!!なんと聡明・・・なんと偉大なご主人様!!私は!私は一生ついて行きます!!ご主人様ああああああァァァァァァ・・・。」
と、よく事情も知らないフィリップさんもドン引きする大声を出していた。
駄目だぞこいつ。早く何とかしてくれ。誰か。
そうこうしているうちに戦いが終わってしまった。
ふぅ。NKT・・・。
「リョウ君、いくら魔物使いといっても、戦闘に参加しないのは駄目だよ。」
そのフィリップさんの言葉を聞いて、戦闘の終わったルシルが凄い勢いで走って来る。おたまを持って。
「何を仰るのですフィリップ様!ご主人様のお手を煩わせるような事があっては、我ら従魔の名折れでございます!!」
おたまで人を指しながら言うんじゃない。
「う〜ん。確かに僕は魔物使いの戦い方なんて知らないんだけど。もしリョウ君1人で戦わないといけない状況になったらどうするんだい?」
「もしなど有り得ません!!私が!全て!ご主人様に振り掛かる災いを排除してみせます!」
随分デカい事言っているが、ルシルなら出来そうなところが凄いんだよね。
「いざという時には我々従魔が身命を賭してご主人様を御守りします!!そうでございますよね!イム!ピノ!」
「・・・・・・キリッ。」
「え?わたしも?まぁ〜、うん。いざとなったらね。わたしもやるんじゃない?」
凛々しいイムちゃん可愛い。
「まあね〜、どっちにしろリョ〜君が戦っても逆に時間掛かっちゃうってゆーか、大人しくしててくれた方がいいじゃん。おじさんもそれで納得してね。」
それはどういう意味かねピノさん。
まるで僕がお荷物の玉無し野郎だと言われているみたいじゃないか。
「う〜ん。まぁ従魔の君達がそこまで言うんならそれでいいけど・・・。でもリョウ君の実力は見させてもらうよ?僕も把握しておかないと、今後の計画が立てれないからね。」
「・・・そういう事でしたら、致し方ありません。ご主人様、お相手はいつものようにスライムでよろしいでしょうか?」
マジか・・・。またやるのか。あの強敵と。
い、いや!僕にも成長付与が効いている筈だ!
今回は勝てる!いつまでもへなちょこじゃないんだ!僕も強くなっているって事を証明するんや!!
「え?スライム?スライムってあのスライムかい?スライムなんてクラスを授かっていない子供でも勝てるじゃないか。・・・え?ちょっと、何で誰も説明してくれないんだい?・・・ちょっ、おじさんを置いていかないでくれ!お〜い!」
◆◆◆
・・・僕達は来た道を戻り、草原まで戻って来た。
そこで丁度よく見付けた、2匹の緑のスライム。
片方をイムのブーメランで瞬殺してもらい、久しぶりの熱き戦いが始まった・・・
先制攻撃は僕だ。
スライムの動きは遅い。もらった!!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
今度はスライムから攻撃してきた!体全体で飛びかかってくる!
うおおおおっ!間一髪でかわせたぁ!
攻撃の後には隙ができる!くらえっ!!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
今度は僕の攻撃の隙をつかれる。
懐に入られて、腹に体当たりをもらってしまった。
ぐぅっっ!!ま、まだまだ!こんなので諦めてちゃカティに笑われてしまう!
一旦、スライムから間合いを取り、剣を握り直す。
・・・スライムはまだ動く気配がない。だったら、またこっちからいくぜ!
ぬおおオオオーーっ!全力のぉ、突きーーーッッ!!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
あまりの手応えのなさに、足がもつれて転んでしまった。
や、ヤバい!早く立たないと!!
僕が立つよりも先に、背中に激痛が走る。スライムが転んでいる僕に容赦なく攻撃を浴びせているのだ!
僕は地面をゴロゴロと転げ回る事でスライムから逃れた。
立ち上がり、体制を整える事には成功したが、剣を落としたままだ。
なんとしてもあれを拾わないと。気分はスペインのヒョーって鳴く格闘家。
いや、あの人だって素手でも普通に戦えるんだ!僕だって戦える!お久しぶりの登場!通信教育プロレスをみせてやる!!
うおおおおおお!お前のような小さい相手ならトップロープが無くても出来るんだよ!!
くらえっ!フライーーング・ニードロォォォップ!!!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
うおわああああああ!!く、来るなああああああ!!!
逆水平!逆水平!逆水平っ!!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
ミス!
スライムBから ダメージをうばえない!
・・・ふっ。ふふふははは。
やったぜ・・・剣を拾う事が出来た!
これで仕切り直しだ!
不敵に笑ってみせると、スライムも笑い返してきた・・・気がした。顔ないけど。
さあ・・・まだまだこれからだぜ!!
「ご主人様!ファイトでございます!!・・・・・・あぁ。おいたわしや、ご主人様。私にお命じてくだされば、すぐにでもスライムをこの世から消し去ってご覧に入れますのに・・・。」
「ね〜え、ルシル〜、もう飽きたんだけど。もうわたしが終わらせていいでしょ?」
「黙りなさいピノ!ご主人様の戦いの邪魔をしたら、私が許しませんよ!・・・・・・あぁ、ご主人様。後でこのルシルが、全力で癒やして差し上げます。わ、私のお腹を、ご主人様が撫でて・・・えへ、えへへへへへへ・・・。」
「う〜わ、引くわー。」
欲望だだ漏れでも、真面目に応援してくれているのはルシルだけのようで。
そんな暇あるんですかね?僕普通に死にそうですが?別に助けてくれても構わんのよ?
イムは既に此方を見ていない。あの光の無い瞳には一体何か映っているのか?
「・・・・・・。えーっと。僕は一体何を観せられているのかな?」
「残念ながら、あれがリョウさんの実力ですよ、フィリップさん。」
「・・・本気で言っているのかいセリスさん?あれってスライムだよねぇ?もしかしてレア種だったり・・・。」
「いいえ。あのスライムは正真正銘、そこら中にわんさか居る普通のスライムです。」
「ふざけているんじゃ・・・ないよねぇ。まさかこんな子供が存在するとは・・・依頼を安請け合いしたかな・・・。」
パーラさんにも言われた事をフィリップさんにも言われてしまった。まぁ理由は大分違うが。
いやいや、僕がゴミ虫なのはどうでもいいのよ。
そろそろ助け・・・あっ!痛い!!
死ぬっ!死ぬって!!
僕が弱いと分かったスライムが、一気に畳み掛けてくる。
なんて早い攻撃。僕でなきゃ・・・いや、僕じゃなかったらピンチにすらなってない。
ぬおおおああああああ!!助けてー誰かぁーーー!!
僕が心の中で助けを求めた瞬間、視界が変わった。
さっきまで僕を舐めきっていたスライムは目の前から消え、僕はルシルに背中から抱きかかえられていた。
これは・・・ルシルの時属性魔法か?
いや、そんな事はどうでもいい。僕の後頭部が今!幸せな事になっている!!
ルシルの胸に付いた大きなスライムを僕の後頭部が押し潰しておる!!
ぬあああああぁぁぁあああああ!!!今日!私はここをキャンプ地とするぞ!!ルシル!布団敷け!!
・・・・・・まぁ冗談はこれくらいにして。
あの憎っきスライムは・・・?
うん。何か、スライムが居たであろう場所にはブーメランとピンクの羽根が刺さっている。
そこにスライムの痕跡は無い。跡形も無く消し飛んだ?おーぅ、なんてこったい。
「ご主人様!素晴らしい戦いでございました!!ご主人様のプロレスという武術、初めて拝見させて貰いましたが、感銘を受けました!!是非、イムだけでなく、私にもご教授いただきたく存じます!」
バカ言うな。お前はおたまでサンダーソードでも打ってろ。
「やー。リョ〜君が戦ってるの、やっぱマジウケるね〜ww」
マジウケる〜!じゃねーんだよ。生きるか死ぬかだったつーんだよ。
「リョウ・・・・・・たたかうの、危険。・・・・・・イムの側、ずっと居る。」
んアアアアアア!イムちゃアアアアアアん!!
「えーっと・・・お疲れ様リョウ君。話、いいかな?」
「あ、はい。フィリップさん、どうでした?僕の戦いは?」
「ははは・・・。」
は?別に面白い事なんて言ってねーよ。なにわろてんねん!
「まぁ・・・リョウ君の腕前は置いておいて。このパーティーの実力、観させてもらったけど、大した物だね。とても未成年の子が率いているパーティーとは思えないよ。」
置いておかれたよ。
まぁね。フィリップさんの言うとおり、強いよね。僕は特に何もしちゃいないが。
「当然でございます!ご主人様なのですから!!」
「そうだねぇ・・・。セリスさんや従魔達も戦い慣れしているようだし、僕が教える事なんて無いと思うけど・・・。まぁリョウ君の言うように、冒険者として初心者なのは間違い無いからね。受けた依頼は最後までするとしようか。」
ルシルの主人贔屓を華麗にスルーしたフィリップさんが更に言葉を続ける。
「でもこのパーティーだと、パイマーン周辺の森に生息している魔物じゃあ物足りないみたいだね。パイマーンの近くに丁度良いダンジョンもある訳だし、明日からそっちに行ってみるかい?」
なんと・・・。なんかトントン拍子にダンジョンに行ける事になってしまったぞ!
でもパイマーンの周辺にそんな都合の良いダンジョンなんてあるんだな。
・・・・・・ん?もしかしてそれって?
「フィリップさん。そのダンジョンって“悪霊の屋敷”ですか?」
「そうだよ。悪霊の屋敷は探索終了宣言が出ていてね。初心者にはうってつけのダンジョンって訳さ。さて・・・明日から早速向かう為に、今日はもう街に帰って、ダンジョンや野営に必要な道具を買いに行こうか。」
帰りの道中、フィリップさんに悪霊の屋敷の事を聞いた。
1年前。目指していた時期もあったもんだが、なんやかんやあって行けなかった悪霊の屋敷。
それが、よもやこんな形で行く事になろうとは。
悪霊の屋敷の発見から約1年。
アンド・・・金魚のフン先輩達や紫煙の風を始めとする、様々な冒険者が悪霊の屋敷を探索した訳だが・・・悪霊の屋敷はひっじょ〜に小規模なダンジョンだったらしい。
悪霊の屋敷は計4階層のダンジョンだった。
しかも、その第4階はダンジョンコアルームにボスが居るだけの階層。
悪霊の屋敷は、実質3階層の小規模なダンジョンだったでのあった。
ダンジョンコアルームってのは文字通りダンジョンコアがある部屋で、そこがダンジョンの最深部となる。
ダンジョンコアはダンジョンの心臓みたいな物で、それが置いてある台座からコアを取ってしまうと、ダンジョンは数時間後に崩壊してしまうって仕組みのようだ。
まぁ、よくある設定だな。
ダンジョンコアは魔物の魔石と同じような物らしく、魔石と同様に価値がある物だ。
当然、苦労して取る価値がある程の魔力が内包されているので、ダンジョンの攻略の最終目標になるのが普通である。
んで、最深部であるダンジョンコアルームが発見され、ボスも倒されたらしい悪霊の屋敷が、何故まだ存在して、初心者にうってつけのダンジョンになっているのか?
それは、冒険者の先輩方が初心者の為にダンジョンコアを取らずに残している・・・なーんて殊勝な理由ではなく、その4階層のダンジョンコアはダミーだったらしいのだ。
ダミーのダンジョンコアってのは、文字通りの物だ。
ダミーコアを取ったっところでダンジョンは崩壊する事はない。でも内包する魔力は本物と同等くらいあるので価値はある。探索する者にとっては残念賞〜って訳でもない代物だ。
ダミーコアってのはよくある事のようで、オシリ王国の近くにある大規模なダンジョンでは100近いダミーコアが見付かったって話もある程だ。
んで冒険者ギルドは、ダミーコアをあるパーティーが見付けて、暫く探索されてからあっさりと探索終了宣言を出してしまったらしい。
数々のパーティーが挑んでも、本物のダンジョンコアが見付からなかったんだから探索終了宣言を出してしまおうという事だ。
なんといい加減な連中だろう。
もしこの世界にSNSがあったら炎上してそうだが、この世界の人間はダンジョンから魔物が溢れ出さなければ、別にどうでもいいという考えのようだ。
全容の見えないダンジョンが街の側にあって恐ろしくないんかねぇ?
まぁそのお陰で、安全なダンジョンで特訓出来るんだからいいんだけども。




