39話:我々の業界ではご褒美です
「・・・・・・ん〜。ルシル〜。耳掃除して〜。」
「かしこまりました、ご主人様。」
メイド服の肌触りが素晴らしい。それよりもルシルの膝枕が素晴らしい。
そう。私は今、膝枕をしてもらっているのだ。
メイド、膝枕、耳掃除。これぞ王道。なんて素晴らしい。わしゃ幸せじゃよ。
あぁ、素晴らしきかな。モン娘達の居る生活。
こんな3匹といて幸せじゃないわけない。もー死んでもいいわい。
俺達の冒険はここで終わりじゃわい・・・。
「・・・まったく。貴方は前世とちぃ〜っとも変わっていませんわね。」
突然、聞き覚えのある声が。
いつものように何も無い空間から突然現れる。我らが女神、ルナ様である。
「貴方、異世界に転生してまでニートをするつもりですか?」
「どうも、ルナ様。お久しぶりですね。」
「久しぶり?数話前に出たばかりですわ。」
「何ですか数話前って?」
「貴方さっき何て言って話を終わらせたのですか?俺達の冒険はここからだーなんて言っておいて、メイドに膝枕されながらの冒険は終わりじゃわいとは、ふざけているのですか?」
相変わらず訳の分からない事を。
それとね、名誉の為に言っておきますけど、僕はちゃんと会社に勤めていましたよ。ぐーたらだったのは認めますが、決してニートではありません!
「・・・そんな事より貴方ね、好きに生きろとは言いましたが、こんなぐーたらを許した憶えはありませんよ。冒険者を目指しているのでしょう。でしたらたまには身体を鍛えたらどうですか?」
そんな事よりって言いましたよ!社会人として会社に勤めているのとニートとじゃあ全然違うでしょうよ!
「女神様。ご主人様には好きに生きろとしか仰ってない筈でございますよね?ではご主人様を責めるのは間違っているのではないですか?」
「あらぁ〜?魔王軍の大幹部様も丸くなりましたねぇ。ですがこれは、私と主人であるリョウとの問題ですわよ。愛玩犬は知ったような口を利かず、黙っていてくれます?」
「あ、あいが・・・ぐっ、ぐうぅぅ・・・。」
人の耳に棒を突っ込みながらワナワナするんじゃない。危ないだろ。
「別にぐーたらなんてしてないじゃないですかぁ。ルナ様ぁ。」
「・・・あのねぇ。まず膝枕を止めなさいな。貴方の目の前に居るのは誰だと心得ているのです?」
恐れ多くも女神様にあらせられるぞ!ってか。
仕方ないから起きるとするか。ついでに僕の脚を枕代わりにしていたイムも退ける。
「たまには息抜きも必要ですよ、ルナ様。」
「何がたまには息抜きですか。リョウ。貴方、そこの2匹を従魔にしてから1年も経ったのですよ?その間、何回冒険に行きましたか?片手で数える程しか行っていないでしょう?」
・・・・・・そう。あれから1年近く経ったのだった。
社会人になると、時が経つのは早いもので・・・今は子供だけどな。
この1年もの間、従魔達がなんでもやってくれるのをいい事に、自堕落な性格を送ってしまった。冒険の方も、色々な事があって、段々と行かなくなってしまった・・・。
「ルナ様。僕は別にニートなんかしてないですよ。ちゃんと孤児院の仕事もやってますし。」
「やってないでしょう?全部そこのメイドにさせているではないですか。」
・・・まぁそうなんだけど。
だってだって、ルシルが全部してくれるって言うんだもん。魔法を使えばすぐだって言うんだもん。
「何を言っておられるのです女神様!私はご主人様のメイドにして従魔でございますよ!従魔が主の道具になって何が悪いのでございますか!?」
「・・・・・・まぁ貴女がそれでいいのなら、そうなのでしょう。」
いやいや。僕はルシル達の事を道具なんて思った事は無いぞ。いやホント。なーんか毎回僕の代わりに仕事してもらって悪いなーと思って、僕にしてもらいたい事があったらなんでも言えよー。とか言って労ってるもん。
さっきの膝枕だってそうだぜ。あれはルシルから言い出した事だからな。
そりゃ僕も何のご褒美だって思ったもんね。でもルシルが「では膝枕を!更には耳掃除を!!毎日・・・いえ、二日に一回でもいいのです!!」とか言ってあのルシル式の土下座をするんだよ。
断る理由も無いよね。だから毎日して貰ってるよ。いいだろ?ルシルが喜んでんだから。
一番最初に聞いた時なんかは「なんでも・・・ではお情けを下さい!!」なんて言ってたんだぜ?もうコイツは駄目だと思ったね。
「・・・ですがいいのですか?貴方のご主人様がうちのセリスのようにぶくぶく肥えてしまいますよ?」
「ぶ、ぶくぶく・・・肥える・・・?」
「そうですよ。贅沢を覚えた人間は、魔族と違って簡単に体型が変化しますからね。醜く肥え、脂ぎったハゲになりますよ。愛するご主人様をそのような姿にしていいのですか?」
酷い言われようだ。まさか、僕のあっちの姿を言っているんじゃないだろうな?
それに、うちのセリスなんて言ってるが・・・例に挙げる程太ってるか?
「・・・私はご主人様がどんな姿になろうと・・・いえ、しかしそれではご主人様の為には・・・・・・。ご、ご主人様!少し外に出ませんか!?私がご主人様を全力で御守いたします!!」
「リョ〜君が脂ギッシュの変態おやぢに・・・・・・。うわぁ、リョ〜君キモ。たまには外出なよ。」
ルシルとピノがルナ様に誑かされ、僕を外に連れ出そうとしてくる。
全く・・・お前らチョロ過ぎるぞ。イムを見てみろ。堂々としてんだろ?・・・こっちをじっと見て、何考えてるか分かんねぇけどな。
それにしても・・・何かルナ様らしく無いなぁと思う。僕を冒険に出させようなんて・・・。
「ルナ様。珍しいですね。何かあったんですか?」
「は?貴方が余りにも情けない生活をしているから出て来てあげたのでしょう?咽び泣く程感謝して、私に永遠の忠誠を誓ってもいいくらいですわ。」
「そうっすか。何かあるんだと思ったんですけどねぇ。例えば・・・ルナホのつよさに名前があった事とか・・・。」
「どっ、どどどどどどうしてそんな事が関係あるんですか!!?全く!これっぽっちも!関係ありませんわ!!」
・・・すっげー適当に言ったのに。まさか当たっていたとは。
でも、どう関係あるのかは分かんねぇな。深く考えんとこうか。
「そ、そんな些細な事はどうでもいいのですわ。それよりもっと大きな事がこの1年で起こっているのですよ。」
些細って・・・まぁどうでもいいが。
「で?何ですかルナ様?大きな事って?」
「オシリ王国の王が側室を迎えましたよ。」
「えっ!?・・・・・・え?」
んん?・・・僕の聞き間違いじゃないよな?オシリ王国の王が側室を迎えたって言ったよな?
それってそんなに大きな事なのか?まぁ僕もオシリ王国の住人だし、祝った方がいいのか?
いやでも側室って妾の事だろ?愛人だろ?正妻じゃないんだろ?なんで王様が愛人拵えたからって・・・。
この国では大きな事なんだろうか?回りのモン娘達を見てみよう。・・・・・・ほら。みんなキョトンとしてるか、こっち見てねぇか、ルナ様を何言ってんだっていう目で見てるだろ?僕は正しかったんや!・・・いや、モン娘達は国民じゃなかったな・・・。
「えーっと、ルナ様。それって大事な事なんですか?」
恥を忍んでルナ様に聞いてみる。
ルナ様は一瞬、考えるような仕草をして言った。
「・・・・・・そういえば、これの何が大きな事なのでしょうね?あらやだ。私ったら変な事を言ってしまいましたわ。今の貴方には関係の無い事でしたね。」
・・・何か気になる言い方だが。まぁどうせ問いただしても無駄だろう。きっと、謎を含んで言っておいた方が神様っぽいでしょう?とか言って煙に巻くんだ。
「・・・聴こえていますわよ。貴方わざとやっているのですか?」
「いやだなぁ、マジ尊敬してますって。アンケートで尊敬する人の欄があったら、ルパ○三世の次にルナ様を書きますよ。」
「アニメキャラより下なのですか私は。」
同じような存在のクセに。
「んふっ。それとまだありますわよ。私の国の法王の娘がめでたく10歳になったのよ。それと王都の魔導具技師がね、魔導カメラを改良した、魔導ビデオって魔導具を・・・。」
素晴らしきムダ知識ばっかりやなぁ・・・。
全部聞かなきゃ駄目なんかな。ルナ様ってゴシップ好きなんだろうか?
「・・・まぁそんな冗談はこれくらいにしてですね。貴方がダメ人間をしている間、本当に色々あったのですわよ。例えば、青竜教という宗教が有名になっている事を知っていますか?」
「あ、すいません。僕、宗教とか間に合ってますんで・・・。」
「私が広めているのではありませんわ!全く!逆にこの教祖には迷惑しているというのに!!」
冗談だっつーの。ムキになんなよなー。まぁ自分に被害があったってんなら無理もないが。
宗教ねぇ・・・青竜教と来たか。青龍ってあれだろ?ファンタジーなんかでよく聞くやつだ。確か、中国の伝説上の神獣で、4匹いるやつだったと思うけど、これ以上は語れる程は詳しくない。
まぁどうせここは別世界だ。あっちの世界の知識なんかアテにならんだろう。
「宗教なんて女神教しか聞いた事ないですけど・・・青竜教なんてあるんですか?」
「ご主人様。巷では最近噂になっておりますよ。パイマーンの街中でも青竜教の勧誘が、ちらほらと見られるようになりました。」
ルシルは僕の代わりに街中にも出ているので、青竜教なる宗教を知っているようだ。
オシリ王国の端っこのパイマーンにも知れ渡ってるなんて、結構有名な宗教なんだな。
「ほー。で、その宗教が何でルナ様に被害を?」
「それがですねご主人様。どうも、青竜教の教祖・・・“青竜の巫女”というらしいのですが。その青竜の巫女が、女神様と同じ力を使うらしいのでございます。」
「ルナ様と・・・同じ力?何だよそれは?」
「すみません、そこまでは・・・。」
僕とルシル、二人でルナ様を見るが、ルナ様は黙ったままだった。
どうやら教える気は無いようだ。はいはい、分かったよ。自分で調べろって言うんだろ?
「・・・兎に角!リョウ、貴方は1日でも早く冒険に行きなさい!貴方に便乗して奉仕活動ばかりしてるダメ天使もちゃんと連れて行くのですよ!」
そう言ってルナ様は、いつものように何も無いに空間に消えていった。
相変わらずな人だ。はっきりした事なんか何も言ってねぇし。
「リョウさん!女神様が来ましたか!?」
大慌てでセリスがモン娘達の部屋に入って来た。
こっちも相変わらずのシスター服姿だ。随分前からこの姿しか見ていない。戦乙女の格好が恋しいくらいだ。
「来てたよ。もう帰ったけどな。」
「あぁ・・・。私、最近全然お会いしていないのです。何故、リョウさんには会いに来て、私には会ってくださらないのですか?私は見放されてしまったのでしょうか・・・。」
さっきルナ様が言ったように、セリスは奉仕活動ばっかりしている。
まぁ僕が何もしていないせいで、セリスも好きな事をしているって訳だ。
暇だからボランティアをするっていうのが天使様らしいといえばらしいが。
街中でも有名なそうだぞ。最近神殿にどちゃシコ美人のシスターが居るって。実は本物の天使様だとは誰も思わないだろう。
「それよりさ、セリス。ちょっと冒険に出ようかと思うんだ。さっき、だらけ過ぎだとルナ様に叱られてね。」
「!!? そんな事をルナ様が!?分かりました、行きましょう!すぐに用意して来ます!」
何かやる気満々になったセリスが、急いで部屋を出て行った。
そんなに行きたかったのかな?まぁ本当に久しぶりだしなぁ。
「イム、ルシル、ピノ。早速準備してくれ。僕は先に庭に出ているから。」
「かしこまりました、ご主人様!」
「ほらっ、イム。起きなよ。おいてっちゃうよ。」
「・・・・・・ダルい。」
◆◆◆
準備をルシルに任せて、僕はひと足早く孤児院の庭に出た。
どうせ僕の荷物なんて銅の剣くらいだしな。女の子達の準備に比べたら僕の準備なんてそんなもんだ。
いい加減、防具くらい買わねえとなぁ・・・って、いつから言ってんだよコレ。
なんかなぁ、金属の防具でガチガチにかためるってのも違う気がするんだよなぁ。疲れそうだし、重そうだ。
強い魔物の革か何かで出来たジャケットとか、ローブとか・・・そんなのが着たいよなぁ。
ローブとかめっちゃいいじゃん。中2心擽るよね。
安物のローブでも買うかなぁ。どうせ僕なんて殆ど戦わねぇし。
・・・・・・ハァ。
そうなんだよな。戦わねぇんだ。
ルシルとピノが来てから更にな。
・・・・・・ハァ。
・・・・・・ドドドドドドドドドッ。
「どおりゃああああああぁぁぁっっ!!!!」
「ぐほァッッ!!!!?」
憂鬱にしていた僕の背中に、突然の衝撃。
吹っ飛ばされた僕は、派手に地面を滑ってしまう。
こ、この背中にドロップキック・・・な、懐かしいな・・・。
そうか、もうそんな季節か。だったらこの娘が帰って来ていてもおかしくはない。
僕が元いた場所には、仁王立ちをしたちんまい女の子が居た。
まるで汚物を見るような目で此方を見下ろしている。
あぁ・・・イイッ!その目が!その顔が!僕の下半身を熱くさせるっ!!
「や、やぁ・・・。リュドミラちゃん・・・。おひさ。」
「な〜にがおひさ!ですの!?リュドミラは・・・リュドミラは怒っているんですもの!!」
そう。このダークブロンドの髪のちんまい女の子は、このパイマーンの街の領主、コッラディーノ=アルベルティーニのご息女、リュドミラ=アルベルティーニだ。
何故、領主の娘であるリュドミラちゃんと僕がこんなにラブラブな関係なのか・・・まぁ、ディーノ氏のご子息、ジュスタンと同じ理由だ。
よくディーノ氏にくっついて、孤児院に来ることがあったのだ。そこでリュドミラちゃん姉弟は、自分の父の盟友であるゲバルド氏の娘、つまりはカティと遊ぶ事になる。カティと遊ぶとなると、セットでついてくるのが僕やエリオ達なのだ。
てなわけで、全然知らない仲ではない。数年ぶりの再会で背中にドロップキックをかます程、仲が良いって訳だ。
そして、リュドミラちゃんは今年で10歳になる。
クラスを授かる為、去年のカティのように王都から帰って来たのだろう。
「リュドミラちゃん、今年で10歳だっけ?おめでとう。」
「媚びたって何も出ないですもの。リュドミラは怒っていると言ったんですもの。」
何で冒頭からこんな怒ってんのよ。
これはあれだな?難しいお年頃だから、間違った回答は駄目だな。
えっ〜と、何があったっけ?リュドミラちゃんが王都に行ってからの5年間だろ?
・・・・・・・・・。
「・・・あ〜。ごめんよリュドミラちゃん。ジュスタン様をお守り出来なかった事だよね?でも相手は大人だったし、大人数だったんだよ?それに僕も一緒に捕まっちゃってさ・・・。」
「・・・・・・あっ!?それもあったんですもの!テメェーコノヤローですの!!!何、弟を危険にさらしやがってんですの!!!」
アダァッ!!ありがとうございますっ!!
間違ったぁーー!!ちげーのかよ!!
しかも言わなければお咎め無かったやつだぁーー!!
でもリュドミラちゃんからストンピングを貰えるなんてご褒美だぁーー!!パンツも見えるしなぁーー!!
「ふんっ!!あんな愚弟でも、居てもらわないと困るんですの!今は学園で教官方に揉まれているですの。早く立派になってくれないと困るんですもの!」
・・・そうか、ジュスタンも学園に居るんだったな。
いわゆる上級国民の子供が行く場所だと思っていたが、結構キビしい場所なのかねぇ。
「それと、お前もですの!このエロオーク!!いつまでいたいけな美少女のパンツをガン見していやがるのですの!!これ以上はカネを取るですの!!」
アダァーーー!!ありがとうございますっ!!
ま、また背中蹴られた・・・。いたいけな少女は人の背中を蹴ったりなんかしません・・・。
僕HPゼロになってないよね?大丈夫だよね?
因みに、エロオークとは僕の事でございます。
あっちの世界でのエロガッパとかエロ猿に相当するものだと思われる、非常に名誉ある呼び名だ。
興奮しない?しないか。そうか・・・。
「ほんっと、情けないですの。そんなんじゃカティナお姉様を王都のクソ男共にとられるんですもの。」
「んん!!?やっぱりカティを狙ってる奴がいやがるのか!?なあ!リュドミラちゃん!!」
「ギャーーッ!!キメーですの!寄んなですの!!!」
グフッ!!あ、ありが・・・。
す、素晴らしい前蹴り・・・。そう、そうよ。そうやって前蹴りを放つ事で中に入れるのを防ぐのよ。自分の間合いに変態を入れさせないようにするのが大事なのよ・・・。
リュドミラちゃんが落ち着いてから、王都でのカティの話を聞いた。
やはり、かつて6代目の魔王を倒した伝説のレアクラス、“勇者”は、王都・・・いや、世界中に大きな影響を及ぼしていたようだ。
カティが王都に戻ってすぐ、勇者の誕生は王都中に広まった。
約200年ぶりの勇者の出現に喜ぶ者、勇者が現れた事により、魔王の侵略が始まるのではないかと懸念する者。
様々な思考が渦巻く中、僕とリュドミラちゃんが気になったのはやはりコレだ。
カティを抱き込もうとする奴等。
当然といえば当然である。勇者を抱き込めば、どれだけの利益があるだろうか。
その抱き込もうとしている勢力、筆頭はやはり王都中の貴族達だ。
カティはまだ学生の身。授業を除けば、学園の外に出る事はあまり無いのだが、学園の内での接触が凄いらしい。
元々学園内には貴族の子供が多く、そのマセガキ達からの接触をリュドミラちゃんやマルタ、ゲバルド氏の旧友である、カーリンさんが防いでくれているそうだ。
しかも、学園の教師にも貴族は多いらしく、カティに近付こうとする者が後を絶たないみたいだ。このロリコンどもめ!!
・・・そういえばね。ここ最近孤児院に、豪華な馬車が停まってたり、偉そうなおっさんを見るようになったんですよ。
アレはもしかしてカティの影響だったのか。
ヨハンナさんが言ってたんだよ、寄付金が増えたって。金受け取っていいのかよ?もしかして、カティの嫁ぎ先はもう決まってるとか言わないよな?
「・・・そんな訳ですの。だからエロオークも、カティナお姉様に少しでも相応しくなるように、シャキっとするですの。」
「あぁ・・・。なんか意外だね。リュドミラちゃんって、僕とカティの事なんで応援してくれんの?」
「当然ですもの。カティナお姉様が唯一認めている男ですもの。じゃなかったらお前のようなゴブリンのハナクソ以下のクソ男なんて視界にも入れないんですの。」
そのお姉様が認めている男に、ゴブリンのハナクソ以下って言うのはいいのか・・・。
確かに、リュドミラちゃんはカティによく懐いていた。けれど、ここまでカティ信者になっていたとは。
「でも僕だってサボっていた訳じゃないよ。魔物使いとして、従魔を3匹も仲間にしてるんだし・・・。」
「それはもう1年前の話ですもの!お前が1年間殆ど何もしてないのは聞いているんですもの!」
えぇ・・・。何で知ってんのよ。
誰だよ言った奴。
「さっきも言ったんですもの!カティナお姉様が今、どれだけ大変なのか・・・貴族のフニャチン共だけでも大変なのに、お前と弟の件を気にして魔法まで頑張って・・・。お前!カティナお姉様と別れる時に何を言ったか憶えて無いんですの!?カティナお姉様に守られるだけの・・・頼りない男にはならないって言ったんですもの!!」
そ、そんな昔の事・・・。
いや、誰でもない・・・僕が言ったんだ。
昔からの悪いところだ。
一度心に決めた筈なのに、時間が経ったらすぐ面倒臭くなって・・・。
そんなんだから惨めな人生送ってたっていうのに・・・僕は・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「・・・リュドミラちゃん、ありがとう。僕・・・どうかしてたわ。」
「・・・ふんっ!分かればいいんですの。よく憶えておくんですの。カティナお姉様を失望させるような事があったら、このリュドミラが許さないんですもの!その汚ならしい棒がカティナお姉様を毒牙にかける前に去勢して、ウルフの餌にしてやるんですもの!」
・・・最後が余計だよ。
リュドミラちゃんって普通に下品だよなぁ・・・。言ったら蹴られるから言わないけど。あれ?言った方がよくね?
「兎に角、リュドミラが学園に居る限り、カティナお姉様は安全ですもの。エロオークはカティナお姉様のありがたい手紙の返事でも書いて・・・・・・あっ!?そうでしたの!!テメェー!何でカティナお姉様に返事をよこさないんですの!!」
ぐへぇっー!!ありがとうございます!!
ま、まだあったか。
確かに今まではマルタが代表して返事を書いていてくれてたな。マルタがそっちに行っちゃたから、返事が疎かになっていた。
これは認めよう。僕が悪い。
「はぁ。もう情けなさ過ぎて疲れたんですもの。エロオークがカティナお姉様と釣り合うには、エロオークが霊的に生まれ変わるしかないんですもの。」
もう生まれ変わってんだよなぁ。
霊的にはしてないけど。
「まぁ、精々頑張るのですの。こっちは安心していいですの。貴族のフニャチン共なんて目じゃないですもの。カティナお姉様には指一本触れさせないですもの。」
「あぁ。本当にありがとう。・・・カティをよろしくな。」
「ふんっ!誰に言ってるんですの?このリュドミラに任せておくんですもの。エロオークも折角のレアクラスを腐らせるような事、しないようにするんですの。」
そう言って、リュドミラちゃんは去っていった。
あんなにちっこいのに、なんとなく背中が頼もしくみえた。
「ご主人様。」
リュドミラちゃんが行って、入れ替わるようにルシルが現れた。
「あぁ、ルシル。・・・待たせたか?」
「いいえ。・・・随分と無礼な人間でございましたね。」
「いやぁ・・・まぁ、ああいう娘だからね。それに今回は感謝しないとね。リュドミラちゃんのおかげで、目が覚めたよ。」
ルシルはそれを聞いて、目を大きく見開いた。
「なんと・・・背中を蹴るというのはそれ程までに効果があるのでございますか?僭越ながら、私でよろしければ毎日でもご主人様のお背中を蹴って差し上げますが?」
お前に蹴られると背中が吹っ飛ぶだろ。背中が背中でいられなくなっちゃうから。
「ところで、他の娘達は?まだ準備出来ないのか?」
「私は・・・知りません。あの天使の事など。」
んん?また何かケンカしてんのかよ。
いい加減、仲良くして欲しいもんだ。
と言ってたら、後の3人も孤児院から出て来た。
何だよ。準備出来てんじゃん。
イムとピノとセリスも・・・ん?
「・・・・・・あれ?セリス。何か変わったな。」
「そ、そそそんな事ありません!リョウさんの気のせいでは?」
セリスは最近見慣れたシスター服を脱いで、胸当てと兜を着けた、お腹も太ももも丸出しの、いつもの戦乙女スタイルだ。
だが何か違和感がある。なんだろうか。
・・・あぁ、そうか。
あれだ。太ったんだ。
シスター服であんまり身体のラインって見えなかったんだけど、今の格好ならよくわかるわ。
ただ、これを口に出すのは紳士的ではない。気付かないフリをしておこう。
「・・・・・・セリス、ふとった。・・・・・・よろい、きつきつ。」
「どどどどどーして言ってしまうんですかイムさん!!?あ、いえ!リョウさん!私は肥ってなんかいませんよ!そうです!天使は体型が変わらないんです!だから勘違いだと言っているんですが聞いてくれなくて!」
・・・うん。
言ったのは僕じゃない。僕じゃないぞ。
「そんな事言ってもさー、実際パンパンじゃん。わたしとイムが手伝ってようやく着れたんだし。もーさぁ、女神様に新しいヨロイ出して貰いなって。」
「そっ!そんな事頼める訳ないじゃないですかピノさん!?さ、さあ!皆さん!運動・・・い、いえ!冒険!冒険に行きましょう!!」
そう言って、先頭切って走っていくセリス。
心なしか地響きがする・・・いや、流石にそれは言い過ぎか。
もしかしなくてもルナ様の仕業なんだろう。あの神以外に思いつかない。
体型が変わらないからと、買食いばっかりしているセリスに罰を与えたといったところだろうか。
さっきのリュドミラちゃんが僕の事知ってたやつ・・・あれもルナ様の差し金だと思うんだよな。
裏で色々と動くのが好きな神だ。
まぁ僕は今回は感謝してるんだけどね。セリスは自業自得ってことで・・・。




