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4話:魔物の世界




王都に出発するまで後1週間程しかないそうだ。

なんでもっとはよ言わんねん。


お別れ会みたいなのの企画はマルタとリタに丸投げするとして、カティは王都に行く前にどうしても、みんなと行きたい所があるそうだ。


それが、翡翠の湖と呼ばれているこの街の冒険者には有名な場所らしい。

雇われシスターのコニーさんから話を聞いたそうだ。

場所は森をちょっと歩かないと行けないらしいが、まぁカティには暫く会えなくなる。ちょっと位は大丈夫だろう。フラグじゃないぞ!絶対何も起きんなよ!



いつものように軽く装備を整えて、みんなで翡翠の湖に向かう。

今日の護衛はこの冒険の原因の張本人であるコニーさんだ。

司祭様もヨハンナさんも忙しい時は、コニーさんが駆り出される。ちょっと不安だが仕方ない。

尾行もちょっとぎこちないのだろうか、カティにバレそうになる。僕は全然分からんのだが・・・野生動物か?コイツは。



「さぁ、森に入るぞ。ちょっとだけとはいえ、絶対油断するなよ。マルタ、こっちで合ってるな?」

「そうです。そのまま真っ直ぐ5分で着きます。」

「いくわよ!われにつづけー!!」

「おい、特攻隊長馬鹿。お前はリタの後ろだ。リタ頼む。」

「おっけ〜。」


カティも索敵能力は凄いがリタも負けてない。

それに今回は道案内だ。カティには向いてない。

何故ならカティはとんでもない方向音痴だ。コイツ本当に戦い以外ダメダメだな。


前に、ヨハンナさんに街でお使いを頼まれたことがあったらしい。

ヨハンナさんは丁寧に手書きの地図を用意したらしいが、その地図を90度傾けて持ち、明後日の方向に歩いて行ったそうだ。

最終的に屋台の串焼きを買い食いしながら、頼まれた物を買わず帰ってきたらしい。

それ以来コイツが1人でお使いすることはなかった。


なので、翡翠の湖の場所もマルタに調べてもらっている。

カティに任せていたら遭難する。そうなんですよ。




「・・・着きました。魔物も出て来なくてよかったですね。」

「ふっ、あたしのつよさにおそれをなしたのね!」

「違うぜ。俺の美しさに見とれてたんだろ?」

「違うよ〜。ボクの可愛さだよね〜。」

「・・・全部違うよ。」


翡翠の湖着いた。成る程、綺麗な翡翠色だ。元の世界で風景が好きだった僕には嬉しいことだ。来て良かった。スマートフォンがあったら写真でも撮るのに・・・贅沢な悩みだな今となっては。


この湖、なんでこんなに水が澄んでるのかというと、水の精霊が多いんだそうな。

精霊?精霊は・・・あれだよ。超自然的な何かだよ・・・。何処にでも居る的な奴等だ。

んで、何で精霊が多いかというと、大気中の魔力が多いかもって説と、近くにエルフの独立領が在るからって説がある。


エルフはまあファンタジーの定番ですよ。

人間より力は無いが、長寿で魔力が高い、精霊さんと仲良しな森の住人だ。

そして何より重要なのが男女ともに麗しいお姿をしていることだ。

うちの街にもよく来るらしいが、未だにお会いしてない。是非!是非にお近づきになりたいものだ。


大気中の魔力が多いってのはよくあるらしい。そうゆうパワースポット的なのが所々に在るようだ。

そして素晴らしいのが、例外は有るが、魔物は基本的にこの魔力スポットには来ないらしい。これも精霊が関係してるかも?とのことだが、確証は無いんだそうだ。


まぁ、精霊さんについてはまだ分からん事だらけなんですよ。

エルフの中の一部が、精霊の姿が見えたり、精霊の力を借りて戦ったりとかするらしいが、そんなエルフ達でも分からん事が多いって言うんだから、お手上げじゃん?

けどまぁ、魔力スポットっていう便利な場所があるって事だけでいいんじゃないかな。精霊さんと関わり合うなんて事は無いと思うよ・・・多分ね。




女の子達と男の娘はもう素足になって遊んでいる。

・・・浮かれすぎではないだろうか。一応魔力スポットとはいえ、森の中なんですが。

仕方ない。あの中に入るのは実年齢的にどうかと思うし、エリオと見張りでもするか。


「行かないの?リョウ。」

「遊んで来て良いぞ。僕が見張ってるから。」

「あ、そうか・・・じゃあ止めとくよ。」

「良いんだよ。子供が遠慮するな。」

「リョウだって子供だろ・・・。」


別に野郎と居たって面白く無いやい。まだリタの方がましだ。できれば水着美女がいいです。いや水着エルフ美女オナシャス。






結局エリオと二人で見張りする。

水着エルフ美女はまだ現れない。何故だ。

仕方ないから。目の前の幼女のナマ足で我慢しよう。



暫くして、女の子達は満足したようだ。うむ、私も満足だ。


さ〜て帰りましょうかねぇ・・・って時に事件は起きてしまった。


「ん〜?何か来たよ〜?」


リタが急にそんな事を言う。

すると、森の奥からものすごい速さで何かが近づいて来たと思うと、飛び出してくる。


うげっ!!?体長3メートル近くある銀色の狼だ!!なんなんだよいきなり!!!

・・・目が合ったような気がする。

ヤバいと思ったが・・・銀色の狼はそのまま走り去っていった。


「な、何アレ!あんなの勝てる訳ない!」

「落ち着こエリオ〜。もう行ったよ〜。」

「まだくるよ!こんどはうえ!」


カティが指差した空を見ると、魔物らしき物が遠くを飛んでいた。下半身と翼が茶色の羽毛で覆われている、他は女性の身体だ。

あれは・・・ハーピーだろう。

ハーピーが3匹、コイツらは此方は見ないで飛び去っていく。

方向からしてあの銀色の狼を追っているようだ。


「今度はハーピー!まずいよ!ハーピーもフォレストウルフもこの森じゃ一番厄介な奴等だよ!」

「ですから落ち着いて下さい、此方に気付いて無いようでした。」


マルタがエリオを宥めるが、逆にエリオ以外は何でこんなに落ち着いて居られるんだ?僕めっちゃチビりそうなんですが?


「貴方達!早く街まで戻りなさい!」

「げえっ!コニーさん!なんでここに!」

「いいから!早く靴履いて!」


コニーさんも慌てて出て来た。

まぁ、そりゃそうだろう。ハーピーは兎も角、あの翡翠の湖まで入って来た銀色の狼はヤバそうだ。


エリオはああ言っていたが、あれはこの森に生息してるフォレストウルフなんかじゃない。

フォレストウルフは体長でいうとあっちの世界の大型犬くらいだろう。体毛も濃い緑色をしている。

さっきの銀色の狼は全然違う。多分だけど・・・上位種かレア種だろう。




コニーさんに殿をしてもらって、急いで森を駆ける。


「さっきの銀色の狼、魔力溜まりの土地に普通に入って来ました・・・。」

「元々例外もあったんだろ?分からんことは考えん方がいいぞ、マル・・・」

「!!危ないっ!来てるっ!」


いつもの間延びした話し方じゃないリタの声が聞こえたと思ったら、僕の横から銀色の狼が飛び出して来た。


嘘だろ!速過ぎるっぴ!!そして何で僕なんだよ!!

とんでもない速さに対応できる訳もなく・・・3メートルの巨体の体当たりをくらってしまった。


面白い様に吹っ飛ぶ。あれ?凄い世界がゆっくりじゃね?これ死んだんじゃね?

何故か僕の身体は、狙った様に樹の間をすり抜けて飛んでいく。

そこに銀色の狼が追い付いて僕をジャンプキャッチした。

よーし良い子だ。

でも歯が食い込んでめっちゃ痛いです。体当たりより痛いぞ。


そして、なんかオマケも付いて来ていた。


「このー!リョウをはなせー!!」


狼のお尻の部分に辛うじてしがみついてる。・・・カティだ。ホント動物みたいな奴だ。


他のみんなは無事だろうか・・・。


「リョウ!」

「リョウ君、カティナちゃん!」


みんなの声がもう遠い。

狼は凄いスピードで森を駆けて行く。





◆◆◆





僕とカティは、銀色の狼に何処かの洞窟に連れていかれた。

乱暴にペッっと吐き出される。


「アフンッ。」


もう!乱暴なのは嫌われるのよ!

カティも乱暴に振り落とされた。


「ぐえ゛っ。」


女の子でしょ!もっと色気のある声を出しなさい。私みたいに。



ここは何処だろうか?

この銀色の狼、凄いスピードだったとはいえ、そんなに遠く迄は行ってないはずだ。


その銀色の狼だが、めっちゃ此方を見ている。ガン見だ。

何?僕に恋しちゃった?いや〜モテる男は辛いね。


「なによっ!おいしそうだからってたべないでよね!」


こらこら妬くんじゃないよ。

安心しなさい。僕はみんなの恋人だから。



あ・・・駄目だわ・・・めっちゃ部下っぽいフォレストウルフが何匹も影から出て来たわ・・・。

フォレストウルフどもは涎ダラダラだ。目も、餌を目の前にに待てをした犬みたいだ。

銀色の狼は奥に引っ込んで行く。部下に好きにしろと言っているようだ。喋らないけど。


「やろうっての?おとなしくたべられないからね!」


カティは殺る気満々だが、無理だろう。


エリオも言っていたが、フォレストウルフはこの森で一番厄介だ。

単体だとそうでも無いんだろうが、コイツらは群れで狩りをする。

ハーピーとウルフ系の魔物はその連携故に、群れだと討伐のランクが一個上がる。



「リョウはぜったいあたしがまもるんだから!」


無理だって。

でもこのまま殺られる訳にもいかない。

何か手はないか。

犬の弱点ってなんだ?玉葱とチョコレート?どっちもねえよ!つーか狼だ!お腹を擦ってやればいいんだ。その前に噛まれそうだ。犬なんか飼ったこと無いから分からんぞ。狼だっつってんの!


・・・そうだ時間稼ぎだ!

エリオ達が絶対に助けを呼んでくる筈だ。

それまで稼げるだけ稼ぐぞ。

何をすればいい?犬だって生き物だ。突拍子も無いことをすれば驚く筈だ。

言葉は通じ無いから、動きだな!くっそ〜私はここまでしゃべり一本でやって来たが今回はそれでは駄目だ。

見ろや!フォレストウルフ共!私の一世一代の華麗なステップをっ!!


「ポォーーーーーーーーーゥ!!!」


叫びながら立ち上がる。貴様らには分かるまい!世界最高のエンターテイナーを!キング・オブ・ポップを魅せてやる!

帽子が無いのが悔やまれるぜ!


僕が爪先立ちをしたところで、フォレストウルフに足を噛みつかれた。


ふっ・・・そうか、君たちには分からないか。仕方ないね。




「・・・あっ!この!リョウからはなれろ!」


僕の噛まれながらも華麗な爪先立ちポーズに虜になっていた仔猫ちゃんも、我に帰ったようだ。


カティが足に噛みついたフォレストウルフを剥がしてくれたその時。また事件が起きた。


「キシャアアアアアアアアアアッ!!」


何と、洞窟にハーピーが集団で入って来のである。

ハーピーはそのまま一番近い所に居たフォレストウルフを、鋭い足で掴み此方のフォレストウルフの集団に投げてくる。

投げられたフォレストウルフはもうズタズタだ。死んでいるだろう。


フォレストウルフ達は一斉にハーピー達に襲いかかる。

奥からあの銀色の狼も出て来た。ハーピー達を洞窟の入り口に押し返して行く。


フォレストウルフ達はもう僕達に構ってる暇は無い様だ。ポツーンと取り残された。


「チャンスよ!リョウ、こっそりにげましょ!」

「アゥッッ!」


ムーンウォークで急いで脱出だ!

帰る迄がエンターテイメントですよ!カティさん!


「もうっ!かっこいいけど、まじめにあるいてっ!!」


あっはい。

一応誉めてくれる優しみ。






辺りは地獄絵図だ。

所々にフォレストウルフとハーピーの血塗れの死体が転がっている。

洞窟を抜ける間も、何匹ものフォレストウルフ達が僕達を追い抜いて行ったが、本当に眼中に無い様だ。

まぁ、それはそうだろう。

何時でも殺せるガキんチョより、目の前の脅威だ。


「はやく!リョウ!おそいよ!」

「いやお前が速いんだって!」


体力バカと一緒に扱って貰っては困る。


「いつもはもっとはやいじゃん!なんでそんなおそいの!?」

「いや、爪先立ちだと、どうしてもな・・・。」

「まだやってたのっ!!?」






洞窟の外は凄い激戦だ。

1匹のハーピーに複数のフォレストウルフが群がり、肉を噛み千切っていく。

ハーピーが空から鋭い爪を振り落ろし、フォレストウルフを切り裂いていく。

やはり、空から攻撃できるハーピーのほうが有利だろうか。


向こうで銀色の狼が、一際派手なハーピーと闘っている。

あれがハーピーのリーダーだろうか。


・・・むぅ。あのハーピーのリーダー・・・なかなか良いぞ・・・。

普通のハーピー達は、腕以外の上半身は女の身体をしているものの、顔は凄い凶悪な顔をしていて、可愛いくない。てゆうか普通に怖い。

しかしあのハーピーのリーダーはどうだ。毛ヅヤのいい羽毛に、ちょっと派手だが装飾品を付けている。何よりも、顔は美人だ。凶悪に歪められてはいるが。


「ちょっと!なにしてるの!いまのうちににげましょ!」


おっ!あの子もなかなかもっこりハーピーだぞ!

なんだ、ハーピーって所詮魔物で分かり合えないとか思ってたけど、こんな粒が揃ってるなら良い魔物じゃないか。


「カティ、私はハーピーに加勢するぞ!」

「もうっ!いいかげんにして!」


馬鹿力で引っ張られた。

ああ、さらばハーピー達よ。

可愛い子は頑張って生き残ってくれ。



ハーピーの上位種?と銀色の狼が闘ってる所とは逆の方に逃げて行こうしたが、空から1匹のハーピーが強襲して来た。


「ピャアアアアアアアアッッ!!」


うっそーん!今まで目もくれなかったじゃん!

このハーピー、色が違うぞ!レア種か!?

レア種って貴重なんだって!そんなに出てくるなよ!!


「させないっ!」


当然のように僕に向かって来たハーピーを、カティが横から銅の剣で斬りかかる。

たが、ハーピーの足に止められてしまう。


駄目だ。もし本当にハーピーのレア種なら、カティだって荷が重過ぎる。

ならば!僕が注意を引き付けるだけでもやらないと!


僕は銅の剣を抜く・・・抜く・・・ぬ?

僕の銅の剣が無いの!!!なんでっっ!!!

あれだ!銀色の狼の体当たりの時だ!あれで落としたんじゃないか!?

いやーあれはよく生きてたね。僕じゃなきゃ死んでたよ。銅の剣が無ければ即死だった。

そんな場合じゃねーって!

こうなったら元の世界の通信教育で習ったプロレスを魅せてやる!


「んおおおおおっ!ナックルパァァァトッッ!!」


記念すべき通信プロレスの最初の技が反則技だ。

だが5カウントまでならよかろうなのだー!

審判だって見てねえぞ!



ペシッ!


軽く翼で叩き落とされる。

こっちを見てもなかった。


「んぎゃっ!」


カティがまた剣を止められて、風に吹き飛ばされる。

なんだ?魔法か?


「くそっ!よくもカティをっ!!」


僕はカティが落とした銅の剣を拾い上げ、ハーピーに向かって振り下ろす。

足に当たったが全くダメージが無さそうだ。

避けるか防御かしろよ!くそっ!


突きなら刺さる筈だ。剣を真っ直ぐ引いて、突き出す。



ペシッ!


軽く翼で叩き落とされる。

なんだよ!さっきから軽く軽くって!傷つくだろ(泣)



ハーピーが大きく羽ばたいた。

凄い風だ!吹っ飛ばされる!

戦線に復帰しようと、走って来ていたカティ共々吹っ飛ばされる。


「うおっ!!」

「んぎゅっ!」


カティにぶつかってしまった。


「ああくそ!カティ大丈夫か!?」

「・・・・・・。」


え?嘘だろ?死んでないよな?

いや、息はしてる。鼻詰まってるけど。

良かったぁ。ハーピーの攻撃じゃなくって、僕の尻の圧力で死んだとあっちゃあ司祭様に何て言えばいいんだよ!



「ピャアアアアアアアアッッ!!」


やばっ!ハーピーが追い討ちをかけるかの様に迫ってくる。


しかし、それは僕達の後ろから飛んで来たナイフによって阻まれる。


リタの投げナイフだ!だが、ハーピーはしっかり翼で弾く。

もう一本投げられたが、今度は避けられてしまった。



だが、リタの投げナイフは本命では無かったようだ。

少しだけ足止めできれば良かったようだ。

僕達のすぐ横を凄い速さで駆け抜けた人影は、ハーピーに突撃していく。


「ふんっ!!」


司祭様だ。

司祭様は手に装備した籠手でハーピーの翼攻撃を防ぎ、頬の辺りを殴る。

そして、よろめいたハーピーの横腹をおもいっきりぶん殴った。


凄い嫌な音と共にハーピーはぶっ飛んで行く。


「む。仕留め損ねたか。流石はレア種か。今のうちだ。とんずらするぞ。」



か、かっこいいぞ!このおやぢ!

掘れてまうやろ!あっ違う、惚れてまうやろ!


俺達二人をヒョイっと抱えて、凄いスピードで離脱して行く。

前をリタとコニーさんが走っていたが、すぐに追い付く。


「良かった〜。心配したんだよ〜。」

「ああ、すまない。助かったよリタ。司祭様も。」

「む。無事で何よりだ。詳細は後でたっぷり聞くぞ。」


うわぁ・・・帰りたくねー。

フォレストウルフに食べられるよりはいいか・・・。

リタもガックリしていた。




森の外まで逃げてきた。どうやら逃げ切れたみたいだ。何も追っ掛けて来てはいない。


森の外ではエリオとマルタ、ヨハンナさんが待ってくれていた。


「リョウ!カティナ!良かった無事で。」

「あぁ・・・二人に何かあったらどうしようかと・・・。? カティナちゃんはどうしたんですか?」

「大丈夫だ。気絶してるだけだよ。心配かけたな二人とも。」

「そうですか・・・無事よかったです。リタちゃんもお疲れ様です。」

「お疲れ〜マルタ~。司祭様が居たからね〜。道案内だけで良かったよ〜。」


何でリタが来てたのかって思ってたが、道案内だったようだ。


「リタ、ありかとうな。」

「んふふ〜。どういたしまして〜。お礼は今日の晩御飯のメインでいいよ〜。」


まさに外道。


「それかボクの初めてでも・・・。」

「晩御飯でお願いします。」

「む。お前達。遊ぶのは帰ってからにしろ。街に帰るぞ。」


ほらー怒られるじゃん。大体何だよ初めてって。コイツって僕よりヤバいんじゃないか?いや、僕は紳士だしなぁ。コイツのがヤバいわ。そうに違いない。




街の門から帰る。門番は司祭様が話をつけてくれたようだ。

司祭様は領主様に魔物のことを話に行くようだ。途中で別れた。

コニーさんも冒険者ギルドに報告に行くように司祭様に言われ、途中で別れた。


カティはまだ目を覚まさない。ヨハンナさんに背負われてる。

まさかあのカティがここまでやられるなんてな。

まぁ、そりゃ当然か。

いくら天才的な才能を持っているとしても、まだまだ子供だ。

戦闘経験だって、僕達と模擬戦するか、街の回りの雑魚しか倒してない。

確かに今までは順調だった。だがカティも歴戦の勇者って訳じゃない。

今はまだひよっこ。成長しているところなのだ。

才能も充分にある。血統だっていい。エリートの通う学校にだって行くのだ。

まだまだこれから強くなるのだカティは。

僕も少しは追い付ければいいんだけどなぁ・・・。



しかし、あの銀色の狼の群れとハーピーの軍団はなんだってんだよ・・・。

序盤に出る敵じゃなくない?

終盤に出てくる敵で、遭遇したら祈りながら逃げる押すレベルの奴だろ。

今はまだ僕達って、RPGでいえば最初の城の周りでレベル上げして、その街で買える最強装備揃えてるとこじゃん?

いやまあ、RPGの進め方なんて人其々なんだろうけど・・・。


何にしても、死ななくてよかったよ。今回って相当危なかったんじゃないか?

銀色の狼の奇襲の体当たりに、ダイビングキャッチ。狼共の巣穴で囲まれた時。狼の群れとハーピーの軍団の戦闘に、色違いハーピーの襲撃。

これ等全部死んでもおかしくない状況だった。

・・・良く生きてたわ僕。カティにも随分助けられた。

この一年位で一番山場だったな。

ルナ様の言っていた、先輩方が一年程で死んでいったって言ってたのは、無事クリアしたんではないだろうか。


これはルナ様。僕にチートをくれるんじゃないですかね?

さぁ!ルナ様!!カモンッ!!

私にチートを!ラスボスも指先一つでダウンするチートを!!それか、女の子選り取り見取りモテモテチートを!!!透明人間とかでもいいです!時間停止とか!くっころ女騎士ください!捕らわれのお姫様でも!可愛い獣人の奴隷とかさ!悪漢に襲われるエルフもイイ!昼下がりの団地妻!イケない家庭教師!万引き女子高生!お受験ママ!マジックミラー号!



・・・・・・来ませんね。はい、分かりました。




帰ったら僕は泥のように眠った。

もうええわ。泥だ私は。泥。泥になりたい。


怪我はまぁ大したことなかった。

銀色の狼にキャッチされた時のは何もなってなかったが、フォレストウルフに噛まれた足は痛々しかった。

カティの方が怪我は重いだろう。だが、どちらも司祭様に回復魔法をかけて貰っているので、傷は癒えている。

それでも、回復魔法では精神的なものは癒やせないらしい。

ルナ様の使ってくれた回復魔法は精神面も癒してくれたような気がするが、あれは神様だったからなんだろうな。

やっぱあの筋肉って神様だったんだな。さすめが。


取り敢えず今日は疲れた。休もう。

司祭様も説明は待ってくれるだろう。

うわー説明メンドクセ。司祭様、説教長いもん。

もう起きたくない。

3日位寝てやろう・・・・・・。





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