31話:十進法を採用しただけなので恥ずかしくなんかありません
「・・・さて、リョウ。行方不明の3人を見付けた訳だが、もう3人居るのだろう?どうする?」
「ええ!帰りましょう!」
当然ですよパーラさん。
何でアンドニ達を探すのに僕が危ない目に遭わなければならないんですか?
ゲバルド氏も探してるんですよ。きっと見付けてくれますよ。うん。良い先輩方でした。化けて出てくるなよ。
「ちょっとリョウ!アンドニさん達を放っておくの!?」
「少年、気持ちは分かるが、私もリョウの意見に賛成だ。弱ったお前達を連れての捜索は危険過ぎる。」
案の定エリオが食ってかかってきたが、パーラさんが援護してくれる。
そうだよ、何言ってんだよ。これは決してパーラさんを買収していたとかそんなんじゃないからな。いやマジで。
「それになぁ、アンドニ達もエリオ達も誰にも言わないでこんな危険なところに狩りに来たろ?僕達が見付けれたのは本当に運が良かったんだ。街には情報はほとんど無かった。それを持って帰ってさ、アンドニ達は司祭様や高ランクの冒険者に任せた方がいい。」
「そ、そうだ。ビックリさせようって誰にも行き先を言わなかったんだ・・・。ごめん・・・リョウ。・・・分かったよ。」
「リョウ君・・・ごめんなさい・・・。」
そうそう。僕は別にアンドニ達が手遅れになってもいいなんて思ってないんだよ。
僕達が探すより、絶対そっちの方が効率いいはずなんだ。
もう手遅れだよとか、むしろ死んでて欲しいとか、メンドクセとか思って言った訳じゃないし。
だからエリオもマルタも顔を上げなよ。僕が騙してるみたいじゃん。
「むふふ~♡大丈夫だよ~!どんな敵が出てもボクがやっつけるからさ~☆」
なんやこいつはさっきから。
お前も一緒に遭難してたんだろーが。
ありがとうぐらい言えよな。金貨1枚もする薬飲んでてさ。
「・・・それにレア種のミノタウロスがいつ帰って来るかも分からん。早急にここから・・・。」
「え~?ねぇ~パーラ姐~♡ミノタウロスなら~もう外に居るよ~☆」
「・・・何?」
リタのやつ、何言ってんだ?
だいたいパーラさんの方が盗賊としての格が高いはずだ。パーラさんが分からないのに、リタが分かるわけ・・・。
「・・・・・・。確かに・・・居るみたいだな・・・。」
マジかよ!ホントに居やがるのか!?
パーラさんが歯噛みして鍾乳洞の出口を睨み付ける。
「・・・奴は魔力スポットの外だ。待ち構えているつもりなのか?・・・・・・。くっ・・・どうすればいい・・・。リョウ、何か知恵を出せ。」
僕かよっ!そんな事言われても・・・。
た、倒すしかないんじゃないか?いつまでも魔力スポットにこもってる訳にもいかないだろ。
さっきも言ったが、エリオ達を見付けれたのは僅かな情報と銀色の狼のお陰だ。
ほぼ偶然に等しい。ゲバルド氏やコニーさん達、ラーク達や依頼を受けてくれている他の冒険者達が来る可能性なんてあるのだろうか?
虱潰しにパイマーン周辺を探して誰かがここにたどり着いたとしても、それは何日後の事だ?
未だに行方も無事も分からないアンドニ達はおろか、僕達だって助からないぞ。
「リョウさん、ここは私が・・・。」
「むふふ~☆おっけ~♡この強くてカワイイ~リタちゃんにまっかせてよ~♪待ってて~☆す~ぐ倒してきてあげるね~!!」
「え?・・・それ僕の剣だよ!ちょ、ちょっとリタ!!?」
セリスが何か提案をしようとしたのだが、さっきから妙なテンションのリタがさっさと鍾乳洞の外に向かって行ってしまう。
しかもエリオの剣をパクって。
「・・・えっと。どうしたんですかリタさんは?」
「呆けている場合ではない!リョウ、あの子1人では死ぬぞ!」
「・・・あっ、はいっ!えーっと、エリオ!ここでマルタと居ろ!イム!行くぞ!!」
「・・・・・・。」
エリオとマルタをその場に残し、1人で遊んでいたイムとセリス、パーラさんを連れて、僕達はリタが向かった魔力スポットの外に行った。
驚きの光景であった。
魔力スポットの外に出た僕達の前に現れたのは、やはりミノタウロスだった。
当然ただのミノタウロスではない。エリオ達からの話の通り、腕が4本と斧が4挺。肌色の体に群青色のタトゥー。
僕は普通のミノタウロスは見た事はない。だが、このミノタウロスは普通じゃない。絶対強いってオーラみたいなものを感じる。
しかしそのミノタウロスを圧倒する者がいた。
リタだ。
僕達はリタを追って、すぐに出てきた筈だ。
だがもうミノタウロスの体には傷がいくつもできていた。
黒いナイフが何本か刺さっており、傷からは血が滴っていた。
「あはは~☆遅い~!遅過ぎだよ~!ほらほら~♪次は足の腱を斬っちゃうよ~☆」
エリオ愛用の剣を持ったリタが、ミノタウロスの踵を斬り付ける。
苦痛の叫びを上げたミノタウロスが片膝をつきながら、リタに向かって斧を振るう。
だがリタはそれを踊るように避けてしまった。
「うぷぷ~☆無様~♪ねぇねぇ~今どんな気持ち~?魔物でも煽られたら悔しいの~?」
苦しくしているミノタウロスを目の前に、妙な踊りをして全力で煽るリタ。
なんて性格の悪い奴なんだ。
「・・・な、何だこれは?」
パーラさんも開いた口が塞がらないようだ。
僕達もそうです。
うん・・・。まぁやっぱ原因はアレだよね?
「・・・セリス。あのルナちゃん印の回復薬・・・何なんだ?」
「・・・えっと。すみません。私もここまで効果があるとは・・・私が知っている物より更に効果が上がっていますね。」
・・・う~ん。効果が上がってるとかそんな問題なのか?
明らかに異常だ。
リタがあんなに強い訳ないぞ。限界以上を超えているよね。
それに何だあの煽りは?
元々性格が歪んでいる子ではあるが、あんな事をする子じゃないと思うが・・・。
「・・・ただ、煽るのに夢中で勝負を決める気もないみたいだ。強くなったとはいえ非力だから決定打もなさそうだし、こっちからも攻撃しよう。」
「はい、私に任せて下さい。リョウさん達は注意を引いておいて下さい。・・・リタさんだけで大丈夫そうですが。」
そう言ってセリスは魔法の準備に入り、集中力を高めた。
「リョウ、セリスなら倒せるんだな?」
「ええ、パーラさん。信じて大丈夫です。」
「分かった。注意を引くだけなら私にも出来る。」
「イムも、いく。」
そう言ってパーラさん、イムも、ミノタウロスに向かって行く。
・・・・・・ぼ、僕はどうしよう。
・・・よ、よし!剣だけ構えて、やってます的な位置に居よう。
戦いは楽なものだった。
チートになったリタの速さが尋常じゃなく、レア種のミノタウロスを圧倒する。
僕やイム、パーラさんは取り囲んでいるだけだ。
ミノタウロスはリタの相手で手一杯で、どんどん体に傷を増やしていく。
時間稼ぎも十分できて、セリスの魔法が発動した。
セリスの突き出した両手から眩い光が発せられ、甲高い音と共に光のビームが発射された。
それがミノタウロスの体に直撃し、腹に大きな風穴を開けた。
セリスの魔法がトドメとなり、絶命したレア種のミノタウロス地面に倒れた。
あれがセリスの切り札であろう、光属性の魔法かな?
この世界の魔法の属性は火、水、風、土。基本的にはこの4属性だ。
大気中に魔力のあるこのマルスルナでは、練習すれば誰でも使えるようになり、日常生活においても大いに役に立つ。
そう、誰でも使えるんすよ。クラス村人だろうが、転生者である僕でもね。
まぁ僕は、自分の手も一緒に燃やしちゃってからは魔法は使ってないけどね。
いいんだよ僕は。MPとか育たないタイプのキャラクターだから。武器を買い与えてもらっても、飛び膝蹴りか正拳突きしかしないタイプのキャラクターだから。
・・・話を戻そう。
この基本の4属性の他にもまだ属性はある。
まずは雷、氷。
前にグラサンノースリーブのおっさんがチラッと言っていた、上位属性の魔法というやつがコレだ。
魔法に長けたクラスでも修得は困難を極めると言われているようで、使える者は少ない。
そしてその更に上がある。
光、闇、時という属性だ。
分類的には上位属性になっているらしいが、雷や氷とは別格の扱いになっている。
使える者は更に少なく、片手で数えられるほどの人数しか居ないと言われている。
あのかつての勇者パーティーのメンバーでも、誰一人として使える人が居なかったそうだ。
非常に。ひっっじょーーに!珍しい魔法でありましてですね。もう使える人は生ける伝説クラスなんじゃないでしょうか。
「はぁ・・・。」
またため息ですかパーラさん。
いけませんね。幸せが逃げますよ。
「うぷぷ~☆弱っちいレア種だね~♪全然物足りないよ~!」
リタはまだあのままなのか。
何時になったら大人しくなるんだ?
もう一生あのままって事は・・・ないはず。
「リョウさん、大丈夫でしたか?」
「あぁ、僕は何とも無いよ。リタが殆どやったからな。・・・それにしてもセリス、光魔法なんて使ってよかったのか?」
「えっと・・・何か不味かったですか?」
いや、別にいいんならいいんだけどさ。
前に滅多な事でもない限り使うなと言われていた大鎌をあっさり使った時は、ルナ様にこっぴどく怒られたと随分へこんでたじゃないか。
ルナホのつよさで見たから使えるのは知っていたが、大鎌と同じような物だと思っていたよ。
「・・・あっ!?パーラさんですか?・・・えーっと、パーラさんあの魔法はですね・・・。」
「知らん。私は見てない。」
まぁパーラさんにバレるのもだけどさ。
そして遂に見てないとか言い出してしまったぞ。
ごめんなさい紫煙の風の皆さん。帰った時には性格が変わってるかもしれません。
「・・・・・・リョウ、死体、とかす?」
「いや、今回は溶かさなくていいぞイム。それよりエリオとマルタを呼んで来てくれ。街に戻ろう。」
「・・・・・・ん。」
面倒くさそうに返事をしたイムが、ズリズリと下半身を引き摺って魔力スポットに戻っていった。
・・・どうやらミノタウロスの肉が食べたかったらしい。
食い意地の張った奴だ。いったい何処からそんな情報を得たのやら。
ミノタウロスは牛の頭を持った魔物。当然その肉は牛肉である。
・・・いやいや、当然とか言っちゃってるけど、当然なわけねーだろ。
クッコロオークの肉も豚肉だと前に言いましたがね、勿論あっちの世界の牛、豚とは違う訳ですよ。
頭だけなんですよ。牛なのは。
体は人間に近いんですよね。それが何で牛肉の味がするんでしょうね?
・・・うむ、考えても仕方ないな。
つーか、僕まだ食べた事無いし。食べてから考えよう。うん。
今日はビフテキだよ!やったねヨハンナママ!
・・・・・・ハッ!?
いかんいかん。何、舌鼓を打とうとしてんだよ!食べちゃ駄目だよ!
僕がイムに溶かすなと言ったのはそんな理由じゃないよ!
「ほ、本当に倒してる!?」
「こんなに早く・・・凄いです。」
エリオとマルタも魔力スポットから出て来た。
自分達が倒せなかった相手があっさり倒されてビックリしている。
まぁね、僕にかかればこんなもんですよ。
「ねぇ~ねぇ~?リョウは何で~☆ミノタウロスの死体をずっと見てるの~?早く焼いて食べよ~♪」
だから食うなっつーの!
もういい加減、大人しくなれよ!何の薬だったんだよいったい!
「リョウ、ドロップアイテムを探しているのか?・・・コレじゃないか?」
・・・あぁ、ありましたねそんな物も。すっかり忘れていました。
パーラさんが指差した方を見ると、瓶が地面に落ちていた。
拾い上げてみる・・・インク瓶みたいだな。
中には群青色の液体が入っている。
これは・・・このミノタウロスの体中にあったタトゥーの墨か?
「何だソレは?コイツの体の模様の物か?」
「あぁ、そうみたいっすねパーラさん。」
もうがっかり過ぎて、随分投げやりに返答してしまった。
運よく短期間で2回もレア種を討伐する機会があったが、どちらもがっかりレアアイテムだったようだ。
いやだってさぁ。タトゥー彫る予定なんか無いぜ?
そりゃ日本と違ってさぁ、世間体とか気にしたりしなくていいだろうけど、興味無い奴からしたらどうでもいいよな。
多分何らかの特殊な効果はあるだろうが・・・思い切って売ってしまってもいいかもしれない。
どうせなら斧の1挺でも残していって欲しいもんだが、斧は4挺とも霧のように消えてしまった。
これは、魔物の扱っている武器は、その魔物が魔法で出した物だって説があるからなんだとさ。
だから術者が死ねば、武器も消えると。
時々、残る事があるが、それは単にドロップアイテムだからなのだとか。
随分、都合のいいようにできている。
そのまま残ってくれりゃあ武器も買わなくていいのにな。
・・・まぁ武器を持った魔物を倒す度に、武器がそのまま残っていたら荷物がえらいことになるな。
それにうちのパーティーであんな巨斧、誰が使うっていうんだよな。
まぁ僕ががっかりしているのはそれだけじゃない。
・・・死んでから暫く待ってはみたが、やっぱり駄目みたいだ。
「リョウさん・・・。どうも当てが外れたようですね。」
「うん、そうだなセリス・・・。まぁまだクラス貰ったばかりなんだ。気長にやるさ。」
「ええ。何処までもお供します。」
・・・・・・まぁ、いいや。
僕とセリスは待っていたのだ。
このレア種のミノタウロスが生き返るんじゃないかって。
色んな人から聞いた。レア種の従魔など見た事が無いと。
そして“魔物使い”と“魔物誑し”の違い。
そっから予想した答えが、レア種を従魔にするクラスだった。
だけど違った。
目の前で死んでいるミノタウロスは起き上がる事は無かった。
セリスが魔法で開けた風穴も塞がる事はない。
そこにあるのはただの魔物の死体。二度と動く事はない死体だ。
これが普通なのだ。
魔法で腹に風穴開けられたら魔物だって人間だって死にますよ。
勿論、刃物で斬られたって死ぬ。イムの場合がおかしいんだ。
一応、ミノタウロスが考えていた事は何となく分かったが、一生懸命戦っていたのと、リタに驚き、恐怖を感じていた事くらいだった。
「では、この死体は仕舞ってしまいますね。」
「・・・ああ。頼むわセリス。」
そう言ってセリスが、ミノタウロスをアイテムボックスに仕舞う。
「アイテムボックス・・・しかも空間型・・・。」
パーラさんが何かブツブツ言っているが、もうどうでもいい。
・・・これで益々分からなくなった。
レア種を従魔にするクラスではないときたか。
今まで僕のクラスに反応した魔物は2匹だ。
イムと銀色の狼。これは間違いない。
・・・そういった意味でいえば、ミノタウロスは僕に反応してない。だって初めましてで倒しちゃった訳だし。
ならこのミノタウロスはレア種であっても、僕の従魔になる予定の魔物じゃなかった?
そりゃレア種だからって次から次へと仲間になってたら収拾がつかない。
いや、レア種なんてそんな出るものじゃ・・・ないはずだが、僕は結構見てるんだよな。
この5年で4匹も見てるんだよ。
ピカ・・・爪ネズミのレア種、イムにハーピー、そしてこのミノタウロス。
ディーノ氏に詳しい数は聞いてないが、殆ど見た事が無いと言っていた。
あの時、同席していたゲバルド氏とギルドマスターの興奮の度合いからして本当なのだろう。
レア種なんて滅多に見えるものじゃない。それが普通の筈だ。
それが僕は4匹も見ている。この冒険も大して出ていない状態でだ。
カティがまだ此方に居た頃は冒険に出ていたが、月に数回、2~3時間程度だ。
カティが学園に通うようになってから10歳までは街の外に出ていないし、最近までは銀色の狼のせいで冒険に出てなかった。
5歳の時が一番まともに冒険していたのもどうかと思う。だがまぁ事実だ。
王国騎士団に居たゲバルド氏とディーノ氏、そしてパイマーンでギルドマスターが出来るほどの冒険者だったハゲ。
この3人に比べたら、僕が冒険に出た総時間など鼻クソほどだろう。
だが僕がレア種に出会った回数は同じ・・・もしくは僕の方が多い可能性まである訳だ。
僕が物語の主人公だから運が良くて当たり前なんじゃ!とメタで恥ずかしい事を言ってしまえばそれまでだが、これは異常なスピードでレア種に遭遇していると言っていいだろう。
レア種を従魔にするクラスという予想はハズレだったみたいだが、レア種に遭遇する確率がアップする・・・いや、レア種を引き寄せてるのか?
もしくは僕の周りでレア種が誕生する確率が高くなってるとか・・・兎に角、魔物誑しはレア種と関係がありそうだ。
最初のころはルナ様と一緒に魔物のメスだーとか子供だーとか言っていたけど、まさかレア種と関係があったとはなぁ。
・・・と言っても確定ではないのだがな。
まぁ確実に言える事は、僕はレア種に多く遭遇する運命にあるようだ。
こう言ってしまえば格好よく聞こえるんだが、実際は大変な事である。
レア種や上位種なんてのはイレギュラーな存在だ。
安全に冒険をする上で致命的な問題になる。
今まではなんとかなったが、これからはどうなるか分からない。
1日の冒険で2匹のレア種に遭遇とか、レア種の群れ何てのも・・・いや、無いなレア種の群れは。
兎に角、一刻も早いパーティーの増強が必要になったな。
レベルを上げるのか・・・それともメンバーの増員か・・・。
「・・・ん~?・・・お~!?キタ~~!!来たよ~~♪♪」
「何?」
突然リタがそう言って、小躍りを始める。
それは警報なのだろうか?小躍りしながらなので、魔物が来たのか、自分の中でなにかがキタのか分からんのだが。
パーラさんがリタに反応して周りを見渡しているが、何も見付からない様子だ。
リタの奴、遂に邪魔になってきたぞ。
もうあいつだけ山に捨てて行こう・・・。
「・・・・・・!!? リョウ!来たぞ!!」
マジだったらしい。パーラさんが大声を上げた。
リタとパーラさんが向いている方に皆が目を向ける。
デカい岩の上に奴が居た。
またしてもアイツだ。
今日何度目の登場だろう、銀色の狼が此方を見下ろしていた。
「な・・・何・・・あれ・・・?」
「リョウ君・・・あ、あの魔物は・・・。」
「くそっ!!なんて日だッ!!?」
4年振りに会った銀色の狼にエリオとマルタが戦慄し、パーラさんはお笑い芸人みたいな事を言っちゃてる。
パーラさんからしたら今日は厄日だろう。
ごめんねパーラさん。僕いつもパーラさんに謝ってんな。
「んふふ~☆ボクにまかせ・・・あ・・・?あれれ・・・?」
確かにチートと化したリタなら、銀色の狼といい勝負するかもしれない。
だが、リタは素早く戦闘態勢をとっていたが、急にへなへなと力なく膝をつくと、そのまま地面に倒れてしまった。
「り、リタちゃん!!どうしたんですか!?」
「か・・・身体中が・・・い、痛い~。な、なんで~?」
マルタが慌ててリタに駆け寄るが、リタは身動きが取れないようだ。
これはあれだろうか?超健全なルナちゃん印の回復薬の効果が切れたのだろうか?
また謀ったようなタイミングで切れたもんだな。
「リタ、あの魔物は大丈夫だ。もう寝てろ。」
「ぬぬぬ~。・・・ぼ、ボクの酒池肉林の夢がぁ~~・・・。」
こいつ、チートを利用して壮大な野望を夢見ていたようだ。
残念だったなリタ君。君の野望は僕が引き継ごう。
「リョウ、あの魔族が大丈夫とはどういう事だ?」
「そのまんまの意味ですよパーラさん。後は僕に任せてください。」
心配するパーラさんにそう言って、僕は一歩前に出た。
銀色の狼からはいつものように敵意は感じない。
だが、戦力の増強をと思ったこのタイミング。そして銀色の狼から感じるこの感情、熱い眼差し。
もう間違いないだろう。
何度も悩まされてきたが、やはりこういう事だったのだ。
僕は銀色の狼に向け、両手を広げた。
「行こう・・・。一緒に!!」
銀色の狼はゆっくりと立ち上がり・・・踵を返し、去って行った。
・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・リョウ、かっこわるい。」
「イムさん、こんな時は私達がフォローしてあげるものですよ。」




