26話:天使
最近おかしい。
いや、おかしな出来事はいっぱいありましたよ?
まず豚トロ好きのグラサンノースリーブは・・・どうでもいいか。
今度マルタに話してやろう。街中探しに行きそうだな。
そういえば最近あまりマルタやエリオと話せてないんだよね。
原因は言わずもがな、アンドニ達である。
先日、僕のリタちゃんのおかげて新しく発見されたダンジョンの場所を知る事ができた。
アンドニ達はリタとエリオ、マルタを加えてそのダンジョンに行っているらしい。
野営の準備までして張り切って冒険に出掛けている。
まぁ、アンドニがどれだけやれるのかは知らんが、そこは初心者冒険者と未成年の集まり。
なかなか苦戦しているらしい。
・・・が、昨日の事だ。
冒険に出て2日ぶりに帰って来たアンドニ達パーティーは、運よく魔剣を見付けて戻って来たのだ。
それはもう昨日は凄かった。自慢自慢の自慢が止まらない、大自慢じゃ。
天狗の鼻が部屋の天井につくんじゃねーかってくらい自慢してたぞ。
僕も社交辞令で誉めちぎっておいた。
凄い気持ちよくなってたと思う。キモかったです(直球)
まぁアンドニは勝手にやってればいいですよ。
問題はリタが何故、僕達とダンジョンに行っているのではなく、アンドニ達と行っているのか。
その原因、実は・・・あの銀色の狼が原因なんですよね。
もうあの銀色の狼に盛大にビビらされてから2週間経ったんだが、その翌日もリタは持ち前の図太さで僕達のパーティーに付いて来てくれたんだよね。
さぁ今日からダンジョン探索ですよと、街を出て森に入ろうかって時にまた現れたのだ。
そう、銀色の狼がだ。
銀色の狼は森から此方を見ていたのだ。それも殺気のオマケ付きで。
それではもう冒険どころではない。
リタはチビるし、セリスは膝から崩れ落ちる。イムは失神し、何故か僕だけ平気という地獄絵図だ。
前の日ほど長くはなく、すぐに逃げていったのが救いではあったのだが。
そしてその次の日だ。
懲りずに冒険に出たのだが、またまた銀色の狼は現れた。
これではみんなの精神をがもちませぬ!
特にリタはズタボロだった。
しかしリタには夢がある。夢を掴む為には冒険から逃げる訳にはいかない。
そこで目にしたのがアンドニ達のパーティー。
だってあいつらは毎日平然と孤児院に帰って来るもんね。
物は試しとアンドニ達のパーティーに戻るとあら不思議!銀色の狼は現れませんでしたとさ。
まぁね。分かってはいましたが、僕のせいだと思うんですよ。銀色の狼が来るのは。
リタは何度か謝ってきましたよ。性格はちょっとアレですが悪い子じゃないんですよ。
僕もリタの夢は知っているし、応援したい。
僕のパーティーを中途半端で抜けてしまったとしても、何も文句は言えんよ。
寧ろ、あんな目に合ってまだ冒険に出れる根性が凄いよ。
僕はそんな根性ないね。あったら前の世界でうだつの上がらない人生送ってないわ。
まぁそれはそれとして銀色の狼は何のつもりなんでしょうね。
リタがアンドニ達と行くようになってからも、僕はセリスとイムと一緒に冒険に出たが、銀色の狼は相変わらず現れます。
ただ遠くから見守るだけなら放っておけばいいのだろうが、殺気を放ってくるのは何なんでしょうか?
僕は何も無いからいいんだけど・・・。セリスとイムに申し訳ないよ。
試しにセリスとイムに街の外に出てもらった事がある。
結果は銀色の狼は出ませんでした。
ついでとばかりに、僕も1人で街を出た。
1人だと街の門からは出してくれなかったので、懐かしの隠し通路から。
結果は出て来た。
銀色の狼が遠くから見守っていたのだ。
チャンスと思って、走って近寄ってみたが逃げられた。
我ながら度胸のある事をしたもんだ。襲われたらどうしてたんだろう。
その後爪ネズミに襲われて死にそうになったけどね。
必死で街の門まで逃げて、脚フェチ門番に助けてもらった。
つーわけで、僕のせいで銀色の狼が出て来るのは確定した訳です。
間違いなく“魔物誑し”が関係している。
かといって僕の従魔なのかというと違うのかなと。
近付いたら逃げたもんな。交渉の余地もないね。
イムのパターンの時とも違うし、おやぢ達から聞いた話とも違う。
・・・う~ん勿体ない。従魔になったら強そうなのにな。
その場合はセリスとイムの精神が毎日すり減る事になるが・・・いやまぁ殺気は仲間になれば抑えてくれるか。
従魔になる見込みは薄い、オチオチ冒険にも出れりゃしない。という訳で、冒険者の務めを果たす事にしました。
冒険者ギルドへの報告である。
だが、僕達の中に冒険者ギルドに加入しているやつは居ない。
前はゲバルド氏が仲介してくれたが、今はカティと一緒に王都に行っている。帰って来るのはもう少し先だ。
てなわけで僕が頼ったのは、前に銀色の狼を見た事もある雇われシスターのコニーさんだ。
また出番があるとは思わなかったよコニーさん。
すっごい長い事居るねコニーさん。まだ居たの?
コニーさんの仲介で冒険者ギルドへの報告を済ませ、念願の報償金を貰った。
セリスとイムは要らないって言うので、僕とコニーさんとリタで3等分。はした金だった。
報告したのはいいが、討伐クエストとかを出すんだろうか。
・・・はたしてあの銀色の狼に勝てる人って、このパイマーンに居るのだろうか?
豚トロ大好きおじさんとかは勝てるかな?
悪いが、トントロさんにはここで退場してもらおう。
君はいいキャラクターだったが、君の元ネタがいけないのだよ。
頑張れ銀色の狼。せめてグラサンだけでも割ってくれ。
とまぁ、近況報告みたいになってしまいましたがね。
違うんだよ。僕が最近おかしいって言ったのはこんな事じゃないんだよ。
最近おかしいのは・・・そう、この人だ。
「リョウさん、ここに居ましたか。さあ!勝負しましょう!!」
皆さんにご紹介しましょう。
我がパーティーのお色気担当のセリスさんです。
そう、最近おかしいのはセリスの事だ。
いやそりゃね、パーティーを組んでからというもの腹ペコキャラだったり、変な帽子かぶったり、ブーメランで子供みたいに遊んでたりね。最初からおかしかったですよこの天使は。
でもそういう事じゃないんだよ今は。
銀色の狼が出て来るから冒険に出れない!ってなってから、ずっと勝負しましょう勝負しましょうって毎日言ってくるんだよ。
まぁ冒険には出れないし、特訓してもらうのもいいかと思って安請け合いしましたよ。
でもそれが間違いでしたよ!あれは特訓じゃねぇよ!かわいがりだろ!!お前あっちの世界でやったら問題だぞ!!
まぁセリスは勝負って言ってるから間違いじゃないね!!ちくしょう!!
「さぁ!行きましょうリョウさん!今日こそ私に勝ってみせてください!!」
いったい何をもって僕がセリスに勝てると思うのか。
勝てる訳ねぇだろ!
ここ2週間ね、毎日やってますよ。嫌でも分かりますよあれだけボコボコにされたら。
ボコボコにされては回復魔法を掛けられ、またボコボコにされては回復魔法を掛けられるの地獄のループよ!
セリスの回復魔法はすっごいんだねぇ。僕は昨日の腹をハルバードで刺された時は、あっ死んだわ。HP3とか確実にもってかれたわ。って思ったけど、生きてたねぇ。生きてるって素晴らしい。
「いや・・・ごめんセリス。今日はちょっと腹の調子が・・・。」
「分かりました、回復魔法を掛けましょう。さあ!早く裏庭に行きますよ!」
くっ・・・回復魔法そんな事もできるのか。
万能過ぎだよ回復魔法。
有無を言わせずセリスに孤児院の裏庭へと連行される。
ほらっ、誰か止めろよ。
おい!孤児院の子供たち!止めなさいよ!
同じ釜の飯を食べるファミリーだろ?孤児院のスーパーアイドル、リョウ君が天使にリンチされそうになってんだぞ。
ヨハンナさんもさ、ニコニコしてないで止めてくれよ。
まったく微笑ましい光景とかじゃないから。可愛いから許すけど。
イムも黙って付いて来るだけだもんな。
なんでだよ。お前が一番助けてくれなきゃダメだろ・・・あっ、そうか。特訓だから手を出すなって言ってあるからか。
もはや特訓ではないんだけどな・・・。でもイムに一緒に戦ってもらう訳にもいかねぇし。
何かないかな?セリスを止める方法は。
イムに屋台で何か買ってきてもらうか?
なんかこう・・・スイーツ的な物でも与えたら大人しくならないかな?
僕はセリスに引き摺られながら、イムに指示を出した。
「おい、イム。このお金を使って、街の屋台でセリスの好きそうな物を買ってきてくれ。」
「・・・・・・?? セリスの、好きそうな物・・・・・・わかった。」
イムは金を受け取って、ひとりで街の方に向かって行った。
イム・・・大丈夫だよな?
魔物がひとりでも売ってくれるよな?
いや、今のイムって人間形態だし・・・大丈夫だろう。
しかし、これでイムがひとりでお使いが出来ちゃうと、カティより賢い事が証明されるな。
いや・・・流石に今のカティならでき・・・出来ねぇか。
そうこうしてる内に裏庭まで着いてしまった。
セリスはもうハルバードを出して素振りしている。
なんでそんなヤる気満々なんだ?
「さぁリョウさん!早く始めましょう!今日こそ本気を出してください!」
いっつも本気なんですけど・・・。
「いや・・・セリス、僕の武器取りに行かないと・・・。」
「持ってきていますよ!」
と言ってセリスは僕の銅の剣をアイテムボックスから取り出した。
くそっ、これもダメか。
だいたい何で本物の武器で勝負すんだよ。練習で使う模擬刀でいいじゃんか。
・・・イムに急いでくれって言うの忘れたな。
アイツ、びっくりするくらいマイペースだからな。
ご主人様のピンチに速やかに現れるとかそんな気持ちは芽生えないのだろうか?
早く帰って来てくれ・・・いや、帰って来てください。
「来ないのですか?では此方から行きますよっ!!」
そう言ったセリスがすかさず距離を詰め、ハルバードを横から薙ぎ払ってくる。
くそっ!何だよこの天使は!!
戦闘民族かっつーの!!
それによ!分かってんだよその大振りの攻撃がオトリなのは!
でもよ・・・それでも僕はそれを・・・避けるだけで・・・・・・ふおっ!避けれ・・・ゴフッッ!!!
何とかハルバードを避けた僕の腹に、セリスの蹴りが入る。
ぱ、パンツ見えた・・・。
だ・・・駄目だ・・・これ内臓とかいっちゃってるでしょ・・・。
絶対3ダメージ以上あ・・・あ?
セリスの回復魔法で暖かい光に包まれる。
腹の痛みが徐々に収まってきた。
この傷の治りが早い回復魔法を、勝負の時にはいつも使ってくれている。
多分、高度な回復魔法なのだろう。
一回使うたびにセリスは疲れたように長いため息をする。
僕の身体を気遣ってくれているのか、くれていないのかよく分からない行動である。
「ふぅ・・・。どうしたのですかリョウさん?あのような攻撃はオトリだと教えていた筈ですが?」
・・・いやね。聞きましたよその話は。
わざと隙をみせて攻撃を誘って、カウンターを決めるんでしょ?
・・・まずね、最初の攻撃を避けるので手一杯で、攻撃を打つ余裕が無いから。
攻撃を誘われてないからね僕は。
そんな戦法の土俵にも立ててないし。
「・・・はぁ。リョウさん。そのような言い訳ばかり言ってないで、もっと本気で来てください。」
本気だっての。
それと、僕は言い訳は言っていないぞ。考えてるだけだ。
勝手に思考を読まないでもらいたい。
「・・・・・・リョウ。かえった。」
おおっ!イムが帰って来た!
意外と早かったですね。
やっぱりイムちゃん、僕の事が心配で心配で急いで帰って来てくれたんだね。
振り返ってイムを見てみると、何時ものやる気のカケラも無い顔で安心した。
背中を丸めて、だらーんと垂らした両手には何も持っていない。
・・・え?あれ?おかしいな。
「・・・イム?何か買って来てくれたんじゃないのか?」
「・・・・・・おいしかった。」
イムはグッと親指を立てた。
・・・・・・・・・。
そうだね。僕はセリスの好きそうな物を買ってきてくれって頼んだんだもんね。
それを何に使うかまでは言ってないもん。
そりゃ食べますよ。だって食いしん坊のイムちゃんだから。
「・・・・・・リョウ、ありがとう。」
「うん・・・。」
お礼が言えるよくできた魔物ですよ。
責められませんよ僕には。
「イムさん・・・。リョウさんに何かお菓子を買って貰ったのですか?そんな・・・。私はまだ買って貰った事が無いのに・・・。」
お菓子なのだろうか?知らんけど。
つーか、セリスは買ってやった事があるじゃないか。
アクセサリーなんて食えないもん買いやがって。
「・・・・・・。リョウさん!休憩は終わりです!!まだまだこれからですよ!!」
えぇ・・・何か怒ってない?
お菓子くらいでそんなに怒る?
見事にイムのはじめてのおつかい作戦は失敗したな。
寧ろ逆効果だ。
「リョウさんの最近の不甲斐なさは目に余りますよ。力が無いのならもっと戦略を駆使したらどうですか?私に勝てそうな戦略ならなんでも試してみてください。」
ん?今なんでもって言ったよな?
まぁその通りではある。が、その戦略すら貧弱過ぎて実行できんのじゃ。
・・・いや、なんでもだよな?なんでもいいんだよな?
文字通り、そういう事だろ?
じゃあお言葉に甘えてなんでもしてやろうじゃねぇか。
「・・・分かったぜ。じゃあこっちはイムを使わせてもらうぞ?勝てばなんでもいいんだから従魔を使ってもいいよな?」
「えぇ、構いませんよ。寧ろやっとイムさんに助けてもらうのですね。」
んーむ。まぁ一応、特訓だと思っていたからな。
セリスは本当に勝負のつもりらしいが。
「よーし、じゃあイムこっちにおいで。作戦を説明すっぞ。」
「・・・・・・さっきの分、がんばる。」
さっき買い食いさせたお陰で、やる気は十分なようだ。
顔にやる気は無いけど。
イムに作戦を説明してやってから、魔物形態に変化させた。
そして体積変化で手乗りサイズぐらいに小さくなってもらう。
それからイムを右手に乗っけて準備完了だ。
後は作戦が上手くいく事を祈るばかり。
「そんな事でよろしいのですか?」
大した準備もしなかった僕に、ちょっと呆れているのだろうか?
精々油断してればいい。そっちの方が助かる。
もっこり天使め。吠え面かかせてやるよ。
「いくぞ・・・試合開始だっ!」
僕はそう叫ぶと同時に、イムを下手投げで空へと投げた。
手乗りサイズになってもらったのは、投げやすくするためだ。
イムにも投げる瞬間に跳躍してもらい、イムは空高く飛んで行く。
そしてこっからが僕の踏ん張りどころなのだが・・・。
「何のつもりか分かりませんが、受けて立ちます!!」
どうやら避けるつもりは無いそうだ。
手間が省けた。
注意を引くだけでよさそうだ。
「おおおおぉぉぉ!!行くぞ!セリス!!」
出来るだけ大声出して注意を引く。
空高く上がった小さいスライムを、出来るだけ忘れさせるように。
僕は銅の剣を持ってセリスに走って行く。
待っているセリスに向かって、おもいっきり剣を振った。
そう。僕のおもいっきりだ。
ハエが止まれるような僕の剣をセリスは余裕で受け止め、僕を弾き飛ばした。
「うおっ!!?」
「・・・リョウさん。それでは何時まで経っても勝てませんよ?」
・・・僕は勝たなくていいんだよ。
イムが居るからな!!
「いまだっ!!イムっっ!!」
空高く飛んで行ったイムが、もうはっきり見えるまで落ちて来ていた。
落ちる場所は・・・そう、セリスだ。
僕の声を聞いて、イムは変化のスキルを使った。
変な効果音と共に白い煙を出し、現れたのは・・・ムキムキの体をした3メートル級のモン娘であった。
ブッッ!!?
な・・・なんて絵面だ・・・。
イムは両手を広げ、フライングボディプレスの体勢でセリスに向かって落ちて行く。
いいぞ!いいストロングスタイルだ!
「なぁッ!?何ですかアレは!!?」
セリスも度肝を抜かれている。
手乗りサイズのスライムが落ちて来るのかと思ったら、筋肉モリモリマッチョマンのやる気無い顔したスライムが空から自分目掛けて落ちて来るのだ。
そりゃセリスの顔も青ざめる。
態々セリスの目の前で魔物形態にして、体積変化でサイズを小さくさせたのも、少しは効果があっただろうか。
この前分かったトリビアを早速実戦で使わせてもらった。
無駄知識じゃなかったよ!やったね。
「・・・いえ、まだ!!?」
しかし、イムを早めに変化させ過ぎた。
セリスはイムを迎撃する為、左手を空に掲げる。
あれは・・・魔法か!?
ヤバい!イムが迎撃されたら勝ち目が無いのに!
・・・こ、こうなったら・・・。
あの技しかない!!
僕のとっておきを見せてやる!!
本邦初公開!これが俺の・・・必殺技だあああああ!!!!
「あっ、ルナ様だ。」
「・・・えっ!?」
その名も必殺・・・“よそ見”。
・・・・・・勝ったな。ああ・・・。
僕はセリスの後方を指差し、迫真の演技をみせる。
真面目なセリスは無論振り向いた。
相手がルナ様なのかもしれないんだし、当然だろう。
勿論ルナ様なんて居ない。おもいっきり嘘だ。
僕の必殺技をモロにくらったセリスは隙だらけだ。
そこにイムのフライングボディプレスが炸裂した。
圧倒的な質量に押し潰されたセリス。
かなりなダメージを負っただろう。
しかし、まだ終わりではない!
そのままイムの体の中にセリスを捕らえてもらう。
イムの体の中で苦しそうにしているセリスが漂っているのを確認して、僕はイムにトドメの命令を出す。
「よしっ!今だっ!!溶かせえええぇぇいっ!!」
天然天使め!跡形も無く溶かし尽くしてやるっ!!骨も残さんぞ!!
・・・という訳じゃないよ。
覚えていらっしゃるでしょうか?
イムが桃モモンガーの死体を自分の体の中で溶かし、価値のある素材だけを選別して解体してしまった事を。
あの常識はずれの超吸収を使った、イム流の魔物解体術を。
あれをやってもらおうって訳だよ。
そして今回、溶かしてもらう物は肉ではない・・・服だッッッ!!!!!
「おおおーーー!!!やれーーー!!イムううううぅぅぅ!!」
僕の声を受け、小さく頷くイム。
するとあら不思議!!セリスの服が徐々に溶けていくではありませんかっ!!
ヤッベェ!!テンション上がる!!
この発見は天下をとれるぞ!!!
やはり私の目に狂いはなかった!!イムはやっぱりスーパーモンスターだぜぇぇ!!
もうこの物語ここで終わっていいわ!
先生の次回作にご期待ください!!
徐々に服が溶けてなくなっていく様子に、セリスがやっと気付いたようだ。
早くイムの体から脱出しようと暴れだすが、全く出れる様子がない。
いったいイムの中ってどうなっているのだろう?
しかし、イムは溶かし方を分かっているな。ホントに徐々にしか溶かさない。そして大事なところ最後まで残すつもりだぞ。
素晴らしい。
いきなり大事なところが見えるなんてのはつまらないんだよ。徐々に、徐々にと見えてくる事こそ価値があるというものだ。寧ろ大事な部分なんて見えなくてもいい!
素晴らしいよイム君。エンターテイナーだよ君は。
「・・・・・・リョウ。セリスが、降参だといっている。」
ん?ホントだ。
何か喋っているぞ?
でも何を言っているのか一切聞こえません。
「あ~~。聞こえんな!!」
「・・・・・・リョウ、どうするの?」
「構わん、やれ。」
愚問だな、イム君。
これは彼女が望んだ事だよ?
私に勝ってみせろと。勝てばなんでもいいと言ったのはセリス君ですよ?
そうだよ。これが俺のやり方だぁ~。俺はこのスライムと一緒に天下をとるんだよぉ。この方法なら世界中の女をひん剥く事ができるんじゃ~。あっはっはっはっは。待ってろぉ。次は何処のどいつだぁ?全員漏れなく薄い本の題材にしてやるよぉ。次は誰だ?ルナ様か?他の天使か?きみに選ばせてあげるよセリス君。・・・まぁ、声聞こえないんですけどね。
ヒャーーハッハッハッハーーッッ!!ハアーーーッハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!!
「・・・・・・・・・。」
イムは此方をジトッとした目で見てくる。
・・・あ、あれ?不満・・・かな?
「ど、どうしたイム?」
「・・・・・・べつに。・・・・・・リョウがそう言うなら、そうする。」
あ・・・あっるぇ??
イムちゃん不機嫌モード?
ま、間違ったかなぁ??
「・・・・・・。や、やだなぁ、冗談に決まってんじゃないですかイムちゃん。・・・さ、さあ!!早くセリスを出してやってくれ!!」
不機嫌な顔を止めたイムは、セリスをそっと体から出した。
どうやらセリスは気絶しているようだ。
イムは白い煙を出し、人間形態に戻った。
僕は急いでセリスに駆け寄る・・・ふおっ!!な、なんて破廉恥な格好を!!
流石うちのお色気担当!
折角服を買ったのに、また元のもっこりな服に戻っちゃったね♡デュフッフ。
・・・ハッ!?
またイムがジト目に!!・・・あんまりいつもと変わらんな。
「セリス!大丈夫か!?しっかりしろっ!!」
僕はセリスを抱きかかえて、声を掛けてやる。
・・・ちょっとヌルヌルするけど。
「・・・・・・ん・・・うん・・・あっ、リョウさん・・・・・・お見事でした。・・・私の完敗です。」
セリスはそう言うと、暖かい光に包まれた。
どうやら自分に回復魔法を掛けたみたいだ。
「・・・・・・。リョウさん、ありがとうございます。私はもう大丈夫ですよ。ちょっとヌルヌルしますが・・・。イムさんもお見事でした。私の負けです。」
「どや顔。」
セリスが笑顔でイムに称賛を送る。
イムはドヤッた。プリチーすぎる。
・・・う、う~ん。
お見事なのか・・・?
本当にそれでいいのかセリス?
自分で言うのもなんだが、なかなか酷い戦いだったぞ?
イムの力も借りちゃったし。
なんだよ必殺よそ見って。セリスもあんな簡単に引っかかるなよな。
それにしても・・・ここ最近のセリスはいったい何だったんだ?
「なぁセリス、ここ2週間くらい勝負勝負って言って僕をボコってたけど、いったい何だったんだ?明らかにおかしかったぞ?」
「・・・そうですね。それはですね・・・・・・あれ?何でしたっけ?」
えぇ・・・。何でしたっけだと?
何じゃったかいのう?と言いましたか?
お前そんなすぐ忘れるような理由でリンチしとったんかい?
「も、申し訳ありません。確かに何か理由があったと思うのですが・・・。」
そりゃねあなた、理由くらいあってもらわないと。
理由も無くリンチされたら、いくら温厚な僕だって怒りますよ。
「・・・それで?今日はもう気が済んだか?」
「・・・すみません。もう大丈夫です・・・。」
僕が飽きれたように言ってやると、セリスは申し訳なさそうに答えるのだった。
めでたしめでたし・・・。
「あ、あの・・・リョウさん?」
む?まだ何かあるのか?
せっかく古臭くシメてやったのに。
「わ、私は何故こんな裸のような恰好をしているのですか?」
「え?セリスが初登場した時もこんなだったぞ?」
「はうぅ・・・。あ、あれはその・・・下界の常識がまだよく分からなくって・・・。」
うっそだろお前。
天界の常識ヤバすぎだろ。
おいおい天界ってこんな天使ばっかり居るの?めっちゃ行きたいんだけど!
ていうか永住したい。まさに天国じゃん。
「うん・・・。僕、ちょっと天界行ってくるわ。」
「どこに、行くの?・・・・・・リョウも行くなら、イムも行く。」
「ええっ!!?何故そんな話に!?ちょっとリョウさん!そんなに簡単に行けるものではありませんから!!」
ほう?いい事を聞いたぞ。
そんなに簡単には行けないと言ったな?
なら難しい方法なら、天界に行ける方法がある訳だ。
・・・決まったぞ私の冒険の目標が。
天界の天使達でもっこりする!
これだ。
「安心しなさいセリスさん。同僚の方々も我がハーレムの一員にしてあげますよ。」
「は、はぁ・・・。いったい何の事だかさっぱり・・・。」
「・・・・・・。」
・・・誰かツッコミなさい。終わらんぞ。
はぁ・・・まずは天使よりツッコミ役を探さないとな・・・。




