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25話:豚トロの再来




さっきの魔物が逃げたであろう方向に向かって、結構歩いた。

未だにその魔物は見付からないし、気配も無い。

こっちは早く移動している訳でもないので、その魔物の方が早く移動していたら、もうどうしようもないのだが。


そろそろ街に戻り始めないと、日が暮れてしまうな。

野営の準備は当然してないので、それはマズイ。

見付けれるなら早く見付けたいところなのだが、期待とは裏腹に別の物が見付かる。


「ん~?・・・あ~、ゴメ~ン。見付かっちゃってるね~。」


リタから急に声があがる。

何か申し訳なさそうだ。

別に慌ててないので、魔物ではないのだろう。


リタが見ている方を見てみると、人が居るみたいだ。

こっちに手を振っている。

リタも手を振り返している。


「冒険者だね~。アンドニ達じゃないから安心してね~。やっぱ本職の盗賊が居るのかな~?ボクじゃ歯が立たないね~。」


どうやらあっちに腕のいい方が居るようで、こっちより先に見付けられたらしい。

別に魔物やアンドニじゃなかったらいいけどな。


「別に謝る必要はないぞ、リタ。」

「うん~。どうする~?接触してみる~?」

「いや、それはメンドイ。」


これ以上モブを増やしてどうする?

絶対活躍しないぞ。


「あ~、あっちから近付いて来るね~。リョウ~諦めてね~。」


なんでや!!

くそモブ共め!役目もらおうと必死やんけ!!


あっ。でも丁度いいし、さっきの魔物の事でも聞いてみれば・・・いや、駄目か。

上位種だったら金になるし、レア種だったら言わずものかな。

情報なんか与えてやる必要も無い訳だ。


じゃあ本格的に用事は無いぞ。

何で来るねん!!



そうこうと考えてる内に、先程の人達が近くまで来た。

先頭に居る戦士風の男がリーダーだろうか。

まだ若いけど二十代くらいか?


「あらら。随分若いパーティーだなぁ。こりゃあ、意味無かったか?」

「だから言った。しっかり話を聞け。」


戦士風の男が残念そうにそう言うと、隣のおねいさんが凛とした声でツッコミをいれた。


このおねいさん・・・かなりシコい。

フードを被っていて顔がよく見えないが、僕の目は誤魔化せない。

なかなか、綺麗にお顔が整ったもっこりさんじゃないか。

此方を見定めるように睨むキリッとした顔がいい。たまらん。

そしてホットパンツにニーソ。これがヤバい。あの絶対領域に顔を引っ付けたい。

間違いなくこの人が盗賊。リタより上をいく人だ。俺のもっこりがそう言ってる。


「あ~、お疲れさん。俺はこのパーティー“紫煙の風”のリーダーのラークだ。この女はパーラ、後ろのエルフがメント、ドワーフがケントだ。」


紫煙の風?臭そうなんだけど。


パーラさんっていうのか。

モブっぽいけど、しっかり心に刻んでおこう。


後の奴はくそどうでもいいんだけど・・・。

リーダーがラークさんね。

後ろに居るメントさん・・・確かに耳が長いし、背も高い。そしてイケメン。

はぁ・・・。初めて見たエルフが男とは・・・。


そんで?その隣のずんぐりむっくりの小男・・・まぁ、ドワーフだったら普通なんだけど。

ケントさんだっけ?残念だったな。ドワーフ美女ならもうディーノ氏の奥さんを見ている。

私の初めては守られた訳だよ。



それで?もう1人居るけど?

グラサン掛けたノースリーブの人が。


「そんで臨時のパーティーメンバーなんだが、駆け出し冒険者のトントロさんだ。」

「・・・私は、トントロ・オイシーナ大尉だ。それ以上でも、それ以下でもない。」


・・・・・・。

う~ん。どこからツッコミをいれたらいいですか?

取り敢えずね、豚トロはおいしいよ。

駆け出しとか言ってるけど、15歳って感じじゃないぞ?

おじさんじゃん。一回りくらい遅いだろ。

後、大尉って何?この世界にそんなのあるのか?


「トントロさんは冒険者になるのは遅かったけどな、戦闘の腕も冒険の知識も凄いんだ。この人は大物になるぞ。ボウズもお世話になっておいた方がいい。」


紫煙の風リーダー、ラークが更に説明してくる。

いや・・・でしょうね!

しまいにはオススメしてきたぞ。

興味はありますがね、仲良くはしたくないです。


「いや、キャンベルさんですよね?」


僕の発言に紫煙の風全員が固まる。

トントロさんもクールぶっているが、震える指でグラサンをクイッとあげている。


あ、やっぱりそうなんだな。

マルタの話を信じれば、この人がAランク冒険者の“真っ赤な水星”のキャンベルさんでしょ?

名前だけの出演だと思ったのに・・・。なに出てきてんだよ。


すまんなトントロさん。

多分、瞬時にキャンベルって分かるのは僕だけだ。

僕に会った事を後悔するんだな。


「ははは。ボウズ、キャンベルさんってあの真っ赤な水星だろ?あの人は今や時の人だ。近々Sランクになるって噂の人だぞ?そんな人が俺達Cランクの冒険者パーティーに協力してくれると思うか?なぁ?トントロさん?」

「・・・・・・。」

「え?・・・トントロさん?」

「・・・買いかぶってもらっては困ります。Aランクのキャンベルが何でCランクに手を貸すのです。」


少し狼狽えていたトントロさんだが、ラークの質問をクールに返した。


いや、返せてるのか?

はぐらかしてるだけか。否定はしてないし。

本来なら、歯を食いしばらせて修正してやればいいんだろうが、そうすると泣きそうだしな。


まぁ、どんな理由があってこんな事しているのかは知らんが、態々バラしてやる必要も無いだろう。

なんならフォローしてやるよ。

AだかSだか知らんが、高ランクの冒険者なら恩を売っておいて損は無いだろう。

まぁ僕がいらん事言わなければ何も無かったんですけどね。

結局ラークの言った通りになる訳か。

色々な意味で危ない人とは関わりたくないのだが・・・。


「すみません見間違いでした。キャンベルさんがこんな所に居る訳無いですよね。失礼しました、トントロ大佐。」

「・・・私は大尉だ。」


おっといけね。つい口が滑ったぜ。



まあまあ。オチもついたところですし、トントロさんは放っておきましょう。

えーっと・・・何だっけ?

あぁ、僕らも自己紹介くらいしないとな。


「え、え~っと。僕はリョウです。こっちがリタとセリス。それでこのス・・・!?」


僕はイムの方を見て絶句してしまった。

な・・・何でまだ2メートルくらいあるの??

あれから結構経ったよね?何でいつものサイズに戻ってねぇんだ!?

しかも腹の中にグロテスクなフォレストウルフの死体が入ってるじゃねーか!?

だからまだデカいままなのか!


おい!リタァ!!こっち向けえええェェェ!!!

知らんぷりしてんじゃねエエエエエェェェ!!!

ほら!紫煙の風がみんな見てるじゃん!

どうやって説明すんだよ!

第一印象最悪じゃねーか!!


「変わったスライムだな。お食事中か?ボウズ達の仲間でいいんだよな?」

「・・・は?え、ええ。そうです。」


そ、そうか。

こんな反応するんだった・・・。

いい加減慣れないと。


「へぇー!マジか!魔物使いが居るのか?じゃあ今からしっかりコネを作っとかねーと・・・。」

「ラーク、目的を忘れるな。」


パーラさんに容赦なく注意され、ばつが悪そうにするラーク。

このラークって人、コネとか好きな人だな。



「あー・・・うん。ボウズ達、この辺にダンジョンがあるらしいんだが知らないか?」


なるほど。ラーク達もダンジョンを探していたのか。

だが生憎、僕達も知らないんだけどな。


「実は僕達も探してるんだけど、まだ見付けてないんだ。」

「えぇ!?お前らまだガキじゃねーか!?」


僕の発言にラークがビックリする。

・・・うーん。やっぱり傍から見ると分不相応にみえるんだろうな。


「おいおい、やっぱレアクラス様は違うなー。」

「ラーク、相手は子供だぞ。みっともない。」


煽られておる。

まぁ別に僕は何も思わんけどね。

ムカついたからって手を出しても、返り討ちにあうだけだし。

パーラさんも大変だな。パーラさんはこのパーティーのブレーキ役って訳か。

こんなリーダーだと苦労するだろ?何なら僕のパーティーに入ってもええんやで?


「では、君達の中にクラス盗賊が居るだろう?」


今度はトントロさんが僕達に聞いてきた。

マジか・・・この人まだ出番あるん?


「うん~。ボクがそうだよ~。」

「ほう・・・。君は私の母になってくれるかもしれない女性だな。」


ほらね。こういう事言うでしょ?

まずそいつね、男だから。

後、そのセリフ何?褒め言葉のつもり?

ドン引きだから。


「では、君達が通ったルートをパーラに教えてやってくれ。そうすればダンジョンの位置も絞られるだろう。」


周りがドン引きしているのも構わず、トントロさんがそんな提案をする。


成る程ね。

盗賊は自分の脳内に地図を作って、自分の位置や通ったルートをマッピングする特技があるんだったな。

パーラさんとリタでその情報を合わせるわけか。



早速、リタとパーラさんが作業を始めた。

パーラさんが持っている地図を使って合わせるらしい。

この地図はギルドに売っているそうだ。

僕もチラッと見たけど全然分からんかった。


イムが体に入れていたフォレストウルフは全部溶かさせた。

紫煙の風が居るのにイムの訳分からん吸収技を見せる訳にもいかんだろう。

体も小さくしてもらった。つーか、もう必要以上に大きくならないように言っておいた。


「君が魔物使いなのか?」


リタ達の作業を大人しく待っていると、トントロさんが話しかけて来た。

また出てきたのか。もうええって。

つーか、何で分かったんだ?

そういえば、僕達の中に盗賊が居るってのも当ててたな。

うん、まぁ勘がいい人なんだろ?断じて新人類とかじゃないから。


「・・・いや、違うな。この感覚は、魔物使いとは違うタイプのようだ。」


何この人・・・こわっ!!

どうしたいきなり!

ど、どうする?はぐらかすか?


「トントロさんでしたか?あまりリョウさんを苛めないでもらえますか?」


セリスか!?助かった・・・。

最近すっかりネタキャラだと思っててごめんよ。


「・・・貴方も妙な感覚だ。エルフでもドワーフでも獣人でもない。魔族とも違うようだ。」


ちょwwこえぇ!こえぇって!!

いったいなんなんだこの人?

ただの豚トロ好きのおじさんで居てくれよ!


「あのスライムの()()も変わっている。非常に珍しい種のようだ。私はレア種を従魔にしている魔物使いを見たのは初めてだ。」


お、おいおい!少女って言ったか?

イムはまだ魔物形態だぞ!?


「・・・いったい何のつもりですか?リョウさんの邪魔をするつもりならば容赦はしません。」

「出来るのか?君に?」

「出来ないとお思いですか?」

「余程自信があるようだ。貴方なら力の差が分かっていいと思うのだがな。何か秘策があるのか?上位属性の魔法か、魔導武器か・・・。」


セリスが凄んでみせるが、トントロさんは全く意に介さない。


この人ヤバい!!

セリスの魔法と武器まで見破っている!

こ、これがAランク・・・いや、Sランク冒険者だっていうのか!?



最近のセリスを見てると、全く想像できないくらいセリスから怒気が感じられる。

トントロさんを目で殺すかのような雰囲気だが、当の本人は何処吹く風である。


・・・セリスは女神様の命令で僕に協力するように言われているんだ。

僕を邪魔する人間が居たらどうなるか?

あの黒い三戦士の時は・・・あれは自分の身が危なかったんだろうけど。

例えばその邪魔者が自分より強かったらどうなる?

セリスはそれでも排除しようとするのではないか?

それこそ自分の命を懸けてでも。


そ、そんなのは駄目だ!

何とかして止めないと!!

くそっ!僕がこんなネタキャラに関わったばっかりに!

冗談は名前だけにしろってんだよ!!


「ちょ、ちょっと!トントロさん、もう勘弁してもらえませんか?お互いに知られては不味い事がある訳ですし、痛み分けって事にしてもらえませんか?」

「・・・フフフ。いや、此方こそすまない。少々大人気なかったかな。」


何だよこのおっさん!十分大人気ないわ!!

この感じだと、僕が正体をバラしそうだったから仕返しでこんな事したな?


「さぁ、セリスも収めてくれ。僕の為にやってくれたんだろう?ありがとうな。」

「リョウさん・・・。分かりました・・・。」


あぁもう!!呆けた顔も可愛いな!!

ペロペロしてやりたい!!!腋を。


「お、おい。どうしたんだ?何か凄い雰囲気だったぞ!何があったんだよ?」


ラークが今更になって此方に話しかけてくる。

もう終わったんだよ。うっせーな。いいからこのグラサン連れてさっさとダンジョンでも何処へでも行けよ。




パーラさんとリタの情報交換も丁度終わったようで。紫煙の風とグラサンノースリーブは森の奥へ消えて行った。


「何かあったの~?」


リタが能天気にも聞いてくる。


「あぁ・・・。帰ってから話すわ。それよりリタ、ダンジョンの場所は目星が付いたか?」

「うん~バッチリ~。もう間違い無いかな~。パーラ姐達は野宿するんだって~。」


そうか。まぁ、これからダンジョンに向かうんならそうなるんだろうな。


「僕達は帰ろう。随分時間くったし・・・疲れた。」


主にグラサンノースリーブのせいでだけど。



やれやれ、ただのネタキャラだと思ったのに。とんでもない能力の持ち主だった。

AランクやSランクってのはあんなのばっかりなのだろうか?

まぁもう会う事は無いだろう・・・無いよね?

正直、活躍させるべきキャラではない。色々と。忘れてしまおう。


なんやかんやあったが、パーラさんのおかげでダンジョンの位置を知る事ができた。

明日からダンジョンで無理しない程度に狩りができるだろう。今日はもうこれで終わりだ。また明日から頑張ろう。






・・・と思っていた時期が僕にもありました。

今日はまだ終わっていなかったんだ。

トントロさんなんて目じゃない事が起こってしまった。


確かに今日の目標は達成した。

ダンジョンの位置を調べる事。

それを達成したせいだろうか?もう1つあったのを誰もが忘れていた。

そう。あの得体の知れない魔物だ。



「・・・・・・ピっ!!?」


ピ?

一番前を歩いていたリタが可愛い声を出し立ち止まる。


「・・・こ、これは~。な、何~?」


リタがキョロキョロと辺りを見回す。

何だ・・・?何かいたのか?


セリスが僕の前に出てきた。まるで僕を守るかのようだ。

すっかり小さくなって僕の頭の上に乗っていたイムも、地面に降りる。

みんなの様子が変だ。

相変わらず僕は何も感じないのだが?

逆に大物感あるよね。こうなると。

決しておいてけぼりな訳ではない!



「・・・あっ!・・・ゥヒッッ!!!?」


リタが何か見付けた様子だったが、次の瞬間にはまた変な声を上げて、僕の胸に飛び込んで来た。


「う・・・ぅあ・・・。」

「り、リタ?」

「り、リョウ!ヤバいよ!!みんな・・・みんな殺されちゃう!!!」


リタは恐怖に怯えた目をしてそう言い、僕に力一杯しがみつく。

身体は小刻みに震え、呼吸も困難になっているようだ。


い、いったい何を見付けたんだ?

いつも飄々としていて心臓に毛が生えてるような奴なのに、いったい何を見たらこうなる?


「・・・り、リョウさん。・・・リタさんと・・・イムさんを連れて、逃げてください・・・。私が何としても、ここで食い止めてみせます・・・。」


そう言うセリスも声は震え、腰が引けて足も震えている。

いつの間にか、ハルバードからいつかの白い大鎌に持ち替えていた。

イムは喋らない。

まぁ普段から無口だし、今は魔物形態だから喋れないのだが。

一応プルプルはしていないが、心境が分からん。



本当に何があったんだ?

みんなこんなに怯えているのに、何故僕は何も感じない!

どうしてだ?これから何者かに殺されるかも知れないってのに!

リタは話が出来る状態じゃないし、セリスに聞くしかない。


「セリス!いったい何が居るんだ!?」


セリスは何処かを見つめたまま動かない。

未知の魔物への恐怖が此方にも伝わってくるようだ。


暫くしても、その魔物が姿を現す様子は無い。

セリスは戦闘態勢を維持したまま、短く息を吐いてゆっくり話し始めた。


「・・・恐らく、魔族・・・か、それ以上の存在です・・・。」


魔族!?てゆうかおいっ!それ以上って何だよ!!聞いた事ねぇぞ!?


・・・い、いやあるわ。

聞いた事あるぞ。ルナ様に・・・。

魔王だ・・・魔王が居るかもって言ってるのか!!?

嘘だろ・・・ラスボスじゃねーか!


「そ、それ以上って・・・ま、魔王?」

「い、いえ。流石に魔王は・・・。」


あ、やっぱ違います?

こんな時にごめんね。


「・・・そ、その辺りは生きて帰れれば説明します・・・。ですから、今は逃げてください・・・。」

「何言ってるんだよ!!死ぬなんて許さんぞセリス!お前も逃げるんだよ!!」


セリスはチラッと此方を見るが、また視線を何処かに戻した。

そして未だに姿を見せる気配のない魔族?を確認し、少し長い息を吐いた。


「・・・相変わらず、殺気は放ってきています。・・・ですが、姿を現しませんね。・・・魔族は、余程の事が無い限りは・・・敵対してこない筈です。それが・・・何故・・・?」


その辺は前にマルタと話したな。

オシリ戦争以降、基本的に良い感情は持って無いけど、戦争はしていないし、王国内にも住んでるって。

中には仲良く過ごしてる魔族も居るって言ってたな。


「リョウさん・・・。ま、魔族に手を出したりは・・・?」

「お前今それ言う!?こんなシリアスな場面で言う!?それに僕まだ10歳よ!!?」

「し、しかし、中身は・・・。」

「だから今それ言う!?中身はおっさんだって言う!?リタもイムも居るんだよ!!?」


何て事言うんだよこの天使は。

中の人など居ないんだよ!

随分余裕あるみたいだし、本当にこのままオトリにしていくか?



「・・・!!き、来ました!?」


セリスが声を上げる。

セリスが見ている方を見ると・・・確かに何かが此方に向かって歩いて来ているようだ。


あれは・・・見覚えがある・・・。

あ、あの狼だ。

間違いない!6歳の時、僕を咥えて狼の巣穴に連れて行ったあの銀色の狼だ。

あれが今セリスとリタを怯えさせている元凶なのか!?


銀色の狼は此方にゆっくり歩いて来る。

セリスの呼吸は荒くなり、リタの僕を掴む力が強くなる。

未だ殺気は放っているようだ。それが近付くにつれ大きくなっていっているのか。

僕は相変わらず感じないが。不感症なのかな?えーやだよ!まだまだもっこりな事いっぱいヤリたい!!


銀色の狼は徐々に近付いてくる。

・・・僕と目が合った。

その瞬間、銀色の狼の動きが止まった。

な、何だ?また僕を連れ去る気か?


・・・だが、そんな事にはならなかった。

何を思ったか銀色の狼は踵を返し走りだす。

銀色の狼はそのまま森の奥に消えて行った。




「・・・・・・ハッ、ハァ、ハァ・・・ふぅ。行ったみたいですね。」


銀色の狼が消えてから暫くしてセリスがそう言い、安心したのか地面にへたり込んだ。


「あぁ・・・。そうみたいだな。」

「助かりました。リョウさんがやってくれたのですよね?」

「僕が?別に僕は何も・・・。」


僕の発言にセリスがビックリする。


「えっ!?では何故、退いてくれたのですか?」


・・・銀色の狼が僕の視界に入ったところで考えている事がある程度分かった。

現れた時は殺意プンプンの激おこだった。

だがそれは僕以外に対してのものだ。何故僕には向けなかったのかは分からない。

そして僕と目が合った時は、ビックリしていた。

ビックリした後は何か考え事をしていたようだったが、逃げるように姿を消した。


魔物誑し・・・便利だな。

だが今回に関しては、考えていた事は分かったが何故銀色の狼が退いてくれたのかは分からないままだが。


「まさか・・・これも“魔物誑し”の能力だというのですか?」


魔物誑しが?

強い魔物が勝手に逃げてくれるのが魔物誑しの能力なのか?

まぁまだこのクラスは分からん事だらけだ。その可能性もあるかも知れないが・・・。


確かにさっきの銀色の狼の行動は変だった。

変だったという事は・・・もしかして僕の従魔だったりしない?

・・・でもイムとは行動が全然違うんだよなぁ。

あの時のイムも敵意を向けてきた事があったが、それは僕にも向けてきたし、何より逃げたりしてない。僕を見て怒ってたもんな。

まぁこれも魔物使いのやり方とは違うので、イムの時が正解だったかどうかも分からんのだが。


だいたいセリスも震え上がるような魔物に、試練みたいなものを受けさせられて勝てる訳無い。

もし従魔だったとしても諦めるしかない。


諦める・・・しかないかぁ・・・。

いやー、あんなのが従魔だったら今後の冒険も楽だろうなぁ。

何か簡単に従魔にできる方法はないものかね?

魔物ボールを投げてぶつけたら確率で仲間になるとか、神殿で音楽CDを読み込ませたら魔物を誕生させてくれるとか、そんなんでいいのに。


「さぁ・・・どうだろうね。僕自身も魔物誑しの事は分からんし・・・。」

「・・・そうですね。しかし、一応ルナ様には報告しておきます。」


ルナ様なら何か分かるかも・・・いや、無理か。魔物誑しに関係する事なんだろうし。


まぁ・・・いい。みんなの命があっただけめっけもんだ。

従魔だとしたら惜しい存在ではあるが、命がいくつあっても足りないだろう。



「一応逃げたっぽいが、また帰って来るかも知れない。さっさと街に戻ろう。リタ!お前大丈夫か?」


リタはずっと僕にしがみついたまま。顔も埋めてしまって震えている。


「リョウさん。私が精神を安定させる魔法を掛けます。」


何と・・・そんなこと出来るのか!?魔法ってスゲー!

んー、ゲームでいうところのバッドステータスにかかっているのを治す感じかな?

んー・・・何かそう言うと大した事ないような・・・。


セリスがリタに魔法を掛けると、リタの身体の震えが徐々に収まってきた。

暫くすれば治るだろうとのことだ。


「では次はイムさんに掛けますね。」

「え?イム!?」


セリスに言われて、僕はイムの方を向く。

・・・水溜まりみたいになってた。

喋らないと思ったら液体化していたのか?化学的に言うと、融解ですね。はい。


「これは・・・リョウさん、イムさんの症状が分からないのでどの魔法を掛けてよいのやら・・・。」

「うん、そうね。冷やせば・・・あ、いや。多分、銀色の狼のプレッシャーに負けて気絶してるっぽい。」

「気絶ですか。分かりました。」


多分だよ。多分。

セリスがまた魔法を掛けてくれる。


「セリスも大変だったろうに。何か悪いな。」

「いえ、このくらいは・・・。私も・・・何もできませんでした・・・。」


やべ。地雷踏んじゃった。

もうこの事は話さんとこ。


どうやらイムの症状は当たっていたようだ。

イムは直ぐに復活し、まんまるスライムに戻った。


(・・・・・・ここは、どこ?私は、イム。)

「イム、大丈夫だったか?」

(リョウ・・・・・・なにがあった?)


大丈夫なようです。

コイツ、結構序盤に気絶してたんじゃねーか?



その間にリタも回復したようだ。

僕の身体からやっと顔を離す。


「う・・・ううう~~。リョウぅ~、ごめんねぇ~。」


ああもう!ひでぇ顔だな!

カティといいリタといい、僕の服はタオルじゃねーんだよ!!


「回復して早々で悪いんだがなリタ、あの魔物が帰って来てもいけねぇし、さっさと街に戻るぞ。」

「う、うん~。わかった~。」


そう返事したリタだが、一向に僕から離れる様子がない。


「・・・おいリタ。早く街に戻るって言ったよな?」

「うん~、・・・ねぇリョウ~、おんぶして~♡」


コイツほんま。

・・・くそっ!今回だけだぞ!!

僕は心の中でガッツポーズしながらしゃがもうとしたが、イムがそれを遮ってきた。


(・・・・・・イムが、おんぶ、する。)

「え?イムが?」

「え~?リョウ~?イムがどうしたの~?」


リタが首を傾げて聞いてくる。

あっ、そっか。今は魔物形態だった。


「イムがおんぶするってよ。」

「・・・いやいや~、イムじゃ意味がないんだけど~・・・。」


リタがそう言うと、イムはポワワ~ンとモン娘形態になっ・・・なッ!!誰だお前は!!?

そこに居たのは体の色、顔はいつものイムだが、体の形がムキムキのおっさんの形をしたスライムだった。


・・・ちょ、ちょっと待ってくれ!

色々渋滞し過ぎだ!

だいたいそんな身体の形どこで・・・あぁ、ゲバルド氏だ・・・。


「ちょ、ちょっとイム~、何それ~?キモいんだけど~ww」

「・・・・・・イムが、おんぶ、する。」

「いやいや~、だからイムじゃ意味がないって~・・・。」

「・・・・・・イムが、おんぶ、する。」

「いやだから~・・・。」

「・・・・・・イムが、おんぶ、する。」

「・・・お願いします~。」


何故か頑ななイムにリタは折れる事になった。

後からイムに聞いたが、新しい形態を思い付いたので役に立つところを見て欲しかったそうだ。

勿論、もう二度とその形態にならないように言っておいた。・・・まぁ後に活躍するのだが。

そういえば変化(へんげ)なら体の体積は一瞬で変わるんだな。・・・使える知識なのだろうか?


ああっ!!

リタって胸が無いから、おんぶしても背中に感じるのは男のシンボルだけだったわ。

危ないところだった。サンキューイッム。




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