15話:お約束
僕とカティは装備を整え、セリスと一緒に街の外に向かった。
整えといっても、孤児院の倉庫にある銅の剣を持ってくるだけ。
もう街の外に出れるんなら、武器や防具も揃えないとだめだな。
カティも自分の銅の剣を持っているだけだ。
う〜ん。勇者がこれでは格好がつかないな。
セリスは何も持っていないが大丈夫だろうか。
聞いても、心配ないと言われた。
街の門に行くまでに、めちゃくちゃ注目を集めてしまった。
カティも黙っていれば、とんでもない美少女だが、原因はカティではない。
そう、セリスだ。
すれ違いざまに男共が、振り返っては舐めるようにセリスを見る。
性的な目で見やがって。
もうこの天使は僕の物なんだよ!絶対手を出させないからな!
しかし、僕は待っているのだ。
何を?
そう!異世界のテンプレの展開だ!
美少女と一緒に歩いていたら、柄の悪い奴らに絡まれるやつ!
来いっ!来いやっ!!
「カティナさん、カティナさん。あの良い匂いのする串焼きは何ですか?」
「あれはホーンラビットの串焼きだよ。スパイスが効いていて美味しいよ。」
「・・・・・・早く行こうぜ。」
柄の悪い奴らは来ねーし、セリスは下界の物が珍しいのかはしゃいでるし、街の男共の目が必死だし。
「カティ、セリス、買い食いとかは帰ってからにしてくれ。日が暮れるまでに帰りたい。」
「も〜。リョウは真面目ね。まだ時間は大丈夫よ。モグモグ。」
「す、すみません。目に映る物全てが珍しくって・・・。モグモグ。」
しっかり串焼き買ってるし。
やっと街の門まで来た。
門番に許可書を見せる。
門番も男だったので、勿論セリスをガン見している。
「見ない顔だね。外に出るのは初めてかい?」
「ええそうです。」
「随分、急拵えの通行許可書だね。まぁ、領主様の許可が出ているんなら別にいいんだけど。」
いや、見すぎだろ。セリスの脚。
口は真面目に仕事してるけど、目が微動だにしないぞ。
「すみません・・・。」
「あ、いえ。責めてる訳ではないんです。」
おいぃ!ワレェ!!わしの女を何悲しませとんねん!
後、脚ばっかり見てんじゃねえ!
お前、脚フェチか!良い趣味してんな!
セリスの生脚はタマランチっ!だが、この脚はもうわしのなんじゃ!ワレェ!!
後、モブの癖に変な設定入れんなって言ってるだろ!
どうせ名前も出てこない癖に!
「ではこの通行許可書の説明をしますよ。この許可書はパイマーンの街のみで有効です。他の街や村に行って許可書を見せても、緊急時以外では入れてくれません。もし、他の街に行きたいのでしたら、成人になって冒険者ギルドか商人ギルドに登録してギルドカードを貰うか、領主様に住民書を貰って来て下さい。」
この世界では10歳になってから、大体の人間が外で修業するようになるらしい。
まぁ、魔物が蔓延る世界だから、魔物は倒せるようになっていた方がいいわな。
孤児院で歳が僕より上の連中も、何人か行ってる奴が居る。
子供達の親が外に出てもいいか判断し、親が領主様に許可書を貰いに行くのが普通のようだ。
僕の場合は、ゲバルド氏だな。
あくまで、この許可書は修業の為であるので、他の街に行く為の許可書ではない。
魔物に追われているとか、遭難したとかなど、緊急時位ではないと、他の街には入れてくれない。
そうなんですよ。
カティは王都の学園に行く為に、通行許可書を持っているが、それはあくまでも王都とパイマーンの街を行き来するための物。
修業をするのなら、別に許可書を持っていた方がいいらしい。
「街を出たら、時間を計測させてもらいます。72時間で帰って来ない場合は、行方不明者として冒険者ギルドや衛兵に捜索願いを出しますからね。72時間以上、外に居たい場合は、事前に言って下さい。」
「へー。そんなのやってるんだな。」
「未来ある若者を減らす訳にもいかないからね。それでも、毎年何人か亡くなったり、行方不明になったりするね。」
まぁ、そうだろうな。
約束の72時間を過ぎても戻って来ない奴等なんて、大体死んでるだろう。
「後は・・・、成人になってない子達は、出来るだけ大人同伴を推奨しているんだけど。・・・今回は大丈夫だね。」
そう言って、門番はセリスの脚を見る。
この人どんだけ脚好きなん?
なんだ?この門番は脚で人を識別してるのか?
コイツとはいい酒が飲めそうだが、いい加減にしとけよ。
「では、気を付けてな。」
脚フェチ門番に見送られ、街の外に出た。
街の外は見事な田園が広がっている。その向こうは、広大な草原だ。
森は随分奥の方だな。この辺は平地だから、随分向こうの森も見える。
昔、孤児院を抜け出して狩りをしていた草原は反対側だ。
マーラやアヌルス、魔力スポットの翡翠の湖がある方面だ。あっちの方は森も近いしな。
こちらは王都に向かう方面だ。
何故、反対側に来たのかというと、カティとセリスが街を見て回りたいと言ったからだ。
街を見て回ると、反対側の門の方が近いので、態々こちらに来たのだ。
多分、メインの狩場はいつもの所になるだろうが、今回はこっちだ。
まぁ、どちらに行っても、出る魔物は変わらない・・・はず。
「ねぇ、セリス。まずはどうするの?モグモグ。」
「そうですねえ・・・。モグモグ。」
また買い食いしてやがる。
今は、あの時ジュスタンと食べた、カルメ焼きを美味しそうに食べている。何時の間に買ったんだ?
まぁ、こののどかな田園風景の中を歩きながら、屋台で買った物を食べて歩くのも乙なのかもしれない。
「モグモグ・・・美味しかったです。ルナ様は魔物のメスと子供が関係しているのでは?と仰っていました。それらに接触してみて、色々試してみたいのですけど、魔物に子供なんていませんし、大体の魔物はオスとメスの区別がつかないです。」
「ふ〜ん?じゃあさ、セリス。オスとかメスとかどうやって見極めるんだ?」
「モグモグ・・・この辺の魔物だと・・・ハーピーとかは全部メスぽいよね。王都周辺だと、ゴブリンやオークはオスが多いって教官が言ってたよ。」
カティが2つ目のカルメ焼きを食いながら言う。
コイツまだ食うのか。
確かにハーピーは全部メスっぽいな。
ゴブリンはこの辺には居ないが、オークは森に居るらしい。
「オスとメスの区別がつきそうなのはそれ位ですね。では、ハーピーと、メスの数は少ないでしょうがゴブリンとオークを探しましょう。」
セリスは簡単に言うが、そううまくいくだろうか?
「魔物のメスを見つけて色々するって言ったけど、どんなことをすればいいんだ?」
「そーだねー。話し掛ければ?」
「意思疎通出来ないって言われてるのにか?」
「重要なのはハートよ!ハート!!」
普段なら、何をこの馬鹿は馬鹿な事言ってんだよ。と言うんだろうが、案外的を得ているような気がする。
意思疎通出来ねえから、心で会話するんだって事か?
確かに・・・魔物使いとかはそうかもしれない。
心で通じ合うから、仲間になりたそうに此方を見てくるんだよな。
田園を抜け、草原に出た。
暫く歩くと、今日最初の魔物を発見した。
第一魔物発見。
「あれは・・・ハーピーですか?」
「ホントだ。草原まで出てくるのは珍しいね。」
セリスとカティが見つけてくれた?
確かに、離れた所にハーピーが一匹だけ。
なんというタイミングの良さ。
これはもう、あのハーピーを仲間にしろと。神が僕に言っている!
あっ・・・神ってルナ様か・・・う〜ん、どうだろ?
「絶好の獲物ではないか。私に任せてもらおうか。必ず仲間にしてみせる。」
「リョウ!頑張って!」
「まだ魔物誑しが魔物を仲間にするクラスと決まった訳では・・・。」
セリスが何か言っているが放っておこう。
僕が魔物を仲間するクラスだ!って決めたんだよ!
そうに違いない!
見とけよぉ!要はメスを誑し込めばいいんだろ?
僕の得意分野じゃん。簡単だよ。
昔の容姿ならまだしもだよ!今のソコソコの容姿と、僕の華麗なテクニックがあれば、魔物のメスなんて直ぐにアヘアヘだよ。
僕は一人で飛び出し、ハーピーの前に出る。
「ヘイ!可憐なお嬢さん。こんな所で一人でどうしたんだい?ベイビー。」
分からん。何故こんなセリフが出て来たのか。
こんなの、どっかの小学校の金持ちの同級生やんけ。
僕の声に反応して、ハーピーが振り向く。
あー・・・可愛くない・・・。
そんな事より、口の周りが赤黒い血でべっとりだ。
どうやらお食事中だったようだ。足元に爪ネズミのグロい死体が転がっている。
「キシャアアアアアア!!」
ハーピーが牙を剥いて威嚇してくる。
その目は・・・うん。完全に新しい餌として見られてるね。
「シャアアアアッ!!」
ハーピーが鋭い足の爪を向けて突撃してくる。
僕はそれを横っ飛びで必死に逃げる。
ふおっ!避けれた!これもクラスを取ったお陰だろうか。
まだだ!まだハートが!心が伝わっとらんのだ。
僕は争いなんて望んでないんだよ!
届けこの心!魔物はみんなフレンズさ。君は狩りができる魔物なんだね!すっごーい!
ハーピーがまた突撃してこようとしている。
「まだわからんか・・・心じゃよっ!」
突撃してきた。
チクショーーー名言まで出したのにーー!!
今度はさっきより速い!
ヒエェ!よけらんねぇー!カティィィィィ!!
目にも留まらぬ速さで僕の前にカティが現れ、突撃してくるハーピーに剣を叩き込む。
剣がハーピーの体の真っ二つにしてしまった。
「うーん。力が上がってる?これもクラスのお陰かなぁ?」
カティが素振りをして確かめている。
ま・・・真っ二つ・・・。
ハーピー一匹ごときだと、余裕って訳か。
・・・もう馬鹿って呼ぶのやめようかな。
「あっ!リョウ。残念だったね。あれくらいなら余裕だから、どんどん行こー!!」
真っ二つになったハーピーから魔石を取り出しながら、そう言っている。
頼もしい子だよ。ホント。
◆◆◆
「・・・ハーピーは全く反応している様子はなかったな。」
「そうでしたね。草原の魔物も、森の魔物も、変わった反応は無かったです。」
「いいじゃん!ホーンラビット二匹もお土産にできるよ!」
日が暮れて来たので、街に帰るため田園の中を歩いて行く。
本当に今日は色々試した。
魔物を見つけては、語りかけてみる。餌をやってみる。愛を語ってみる。騙そうとしてみる。なだめてみる。
特に有力そうなハーピーは重点的に探した。
最終的にカティが動きを封じて10分位愛を囁いてやったが、効果があるのはカティだけで、ハーピーには効果がなかった。
後は、久し振りにタイマンをした。
勿論相手はスライムだ。今回は緑色の普通の奴だが。
30分も死闘を繰り広げてしまった。
僕の華麗な戦いに感動した女の子達は、
「リョウさん、真面目にやってますか?」
「ふあぁ〜・・・もう飽きちゃったぁ。倒していい?」
と言って、僕の代わりにスライムにトドメを刺してくれた。
いや、違うんだって。
絶対コイツ、あの時の青色のスライムより強かったって。攻撃激しかったもん。
「しかし・・・今日だけで考えれる全ての事をやった気がします・・・。いったい、“魔物誑し”とは何なのでしょう・・・。ゴクゴク。」
「あーあ。明後日には王都に出発かぁ。リョウのクラスの謎解きだけ終わらせたいなぁ・・・。ゴクゴク。」
セリスもカティも、街に入った途端にこれだよ。
今は二人とも、何かのフルーツジュースを飲んでいる。
屋台を見つけるたびに足が止まる。
これから、晩飯だというのに。
まぁ、いくら食べても、それだけ運動してるからいいんでしょう。
羨ましい・・・。あっちの世界の僕は、食った分だけ身に付いていたというのに。
・・・そういえば、結局セリスは一回も戦闘してないな。
まぁ、軽装の防具だが着けてはいるが、武器は持って無かったしな。始めから戦闘する気が無かったのかもしれない。
今日はずっと、僕やカティに回復魔法を掛けてくれていた。
いや、でも魔法くらい使ってたかも知れないな。
今日はこの3人で初めての冒険だったので、慎重に魔物を探したが、それでも2匹や3匹の群れの魔物と遭遇した。
勿論カティが全部倒したが、カティは1匹づつ相手にしていたようだったな。
セリスが魔法で、他の魔物の移動を阻害してたり、倒したりしていたかも知れない。
ルナ様もそうだが、魔法使うのに集中したりしないで、予備動作無しで使うんだよな。
無詠唱と言うやつだろうか?強くないそれ?僕も欲しい。
セリスって・・・もしかして戦わないのかな?
見様によっては、戦乙女みたいな格好しているんだけどな。
これも、あっちの世界の文化に染まりきったせいなんだろうか。
ファンタジーで天使は戦うもの。なんて先入観は通じないのか。
ん〜。でも、僕がスライムと戦った時は辛辣な事言ってたもんなぁ。
ん〜どっちなんだろ・・・イテッ!
「おう、おうおう!うちのリーダーに何してくれてんだぁ!」
「このクソガキ!何処見て歩いてんだ!」
「・・・・・・止めろ、エルテガ、キッシュ。あんま子供を苛めるな。」
キ、キター!!テンプレ展開だー!!
お誂え向きに酒に酔ってるぞ!酒くさっ!
ふっふっふ。私に絡んだことを後悔させてやろう。
今こそ“魔物誑し”の真価を見せ付けると・・・き・・・!
・・・デカいっ!エルテガとか言われた奴デカっ!
ヤベ・・・怖っ!
他の奴らも凄い筋肉質だ。所々身体や防具に付いた傷が、歴戦の戦士だって物語っているぞ。
「あ、すみませんです。はい。」
ヤバいって完全に絡まれる相手を間違っているよ。
カティとセリス!助けてくれ!・・・・・・って居ねえし!
何処行った・・・なぬー!子供用の玩具の屋台に釣られてるやんけ!
「すみませんで済むと思うか?おう?」
「我等が冒険者ギルドのB級パーティーの“黒い三戦士”と知っての狼藉か?」
いや、狼藉って言われるような事やったか?
後、またそのネタかよ。名前聞いた時にもしやと思ったけど。
あー面倒だな。酒臭いし。
それに、なんか妙だ。何か僕にやらせたいのか?
「・・・何をしたらいいんですか?」
「はははっ!話が早いじゃねえか。」
「そうだなぁ・・・詫びで連れのお嬢さんに酒の酌でもしてもらおうか。」
と、隻眼の男が言ってくる。
何だよ。セリスが目当てだったのか。
フランスの郷土料理みたいな名前しやがって。少しからかってやろう。
「おーい!カティーー!!」
僕の声に気付いたカティが走ってやってくる。
セリスも後からついてくる。
「なぁに?リョウ。」
なぁに?じゃねえよ。
まずその頭に乗っけてる派手なパーティー用の三角帽子はなんだ?
この世界に本当にそんな物あるの?てか、何故買ったし。
「このお兄さん方がな、お前の事が好きなんだと。」
「えっ?このおじさん達が!?」
「お、お嬢さん!今から暇かい?」
「お、おじさん達とご飯でも食べないかい?いい店知ってるんだ!」
・・・・・・・・・えっ?
あれ?そっちのガキじゃねえよ!ってツッコミは?
「ごめんなさい、おじさん。あたし、もう好きな人がいるの・・・。」
「・・・そ、そうか。悪かったね急に。」
「良い子じゃねえか。おい!お前絶対幸せにしてやるんだぜ!」
「あ、はい。」
郷土料理が僕の肩を叩いてくる。
なんだこの茶番は?またこの街に変態が増えてしまった。何なんこの展開。
「・・・おい、そこの姉ちゃん。俺はお前に酒の酌をしてもらいてぇな。」
暫く黙っていたロリコン達のリーダーが、セリスに向かってそう言った。
良かった・・・この人の性癖はまともだった。
元ネタへの風評被害が止まらないとこだった。
「・・・私が貴方にお酒の酌をする理由などありません。」
「このガキが俺にぶつかって来たんだ。保護者として詫びて貰おうか。」
「私は保護者ではありませんが・・・。それにそのお詫びも、貴方のお仲間がカティナさんにフラれて終わった話でしょう?」
「・・・姉ちゃん。かなり腕が立つだろう?俺と勝負しねえか?俺が勝ったら酒の酌をしてくれ。」
「何を言っているのですか?それこそ受ける理由はありません。」
「勝負しねえって言うのか?・・・いいんだぜ俺は。ここで暴れても。斬りかかられたら反撃しねえ訳にもいかねえだろ?それとも、斬りかかるのはガキ二人のどちらかにしようか?」
「随分、野蛮な方達なのですね。冒険者ギルドのBランクパーティーというものは。」
何だ、この髭リーダーは。
無法者過ぎない?
Bランクってのがどれだけ強いのか分からんが、カティは大丈夫でも、僕は真っ二つだろう。
この世界の冒険者ギルドはどうなってんだよ。
確かに魔物を相手にする仕事してんだから、荒くれ者が多いんだろうけどさ。
こんな絡まれ方するんだぜ?
こんなのが何人も居たら、秩序なんて無いじゃん。
パイマーンの街って治安が良いって聞いていたんですけど。
「ガイヤン隊長。どうしたんです?」
「そんな無茶言って、隊長らしくないっすよ?」
「うるせえな。お前らだって、そのガキに難癖つけてただろうが。折角の美女で強そうな奴じゃねえか。俺だってやっていいだろう?」
どうやら、いつもの隊長ではないらしいが、引く気もないようだ。
酒も入って最高にハイってやつなんだろうが、面倒な奴に絡まれたもんだ。
「ズルいぜ、ガイヤン隊長!・・・よし!そこのガキ!俺達とも可愛い子ちゃんを賭けて勝負しろ!」
更に面倒な事になった。何がよし!だよ。ちっとも良くねえ。
「あ、あたしの為にリョウが・・・あたしを賭けて勝負・・・。は、はわ〜〜♡これであたしがヒロインなのね〜♡」
コイツも面倒だから、放っておこう。
「はぁ・・・、どうにもならないですね・・・。」
唯一まともなセリスが、溜息を吐いてこっちをじっと見てくる。
・・・どうしたんだろう。僕に惚れたのかな?
あっ。フルフルと首を横に振った。
否定されたら否定されたで悲しい。
目線では通じないと思ったのか、近寄って来た。
「リョウさん、私が勝負を受けて終わらせましょう。」
「なに?セリスって戦えるのか?」
「心配いりませんよ。少なくともあの人なら遅れは取りませんよ。」
「・・・信用していいんだな?」
「ええ。任せて下さい。」
「分かった。絶対負けないでくれよ。」
自信があるようなので、セリスに任せてみるか。
交渉くらいは僕がさせてもらおう。
「ガイヤンさん。その勝負、受けましょう。但し、あんたも無理を言ってるのはわかるだろう?こっちの要求も呑んでもらう。」
「ほう?いいぜ。言ってみな。」
「まず、そこのロリ・・・そこの二人の勝負は受けない。その代わり、あんたがセリスに勝てば、女を二人共、連れていけばいい。」
「ほう。一回の勝負で決めるんだな。いいだろう。それだけだな?」
「まだだ。この勝負は、こっちが勝っても何も得が無い。何か賭けてもらおうか?」
これを聞いて、エルテガとキッシュが激昂した。
「何だと!貴様、調子に乗りおって!」
「我等が何かを差し出せだと!?ナメおって!」
「当然だろ?それとも、ホントにここで大暴れして力ずくで奪って行くつもりか?一応、冒険者ギルドのBランクパーティーなんだろ?盗賊まがいの事してていいのか?」
「・・・チッ。クソガキが・・・。」
二人は周りを見て、黙ってしまった。
さっきから騒いでいるから野次馬が集まって来ている。
流石にここまで人の目があると、強引にというわけにはいかないようだ。
「ふっ・・・。いいだろう。こっちはこの魔剣を賭けようじゃねぇか。」
ガイヤンが大きめの袋から取り出したのは、変わった形の綺麗な片刃の剣だ。
なんだろうな。あっちの世界だとゲームでしか見ないようなデザインだ。
流石ファンタジー。中二な心を擽る武器だ。
「ガイヤン隊長!その魔剣は、この前死に物狂いでダンジョンから持って帰ったやつじゃねーか!」
「うるせえぞエルテガ!この剣は俺の分け前の筈だ。どう使ったって俺の勝手だ。お前らも嬢ちゃんが欲しいなら、腹くくって出すもん出しやがれ!」
「仕方ねぇ。エルテガ、お前も今回の分け前出せ。ここまで大事になったら止められん。」
「クソッ・・・。負けねぇでくださいよ。ガイヤン隊長。」
「誰に言ってやがる。俺ぁ“黒い三戦士”のリーダー、ガイヤンだ!」
エルテガとキッシュが小袋を地面に投げる。
重そうな音が鳴る。多分お金だろう。
観客が勝手に沸いてくれる。
この野次馬達のお陰で、お金まで引き出せたようだ。
しかし、魔剣を賭けてくるとはな。
話でしか聞いたこと無いし、実物を見るのは初めてだ。
まぁ、まだ本物の魔剣だと決まった訳ではないが、エルテガの反応からして本物なのだろう。
魔剣は、ダンジョンとかで見つかる魔法の力が込められた剣のことだ。
このような魔剣と、孤児院にもあるランプや冷蔵庫や湯沸器。変態おやぢ達やカティが使ってた魔導カメラなど、人が作った物も全部引っ括めて、魔導具と言われている。
魔導具の中でも魔法の力が込められた武器は魔導武器と言われていて、その魔導武器の中でも剣が出てくる事が多いので、魔剣と言われているそうだ。
大体の魔導武器がダンジョンから出てくるが、腕の良い鍛治職人なら作れる人が居るらしい。
魔導具の冷蔵庫みたいに、食べ物を冷やす冷気を剣から出す訳ではないので、相当腕が良くないと駄目らしいが。
後、魔法の力を維持するのに魔石がいらないそうだ。その代わり、鍛治職人が作る時には、大量の魔石か、質の良い魔石が必要だそうだ。
勿論、魔導武器も剣だけではないし、魔導防具や魔導道具なんてのもありますよ。
代表的なのは皆さんご存知、アイテムボックスですね。
冒険者のみならず、商人もこぞって欲しがる大人気アイテムですね。
ファンタジーに来たら、一つは欲しいアイテムだ。
「さぁ!始めようじゃねぇか!姉ちゃん、武器を出しな!」
ガイヤンは背中に背負っていた、細長い異様な大剣を構えて、言い放つ。
愛用の剣なのだろう。それ以上は無い。けっして刀身部分が白熱化などしていない。
どうやら、この場でやるようだ。
普通に屋台が並ぶ人通りの多い場所なんですけど・・・。まぁ、随分スペースはあるから大丈夫か。
セリスは一度ゆっくりと息を吐くと、手を下にかざす。
すると、何も無い空間から大鎌が出てきた。
刃体の長さは1m位だろうか。白色を基調としていて、金色で模様が書かれた、まさにデスサイズ。いや、エンジェルサイズ?
「人間相手には勿体無い武器ですが、私の・・・いえ、リョウさんの邪魔をするならば、容赦はしません!」
大鎌とか、なんてロマン溢れる武器を使うんだ。
セリスが大鎌の刃を下に構えてポーズを決めた。が、最高にキマってない。
それは何故か?さっきの子供用の玩具の屋台で買ったのか、カティとお揃いの派手なパーティー用三角帽子をかぶっているからだ。
何をはっちゃけている?何故それを選んだ?
「アイテムボックス!それに、魔導武器か!?だがしかし、使い手はどうかな!?」
ガイヤンが大剣を構えて突撃してくる。
セリスは動かない。迎え撃つつもりだろう。
「もらったぞ!!」
「はぁっ!!」
勝負は一撃で決まったようだ。
大鎌の間合いに入ったガイヤンに、セリスが横薙ぎの一閃。
それをガイヤンは大剣で受けるが、大剣は雑草を刈り取られるように、剣の中程で斬られてしまった。
「なん・・・だと!俺の剣が・・・ぐぉっ!!」
驚いたガイヤンに、セリスが容赦無く懐に潜り込み、大鎌の柄で
ガイヤンを突いた。
嫌な音がした。骨が折れた音だろう。
まぁ、コイツらの自業自得なんだが。死ななかっただけありがたいと思って貰わないと。
「ぐっ・・・ぐぉ・・・。ふ、フフフ・・・見事だ。若い娘ぇ・・・。お前はまだまだ強くなるだろう・・・。お、俺を踏み台にして行けぇっっ!!!・・・ぐふっ。」
「「ガ、ガイヤン隊長!!」」
ロリコン達が気絶したガイヤンに駆け寄って行く。
最後の最後で名言っぽい事言っていきやがった。
後、お前はぐふっ。じゃなくてド・・・まぁいいか。
◆◆◆
「セリス!凄かったね!!天使様ってあんなに強いんだねぇ。」
「ふふっ。ありがとうございます、カティナさん。でも、私の場合は武器のお陰ですから。あの武器はルナ様から戴いた物なんですよ。」
「そんな事ないよ!セリスの動き凄かったよ!ねぇ、帰ったら勝負しようよ!」
「カティナさんとですか?私はリョウさんと勝負してみたいのですが・・・。」
何で僕だよ。勝てる訳無いだろ。
セリスとガイヤンの勝負の終わった後。
野次馬共が騒ぎだして、セリスに群がって来たので、ガイヤン達を放って逃げて来てしまった。
まぁ、ロリコン達が居るから大丈夫だろう。
それに、絡まれたのはこっちだしな。あいつらは自業自得だ。
勿論、賭けの景品はしっかり持って帰らせてもらった。
中二病感溢れる片刃の魔剣に、お金がいっぱい。
ざっと見て金貨が数枚、銀貨や銅貨がたくさん。
ダンジョンの分け前とか言ってたが、結構良い稼ぎするんだな。
ホントにリタと組んで、ダンジョンを専門にする冒険者もありかもしれない。
しかし、ダンジョンに入るにも、準備でどれくらいお金を使うのか分からんし、このお金も何日分の稼ぎなんだろうかね?
・・・僕って実は今、金貨4枚持ってるんだよね。
どうやって稼いだっていうと、あの変態おやぢ達からなんだけど。
あの3人組が命懸けで稼いだカネがこれで、僕が暇を見つけては書いた幼女の短編小説で貰った小遣いがこれ。
僕は約2年間での稼ぎだから期間の違いはあるけども、同じくらい稼いでるんだよな。
・・・あのおやぢ達の変態っぷりには脱帽だな。
因みに、僕の勝手な考えなのだが、金貨と銀貨は日本でいう一万円と千円位の価値じゃないかと思っている。
銀貨の下の銅貨と、あまり使わないが鉄貨がある。百円と十円位かな?
金貨の上に白金貨とかあるらしいが持てる日がくるだろうか。
「カティ。この魔剣、お前が使え。」
「うえぇっ!!そ、そんな!リョウが使いなよ!」
さっきからチラチラ見てるクセに。
僕が使ったって宝の持ち腐れなんだよ。
「何時までそんなボロボロの銅の剣で戦ってんだよ。今日の狩りでも、ほとんどの魔物を斬らずに叩き殺してたろ。」
「あぅ・・・・・・いいの?」
「いいんだよ。折角学園に通ってるんだし、良い武器持ってないと恥ずかしいだろ。」
「うん・・・。ありがとっ!エヘヘ〜。」
「ふふっ。良かったですね。カティナさん。」
カティは魔剣を持って、嬉しそうに笑った。
可愛い。だが、我慢だ。
今すぐお持ち帰りしたいが、カティ相手にドキドキする訳にはいかない。
それに、コイツは学園で節約しながら生活しているらしい。
ゲバルド氏が心配しながら、僕に言ってきた事がある。
このいつまで使ってんだ!?っていうボロボロの銅の剣がその証拠だ。
両親や孤児院に気でも遣っているんだろう。
まったく・・・、馬鹿のクセにいっちょまえな事しやがって。
「ほら、カティ。これも半分持っていけ。」
「ん?なぁにこの袋?・・・うえぇぇっっ!!!金貨と銀貨がいっぱい・・・。こ、これは駄目だよぅ。」
「いや、持っていってもらうぞ。大体、僕は巻き込まれただけだ。賭けの対象はカティとセリスだろ。だから全部二人の物だ。」
「わ、私もですか?」
残り半分もセリスに渡してやった。
「カティ。お前はそのお金で、王都で装備を揃えろ。これから授業も厳しくなる筈だ。銅の剣一本じゃあ、例え勇者でも、皆に置いていかれるぞ。」
「そ、そこまで考えてくれてたの?・・・う、うん。分かった//////」
何赤くなってんだ。
僕が考えていた。と言うより、ゲバルド氏が心配していただけなんだけどな。
学園の授業の事もゲバルド氏が言っていただけだ。
「後、その魔剣は片刃だし、刀身がちょっと短いからクセがあるかもな。カティには合わないかもしれないから、別の武器も買っとけ。」
「あ〜、うん。そうかも。分かったよ!」
「では、私も武器にしましょう。」
「セリスも?あの大鎌はどうするんだ?」
「・・・実は、あの大鎌はあまり世に出すなと、ルナ様に言われていたんです。この世界では強力過ぎる魔導武器だと・・・。」
そうだったのか。
それにしては、あっさり出していたような・・・。
いや、僕達の為に使うなと言われていた武器を使ってくれたんだ。
正確には、カティとセリスの為だが。
しかし、セリスが武器を出さず、負けていたらどうなっていた事か。
酒の酌で終わる訳ないよ。
人気の無い所に連れて行かれて、あんな事やこんな事・・・。
ヤベェ!見たい!!
いやいや、何を言っている!寝取られるんだぞ!
なに・・・?寝取られ?NTRだと・・・!!
遂に私がNTRだと!
い、いや。僕にNTR属性は無い筈だ!
だ、だが・・・しかし・・・見たいと言えば・・・。
「ですから明日、武器屋に連れて行ってもらえませんか?」
「え?NTRたいの?」
「パイマーンにある武器屋はネトラレと言うのですか?」
「い、いや・・・言わねぇ。」
「???」
なんだよ、武器屋ネトラレって。
普段は街の武器屋の店主、気前が良くて二枚目で、街一番の人気者。
しかしてその正体は・・・近所の奥様方を寝取る、とんでもない男であった・・・。
何それ!?めっちゃ小説で書きたい!
「モーー!また変な事考えてたでしょ!」
「やかましい!いいからお前は節約なんかしてないで、新しい下着買え!何年このクマさんパンツ履いてんだ!?」
「ギャーーーッ!めくらないでッ!!それに何で知ってるの!?」
「剣・・・はあまり得意ではありませんし・・・。槍でしょうか・・・いえ、もっと変わった武器でも・・・。」
夕暮れの闇が濃くなり始めた街中を、3人で騒がしく帰って行く。
こうして、3人での初冒険は終わった。
のちに、この3人と1人の男の娘を加えた4人が、世界を股に掛ける伝説のトレジャーハンターパーティーと言われるようになるのは、まだ先の話である・・・。
え?そんな予定はない?
あ、はい。




