出会い
どこに行くあてもなく電車に乗った。
どうしよう
家を出てはみたものの行くあてなんてなくわたしは途方にくれていた。
陽はどんどん傾き、空には白い三日月が出ていた。
全然知らない街で、電車を降りた。
家路を急ぐ人たちが羨ましく思えた。
スーツのおじさんも
キレイなお姉さんも
ランドセルの子供も
みんな帰る家がある。
わたしには、ない。
今日、寝る場所もない。
どうしてあの時、わたし、死ななかったんだろう。
あのコードに首をかける、たったそれだけで良かったのに。
どうして、わたし…
「どうしてわたし生きているんだろう。って顔してるよ?君、大丈夫?」
不意に声をかけられて目をあげた。
柔らかそうな茶色の髪のメガネをかけた男の人が覗きこんでいた。
わたし、と言おうとして、口をつぐんだ。
知らない間に、わたしの頬を涙が伝っていたから。
男の人は、黙ったまま、指でわたしの涙をそっと拭って
「あー、お腹すいたな。空かない?
今からゴハン行くんだ。1人で食べるの寂しいから少し付き合ってよ」
と言うと、くしゃりと笑った。
なんだろう。
この笑顔。
むかし、みたことある。
そうだ、むかし、おじいちゃんの家で飼っていたトイプードルだ。
柔らかそうなふわふわの茶色の髪も、くしゃっとした笑顔もそっくり。
わたしは、ゴハンに付き合うとも、イヤとも答えなかったけれど、
男の人は手を引いて駅を出た。