また逢う日まで
別れの朝…そして旅立ちの朝…ふたつの大きな出来事の中…ついに少年は記憶を探す旅に出る!!
颯side
「…さてと…そろそろ行こうかな…」
そろそろ朝日が昇る時間帯だ…輝夜たちもこの時間くらいに出ると言ってたし。昨日のうちに準備した荷物(少しのお金とさっき作ったおにぎりと水筒だけなんだけど)を持つと屋敷の外に出る。
「あら…もう起きたのね?」
「どうせなら別れの挨拶ぐらいはしていこうと思ってな。」
既に準備を終えたのだろう…永琳は屋敷の外で門にもたれ掛かっていた。
「別にそんなことしなくてもいいのに…」
「あいさつ…ってよりはお礼だ。」
「お礼…?」
「倒れてた俺を助けてくれてありがとう…お蔭さまでこんなに元気になりました!」
「ふふっ…あはは!!私に言うよりも姫様に言った方がいいわね。」
「なんで…?」
「あなたを見つけたのは姫様なのよ。助けたいと言ったのも姫様だしね♪」
「あの輝夜が!?」
驚きのあまり声が大きくなる。
「えぇそうよ。何故かしらね〜」
ニヤニヤと笑いながらこちらを見てくる。だいたい考えてることが分かるのが腹ただしい…
「さあな…気まぐれじゃないか?」
「姫様は確かに気分屋だからね〜…」
…もしもだ!もし!輝夜が俺のことをそうゆう目で見ていたとしたら…いやこの先は考えるのはやめとこう…
「永琳!早く行くわよ!」
玄関から輝夜が出てくる。
「輝夜…その…今までありがとう。」
「あら?あんたにも敬語が使えたのね。少し驚きだわ。」
こいつ…憎まれ口を叩くということはさほど俺のことを気にしてはいないのだろう…異性としては。
「それだけだ!それじゃ俺行くから…」
輝夜達に背を向け、反対の道へと歩き出す。
「颯!!」
「なんだよ!」
「怪我とか病気とか…気をつけなさいよ…」
今まで聞いたことのないような消え入りそうでどこか寂しげな声が聞こえる…
「あぁ…りょーかいだ!」
振り返らずに大きな声で返す。振り向かなかったのはここで振り向いたら先に進めなくなると考えたからだ…最後になるかもしれないけど…
「行ってくる!!」
決意を固めた俺はただひたすらに道を歩いて行った…
輝夜side
「あーあ…行っちゃったわね…」
隣の永琳の言葉が妙に心に突き刺さる。
「姫様…止めなくても良かったの?」
「いいわよ…あんなやつ…」
颯は記憶を探す旅にでた…これはずっと前から颯自身が決めていたことだ…私がどうこう言う筋合いはないし、権利もない…でも…
「人って結構後悔する生き物なんです。それでも?」
「うっさいわね…私だって止めたかったわよ!!」
「姫様…」
「でも!あいつには目標がある!未来がある!そして寿命も!!だから無駄にして欲しくなんかないのよ!!」
「姫様なりの…愛ですか…」
「ち、違!!ムグッ!!」
永琳にいきなり抱きしめられる。
「辛い時は泣いても…いいんですよ?」
「そ、そんなことするわけないわ!」
「でも…自分を騙そうとしても目から…あなたの目から出ている2本の筋はなんですか?」
「なっ!!…これは…!!」
目元をごしごしと拭う。
「別れで泣かない人なんていません…どんなに強い妖怪でも誰か大切な人や友達がいなくなったら泣いてしまうものです。むしろ当然の反応ですよ?だから…たくさん泣いてください。」
「うわぁぁぁぁん!!」
せき止めていた感情が流れてくる。悲しみや寂しさ…たくさん感情が涙となって落ちていく。
「本当は止めだがった!!だけど颯がぎめだ事をむしじだぐなかったから!!」
「我慢したのね…ですが…心配はいりませんよ。」
「?」
「颯なら大丈夫です。きっと記憶を取り戻して帰って来ますよ。」
ニコッと笑いながら永琳が言う。
「そんなこと百も承知よ…永琳…ありがと。」
「いえいえ…それでは行きますか…」
記憶を取り戻した時…また会えるといいな…
その日の朝は終わりと始まりを告げる朝となった…
友と別れた颯は記憶を探すという宛のない旅にでる…そこであったのは妖怪を狩る事を生業としている少女だった。
次回!!
「炎の少女」