決断
「う…」
体を起こすと見慣れた天井が目の前にあった。
「随分と遅いお目覚めね…このまま永遠に眠るかと思ってたわ。」
「起きたばかりの怪我人にひどいんじゃありませんか?輝夜お姫様?」
輝夜が俺の顔を覗き込み声をかけてくる…
「あら…私の手で送ってあげてもいいのよ?」
「丁重にお断りします…」
輝夜なら俺程度簡単に葬れるだろう…わりと
まじめに…
「まぁ冗談は置いといて…あなたにはお礼を言わないと言わないわね…」
「お礼…?別にいいよ。というか俺も少し記憶を思い出したし…」
能力に関する記憶と…優しい声と自分を叱咤した声を…
「それに俺が自分で決めたこ…」
「嬉しかった…」
輝夜が会話を遮ったことに驚き、顔を見る。
「嬉しかったのよ…ここまでして私を守ってくれるんだ…って…」
「…」
「だから…これだけは言わせて…私を助けてくれてありがとう!」
これまで見せたどの笑顔よりも美しい笑顔で輝夜は言い切った…(少しだけ赤面してしまったのはここだけの話だ)
「お、おう…」
「さあて…姫様直々のお礼も終わったところで本題に移りましょうか」
ガチャッとドアを開けて永琳が入ってくる。
「本題って?いやその前にあいつの部隊は?」
「あら?私が本気をだしたら簡単よ。」
「まさか…」
いくら敵だからといっても…さすがにやりすぎじゃ…
「なわけないでしょ…適度に痛めつけて帰らせたわよ。」
内心ホッとした…敵でも死なれたらいい気分はしないからな
「そんなことよりも私達はこの場所から逃げるわ。誰にも見つからない場所にね。」
「なんでだよ?」
「月の連中はしつこいからね…1ヶ月後には追っ手が来るわ…」
「そうか…」
確かにいつもあんな奴が来たら大変だろう…
「ここで颯…あなたには一つの大きな決断をしてもらうことになるわ。」
「決断?」
「私達と一緒に来るか…それとも1人で旅をするか…」
「俺は…」
「もちろん一緒に来るでしょ!?いや一緒に来なさい!!」
輝夜が必死に連れていこうとしてる…
「姫様静かに…あなたが決めなさい…颯」
輝夜達と行けば俺が足でまといになるかもしれない…それに…記憶を取り戻すためには色々なものを見た方がいいかもしれない…
「俺は…ひとりで行くよ…」
「私達と行けば記憶だって永琳の薬で取り戻せる!!それでもこないの!?」
「それでも…」
「なんでよ!!」
「自分自身の力で思い出したいんだ…何十年かかってもかまわない!それでも思い出したいんだ!」
自分の気持ちを本気でぶつける…2人と別れるのはとても寂しい…だけど2人の迷惑になるのは…だから…
「俺は旅に出る!!」